英雄伝説 橙の軌跡   作:綱久

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 二ヶ月振りで本当にすみません、綱久です!! 以前の投稿期間と比べたら大分マシですが……次回はもうちょっと投稿できるよう頑張ります!!

 それでは、どうぞ!





原点

 

 

 

 

 

 

 

『帝国に行くのであれば、お前も恐らく出会うことになるかもしれん。『八葉一刀流』、漆の型を授かった――老師の最後の継承者に』

 

『継承者……つまり、()()()()()と同じ規格外……』

 

『待て、いや待ちなさい。あの()()()はともかく、俺までその括りに入るのは些か不本意なんだが……』

 

『それ本気で言ってます!? ニーア達から聞いた貴方の武勇伝や未来予知じみた"観の目"…でしたっけ。決定的なのは数か月前での軽い手合わせ―――もうあれで貴方は俺の『絶対戦いたくない人ランキング』の上位に入りましたから!!』

 

『ふむ、喜んでいいのやら不名誉と言えばいいのか分からんランキングだな……。まあその話題はさておき、先ほど話した最後の継承者のことだが、安心するといい。彼はまだ《剣聖》の称号を冠しておらず、聞いた話ではまだ『初伝』とのことだ』

 

『そ、そうなんですか!!? 良かった~~!! 心をある程度読まれたり高揚して戦いを挑まれ続けたり四六時中付きまとわれたりしないと考えると安心感が……!』

 

『こらこら、《剣聖》が全員そんな人物だという考えはやめなさい(まあ後者はともかく、ある程度は昔の俺もそうだったから、強くは否定できないんだがな……)』

 

『す、すみません。あの人の印象が強すぎて、《剣聖》は全員ああなのかという思いが捨てきれなくて……』

 

『――まあ、あの妹弟子と初めに会ってしまえば、是非もないと言えなくもないが……と、話がまた脱線してしまったな。――エレボニアにいる俺の弟弟子、もし彼と会う機会があれば、少しで構わんから気にかけてはくれまいか?』

 

『……どういう事です?』

 

『5年前、老師から届いた手紙でしか俺も事情はある程度にしか知らないが……その弟弟子は幼少の頃よりある闇を抱えているらしい。俺は勿論、他の弟妹弟子(きょうだいでし)よりも質が悪い類のな』

 

『……!』

 

()()()()()()()()()()()()()()、どうやら今だ自身の道を見出せてはいないようだ。事情を深く知らないゆえ、これ以上俺は何も言えないが……』

 

『つまり、その《八葉》の剣士さんの闇について力になってくれと?』

 

『いや、どんな事情があるにせよ、それは最終的に己自身の手で決着をつけねばならん。彼の闇を考えれば尚更な。だから、きっかけだけでいい。弟弟子が前へ進むための機会を、可能であればお前が与えてはくれないか?』

 

『は、はいぃぃぃ!!? 無理ですよそんな!! 俺、まだ14歳で世の中ことなんてまだ完全に知らないひよっこだし!! これまでだって自分のことで精一杯だったし!! そんな俺がリボ――師匠や貴方のように人を導くなんて――』

 

『――やれやれ、お前は本当に自分のことに関しては鈍いな。お前は気づいていない――いや、自覚していないだろうが、お前にはある。人に寄り添い支え、心技体の正しい在り方を示し教え導く――老師やお前が話す師匠のような、指導者としての才が

 

『……っ!!』

 

『ま、お前がエレボニアへ行く事情も分かってるし、そもそも会えるかどうかも分からない。どうしても無理だと言うのなら――』

 

『いえ、貴方は俺にとってニーアと同じく大切な恩人です。そんな貴方が気に掛ける弟弟子さん……正直俺なんかがとは思いますが、もし彼と出会うことになったら――出来る限り助けたいと思います』

 

『…! ……そうか、すまないな』

 

『でも言っておきますけどしっかり力になれるかどうか分かりませんからね!!? 貴方は凄い過大な評価をしてくれますけど俺には――あぁ……心臓が凄いバクバクしてるぅ……!!』

 

『ふふ。何度も見てるが、やはりお前さんのこの姿はどことなく安心するな』

 

『どこがですかぁっ!!?』

 

 

 ツナヨシがエレボニア帝国へ行く2週間前の、とある御仁との会話であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 剣士と銃士、どちらが勝つかと問われれば、大抵の人間は銃士と答える。

 

 銃は相手から離れた距離から攻撃できることに加え、撃たれる銃弾の速度は銃の種類によって違うが、基本常人の目では追えない程。狙撃の腕は必要だが、戦いの素人ですら人を容易く殺せる武器、それが銃だ。

 

 だが、剣では銃に勝てないと問われれば、それは否だ。

 

 確かに銃弾の速度は目に映らない程ではあるが、基本直進にしか飛ばない。

 距離が離れ、視界で銃口の位置と狙撃のタイミングを把握しなければならないという条件はあるが、()()()()()()()()()()()。躱し、近距離につめてしまえば後は剣士の土壇場である。それが基本的な銃士との戦い方であるが、それなりの経験を積まなければ不可能なやり方だ。  

 

 では今戦っている剣士であるリィンはそれが出来るかと問われれば、それは可だ。

 本人は酷く自身を卑下しているが、曲がりなりにも彼は《八葉》の型を修めた剣士。もし並の銃士であれば、リィンが勝つのは当然と言っていいだろう。

 

 まあ………――――

 

 

 

「―――がはっ!」

 

 

 ―――銃士(ツナヨシ)は、並を遥かに超えているのだが。

 

 

「………これで15だ」

 

 15――それはこの手合わせで、リィンが訓練用の銃弾を受け転がされた回数だ。しかも全弾というわけではないが、多くが急所に撃たれている。もし実弾であれば、リィンはとっくに女神(エイドス)の元へ逝っていてもおかしくはない。

 

「……最初の動きは悪くなかった。だが時間が経つにつれ被弾の影響とは関係なく、お前の動きが鈍くなっているのが目に見えた」

 

「……」

 

「これは手合わせだ。別に全力でやれという決まりはないが……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のは、流石にどうかと思うが?」

 

「っ!?」 

 

 そう、まさにそれは図星だった。

 

 自分では、ツナヨシにどう足掻いても勝てないと。

 

 銃の腕も相当だったが、もしそれだけならリィンも手も足も出ない程ではなかった。

 銃撃を搔い潜り、ツナヨシに接近はできるのだが……どうやら彼には格闘術の心得があるようで、リィンの剣戟はどれ一つも完璧に躱されツナヨシに当てることが叶わず、躱された瞬間に銃撃や重い蹴り技が繰り出され、反応すらできず受けてしまっている。

 

 そしてもう一つ……、それはツナヨシはあまりにも戦い慣れていることだ。

 最初の疾風での高速移動を見向きもしない撃ち抜き、こちらの攻撃のタイミングをずらし、もしくは阻止するかのような銃撃……どれも技術だけでは到底不可能。

 

 リィンは手も足も出ず5回程無様に地に転がされた時、理解させられた。

 

 ツナヨシは強い。

 強いとは分かるが未だ彼の強さの上限が全く読み取れない。だがそれでも、自分よりも上というのだけは分かる。

 そんな彼に、未熟者の自分が勝つことはおろか勝負の土俵に立つことすら烏滸がましい。だからこそ、無意識とはいえ、手合わせ中にやる気を無くし戦い続けるなど、ツナヨシに対して失礼なことをしてしまった。

 

 だからリィンは決めてしまった――情けない話だが降参を申し出よう、と。

 

 醜態をさらした挙句、更に彼には酷く失望されるだろうが……もうこれ以上無意味な――

 

 

 

「お前は言ったな。自分はユン老師から修行を打ち切られ、『初伝』止まりで、強くもなければ強くなることもないと…」

 

――だが、そんなリィンの心情を見透かしてなのかツナヨシは遮るように口を開いた。一瞬戸惑うも、紛れもない事実のため、リィンは頭を項垂れたまま肯定する。

 

「あぁ……そうだ。だから俺は――」

 

「――何故、それを簡単に受け入れた?」

 

「――え?」

 

 思いもよらない問いに、リィンは思わずツナヨシをバッ!と見上げた。

 

「俺はリィンのことについて何も知らないし、ユン老師がどういう考えでリィンの修行を打ち切ったのかも分からない。だが、お前が剣を取り、その道を歩むと決意したその想いは、決して軽い物じゃなかったはずだ」

 

「それは……っ!」

 

 励ましの言葉を口にしない。その程度で折れるなら、この道にリィンが合わなかっただけのこと。

 

「他人に言われて簡単に受け入れる程、お前の覚悟はそんなものか? それで悔しさも向上心も抱くこともなく本気で抗いもせず、ただ現状を受け入れ変わろうともしないのがお前の在り方か?」

 

「………っ!」

 

「その程度の覚悟なら、悪いことは言わない。剣を捨て、戦いとは無縁の道を行くべきだ。お前が思う以上に戦いの――剣の道は甘くない」

 

 厳しい声色で語るツナヨシの言葉には重みがあった。まるで自身がそう経験したのだと語るその重さに、リィンは決して肯定する事も否定する事もなく、黙って彼の言葉を真剣に聞き入れる。

 

「だがそれでも、捨てられないと言うのなら、その道を歩みたいと言うのなら―――」

 

 本来ならここまでするつもりはツナヨシにはなかった。

 しかし、自身の放っておけない優しさと甘さ、とある恩人との頼み……そして、昔のダメツナと呼ばれた自分に少し似ているリィンをみていられなかったのか……。

 

 耳を傾けるリィンにツナヨシただは引きずり出す。時が経つにつれ忘れてしまった彼の――

 

 

 

「――原点を思い出せ。お前が剣を取り、強くなりたいと願った根底はなんだ―――リィン・シュバルツァー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リィンには他人に安易に明かすことが出来ない内に秘める闇がある。その闇は己の意思とは関係なく、周囲に害を巻き散らす忌むべき物。

 

『兄……様……』

 

 今でも思い出す。

 幼少時、血は繋がっていないが、何よりも大切に想っていた妹を大型の魔獣から護るため、自身の意識が塗りつぶされるように闇が表に現れた。

 そして意識が戻った時には魔獣は息絶えていた――リィン自身の手によって。

 

 そんな血にまみれていた自身の姿を、妹は口には出さなかったが……リィンを畏れていたのは目に見えて理解せざるを得なかった。

 

 あの一件があったにも関わらず、妹のエリゼはいつも通りに接してくれたが、あの一件は今でもリィンのトラウマだ。

 もし次にまた闇が現れ、今度はエリゼや家族…周りの人達に危害を及ばすのではないか……そんな不安が日が経つにつれ増していった。

 

 だからこそ父と親交があり、当時故郷であるユミル温泉に赴いていた――《八葉一刀流》の開祖、《剣仙》ユン・カーファイに教えを乞うた。

 正しき振るう力と、力を制し御する心と精神を、かの御仁から教授するために。もう二度と己の中に潜む闇によって、周りの人を傷つけないためにも。

 

 だが、同時にこうも思った。

 

 彼から師事を受ければ、こんな無力な自分でも強くなり、父のような人間になれるのではないかと。

 

 あの一件よりも少し昔、大型の魔獣に襲われた自分や他の領民達を――ユミルの領主である父、テオ・シュバルツァーが自ら前線に現れ魔獣を難なく倒し、守ってくれた。

 聞けば父はシュバルツァー男爵家に伝わる騎士剣術を収めており、老師には到底及ばないと本人は言ってるが、リィンから見れば彼も尊敬できる立派な強者だった。

 

 そんな自らの家族や領民を率先して守り戦い周りを安心させる父の姿に、更なる尊敬の念が強まると同時に――彼のようになりたいと思うようになった。誰かを傷けるための力ではなく、誰かを守るための力を……自分も、と。

 

 エリゼとの一件で闇への不安を抱くと同時に、守るために強くなりたいという想いも改めて抱くようになった。本当の意味で強くなれば、もうエリゼに恐怖や不安に思わせることもないはずだから。

 

 最優先は己の中の闇だ……だが、もし老師との修行でそれを制することができたのなら――希望観測であったが、当時のリィンはそれを思わずにはいられなかった。

 やがてそれは、老師から修行を打ち切られ、自分には武人としての見込みがないと決めつけ打ちひしがれてる間に忘れてしまったのだが……。

 

 しかし、それはツナヨシの言葉がきっかけに、はっきりと思い出せた。そう、自分が強くなりたいと願った一番の理由は―――

 

 

 

「エリゼを……父さんと母さん、大切な人達を自分の手で――己の意思で守りたい……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奥底に眠っていた本音を口にした途端、まだ一部ではあるが、リィンの心の中の靄が晴れていく。

 そして、体に奔っていた痛みを感じないかのように、己の足で立ち上がり、改めてツナヨシに向き直る。

 

「――俺は、剣の道を軽んじていたんだな」

 

 抗うことも、前に進むこともしなかった自分が、己の"限界"を決めつける――全くもって恥ずかしいかぎりだ。今だ未熟者である自分が、己の限界など分かるはずがないと言うのに。

 

 勝ち目がないと理解した瞬間に力を抜き、『初伝止まり』とユン老師が創り上げ各国の兄弟子達の《八葉》の剣術を穢し―――何よりも強くなると誓ったあの初心も、己の不甲斐なさのせいで忘れてしまった。

 周りにもそうだが、自分に対してとても失礼だ。それでは、いつまで経っても強くなれず大切な人達を護れやしない。

 

 まだ完全に心内が晴れたわけではない。

 だがそれでも、もうこの現状に甘んじることはしない。前を向き、止まることなく、自身の力で進んでいく。でなければ、人が変わっていくことも、きっかけを掴むこともないのだから。

  

「……どうやら吹っ切れたようだな」 

 

 憑き物が取れたかのようなリィンの表情に、無表情ともとれるツナヨシの口角が僅かに上がった。

 

「すまなかった、そしてありがとうツナ。年上として情けない限りだが、君のおかげで大事な事を思い出したよ」

 

「……俺は大したことをやったつもりはないが、お前がそう言うのであれば礼は素直に受け取っておく。――それで、まだ続けるか?」

 

 一応口に出したものの、答えは分かりきっていた。何せリィンの表情は剣士――いや、強者に挑む挑戦者のそれなのだから。

 太刀を正眼に構えたリィンに応えるように、ツナヨシも銃口を相手に定める。

 

 

 

「《八葉一刀流》初伝、リィン・シュバルツァー――今だ未熟者なれど剣の道を改めて志した者として、先の道を行く君に挑ませてもらう!!」

 

「―――来い!」

 

 

 

 弐の型―――疾風!!

 

 手合わせの最初に見せた《八葉》の高速移動の剣術。

 だが、速さもキレも最初とは段違いだ。気持ちの持ちかた次第で人は変わると言われるが、これがリィンの本来の力……だが――

 

(悪くない速さだが――視えているぞ)

 

 リィンを超える速さの敵と相対し続けていることもそうだが、とある事情でガチで戦り合うこととなった()()の剣技を嫌という程を視てきたツナヨシにとって、それは通用するものではない。

 

 リィンが斬りこむであろう位置に銃を構え、そして彼が眼前に迫ったタイミングを見計らい躊躇いなく引き金を引く――

 

(あぁ、分かってるさ!! この程度のことで彼に届くわけないことを!!)

 

 最初と同じ失態は繰り返さない。散々彼の狙撃には苦しめられ、先ほどまで銃口を向けられるだけで怖気づいてしまっていたが、もう今のリィンに畏れは微塵もなかった。

 ツナヨシの銃口が目前にある距離まで迫った瞬間、()()()()()()()のだ。力強く踏み抜いた右足を軸にしてコマのように右回転することで、ツナヨシの銃弾を紙一重で躱しきる。そしてそれは防御から……攻撃へと転換される。

 

「壱の型――螺旋撃!!」

 

 今まで届かなかったリィンの剣が、遂にツナヨシに届いた瞬間だった。

 

 回転の遠心力を利用した強烈な斬撃。銃を撃った直後に仕掛けたられたこともあり、流石の今の状態のツナヨシでも()()()()()()()()()()()

 彼は咄嗟に右腕を引き銃を盾にしたことで、剣撃による直撃をギリギリで防ぐ。

 

「ちぃっ!」

 

 だが咄嗟の防御体勢とリィンの一撃の重さから、完全に威力を殺すことができず、ツナヨシは数アージュばかり後退させられてしまった。

 先ほどまで手も足も出なかったにも関わらずリィンは、ツナヨシに一刀を届かせるだけでなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――この時点で十分な快挙だ。

 

(いや、まだだ!) 

 

 リィンは止まらない。

 太刀を素早く鞘に納刀。()()()()()()()()()()()()ため、《八葉一刀流》の中で剣速に秀でる型を繰り出す。

 

 

「肆の型―――紅葉切り!!」

 

 すれ違い様に相手に気づかれることなく斬る、剣速特化の抜刀術。

 銃撃や躱しといった動作をさせるつもりはないと言わんばかりの本気の一撃。その刃が迫ろうとする中、螺旋撃を受け止めた影響で手が痺れたのか、連続の技の応酬に反応できないのか、ツナヨシに動きがなかった。

 そんな彼の姿にリィンは「捉えた」と確信す――

 

 

 

 

 

「――……見事だ」

 

 そんな声が耳に届いた瞬間、ツナヨシに向け逆袈裟斬りで振るった刀身の動きが止まった――いや、止められた。

 そしてその方法は、全集中していたリィンが思わず驚愕の表情を浮かべるのに充分すぎるほどのものだった。

 

「――白刃、取り……だと!?」

 

 得物がない状態で、両掌で剣の側面を挟み受けて斬撃を防ぐ…相手によって難易度が大きく変わる高等技術。いつの間にか銃を地面に落としていたのか、リィンの斬撃はツナヨシの白刃取りによって止められている。

 

 白刃取りの技術についてはリィンも当然知っているが、手合わせとはいえそれを実際に目にしたのは初めてだ。

 敵の斬撃の箇所と速度の完全把握、両掌を合わせるタイミング――その二つが見事絡み合わなければ無防備な状態で斬られてしまう、とても危険な技術である。

 

 峰の状態であったがリィンは太刀を寸止めするつもりはなく、更に《八葉一刀流》で剣速に特化した紅葉切りを繰り出した……それを見事に白刃取りで防がれたということは自分の技はツナヨシに――

 

「――がっ……!?」

 

 気づいた時には、体全体に叩きつけれた激しい痛みを感じた。

 両掌で太刀ごとを持ち上げられ、勢いのまま横に投げ飛ばされ壁に叩きつけられ、地面に落ちる直前にツナヨシに現在抱き止められたが、今のリィンには知る由もなかった。

 この手合わせで受けた蓄積された痛み、その痛みを我慢し全力の剣技……そして今の叩きつけられた痛みによって、リィンは最早を意識が保つことができず、そして――

 

「――ここから、俺は……」

 

 悔しさもあれど、それ以上に満足そうに微笑みながら……そして心地よい暖かさを感じながら、リィンは意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(終わった……か)

 

 リィンが完全に気絶したことを確認したツナヨシは、()()()()()()()()。橙色の瞳は元の茶色へ、テンションも通常時へと戻っていく。

 そして完全に戻った瞬間、大きなため息をつく。

 

(とても『初伝』とは思えない強さ……リィンさん、自分を謙遜しすぎにも程があるでしょ)

 

 "お前それ完全にブーメランだからな"というツッコミが知人から飛んできそうだが、事実リィンは強かった。もしあれ以上の実力を彼が発揮していれば、1()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()

 

 リィンとの戦闘の際、ツナヨシは確かに"死ぬ気"化はしたが、《死ぬ気の炎》は全く使わなかった。炎による技は勿論、身体強化にすら一切利用せず、テンションだけ変え素の身体能力だけでリィンと戦っていた。

 そのため、"死ぬ気化"によって額に灯る炎の大きさは目視することが難しい極小サイズで、リィンにはそれを視る事が出来なかったのである。

 

(全くリィンさんといい、()()()()()()()》といい、『八葉』由来の剣士は本当に末恐ろしいよ……)

 

 数か月前に出会ったそれぞれの《剣聖》の実力と出鱈目さを実感してるからこそ、リィンも彼らと同類ではないのかとつい疑ってしまう。ま、それはそれで置いといて――

 

「――本当に、俺の選択は正しかったのかな……」

 

 あの最悪な予感が頭に過った瞬間、勢い任せで手合わせを申しで、結果的にリィンの心の靄の一部を晴らし前へ進むきっかけを与えた。

 後悔してるかと問われれば、半々といったところだ。彼の力になれた事の嬉しさと、自身が彼に大きく関わり縁を作ってしまったことへの恐怖。

 

 もうリィンはフィー同様、自分をただのクラスメイトと接することはないだろう。関わってはいけないというのに、事情を知ってしまったがゆえ見捨てられず最後に手を伸ばしてしまう……自分の優柔不断ぶりが本当に嫌になってしまう。

 

 だが、過ぎたことに後悔しても仕方ない。もうこれ以上、自分という存在が彼らⅦ組に影響を与えないよう努めるしかないだろう。

 自分とリィンやフィーを含めたⅦ組はただのクラスメイト……それ以上でもそれ以下でもない関係でなくちゃいけない。例えⅦ組全員の境遇が普通でないとしても、このクラスの真の創設理由で普通の学生とは大きく異なる道を歩もうとも。何せ自分がこれから歩む道は―――

 

 

 

「―――ってああぁぁぁぁぁ!! そんなことよりリィンさんの治療が最優先だったぁぁぁっ!! だ、大丈夫だよね!? 銃は訓練用の弾だし炎は全く使わなかったからそこまでの傷は……いやでも俺結構容赦しなかったような…!! もしこれで重傷を負ってたら……ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!! リィンさん本当にごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

 戦闘時で見せた姿とは思えない、いつも通りの喧しさと落ち着きのなさ。もしリィンの意識があったとしたら、そのギャップに唖然としていたであろう。

 

 最後まで締まらないツナヨシであったが、リィンの治療のため慌てふためきながらも懐から、掌サイズの正方形の箱を取り出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 




 黎の軌跡、皆さんやられましたか? 自分は当然やりましたが――最高でしたね、はい!! ストーリーは勿論ですが、キャラクターも良かったですよね!!
 前作からのレンやフィー、新キャラのシズナやエレインも良かったですが――一番はヴァンですね!! 歴代主人公の中でも一番好きになりましたね!! 次回も当然楽しみだし、どうにか黎の軌跡のキャラを登場させられないかと、少し検討中です……、一人の登場は確定ですが(ニヤリ)。


 今回の話のリィン、原作よりも強めで書いちゃいましたね。まあ、これから現れる敵のレベルを考えるとこれぐらいはやってくれないと…(黒笑)

 ちなみにテオの武勇伝は一応この小説でのオリジナルです。まあ実際原作でもやってそうな感はあるんですよね……人柄と実力は確かだし、閃Ⅱでは《北の猟兵》相手に善戦してたし。

 次回は後一話を終え次第、特別実習に入ります! 行き先は……この話を読んだ皆さんなら察しがつくと思います。どうか次回も楽しみに待ってて下さい!!
 

現状この小説の1話の文字数は8000~17000文字ありまして、更新速度を速めるため文字数を5000~6000に減らして話数を増やすのか、現状維持のままでいいのか――ご協力をお願いします。

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