久しぶりの戦闘シーンの描写なので、正直上手くできたか超不安です。
では、どうぞ!
「――――果てろぉっ!!」
「――――はぁぁっ!!」
体中にダイナマイトを帯びたベルトを巻いた少年―――獄寺隼人は大地を。
弓を持ち甲冑を纏った薄紫色の長い髪をした美女は木々を。
二人は足を止めることなく高速で移動していく――――ダイナマイト、弓矢という敵の命を問答無用で奪う凶器を敵対者に放ちながら。
二人は攻撃を行うと同じに高速で移動、または空中で飛び上がっている。足を止めることなく、しかも常に標的が動き回っている状態で正確に二人は敵に向け遠距離攻撃を行っている。それも、第三者が観ればタイムラグが全く感じさせない程に連続でだ。
しかしダイナマイトと矢は敵に届くことなく、空中で互いにぶつかり合ったことでダイナマイトは女性に届くことなく爆発し、矢は粉々となり地面にちらばる。
すでにこの光景は五分間繰り返されており、埒が明かないと思ったのか、それとも小休止として丁度いいと思ったのか、互いに攻撃の手をと足を止め、ここで今初めて冷静に互いの容姿へと視線を向け見定める。
「ふふ。油断してるつもりは全くないのだけど、私が今だ一撃も与えられていないなんてね。先ほどの対応の良さといい――――貴方、本当に14歳?」
「けっ、それはこっちの台詞だ。10代目の右腕であり"嵐"の《守護者》であるこの俺が、今だ攻めきれることなく途中で落とされちまう。テメぇ……どこのファミリーのモンだ?」
ギロリ!と殺気を込め女性を睨みつける獄寺。常人であれば震えあがってしまうその視線を受けながらも、しかし女性は気に留めることなく自身の名を名乗り上げる。
「――《鉄機隊》所属、《魔弓》のエンネア。《使徒》第Ⅶ柱より見出されし"
「《鉄機隊》に"
口ではそう言うが、彼女をそんな言葉で片付けられないことを、彼女と相対した瞬間から獄寺は理解している。だから挑発として口に出したのだが、分かっているのかエンネアは"うふふ"と妖艶に微笑みながら流している。
「さて、私は名乗ったのだから貴方も名乗るのが礼儀ではなくて?―――――と、いつもならそう言うのだけど、私は貴方のことを知っているわよ。代々ボンゴレ《守護者》の中でも嵐のような荒々しい攻めを得意とする10代目"嵐"の《守護者》にして―――ボンゴレ
「――んなっ!?」
"誰が自称じゃゴラー!!"と怒鳴ろうとするところを寸で押し留める獄寺。
常日頃から自分は沸点が低すぎるとリボーンに指摘されており、獄寺自身もそれを自覚していたのか、それを直そうと努力はしていた。その成果もあって、今回はなんとか堪えることができた……ギリギリだけど。
数々の修羅場を乗り越えマフィアとしても"戦士"としても成長した獄寺であるが、今だそれは未熟である。
そんな獄寺を『あら可愛い♡』とエンネアはクスクスと笑みをこぼし、そんな彼女の様子に挑発仕返されたことに気づき、羞恥心がありながらもコホンと咳払いをし場を無理やりリセットさせる。
「……テメぇの目的はなんだ? なぜ俺達を襲う?」
「あら、わざわざそんな事聞かなくても貴方はとっくに理解しているはずよ。ボンゴレ
「やはり狙いは10代目か……っ!」
「えぇ、その通りよ。綱吉君が心配なのは分かるけど、今は自分の身の心配をしたほうがいいわよ。私を倒しでもしない限り、貴方がこの先を進むことはできないわ。ふふ……でも貴方にそれができるのかしらね」
エンネアの挑発気味の笑みに、獄寺は内心舌打ちする。
先ほどまでの激闘、第三者から見れば互いの実力は互角だと口にするだろう。しかし、一見互角み見えるが獄寺は相手との差を痛感せざるをえなかったのだ。
ダイナマイト―――当たれば破壊力は絶大だが、ダイナマイトには機動性が全くなく、速さも銃と比べるまでもなく遅く、敵を捕まえることは難しかった。。
しかしリング争奪戦で、家庭教師である《
そして"嵐"の《ボンゴレリング》と
それを満遍なく十全に使いこなせるのは―――武器を理解し、それ行使する高い身体能力と頭脳を持ち、幾多の修羅場を乗り越えた獄寺の力があってこそだからだ。
だがそれでも、兵器の性能に頼っている――――この戦闘ではそれを思わざるをえないのだ。
なにせこのエンネアという弓士は―――一度に十数の複数の矢による同時射撃、タイムラグを感じさせないガトリング砲を思わせる連続射撃、足を止めることなく正確に標的を仕留めんとする射撃――――それを
弓は矢筒から矢を取り出し、弓を引き絞り矢を放つという過程は存在しない――――そんな、普通なら有り得ないと言える現象を体現できる領域に至った者だけができる武技だ。
ダイナマイトによる同時攻撃と連続攻撃なら獄寺も自身の腕だけで可能だ。しかし、ダイナマイト―――更に銃と弓で難易度が高いのはどちらかだと聞かれれば、当然弓だ。自身も武器の一つに弓を所持しているが、甲冑の女性のような武技を実践することはできないだろう。
ゆえに獄寺は理解する。相対する女性は―――自分よりも武人としての実力が上であることを。
しかし、獄寺は悔しく思えど悲観することは決してない。確かに自分は山本や了平、雲雀のような規格外の武人としての力量はない。
だが、それ一つだけで決まるほど殺し合いは甘くなどない。
及ばないというのなら、他で補い、自身だけの利点を利用し、敵を圧倒するまでのこと!
その程度も出来ず無様を晒すようならばボンゴレ《守護者》を――――ボンゴレ10代目の右腕を名乗るなど笑止千万!
「……図にのるなよ。確かに武技に関してはテメぇに及ばねぇ。だがな、相手が誰でだろうとボンゴレの―――10代目の敵を相手に引く選択肢なんてねーんだよ!!」
「……それで貴方が、死ぬとしても?」
「勘違いしてんじゃーぞ、死ぬ気なんて更々ねぇ。そんなことすれば10代目が悲しませてしまうのは明白だ。10代目が、俺の目指す《ボンゴレ》は――――――ボスとファミリー共に笑い合い、共に生き抜くことだ!! そのためにも、あらゆる手を尽くしてお前に勝つ!! 俺達ファミリーを――――ボンゴレなめてんじゃねーぞ!!」
瞬間、SISTEMA C.A.Iの防御輪が獄寺の周囲に展開され、ダイナマイトとは別の得物である腕固定型火炎放射器――
エンネアは思わず目を見開いた。新たなに武器が具現したことではない――――それぞれの武器に纏われている嵐の炎が、そして獄寺から奔っていた炎圧と密度が先ほどと比較にならないほどに上昇したことに。
《死ぬ気の炎》―――――氣や闘気、魔力とも異なる生体エネルギー。例外を除けば、指輪に装備されている高密度エネルギーに変換し《死ぬ気の炎》を生成する石がなければ炎が灯ることもない。
リングの属性と使用者の属性が合致しなければ炎が灯らないのもあるが、炎を灯す一番の条件は――――使用者の口先ではない、揺らぐことがない確固たる"覚悟"だ。
例え武人としての強さや才覚があろうとも、"覚悟"なくしては炎が灯ることは決してない。そして炎が灯せたとしても、途中で心が揺らぎ諦めの感情が湧き出てしまい覚悟は弱まれば、炎圧は弱まりやがて消えてしまい、炎が灯せなくなってしまう。
逆に言えば、使用者の覚悟の強さが大きくなれば、リングは応えその覚悟に見合う強度と純度の《死ぬ気の炎》を生み出し、使用者の力となる。
獄寺の炎圧が飛躍的に上昇したのは、彼の覚悟が紛れもない本物であるということ同義であり、彼が目指すファミリーの在り方もエンネアに勝つという宣言も本気であることの証明ともいえる。
「うふふ。流石はボンゴレ10代目の右腕、やはり侮れないわね……。これは想定以上に楽しめそうだわ」
その光景を目の前に、高すぎる炎圧も理由の一つだが―――――事前に《死ぬ気の炎》の詳細を知っていたからこそ、獄寺に対してエンネアは好戦的に笑う。
彼は武人ではないが、自身の弓術に匹敵するほどの多種多様な武器の技巧と知略、そして誇りあるマスターに見出された我ら《鉄機隊》と戦うに相応しい尋常ではない覚悟と炎。
相性との関係で必然的に彼と相対することとなったが――――彼を相手に選んだのは、間違いではなかった。
見た目の派手さはなくとも、氣と闘気の大きさと密度を膨大に高め練り上げながら、エンネアは改めて宣戦する。
「――――《魔弓》のエンネア。貴方の覚悟に応え、ここから本気でいかせてもらうわよ」
「言ってろ。休むことのない怒濤の嵐――――《ボンゴレ》"嵐"の《守護者》の使命を拝ませてやるよ」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「―――極限!!」
「―――ふっ!!」
方や拳、方や
近代兵器である戦車砲を思わせてしまう一撃一撃を互いにぶつけ合う――――それだけで大気が揺れ、大地は陥没し、二人の周囲にある木々は耐え切れず根本から吹き飛んでいく。
笹川了平、そして白銀の鎧に身を包みんだ鮮やかな赤色の髪の美女による力による撃ち合いは10を超えている。
一撃拮抗すれば強化して力を高めもう一撃、そしてまた拮抗すれば更に力を高め更にもう一撃――――ずっとそれの繰り返しである。
彼らは決して力しか取り柄のない一芸バカなどではない。
戦術は勿論、技も速度も優れ兼ね備えた一流の武人である。
しかし互いに一番秀でるのは力であるのも事実であり、拳と得物を一度交えただけで、互いに最も得意とするの力であることを直感的に理解し、力で勝ちたいと思ってしまった。そしてその力の前に、下手な小細工は通用しないことも。
そこからはもう力と力による応酬だ。
彼らは互いに武を極め、強い者と戦いより高みへ至りたいという武人としての心を持ち合わせており、真正面から正々堂々と――――己が力をもって相手の力を打ち砕き勝利を収めたいという気持ちに噓がつけなかった。
ゆえに二人は最初から本気で撃ち合う。了平が最初から
「『
「『地烈斬』!!」
先ほどまでの撃ち合いと比べものにならない、自身が誇るそれぞれの
細胞と晴の《活性》によって強化された右拳、氣と闘気によって練り上げられた
激突により起こった奔流は周囲は木々を問わず後片もなく吹き飛び、二人が立つ地盤は揺れ、少しずつひび割れ陥没していく。そのような常人では決して起こせぬ現象を巻き起こすほどの力を振るったに関わらず、またも拮抗し互角であった。
やがて二人は耐えきれず、互いに敵の得物を瞬時に弾くことで後方へ後退していき、体勢を立て直すと同時に敵対者に目線を合わせた。
「《痩せ狼》殿に匹敵―――いや、素質なら彼を超えるかもしれない拳撃。ふふ……、其方を相手に選んだのは間違いなかったようだ」
「貴様もな。久しく感じる力同士のぶつけ合い、極限に胸が躍るぞ! しかし―――」
「――――名乗りを上げずにいきなり襲ってくるとは何事だ!! いくら女とはいえ極限にプンスカだぞ!!」
「……それは失礼した、若き拳闘士よ。――――我が名は《剛毅》のアイネス。《鉄機隊》が"
「ごうき??……てっき??―――――おぉ!! つまり豪気に鉄軌隊に努め鉄道を守っているのだな!! 極限に見直したぞアイネスとやら!」
「………話には聞いてはいたが、色々な意味で抜けているのだな、其方は……」
なにをどう聞いたらそんな解釈になるのか………まあ、名前を覚えてくれただけでも良しとするか―――と思わずため息が零れてしまうアイネスである。
「……で、貴様は何故俺と戦っている? 貴様との戦いは確かに心躍り楽しいが、今の俺は沢田の元に向かわねばならん。そこを通してくれんか?」
「それはできぬ相談だ。我々の目的はボンゴレ
自身のボスであり大事な後輩である綱吉の危機を聞けば、少なからず何かしらの反応を示すと思っていたが、それを聞いたにも関わらず了平は冷静であった。
「……そうか。なら貴様は極限に俺の足止めか」
「ほう、冷静なのだな。少しばかり動揺するとばかり思ったのだが」
「沢田は俺が極限に認めた男だ、奴ほどの男なら大抵な困難を一人でも乗り越えられるだろう――――俺は極限に沢田を信用している。――――ま、だからと言ってあいつに何もかも背負わせるつもりはないがな!!」
瞬間、"晴"の
その炎圧は、一瞬であるが"達人級"であるアイネスが驚愕するほどに。
「確かに沢田は俺にとってボスであるが、あいつが後輩であり年下であるのは変わりない。10代目ファミリーの年長者として、年下のあいつらを支え導くのも極限に俺の役目だ!! そして―――――沢田を、ファミリーを襲う闇を己が拳で打ち砕き、活路を開く!! それがこの俺――――ボンゴレ"晴"の《守護者》――――笹川了平の戦いだ!! 極限に勝たせて先に進ませてもらうぞ!!」
それこそが自分の在り方だ!!と、了平は覚悟が籠った誓いを迷うことなく答える。
そんな了平の覚悟に、アイネスは隠そうともせずニィと愉しそうに笑う。
「ふふふ……あはは。任務中で不謹慎であるのは承知だが――――其方ような武人とこうして手合わせできることを光栄に思うぞ―――笹川了平!!」
了平に対抗するかのようにアイネスから闘気が膨大に溢れ出す―――その威圧は了平と勝るとも劣らないほどに。
今回の任務がボンゴレ《守護者》の足止めであることは認識している。本来なら馬鹿正直に力に対して力をぶつけ合うのではなく、技巧と速さを利用して互いに負けることがなくても勝つことも出来ない状況を作り上げることが利口であることも。
しかし、得物を交えただけで相対する少年――――笹川了平は己の武術をもって本気で戦うに相応しい武人であることを理解した。
そして了平は正々堂々と戦い、勝ちにいこうとしている。そんな彼に対して全力を出さずに戦うのは冒涜であると感じ―――――いや、それだけではない。
彼と戦い、互いに武を競い合い、更なる高みへと昇りたい。
この武人としての自分の
ゆえに彼の全力に答えるため―――自身も全力で戦うことに躊躇いはしない!
「―――マスターより授かった《剛毅》の名にかけ、全力で其方の前に立ちふさがらせてもらおう!!」
「―――面白い! ならば極限に押通るまでのこと!!」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「―――見切ってみなさいな」
常人の目では決して捉えることができない高速で百もの日本刀と騎士剣の斬り合いのさなか、準備運動はここまでだと言わんばかりに栗毛の少女――――《神速》のデュバリィの速度が飛躍的に跳ね上がり、姿すらも視界に映さない《神速》の名に恥じぬ圧倒的速度をもって、山本に剣を振るった。
しかし山本は、体を少し傾けることで神速の剣を難なく躱したのだ。
決められるとは思わなかったが、まさか自分の本気の速度に反応できるとは……顔に悔しさを表しながらもデュバリィは、自身の速さをもって連続で騎士剣を振るう。
だがそんな―――――臨界点を超えずとも武の道を極まめ至った"準達人級"、その階級に座る武人でも見極めるのが困難ともいえる剣の嵐を、山本は躱していく。
『《時雨蒼燕流》、守式四の型―――五風十雨』。
眼だけではなく、相手の呼吸に合わせて攻撃をかわす《時雨蒼炎流》の回避奥義。
山本の並外れた反射神経と動体視力と速さ、そして数多の修羅場を渡り歩き糧とした山本だからこそ可能とした型だ。
「ちっ! ちょこまかちょこまかと動くんじゃねーですわ!!」
攻撃が全く当たらないことの苛立ちを隠さないデュバリィだが、涼しそうな表情の山本の内心は、冷や汗が先ほどから止まらない。
最初はまだ自分の速度でも反応できた。だが有り得ないことに剣を振るうたび―――
彼女の速度はもはや自分をも上回っており、今は難なく躱してように見えて本当はギリギリもいいところだ。―――一瞬でも気を抜けば、この首が気づくことなく落とされてしまうほどに。
そしてついにデュバリィの《神速》の剣を躱しきれず、右から左に斬り降ろすその斬撃を山本は、反射的に自身の刀を盾にすることで防ぎぎった。
その光景にデュバリィは口角を釣り上げる。
"もはや自分の剣を躱しきることは出来ない、大人しく斬り伏せられなさい"と、言葉にせずとも表情でそれを理解してしまうほどの分かりやすい彼女に顔に、危機的状況であるにも関わらずおかしくて山本は内心でつい笑ってしまう。
あぁ、確かに今の"
だがもう彼女から
「――――『《時雨蒼燕流》、守式七の型―――――繁吹き雨』!!」
本来刀で水を回転するように巻き上げ敵の攻撃を防ぐ型。
しかし、腕と剣に纏わせ練った炎によって強化された膂力をもって、力づくに剣の薙ぎ払いの回転によって鍔迫り合ってたデュバリィの剣を弾き返す。
「ちっ!」
思わぬ力技に剣を弾かれるだけでなく、数メートルばかり後退されてしまった。
しかし、たかが数メートルの間合いなど、自身の速さをもってして迫ればこの程度、全く問題にならない。ゆえにデュバリィは再び自身の速度で――――
「な――――っ!?」
だが、そんな隙を敵に与えてしまうほど、山本は甘くなかった。何故なら――――
―――自身の目の前に、拳銃並の速度で迫ってくる日本刀の切っ先が、彼女の眼に映ってしまったのだから。
『《時雨蒼燕流》、攻式三の型――――遣らずの雨』。
手で持って剣を振るうのではなく、足や肘といった箇所を利用して剣を使う奇襲の型である。
山本が行ったのは、後退していくさなかのデュバリィへ刹那に狙いを定め、自身の強化した脚力で剣を蹴り上げたのだ。
剣士にとってまず考えられない奇襲、そして今だ後方に下がり続けているデュバリィは完全に意表を突かれ、気づいたときには剣の切っ先は既に目と鼻の先――――普通ならもはや回避は不可能………だが―――。
「っ……!」
――――彼女は飛来する刀を首を横に傾けたことで躱しきったのだ、常人では決して不可能な反射速度をもって。
剣か盾で防ぐという手もあったが、どちらで防いでしまえば、差異はあれ隙が生まれてしまう。格下ならともかく、"達人級"である自分と互角に刀を振るうこの男相手に、それは悪手だと瞬時にデュバリィは理解したのだ。。
本来なら戦いを終わらせる決めの一手にしてにおかしくないこの攻撃すらも――――
なにせ今自分の背後には――――――
遣らずの雨を放つと同時に自身の強化した速度をもって、意表を突かれていた自分の後ろに瞬時に回り込んでいたのだろう。最初の高速の斬り合いの姿を見る限り、彼の速度なら可能であろう。
だが、そう何度も意表を突かれるほど自分は未熟ではない!
「甘いんですわよッ!!」」
『剛雷剣』―――雷の魔力を帯びた剣によって周囲のなき払うデュバリィの戦技。
雷の魔力によって切れ味が倍増し目に映ること叶わない速度によって振るわれた雷の剣は、刀を振るわせることなく――――山本を斬り裂き、彼の奇襲は失敗に終わった。
だが、デュバリィの表情は驚愕に満ちていた。山本を剣で斬ったはずなのに――――人を斬った手応えが全く感じないのだから。
そしてそれを証明するかのように山本が立っていた場所から――――川も水溜りがないにも関わらず水柱が舞い、不覚にもその
『《時雨蒼燕流》、攻式九の型――――うつし雨』。
水面に自らの姿を映し、敵の目を欺く型。そして雨の炎と山本自身の殺気を混ぜ合わせることで、より現実味が増した影を生み出す。
そして濃度が高く純粋な"雨"の炎は、特徴だけでなく雨の性質である水をも発生させる。山本程の戦士が生み出す炎ならば、水場もない場所から水を生み出すことなど造作もない。そしてそれは―――魔力の形態変化属性である水よりも厄介である。
(――不覚! 山本武はどこに―――っ!)
この戦いで初めて見せる―――山本が放つ鋭い本気の殺気と剣気。それが周囲を見渡すよりも早く、デュバリィは山本の姿を察知する。
「《時雨蒼燕流》、攻式八の型――――」
だが山本の姿を一瞬視界に映した直後、もう自分の目の前に山本武が構えをとって立っていた。まるで瞬間移動したかと思える程の速さで、自身との間合いを詰めたと彼女は感じてしまった。
(っ、速い!―――いや、違う。これは――――私が遅くなってる!?)
"死ぬ気の炎"は例外を除けば、全部で7属性存在し、それぞれが異なった色と特徴を持ち合わせている。
そして"雨"の炎の特徴は――――《鎮静》。炎や物質の強度を弱体化させ、生物が浴びれば体の感覚と動きを鈍らせ、最終的に意識を痛みもなく失わせられる。
デュバリィはすでに、
現にデュバリィはその影響で、体の動きが鈍ってしまい山本の接近容易くを許してしまった。そんな彼女に山本は―――――容赦なく刀を振るう。
「―――《篠突く雨》!!」
敵の懐に入り、刹那に鋭い斬撃を敵の胴に放つ八の型。
山本は密かに勝利を確信する。完全にデュバリィの隙を突き、そして更に"雨"の炎の特徴である《沈静》で動きを少し鈍らせ、この戦いで見せた最速の速さで彼女の懐に入り刀を振るった。それこそ、今の彼女では反応できないはずだった。
なのに――――――
「―――嘗めるな、ですわ!!」
「―――んなっ!?」
なのに何故―――――彼女か突き出した盾に防がれた?
デュバリィを含めた4人の《鉄機隊》、そして
それでデュバリィは、山本武が《時雨蒼燕流》という剣の流派であること、そして《鎮静》という特徴を生み出す"雨"の属性を有していることを知った。
だからこそデュバリィは体の鈍りが、"雨"の炎による《鎮静》であることを瞬時に気づき、そして頭よりも体が早くほぼ無意識に、自身の体全体を氣と闘気を瞬間的に大きく練り上げ、自身の体内に入り込んだ
そして刹那、己の常人離れした反射速度をもって盾を利用し、山本の篠突く雨を防ぎぎったのだ。
修練を積み、長く戦場を渡り歩き培ってきた彼女だからこそ可能とした、自身の身を守る防衛本能であった。
とはいえ流石に斬撃威力まで受け止めきれず、デュバリィは上空へ突き上げられてしまう。
しかし彼女も負けていなかった。突き上げられながらも自身の
「―――つっ!」
一瞬呆然としてしまたために反応が少しばかり遅れてしまい、体を横に投げ飛ばすことで斬撃を間一髪で回避したが、斬撃の余波が山本の頬に切り傷を与え、血筋が頬をつたう。
その血を腕で拭いながら山本は立ち上がり、上空に突き飛ばされながらも身を翻し静かにデュバリィは着地し、奇しくも斬り合いの前の状態へリセットされたのであった。
「あはは。マジか、今のはイケたと思ったんだけどな」
「ふん、この程度など造作もありませんわ!!―――と言いたいところですが、敵ながら見事と言わざるをえませんわ。剣士としての力に技、速さは当然として、"達人級"と渡り合えるほどの"死ぬ気の炎"を生み出す尋常なき"覚悟"。『ボンゴレ二大剣豪』というのも、身に余る僭称じゃなさそうですわね」
悔しさはある。至高なる主に見出され、血を滲むような修練と戦いを積み、遂に武人の臨界点を超えた"達人級"の階級に至った武人へと成長した。
そんな自分と―――――生まれた世界や環境、武器の違いなどあれど、6つほど年が離れた少年が互角以上に渡り合えている。
戦いの世界に若さも老いも関係ないことも、報告書から山本武が『生まれながらの殺し屋』と称さるほどの天賦の才を持ち合わせていることも百も承知だったが――――それでも彼よりも長く生きてきた年上として、悔しさ妬ましさもある。
しかし、ここまでの実力に至ったのは紛れもない彼自身が培った力。それを否定するほど落ちぶれなどいない。
ゆえに噓偽りなく―――元々噓をつけない人間ではあるデュバリィは敵である山本を称賛する。
もっともこの光景を《鉄機隊》の同僚達が目撃していれば『あのデュバリィが素直に相手を称賛する……だと!?』と驚いてしまうだろうが。
「そういうアンタこそ、《神速》の異名は伊達じゃねえのな。剣の技量は勿論だが、速度と剣速に反射速度―――どれも常軌を逸してる。速さに関しちゃ、アンタの方が上かもな」
そして山本も、本心からデュバリィを称賛する。
一歩踏み込めば敵との間合いを安易に迫れる足の速度、目で追うことが叶わぬ剣を振るう剣速、そして脳から体へ指示を出す常人を超えた反射速度。―――そのどれもが他の武人と一線を画す、まさに彼女が《神速》を名乗るに相応しい圧倒的な速さである。
自身が認める最強剣士であるスクアーロは現在イタリア、幻騎士は自身らが10年後の世界から帰還した直後から行方不明となっていた。
更に虹の代理戦争から今日まで大規模な戦いは起こらず平和な日常をおくり、勿論剣の鍛錬を怠ってなどいなかったが、強者との―――それも剣士との戦闘は本当に久しぶりだった。だから少し嬉しさがあるのも否定できない。
なによりデュバリィと剣を交えると、楽しさと同時に心地よさを感じるのだ。
本音を言えばこんな殺し合いなのではなく、彼女とはただ純粋に剣との手合わせをしたかった。
だが今はボスであり、友である綱吉に危機が迫っている。なんとしても彼女を下し綱吉の元へ向かうことに気持ちを切り替える。
ゆえにこの状況を打破するために、山本は手札を新たに一枚きることに躊躇いはない。
「―――次郎、小刀3本。そして小次郎、
「っ!」
自身の匣兵器である
そして次郎からは小刀3本を受け取り、小次郎は時雨金時と融合し形態変化することで日本刀の長身を超える長刀となる。
瞬間、山本から奔る炎圧が周囲を圧倒するほど段違いに跳ね上がり、デュバリィも一瞬とはいえたじろいでしまった。
これこそは、世紀無双の剣士と言われ、全てを洗うい流す恵みの村雨と謳われた――――初代ボンゴレ"雨"の《守護者》―――朝利雨月の変則四刀。
匣アニマルが武器へと形態変化する――――10年後の沢田綱吉と入江正一が独自に創り上げた匣兵器。それも、ボンゴレ創始者達にして今だ歴代最強と謳われている初代《ボンゴレファミリー》が得物としていた武器そのもの。
今は《ボンゴレリング》から《
剣の技量は互角、膂力は恐らく自分が上だが、速さに関しては悔しいが今の自分では及ばない。ゆえに初代の武器である小刀3本による炎圧の推進力を利用して、彼女の速さに対抗し―――――勝利を掴むまで。
「四刀流とは――――生意気な」
「アンタ相手に出し惜しみはしていられないからな。ツナのもとに一刻も早く向かうためにも――――ここからはガチで行かせてもらうぜ」
ここからが本番だと言わんばかりの山本にデュバリィは生意気だと感じながらも、僅かに笑みを浮かべる。
そして山本の初代の武器に対抗するかのように『星洸陣』―――――
本来《鉄機隊》隊士4人で行こう
「―――上等。ボンゴレ匣でも
デュバリィの言葉を合図に―――――二人の剣士の超高速バトルの新たな幕が上がった。
感想があると嬉しいです!! それではまた次回でお会いしましょう!!
現状この小説の1話の文字数は8000~17000文字ありまして、更新速度を速めるため文字数を5000~6000に減らして話数を増やすのか、現状維持のままでいいのか――ご協力をお願いします。
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文字数5000~6000字で更新速度UP
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文字数8000~17000字で現状維持