英雄伝説 橙の軌跡   作:綱久

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どもー。初めましての方もお久しぶりの方も、綱久です。


社会人になって忙しく、やっと出したと思ったら新作の投稿!? なにを考えておるのじゃ己はーっ!!と思う方もいると思いますが、軌跡シリーズとリボーンという自分の一番好きな作品同士クロスオーバーの小説をずっと書きたかった気持ちがあったので、申し訳ないです。

え? 西風と邪を司るなんとかという小説を書かなかったか?って。すいません、あれ完全に考えなしのノリでやっちゃいました(泣)


こんな自分の作品ですが、楽しく読んでいただけるると嬉しいです。


では、どうぞ! 



序章~物語の始まり~
黒炎の襲来者


 

 

 

 

 

 

「わぁ~、綺麗な夕日だなー」

 

 とある山上にて、一人の少年が夕焼けの情景を眺め思わず呟く。しかしそんな少年の眼はどこか死んだ魚の目と思わせるほど死んでおり、今の台詞もある意味で現実逃避的なアレなのだ。

 

 

 この少年の名は沢田綱吉、通称ツナ。

 何をやってもダメで、何かとドジを踏んでしまう事を除けば、どこにでもいる平凡で普通な少年である……二年前までは。

 

 

『―――俺の名はリボーン。お前を立派なマフィアのボスにしてやるため、今日からお前の家庭教師を務める者だ』

 

 

 しかし、突如自分の前に現れた黒スーツと黒い帽子を被った、視るからに赤ん坊と思われてもおかしくない身長をした男の子……―――世界最強の殺し屋ヒットマンにして、世界最強の赤ん坊《アルコバレーノ》の一人、リボーンとの出会いによって、綱吉の運命は大きく変わった。

 

 伝統・格式・規模・勢力すべてにおいて別格といわれる、イタリアの最大手マフィアである『ボンゴレファミリー』の10代目のボス候補であることを告げられ、立派なボンゴレⅩ世(デーチモ)になるように育て上げると宣言されてしまった。

 

 その日から、彼の日常は非常識の世界へと変わっていった。

 どこの教育機関や軍事組織でも絶対にやらない程の超スパルタで勉強や修業をさせられたり、彼が嫌がるのに関わらずどこか連れだしたり知らない人やマフィア関係者に会わせたり戦わせたり。そして裏世界の抗争、ボス候補をかけた争奪戦、世界の命運をかけた未来戦、過去の因縁による10代目ファミリー同士の抗争、(アルコバレーノ)の運命の決着戦―――と正に普通の中学生の日常から外れてしまっている。

 

 だけど、そんな非日常を送りながらも、その日常でたくさんの友人や仲間ができて、そんなみんなと一緒に過ごす日々は綱吉にとって嬉しくて、楽しくてたまらなかった。

 リボーンに会えたことは少し不幸だなと思いながらも、彼のおかげで自分は変わることができ、彼が家庭教師で良かったと思うことだってたくさんあり、感謝している。

 

 そして、ある出来事を(・・・・・)きっかけに―――綱吉は自分が歩む未来を決めた。

 そのことを話したのは家庭教師であるリボーンと現《ボンゴレファミリー》のボスであるボンゴレⅨ世(ノーノ)の二人のみだ。といっても中学を卒業するまでには自分の仲間や知人達には告げるつもりだ。だけど今はまだ……

 

 

 

 

 そんな綱吉の心情を知ってか知らずか、今日はリボーンによる親友の炎真を巻き込んでの『ボスになるための軽~い準備運動♡』という名の海外軍人が根を上げてしまうほど地獄のスパルタ特訓を行っている最中。

 今は休憩の時間で、リボーンと炎真は飲み物を買いに席を外しているため、夕日を眺めていられる余裕がある。

 

 彼らが戻ってくればあの地獄が再開される―――そんな憂鬱を少しでも晴れればと思い、再び綺麗な夕日に目を向けようと――――― 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――貴方がボンゴレ10代目、沢田綱吉君ね?」

 

 後方から声をかけられた。綱吉は思わずバっ!と後ろを振り向く。これが先程から席を外しているリボーンや炎真だったらそこまで反応をするはずがない。なら何故綱吉はここまでの行動を取るのかは至極単純――

 

 

 

――――綱吉にとって初めて聞く声であり、それに隠しきれない殺気を乗せられていたからだ。

 

 

 綱吉の視界に映る先には、この場に似つかない不気味な存在が立っていた。

 

 全身を黒一点に染められたローブに包まれており、その顔も目深に被られたフードのせいで確認する事が出来ず、そのせいで見た目の不気味さがより際立っていたため、その人物が一体何者なのか判断がつかない。

 しかし下半身の部分のローブが開かれ、そこから覗かれる黒一点色のローブとは反対の汚れがない白肌の美脚と黒に近い茶色のロングブーツ、そして高く澄んだ声を聴くからに、この人物の性別が女性だということが何とか分かる。

 

 一体何者だ?―――と、言葉を発するよりも先に彼女の口が開く。

 

「……初対面で申し訳ないけど、これも要請(オーダー)の一つ。貴方には―――――この世界から旅立ってもらうわ」

 

 それは合図もなく突然だった。まるで瞬間移動したかと錯覚するほどの速さで間合いを詰められ、ローブの女性は綱吉の首めがけて容赦ない肘撃ちを繰り出した。

 

 突然の出来事に驚く綱吉だったが、戦場を渡り歩いた経験から下に屈みこむことによって危なげなく躱しきった。

 だが、その程度で攻撃の手を止めるほどこの女性は甘くなかった。躱されることは予測済みだったのか、肘撃ちの勢いを利用した回し蹴りを容赦なく綱吉の腹に蹴りこんだ。 

 

「ぐぅっ!」

 

 蹴り飛ばされた綱吉は周りの木々を巻き込み、森の奥へと飛んでいった。常人程度が蹴り飛ばしたのなら、一本の木にぶつかってそれで終わりだが―――彼女の脚力は、木の一本は愚か十数本を巻き込み程であった。この惨状から見る限り、ローブの女性の蹴りの威力が、常人を軽く超えていることを物語っている。 

 

「………」

 

 綱吉を蹴り飛ばして数秒、ローブの女性は蹴り飛ばした先に向け、常人を超えた速さで走っていく。そしてそこには―――

 

「い、いてーーーーー!!」

 

 頭を抱え、痛みを訴える綱吉の姿であった。確かにダメージは少しばかり与えたみたいだが、目立った外傷は全く見当たらず、正直言ってあまり損傷を与えたとは言い難い光景だった。 

 

「……常人――武術をある程度修めた”上級”の武人ですら、今ので意識が飛んでいておかしくないんだけど―――君は意識があるどころか、ダメージもあまり受けた様子もなさそうね」

 

 ローブを深く被っているせいで表情は読み取れないが、女性が呆れの表情だということが否でも応でも分かってしまう。

 

 綱吉は、彼女の蹴りが入る直前で"死ぬ気の炎"で腹を強化したことでダメージを軽減させたのだ。そして何よりも、日ごろからリボーンによる理不尽のスパルタ特訓に鍛えられたせいか、炎の強化なしでも人外に近しい頑丈さを手に入れたのだ。今だけは彼に感謝だ。

 

 しかし問題なのは、このフードを被った女性だ。先程の動きを見る限り、明らかに表側の人間じゃないのは明らか。それも、相当な実力の持ち主であることも。

 

 やがて僅かに奔る痛みを耐えながら、綱吉は正体不明のローブの女性へと向き直る。

 

「貴方は……もしかしてマフィア!?」

 

「残念だけど、私は貴方が考えているマフィアとは違うわ。まあ、最も私が所属している組織はある意味マフィア以上の闇の存在なんだけどね」

 

 綱吉の問いにローブの女性は即答で否定した。最初は虚言ではないかと疑ったが、自身の直感からそれはないと判断。しかし、彼女のこの妙な言い回しから、ますます正体が掴めない。

 

「……正直に言えば今ので気を失ってほしかったけど――――仕方ないわね」

 

 彼女はなんの装飾もつけていない女性特有の綺麗な右手を前に突き出す。そしてその瞬間、彼女の掌から炎がゴぉっ!!と灯される。

 普通なら目を疑う光景だが、裏世界にはその程度の芸当ができる者が幾らでもいるため、綱吉にとってそこまで驚愕するような光景ではない。にも関わらず、綱吉の表情は驚愕の一言だ。

 

 指輪もなしに"死ぬ気の炎"を出した(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)こともそうだが、何よりも驚いているのは――――

 

「黒い―――炎!?」

 

 そう、彼女が灯している"死ぬ気の炎"であり、その色は黒い(・・)のだ。

 かつて《虹の代理戦争》で相対したマフィア界の掟の番人――――《復讐者》が扱う"夜"の炎と思えるほどに。

 

 ゆえに綱吉は最初"夜"の炎ではないかと一瞬疑ったが、その考えはすぐに取り消した。目に映る光景ではなく自身の"超直感"から――――彼女の炎は大空属性の炎(・・・・・・)であることを瞬時に理解したからだ。

 しかし、本来"大空"属性の炎の色は橙色。未来での白蘭の戦いの際、彼の"大空"の炎は黒く濁っていたが、それでも見た目からまだ"大空"の炎だと判別できた。

 

 だが彼女の炎はどうだ? 見た目から全く判別できないほど漆黒に染まっている"大空"の炎。

 一体なにがあったらここまでになってしまうのか? 初対面であるにも関わらず、綱吉は目の前に立つ女性の素性が気になってしまう。

 

「少し手荒になるけど、悪く思わないでね」

 

 そんな綱吉の心情など知ったことか言わんばかりに彼女はなんの躊躇いもなく、球状に形態変化させたバレーボール並に大きくした炎を綱吉に向け振りかぶった―――――

 

 

 

 ――――――瞬間、並盛山の中心部で大爆発が起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「今の《死ぬ気の炎》は!?」

 

「間違いねえっす、ツナがいる場所からだ!」

 

「急ぐぞテメぇら!!」

 

 声を上げながら、山道を駆け抜けるのは3人。

 

 獄寺隼人。

 山本武。

 笹川了平。

 

 "嵐"、"雨"、"晴"―――"大空"である綱吉を支える、それぞれの天候を司る《守護者》達。

 

 三人はそれぞれの用事で、途中から綱吉達と合流するつもりだった。しかし突如―――今まで感じたことがない炎の存在を並盛山で感じ取り、それぞれ用事を切り上げ、綱吉がいるであろう並盛山へと走り向かっていった。

 

 あの炎の感覚は今まで感じたことがない類のものであることを3人はすぐに感じ取り、走っている最中で更に炎による爆発が起こったことで、何者かが綱吉を襲撃したことを理解した。

 

 普段なら自分達よりも遥かに強い綱吉の実力を考えれば、そこまで心配する必要ないだろう。更に綱吉に匹敵する実力者の炎真、幼児化して戦闘力が弱体してるとはいえ破格な強さを誇る綱吉の師であるリボーンもいるため、彼らが急ぎ向かう必要はないのかもしれない。

 

 だが何度も死戦をくぐってきての恩恵からなのか――――先ほどから3人は嫌な予感が拭えない。勿論杞憂であればそれでいいのだが、もしそれで綱吉の身に危険が迫っていたら―――良平と山本は勿論、綱吉を神の如く崇拝している獄寺にとって許せるものではない。

 

 だからこそ"大空"のボスを護る守護者として――――いや、仲間、友人として、綱吉を助けに向かわんと3人は走りの速度を上げる。

 

 このままいけば後10分で綱吉がいるであろう爆心地へとたどり着くだろうが、山道に入ったことで人目が無くなったことから、3人はそれぞれの匣兵器を駆使しよ―――――

 

 

 

「「「―――っ!」」」

 

 ガキンと音が鳴る。

 自身達に音速並(・・・)に迫った攻撃の色を即座に感づいた山本は、自身の獲物である日本刀――――時雨金時を一閃することで3人にそれぞれ襲った攻撃を見事に防ぐ。

 

「弓矢……なのか、これ?」

 

 山本の言葉通り、斬りおとした残骸に一瞬目を向けると全身が金属でできた弓矢が転がっていた。弓矢を得物とした戦士と今まで相対したことがなかったこと、更に狙撃銃に劣らない(・・・・・・・)速度、走行する自分達の頭を正確に狙った(・・・・・・・・・・・・・・・・)狙撃の腕といい、敵の心当たりが全く浮かばない。

 

 そしてそんな3人に思考する隙を与えんと言わんばかりに―――弓矢による第二波が襲ってきた。

 

 先ほどの狙撃が挨拶変わりだったと思わせる程の――――数十も及ぶの矢の雨が襲ってきた。

 それも半径数十m程の広範囲であり、矢の速度に加え駆けにくい地形の山道のため、いくら3人でも躱すこと(・・・・)は困難だろう。

 

 そんな状況下で即座に反応したのは獄寺だった。

 

「――――"嵐"+"雲"、赤炎の矢(フレイムアロー)!!」

 

 瞬時に取り出した獄寺の得物、髑髏をあしらった腕固定型火炎放射器――赤炎の矢(フレイムアロー)。通常それより放たれる炎の矢は分解の性質をもつ"嵐"の炎のみだが、今放ったのは"嵐"の炎と増殖の性質を持った"雲"の炎が加えられた、炎の矢。

 放たれた炎の矢は"雲"の増殖によって枝分かれし、その数は数十。そしてそれは、自分達を襲ってきた矢を全て撃ち落す結果となった。

 

 そしてすぐさま獄寺は放たれた矢の方向から場所を逆算―――弓矢を放った狙撃手の場所を突き止めた。そして獄寺は自身の匣兵器―――SISTEMA C.A.Iの防御用の輪を利用して空中へ浮上する。

 

「タコ(ヘッド)!! 極限にどこへ行こうとしておる!!」

 

「獄寺。お前もしかして―――」

 

「あぁ、俺は狙撃手を仕留めてくる! テメぇらは先に10代目の元へ向かえ!!」

 

 言いたいことだけ述べ、獄寺はある方向へ猛スピードで飛んでいき、姿を消す。

 

 本来なら綱吉の右腕の獄寺が、一早く彼の元へ助けにいきたかったはず。しかし、山本と了平は近距離戦闘型の戦士。矢を放った狙撃手は確実に遠距離型のため、相性が悪い。

 だが相性が悪いからと言って山本と良平に限って負けるとは思えない……だが先ほどの狙撃といい、恐らく相手は"弓"という武器を極限まで極めた達人以上の腕をもつ"戦士"であることが嫌にも分かる。

 万が一二人なにかあれば自分が崇拝する綱吉が悲しむの目に見える。そして口には絶対に出すつもりはないが、獄寺も同じだ。

 ならば相性も勝率も決して悪くない自分が向かうべきだと判断し、後を二人に任せたのだ。

 

 

 

 獄寺の意図を察した二人は、すぐさま綱吉の元へと走ろうとしたが―――――敵1人ではなかった。

 

「――っ! 下がれ山本!!」

 

 新たな敵の気配に気づいた途端、山本は了平に無理矢理下げられた。突如の良平によって下げられる最中に山本が目にしたのは―――――自分達に迫る紅い閃光だった。

 山本を下げた良平は迫る閃光に逃げ出すことはなく―――自身の細胞エネルギーを一点に集中した自身の右拳で向かい撃つ。

 

 刹那、黄色の"晴"の一撃と紅い閃光は激突する。

 

 互いの一撃の威力は桁外れにして互角。ゆえに数秒の均衡が産まれ、大地はひび割れ、衝撃は周りを巻き込んでいく。

 咄嗟とはいえ、自分と同威力の一撃を見舞っている相手に了平は舌を巻く。

 互いの力が互角ゆえの均衡状態。それをどうやって破るかと頭を悩ませるよりも早く、閃光―――いや、紅い"闘気"に包まれた"戦士"が口を開く。

 

「――ほう。挨拶代わりとはいえ、我が一撃を防ぐとは。どうやら私の相手は其方が相応しいようだな」

 

「っ! 極限になにを言って―――」

 

「―――ここは場所が悪い。突然で申し訳ないが、場所を変えるぞ」 

 

 言葉を紡ぐよりも早く、右拳を突出したことで無防備状態の腹に何かしらの打撃を受けたことで了平は、森の奥へと飛ばされてしまう。

 

「先輩!!」

 

 了平を吹き飛ばしたであろう闘気に包まれた"戦士"は山本を一瞥した後、すぐ了平が飛ばされた方向へ走り去っていった。

 

 残ったのは山本一人。ここで山本が取るべき行動は一人で綱吉の元に向かうか、獄寺か了平の加勢に向かうのかどちらか……山本なら即座に選択し行動を起こしただろう――

 

 

 

――自分に近づいてくる強者の気配を感じなければ。

 

 

「―――エンネアの遠距離狙撃とアイネスの剛撃―――その二つに見事対処できる反射神経に身体能力、そして武器と炎の使い方。流石はマスターが称賛する組織の幹部であるだけはありますわね」

 

 その気配の人物が姿を現す。白銀色に輝く騎士甲冑を纏い、頭部に二対四枚の純白の羽を両脇に生やした鉄製のバンダナを身に着けた、栗毛の見た目可憐な少女だ。

 

 山本の見る限り、彼女の格好はあまりにも時代遅れすぎる。

 彼女が纏うのは、中世の騎士が身に着けていたような鎧。確かに固く防御力には優れているだろうが、それに比例するかのように重量は重く、戦争で迅速な行動を取る際は難しく邪魔でしかない。

 時代が流れと共にそれは消えて無くなり、現在でその鎧を身に着け戦場に赴く者は、表の世界でも裏の世界でも存在しない。

 

 しかし、山本はそんな彼女を愚弄する気は全くない。

 戦いの世界で敵を見た目で判断し、侮る行為は敗北に直結することなど常識だ。

 何より山本は、一目見ただけで彼女が強者であることを見抜いており、そんな彼女が伊達や酔狂でそんな格好をしているとは思えないと判断した。

 

「そして貴方も、先程の二人にも匹敵―――いえ、身体能力はあの二人を含めた《守護者》の中でも随一である剣士。そうでしょう、ボンゴレ10代目"雨"の《守護者》―――山本武」

 

 自身の名前、更に自分が関わるファミリーの役割を口にされたことで眉が僅かに動くが、対して問題ないと片づける。

 数か月前、作戦のためとはいえボンゴレ10代目ファミリーは世界中のマフィアが盛大に集った、《ボンゴレファミリー》継承式に出席した。正確には山本は、仲間の術士による幻覚での参加だった。

 それにより、世界中のマフィアに顔を知られるようになってしまったため、恐らく目の前にいる彼女もそれ経由で情報を得ているのだろうと判断する。

 

「アンタは俺のこと結構知ってるみたいだけど、俺はアンタのことは全く知らねぇ。せめて名前ぐらい教えてくれねぇかな?」

 

 山本の問いに女性は――"む、これは失礼……"とコホンと咳払いをし、自分の正体を隠すことなく明かす。

 

 

「――結社《身喰らう蛇》《使徒》第Ⅶ柱が麾下、《鉄機隊》筆頭隊士―――《神速》のデュバリィと申します。以後、お見知りおきを願いますわ」

 

 素直に自己紹介してくれたことに"律儀なのなー"と表面上呑気そうに答える山本。しかし――《身喰らう蛇》、《鉄機隊》と、自分にとって知らない単語ばかりで彼女の正体が掴めないことに少しばかり頭を悩ませる。

 普通ならマフィアかその関係者と疑うのだが、山本はその考えを一蹴する。何故なら――

 

「ボンゴレに敵対するどっかのマフィア……って思いたいけど、なんつうかなー……アンタそれに全然似合わねーのな」

 

 そう、一目見て山本は彼女を――――純粋で真っ直ぐだと感じた。勿論悪い意味ではなく良い意味でだ。

 先ほどの名乗りといい、濁りが全く見られない澄んでいる瞳といい、初対面であるにも関わらず山本は彼女をそう評した。少なくとも、彼女が裏の世界の住人だと思えないほどに。

 

「……なんか馬鹿にされてる気がしやがりますが―――私をマフィア風情と一緒にしないだけ良しとしましょう。……さて―――」

 

 軽い雑談は終わりだと言わんばかりに、彼女はいつの間にか左手に盾を、右手に大振りの騎士剣を携えていた。

 

 彼女が武器を持った瞬間、この場の空気が一変する。

 

「私達の任務は、貴方方ボンゴレ10代目《守護者》をボンゴレⅩ世(デーチモ)に近づけさせず、足止めすること。現在私の他の隊員の三人(・・)が、貴方のお仲間の守護者三人を相手しているところ。もし貴方が何もしないのなら、私も何もしませんわ」

 

「……その言い方からすると、ツナに用があるみたいだな」

 

「ツナ? あぁ、沢田綱吉のことですね。えぇ、私達が用があるのは彼だけですので」

 

 デュバリィの返答に"そうか"と呟き、山本は躊躇うことなくデュバリィと相対するように時雨金時を構える。

 

「………分かってはいましたが、大人しくする気はないようですわね」

 

「そりゃ当然だろ。ツナの名前が出てあいつに何かしようとしている以上、戦り合う理由としては充分だ」

 

「……大した忠誠心ですこと。ボンゴレⅩ世(デーチモ)はよほど《守護者》に愛されているようですわね」

 

「忠誠? はは、確かにそれも少しはあるぜ。ツナが本当にボンゴレ10代目になるっていうなら、俺は勿論祝福するし、ツナの《守護者》としてイタリアに渡る覚悟はとっくにできてるし、ツナ以外に仕えるつもりは全くねぇ。だけどそれ以上に―――」

 

 

 

「――俺にとってツナは大切な友達(ダチ)だ。友達(ダチ)を助けるのに、理由なんていらねぇだろ?」

 

 そう、それが山本の行動原理。

 勿論"剣士"として強者と戦いたい武人としての心があるのも否定しない。しかしいつ何どきも彼が戦うのは友達のためである。

 山本はボスである綱吉同様、友を大切に想っている。友が困っているのなら力になる。友が危機が迫れば助けにいく。そんな言葉だけなら簡単に見えて、自己保身のせいで実際に行えない者が少なからずいるその行為を、山本はなんの躊躇いもなく行動に移せるのだ―――――例えそれが、殺伐とした戦場であろうと、決して。

 

「友として……ですか。その気持ちは分からなくはありませんが、私も譲るつもりはありませんわ。これは我が偉大なるマスターより受け賜わった任務。あの方の顔に泥を塗らせないためにも―――絶対に遂行してみせやがるですわ!!」

 

 山本の決意と覚悟、それが嘘偽りないことを改めて(・・・)理解した瞬間、デュバリィの体から闘気が溢れだす。

 

 目の前で相対する山本は自身を襲う闘気、それに込められた殺気と剣気。一般兵士なら容易く意識を刈り取れる程の気を正面から浴びたにも関わらず、山本は悪寒よりもゾクゾクとする高揚感が奔る。

 自分が知る最高位に位置する剣士であるスクアーロ、幻騎士には劣るだろうが、彼女の実力が彼らに迫るほどの剣士であることを認知する。

 少なくとも、自分が本気を出さざるをえない程に。

 

 もはや会話は不要。

 互いが敵同士であり戦士。互いに譲れないものがある限り、戦闘はもはや不可避。

 

 お互いに自身の得物である日本刀と騎士剣を構える。お互いが強者であることは百も承知、ならば最初から加減は不要。ただ全力で押し通るのみ!

 

 

 

 

 

「――《鉄機隊》"筆頭"隊士――《神速》のデュバリィ」

 

「――ボンゴレ10代目"雨"の《守護者》――山本武」

 

 

 

「「――――参る!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「それが……本来の貴方の姿ね」

 

 目の前にそびえ立つ少年にむけ、ローブの女性はそう呟く。

 

 先ほどまで"一般人"と変わらない雰囲気を纏っていた少年ではなく、歴戦の猛者を言わしめん程の"戦士"としての雰囲気を纏わせている少年にだ。

 通常から(ハイパー)化したことで気持ちは切り変わっており、今の綱吉は初対面の者ならば目を疑う姿だ。

 

 額に灯る濁りや汚れがない綺麗な澄んだ橙色の炎、全てを見透かすような橙色の瞳。そして両手には、今なおも橙色の炎が燃え続けている手の甲にボンゴレの紋章が宿る鋼鉄のグローブ。

 決定的なのは空間を支配し、弱者を戦わせることなく膝をつかせ、歴戦の猛者ですら一瞬動きを止めてしまう程の圧倒的な威圧感と覇気。

 

 

 この姿こそ、裏世界の頂点に君臨するイタリアマフィア《ボンゴレファミリー》、10代目ボスである――――沢田綱吉である。

 

 

 リング争奪戦、未来戦、10代目ファミリー同士の抗争戦、虹の赤子の代理戦――――そして地獄の番人達との戦い――――数々の経験を糧にしたからこそ、今の綱吉がある。

 

 

 

 しかし、そんな綱吉を前にしても、ローブの女性は微動だにしていない。むしろ想定通りと言わんばかりに薄く笑みを浮かべる。

 

「《道化師》の報告、そしてあの方(・・・)の言葉通り、相当な実力者ね。私が挨拶変わりに放った炎の爆撃も(・・・・・)片手で造作もなく防ぐくらいだもん(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「…………」

 

「実力は紛うことなき"達人級"。《理》に至った武人とも張り合えるんじゃないかしら? そしてそれでもなお発展途上で完成系じゃない(・・・・・・・・・・・・)。ふふ、あっち(・・・)に劣らずここも(・・・)充分な人外魔境ね」

 

「お前は――――」

 

「――――うん?」

 

「一体なにが目的で俺を襲う? 俺たちが戦う理由があるのか?」

 

「……戦いたくないのなら、素直に私の言うことを聞いてもらえると嬉しいんだけど」

 

 もし彼女が戦いを仕掛けることなく善意で会っていたのなら、その可能性もあったかもしれない。

 しかし、先ほどの力づくの行為といい、死ぬ気の炎の使い手といい―――――なによりも自身を幾度も救ってきた"超直観"から感じ取れてしまうのだ。

 

 自分に向けられる殺気に混じる――――大きすぎる悪意を。

 

 かつて自分を亡き者とし、己の大きな理想を果たさんとした六道骸、XANXUS、白蘭、D(デイモン)・スペード―――下手をすれば彼らをも超えかねない、幾多の戦闘や腹の探り合いで耐性ができてきた綱吉ですら―――思わず悪寒が奔ってしまうほどの。

 

 何故自分にここまでの悪意を向けるのか。

 己が描く身勝手な理想のためか、それともかつての《シモンファミリー》のようにボンゴレが引き起こした業によって、癒えぬ傷を負わせボンゴレの血が流れる者への憎しみか。

 

 理由は分からないが、彼女の悪意が自分に向けられるのなら、もはや無関係ではいられない。

 故に綱吉の答えは―――――

 

 

「――断る」

 

「……そ。なら実力行使もやむなしね」

 

 "もうこれ以上話すことはない"と言わんばかりに、ローブの女性はローブから―――何度も使いこまれた自身の身の丈を超える朱色の六尺棒を取り出す。

 そして自身の漆黒の"死ぬ気の炎"を纏わせることで、六尺棒は漆黒に染まり、軽く手首で棒を回転させることで炎が混じった軽い旋風が舞う。

 

 

 

 そしてそれを合図にしたかのように、二人は足を解き放ち―――互いの得物と炎を激突させる。

 

 

 

 

 

 

 

 




後書きです。

お気づきのかたもいらっしゃると思いますが、この作品は他作品である『英雄伝説 天の軌跡』の要素が入っています。作者である十三さんの許可はいただいているので、よろしくお願いします。

タグでも分かる通り、主人公の一人である綱吉は強さは高いですが、最強ではないのでご注意くださいませ!

最初からガチバトル!! ボンゴレ《守護者》には《鉄機隊》。綱吉にはオリキャラ。オリキャラについては追々明らかになるのでご了承を。ちなみに言っておきますが、今は棒を武器としていますが―――このオリキャラはエステルやカシウス、ダンとは全く無関係ですので。

それではまた次回、お会いしましょう!! あ、でも現在社会人で忙しいために遅れてしまうかもしれないので、すいません。

現状この小説の1話の文字数は8000~17000文字ありまして、更新速度を速めるため文字数を5000~6000に減らして話数を増やすのか、現状維持のままでいいのか――ご協力をお願いします。

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