英雄伝説 橙の軌跡   作:綱久

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 本当にお久しぶりですと同時に、2020年が終わるこの月にまで投稿せず、誠に申し訳ございませんでした!!!

 執筆をやめるつもりはないんですが、更新頻度が落ちてしまうのはどうかご了承ください!! 次回はなるべく遅くならないように更新いたしますので!!

 また、今回の話にもツッコミ所はあると思いますが、どうか最後まで読んであとがきまで読んでいただければ嬉しいです!!

 それでは、キャラ崩壊してないか怖いですけど、どうぞ!!





新入生

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ほいっと」

 

 虫型の魔獣、コインビートルを双剣銃で一閃。ただそれだけで魔獣は絶命し、セピラへと姿が変わる。

 

 走行中、20体の群れで固まっていたコインビートルに遭遇したが、ある程度実力がある士官学院の新入生でも倒せる程度のレベルの魔獣は少女―――フィー・クラウゼルの敵ではない。 

 半数を一瞬で難なくを倒したところでフィーは敵の気を逸らさない程度に、残り半分のコインビートルの相手をしている少年に向けて視線を動かす。 

 

 

 

「――ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!! こっち来るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 聴くからに情けない悲鳴を上げながら得物―――導力銃でコインビートルに向けて連射する少年――ツナヨシ・サワダ。

 周りから見れば迫りくる魔獣に恐怖して、銃を乱射してるようにしか見えずまともに当たりはしないだろう。

 しかし闇雲に撃ってるように見えて、少年が撃った銃弾の一発一発は外れることもなく、5体のコインビートルの急所を的確に撃ち抜いているのだ。

 

 表情、言葉と行動が全く一致しない少年の行動に常に眠たげな目が一瞬見開き、()()()()を持ったフィーであったが、まずは魔獣の殲滅が優先と言わんばかりに意識を戻す。

 

 

 

 そしてフィーが10匹目の魔獣を一閃するのと同時に、ツナヨシも10匹目の魔獣を撃ち抜いたことで、20匹存在していたコインビートルの群れは1分もかからず全滅した。

 

「敵勢力殲滅完了。想定していたよりも早く終わった……これもツナのおかげかな」

 

「ひぃぃぃぃ……超怖かったぁ!!! い、生き残れて本当に良かったよぉ……!!!」

 

「………」

 

 怯えの悲鳴を上げるツナヨシに、さしものフィーも無表情を崩し呆れの表情を見せ、彼という人物が今だにつかめずにいる。

 

 さて、トールズ士官学院生の平均年齢を下回る少年少女の二人が共にダンジョンをさ迷っているのか、時間は少しばかり遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『全員揃っているみたいね』

 

 

 金髪の女性からの怒りの平手打ちを受け意気消沈しかけているリィンと、どこか気まずい空気が漂い綱吉は何故こんな状況なったのかいまだ理解が追いつかない中、突如全員から学院の入学が決まったときに送られてきた導力器……戦術オーブメントと呼ばれる小型の機械から声が響きわたる。

 

 その声は教官であるサラであり、そのまま通信越しで彼女から様々な説明を受ける。

 

 

 生徒10人が渡された戦術オーブメントは、エプスタイン財団とラインフォルト社が共同で研究・開発して製作された第五世代型戦術オーブメント『ARCUS(アークス)』。

 戦術オーブメントとは、結晶回路(クオーツ)と呼ばれる石をセットすることでこの世界で"魔法"と称される導力魔法(オーバルアーツ)の使用が可能の他、身体能力や魔法(アーツ)の向上などの恩恵を与えるといった戦闘面に秀でた導力器(オーブメント)である。

 

 一世代前、というかつい最近までの戦術オーブメントは『ENIGMA(エニグマ)』が使用されており、かくいうツナヨシも最近までお世話になった戦術オーブメントだ。

 しかし今回が『エプスタイン財団』だけでなく、帝国で最も巨大な巨大重工業メーカーである『ラインフォルト社』も開発に関わっているということは、この『ARCUS(アークス)』は『ENIGMA(エニグマ)』よりも機能が進化していることだろう。

 

 そんな説明の途中に突如部屋全体が明るくなり、その部屋の片隅に10の台座があり、生徒達が門で預けたそれぞれの得物と初心者用のクオーツが入った小箱が置かれている。教官の指示で一先ず一同は各々用意されたクオーツを各自セットし自身の獲物を確認する。

 

 全員の準備が終わるのを待っていたかのように、突如奥にある石の扉が開かれた。そして再びサラによる説明がはいる。

 

『この先はダンジョン区画になっていて、一応迷路みたいに道は複雑になっているけど無事に終点までたどり着ければ旧校舎の1階まで戻ってこられるわ。まあ、道中に魔獣が徘徊しているから油断せずに向かうことね』

 

『それじゃあこれより、トールズ士官学院特科クラスⅦ組の特別オリエンテーションを開始する。各自ダンジョンを踏破して、旧校舎1階まで戻ってくるように。文句はその後に受け付けるわ』

 

 

 その言葉を合図に、サラとの通信が途絶える。

 いきなりの状況に大半の生徒は少しばかり混乱しており、一先ず全員で集まり意見を交換しようと自然と全員中央へ一か所に集まろうと歩みだす。

 

 そんな彼らに習い、輪を乱さぬようツナヨシも足を動か――

 

 

 

『――一緒に行こ』

 

『――へ?』

 

 ――すよりも早く、銀髪の少女――フィーに右手を掴まれ、綱吉は答える暇もなく二人だけのダンジョンへと繰り出されることになったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツナって何者?」

 

「え、いきなりなんなのフィー?」

 

 道中魔獣に遭遇しながらも危なげなく撃破しながらダンジョンを徘徊している最中、突如フィーからそんな疑問がなげかけられる。ちなみに二人はすでに軽く自己紹介をしており、互いの了承もありファーストネームで呼び合ってる。

 

 フィーが少々強引とはいえツナヨシと共に行動しているのは、単純に興味を持ったからだ。

 彼女の経歴が経歴がゆえに旧校舎に集った生徒達の中では、誰よりも戦い慣れており実力もそれ相応に強い。だからこそ、床のトラップも造作もなく逃れられたし、新入生用に合わせた強さの魔獣も難なく倒せる。

 

 しかし、そんな自分と同じように床のトラップを逃れた男が一人いた。その時点で十分フィーの興味を引いたがそれだけではない。

 

 彼の怯え震えた姿はつい呆れてしまったが、そんな彼の放つ導力銃の弾全ては外れることなく魔獣を撃ち抜いたのだ。情けない悲鳴を上げた姿に誤解されそうだが、あの腕前は明らかに指導を受けた類のもの。

 そして信じ難いことに彼には実践経験があるようにも見える。だからこそ、フィーはツナヨシに強く興味を抱き、こうして彼が何者なのか見極めんとしている。

 

 そんな彼女の問いに一瞬だけ言葉に詰まるツナヨシだが、それを表情にだすことなく極めて自然に言葉を紡ぐ。

 

「何者って……どこにでもいる普通の人間ですヨ?」

 

「……割れる床から逃れた飛躍力といい、弾を一発も外すことなく魔獣を的確に撃ちぬく腕前といい、どう考えても普通というカテゴリーには入らないと思う」

 

 フィーの尤もと言える言葉に、まるで心外だと言わんばかりにツナヨシは表情を崩し――

 

「いやいやいや!! どう考えても俺は普通だよ!! 俺のかて――師匠なら傾いた床でも平然とコーヒー飲みながら突っ立ってられるし!! さっきの魔獣の群れだって拳銃一つで秒にみ満たない一瞬で仕留められるし!! それと比べたら俺なんて………ふっ、普通以外になんと言えと?」

 

「ツナ、目が死んでるよ。そもそも比較の対象がおかしい…」

 

 もしこの場に他の生徒が聞いていれば"有り得ない…"、"人間技ではない…"と意義を唱えていただろうが、フィーはそれについて口を挟まない。

 

 勿論ツナが語る師匠の実力に驚いてはいるが、かつてフィーのずっと傍に、そんな人間離れをした実力を当然のように見せていた規格外の父親をずっと敬愛の目で刮目してきた。

 そしてそんな父親に匹敵する人外に等しい武人達を何人も見てきたからか、そんなツナの言葉をそれなりに信じられた。

 

「ん……。そういえばツナって、私と同じで帝国の人じゃないんだよね。どこから来たの?」

 

「えっと……どこから来たかと言えば、一応レマン自治州から、かな?」

 

「なんで疑問系?」

 

「いやーここ最近は、()()()()()とずっと西ゼムリアの国々を旅して回っていたからね。出身はレマンだけど全然帰れてないし、それにここ数ヶ月の旅の内容があまりにも濃くて……あぁヤバ、思い出すだけでも寒気が…」

 

「ツナツナ、また目が死んでるよ」

 

 まだツナヨシについて知らない部分ばかりだが、この少年の目の光が失うほどの旅路……気にならないと言えば嘘になるが、今このタイミングで聞くのは危険と何故か頭から警報を鳴らしたがゆえか……一旦この話題はやめた方がよさそうだと判断する。

 

「って。俺だけ色々喋っていたけど、そろそろフィーのことも教えてよ」

 

「ん……確かに、私だけ何も教えないのは不公平だね。でもどうせなら、私の正体を当ててみてよ」

 

「えぇ…」

 

 呆れの声が漏れるも、今のフィーは自分から話す気はないようだ。あまりこういうのは得意ではないのだが、ツナヨシは改めてフィーの姿を改めて確認する。

 

 身長は自分とそこまで変わらない小柄な少女。自分も人のことは全く言えないが、見た目だけなら軍事学校で過ごしていけるとは思えない少女だろ。

 しかし、罠を逃れた仕込みワイヤーといい、年上にも勝るとも劣らない身体能力といい、戦い慣れている戦闘術といい、彼女もまた"普通"の学生と言える存在ではない。

 

 どこかの流派を収めた武人…と一瞬思ったが、彼女の得物は銃と短剣が合わさった双銃剣。そんな武器を使った流派など聞いたこと―――それ以前にそんな複雑な武器は、事情がない限り()()()()に流通しない。

 

 いや、そんな思考が浮かぶ前にフィーの武器を見た瞬間から、自身の直感……それにある検討がついていた。

 かつて、どうしても見過ごせない事案に割って入り、()()()()()()()()()()()()()()……彼の部下達が所持していた武器に似ていたのだ。

 

「―――まさか"猟兵"。……いや、流石にそれは――」

 

「……正解。一回目で良く当てられたね」

 

「………―――え?」

 

「だから正解。私はとある《猟兵団》に属していた"猟兵"。今は辞めているから"元"だけど」

 

「はいぃぃぃぃぃぃぃっ!!? フィーって"猟兵"!? というか何普通に答えてるの!?」

 

「――………正解したから」

 

「正解したからってなんでも答えて良いもんじゃないからねっ!!?」

 

 《猟兵》―――(ミラ)次第ではどんな仕事も、それこそ戦争を請け負うことも、敵対する団体の大量虐殺だって躊躇いなく実行できる人に死を与える"死神"。

 そして《猟兵団》とは、そんな"猟兵"が一つの団体に集い、そのなかでも優秀な団体に与えられる称号である。

 全ての《猟兵団》がというわけではないが、多くの《猟兵団》が仕事を行う過程で多くの民間人をも巻き込み多大な被害を及ぼしており、民間人を保護する《遊撃士》とは敵対関係にあり、『リベール王国』などは"猟兵"の運用を禁止するほどだ。

 

「どうせバレるのも時間の問題。ツナなら気付きそうな予感もあったし、早々に正体を明かした方が()()()()()()()()()()

 

「そういう問題じゃ――――って、今は言っても仕方ないか。とにかく!! 余程のことがない限りは絶対に自分から絶対に"猟兵"って言わないこと!! ()()()()()()()()()けど、世間ではやっぱり"猟兵"に良い感情は抱かなからね――わかった?」

 

「………え?」

 

「えっと……どうしたの目を丸くして? まさか……知らず知らずのうちになにか気に障るようなこと言っちゃった!?」

 

「ううん、そんなことはないけど……気にしないの? 私は、元とはいえ"猟兵"なんだよ」

 

 フィー自身、《猟兵》が世間でどのような目で映っているのかは理解しているし、自身の正体を知れば自分から人が離れていくことも安易に予想がつく。

 正直に言えば、ツナヨシに自身の正体を簡単に明かしたのは、自身の心に痛みを与えないための自己保身。

 会ってまだ短いが、フィー自身この少年のことを少し気に入っている。そして時間が経てば良き友人になるのではないか……そんな予感が何故か感じられる。……だからこそ、フィーは早々に自身の正体を明かす。―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……

 なのにこの少年は――

 

「まあ、フィーが《猟兵》であることは驚いたけど……ただそれだけだよ。そんな理由でフィーへの態度を変えたりなんかしない」

 

「どうして……」

 

「それじゃあ質問だけど、仕事や己の私利私欲のためにそれとは関係のない人、それこそ力のない民間人まで巻き込むことを全く厭わない、フィーはそんな"猟兵"だった?」

 

「違う!! 私はそんな事―」

 

「――うん。フィーにその心があると分かっただけで、もう十分さ」

 

 まるで慰めかのように、ツナヨシはフィーの滑らかな髪をした頭を優しく撫でていく。

 ツナヨシの突然の行為に驚くものも、決して不快な気持ちにはならず、むしろ心がポカポカと暖かく感じていく。そう、まるで亡くなったあの父親の暖かさに似て―――

 

「世の中には様々な境遇を抱えている人がいる。誰もが光の世界で真っ当な生を送れるわけではないことを、俺はこの数年でそれを知った。フィーも、なにか理由があって"猟兵"をやってたんだろ?」

 

「――うん……」

 

「流石にそこから先は踏み込まないよ、まだ俺たちは会って間もないしね。でも、もしフィーが話してくれる気になってくれたのなら話してほしい。俺はいつまでも待ってるからさ」

 

「……ん。ありがと」

 

 無表情で分かりにくいが、確かに彼女から嬉しさの感情が湧いていた。

 それを理解すると同時に内心でツナヨシはやってしまったと、少しばかり後悔の気持ちが湧いてしまった。

 

 本来なら知人以上友達未満(ただの仲間)の関係で、()()()()()()()()()()()()()Ⅶ組のクラスメイト達と接するつもりだった。フィーや入学式前に出会ったリィン・シュバルツァーは勿論、他の7名の生徒もだ。

 

 しかし、()()()()()()()()がツナヨシにとって、どうあっても放っておくことが出来なかった。彼の人柄ゆえ、知ってしまい関わってしまった以上、無視することなんて選択肢はないのだ。

 

 ――無表情で平然とした表情とは裏腹に、誰よりも繋がりと暖かさを欲していた……そんなフィーの心を。

 

 

 

「――それじゃダンジョン探索を再開――レッツゴー」

 

「――てはやっ!! ちょ、待ってよフィー!!」

 

「む、私の速さについてこれるなんてやるね。そういえばもう一つ気になっていたんだけど、ツナって歳いくつ?」

 

「と、歳? えっと……14歳だけど、フィーもそれぐらいだろ?」

 

「……勝った。私は15歳、ツナよりも年上――ぶい」

 

「と、年上!!? す、すいませんでした!! そうとは知らずに生意気な口を叩いてしまいまして!!」

 

「別に気にしない。他は知らないけど、そもそも私がいた西()()の団では年上でも年下でも全員タメだったから、ツナも普通でいいよ」

 

「そ、そっか…。それは良かっ――ちょっと待って。今フィーの口から不穏なワードが聞こえた気がするんだけど……西()()?」

 

「あ、まだ言ってなかった。私は属していたのは《西風の旅団》という《猟兵団》だったんだけど、ツナ知ってる?」

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!! 最強の《猟兵団》の一角じゃん!! フィーはそんな団に属していたの!!?」

 

「ツナってリアクションがいいね」

 

 

 表情は他人から見れば無表情と答えるだろう。でもツナヨシの目には、フィーの表情はどこか楽し気に見え、声もまた喜色が含まれてるように感じ取れる。

 

 そんな彼女の姿に、駄目だと分かっていながらも、フィーと距離を置くという考えがなくなっていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、黒髪の人に胸を埋められて喜んでいた金髪の人」

 

「どういう覚え方してるのよ貴方!! それと全然喜んだりなんかしてないから!!」

 

「…む。否定しながらも顔を赤くさせてのこの台詞……セリアから借りた小説では確かこれを――」

 

「えっと、ラウラさん。今のアリサさんに対しては火に油を注いでしまいますので、黙っておくのが賢明かと……まあ、アリサさんがツンデレなのは同意しますけど

 

「うわぁ……リィンさんご愁傷様…」

 

 

 

 あれからツナヨシとフィーは余裕でダンジョンの最奥まで辿り着いた。

 タンジョン自体単純な構造になっており罠や仕掛けもなく、徘徊する魔獣の強さのこともあり難易度は低く、それぞれの経験を積んだツナヨシとフィーにとって造作もなかった。

 本来であればこのまま最奥を突破しているところだが、最奥の部屋の雰囲気はどのフロアよりも重々しく、何よりも()()()()()()()()()()()()()()()()を確認した途端、二人はすぐさま部屋から撤退した。

 

 ()()()()()を看破し、それを配置した意図も理解しやすかったため、他の新入生が来るまで最奥部屋の探索は一時やめておこうということとなった。

 そして、恐らくは大丈夫と思うが他の新入生達が無事に進んでいるのかの確認のため、ツナヨシとフィーは逆走し、その最中でフィーを除いた女子新入生達3人と再会したのだった。

 

 そして互いに挨拶を交わしながら、ツナヨシは失礼にならない程度に3人を観察し考察していく。

 

 

 

「レグラム出身、ラウラ・S・アルゼイド。これから共に過ごすクラスメイト同士、よろしく頼む」

 

 

 ラウラ・S・アルゼイド……アルゼイドと聞いて真っ先に浮かぶのは、エレボニア帝国に伝わる2大剣術流派のひとつである『アルゼイド流』。

 そしてそれとレグラム市と聞けば……レグラムを治める領主、『アルゼイド流』の筆頭伝承者にして帝国最強戦力の一人、《光の剣匠》ヴィクター・S・アルゼイドという名前が浮かぶ。

 

 ラウラは自身は口にはしないが、恐らく彼女はヴィクターの娘なのだろう。

 かの《光の剣匠》の薫陶を受けているのなら、彼女の実力にも納得がいく。身の丈を超える大剣を両手で難なく振るう剣の腕前といい、自分の見立てが間違いではないのなら、恐らく新入生最強の実力だろう。……猟兵として生きてきたフィーでも、真正面からの戦闘では恐らく分が悪いと言える。

 

 そして彼女の人格面だが…それも全く問題ないだろう。貴族出身ではあるのだろうが、彼女からは貴族特有の尊大や傲慢さといった負の面は全く感じず、むしろ良い意味での貴族らしさを感じられるのだから。

 ともかく一緒に過ごす上では今のところ問題はなく、頼りになる年上といえるだろう……癖はそれなりにあるのだろうが。

 

 

 

「アリサ・Rよ。ルーレ市から来たけど、いたって普通の平民生徒よ。2人ともよろしくね―――それとフィーだったかしら? 私は決してあの状況を喜んだりする変態じゃないから、よく覚えときなさい」

 

 

 彼女についてだが、導力弓を得物としておりそれなりの弓術の腕だろうが、実力は正直に言えば一般人よりも強い程度。まあトールズは軍事の士官学校でもあるが、他の分野に力を入れているため気にするほどではない。

 気になると言えば、彼女の家名であるR。アルファベットで自己紹介をしたということは、彼女自身あまり知られたくないことは理解できるゆえ、ツナヨシは一時彼女についての考察はやめる。

 

 そして先ほどフィーから説明を受けたのだが、最初の床の罠で自分が逃れた際どうやらアリサはそれで下へ落下した際、運悪くリィンは彼女の下敷きになってしまい、その時のアリサの状態がうつぶせであったことが災いし、リィンの顔が彼女の胸を埋める形で倒れてしまっていたようだ。そして羞恥心と怒りで感情のままにリィンの頬を叩いてしまったらしい。

 

 事故でわざとではないとはいえ、やはり女性にとっては許し難いことなのため、ツナヨシはリィンに対してご愁傷様としか言いようがない。

 

 だがアリサ自身、時間が経つにつれ自分がしてしまった行為が明らかにやりぎてしまったこと、あれは事故でリィンに全く悪気がない上、自分を助けようとしてああなってしまったことも理解し、リィンに対して申し訳ないと思っているらしい。

 ただあんな事をしてしまった以上、謝るのは気が引けるらしく、先ほどリィンを含めた男子生徒4人と遭遇したらしいのだが、リィンに対して冷たい態度を取ってしまい、謝ることができなく少し落ち込んでいるようだ。

 

 アリサに対してキツイ印象が強かったツナヨシだったが、今の彼女の態度を見る限りリィンと仲直りするのも時間の問題だろう。ひとまず二人の間の溝はできないようで一安心だ。

 

 

 

「エマ・ミルスティンです。辺境出身で奨学金頼りで入学しました。よろしくお願いしますねツナ君、フィーちゃん」 

 

 

 眼鏡と三つ編みが特徴的でオリエンテーリング前での学年主席という情報と、彼女の印象はまさに"優等生"というのがしっくりくる。ラウラやアリサ、フィーと比べて性格は控えめに見えるが、彼女から感じられる優しい雰囲気といい、正直ツナヨシにとってはいてくれて嬉しいタイプの人間だ。 

 武術の経験は皆無らしく、適正があるという理由からラインフォルト社が開発したテスト用の《魔導杖(オーバルスタッフ)》を支給され、それを得物をしているようだ。

 

 どうやら彼女はただの優秀な普通な人間のようだと、安心して気を緩みかけようとしたのだが…

 

(うわー、俺の()()が告げてる…。この人も何かある……それも新入生の中で断トツでヤバいのが…)

 

 幾度もなく自分助けてくれた"直観"にける警報に、ツナヨシは思わずうなだれかけてしまう。取り敢えず現段階では彼女の正体は不明のため、ひとまずは保留にしようと思考を止める。

 

 

 

「さて、挨拶もこれくらいにして本題に戻ろう。ツナ、フィー、そなたらも我らと共に参らぬか?」

 

「そうね。あのアルバレア侯爵の子息様はともかく、貴方達二人はダンジョン探索前に突然いなくなってたから心配してたのよ」

 

「えぇ。その歳でトールズに入学できたと言うことは、ツナ君もフィーちゃんも実力あってのことなのは理解してますが、やっぱり年上として年下の子を放ってはおけません」

 

 分かってはいたが、やはりこの3人は優しい。

 今の言葉に嘘偽りはなく、心から自分達二人を心配してくれていることが分かる。またもやゼムリアの良識人に出会えたことに再び涙が零れそうになる。

 

「ん、気持ちはありがたいけど別に大丈夫。私もツナも自分の身は自分で守れるから」

 

「え…。で、でも――」

 

「それに私とツナ、もう奥まで辿り着いて逆走している最中。今半分の辺りまできてるから、頑張って。じゃ、また後で」

 

「ちょ、フィー!! 勝手に先行しないで!! すいません、お気持ちは大変嬉しいんですけど、まだ男子生徒の皆さんの安全を確認しないといけないしフィーをこのまま一人にしておくのも不安なので、最奥でまた会いましょう!!」

 

 そう一方的に語ったフィーは、階段でしか上がれないような高い上の階層へ脚力による飛躍だけで辿り着き、ツナヨシもフィーの続くように同様に上の階層へと飛躍し辿り着く。

 二人の思わぬ身体能力に驚く3人をよそに、ツナヨシとフィーは奥へと進んでいき、やがて姿が見えなくなる。

 

「い、行っちゃっいましたね……」

 

「こ、小柄とはいえあの高さを……もしかしてあの二人、私達が思っている以上の実力者なの?」

 

「くっ……。見た目だけで判断してあの二人の実力を測れなかったとは……まだまだ未熟者だな、私は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ラッキースケベにあって満更でもなさそうな黒髪の変態」

 

「へ、変態!? ご、誤解だ!! あれは不可抗力であって決して嬉しかったとかそんな――」

 

「僕の目から見ても、リィンとアリサ君のあれは完全に事故だと思うのだが……やはり女子にとっては関係ないということか」

 

「いやマキアスさん。フィーはリィンさんに非がないと分かってる上でいじってるだけです。ラッキースケベとか言ってるし、分かりにくいけど顔も僅かにニヤけてますし」

 

「あ、あはは…。本当にご愁傷様、リィン」

 

「ふふ、全員仲が良くてなによりだ」

 

 

 女子3人と分かれた後、ツナヨシとフィーはユーシス・アルバレアを除いた男子生徒4人と合流。まあ特別オリエンテーリングの説明の際でのやり取りを見る限り、マキアスが貴族の人間と一緒に行動するのはあり得ないだろう。

 

 合流した直後、フィーの発言で一時カオスになりかけたが何とか収まり、女子達同様互いに自己紹介を交わす。

 

 

 

「エリオット・グレイグだよ。よろしくね二人とも」

 

 身長は自分よりも少し高い程度で、女性受けが良さそうな中性的な顔と声帯。何故かツナヨシは彼とは仲良くなるような予感がしていた……色々な意味で。

 まあそれはさておき、"グレイグ"というエリオットの苗字を聞くと、帝国正規軍中将の地位を持ち他国にまでその武勇が知れ渡っている猛将《紅毛》オーラフ・クレイグが思い浮かぶ。

 恐らくエリオットは彼の息子なのだろうが、彼からは戦士としての気配が全く感じられず、戦いに全く縁のない一般人にしか見えない。まあ、軍人のような性格よりは断然接しやすいため、ツナヨシとして問題なしだ。

 

 

「ガイウス・ウォーゼル。ノルドから来た留学生だ。帝国へ来てまだ日は浅いが、よろしく頼む」 

 

 褐色肌で顔も良く高身長、体もそれ相応に鍛えられ、得物である十字槍の腕前から見て、恐らくラウラに最も近い実力者であろう。

 それに加え性格も柔らかく友好的そうで、この人とも仲良くなれそうだと握手をしながらツナヨシは安心感が湧き上がる。

 

 

 

「マキアス・レーグニッツだ、改めてよろしく頼む。それと…初対面でこれを聞くのは大変申し訳ないのだが……二人の身分を教えてはくれないか?」 

 

 最初の第一印象で少々身構えたが、ユーシスの時とは違い至って普通の挨拶だった。

 そしていきなりの質問だが、まあある意味で予想できていた質問だったためか、ツナヨシもフィーも隠すことなく語る。

 

「俺はいたって普通の平民ですよ。そもそもレマンには貴族制度なんてものはありませんしね」

 

「ん、同じく。帝国出身じゃないから、貴族なんて無縁に等しい」

 

「そ、そうか。何故普通を強調したか分からないが、わざわざ済まない。それにしても……僕らよりも年が下にも関わらずトールズへ入学したことにも驚きだが、二人ともガイウスと同じように外国からの留学生だったとはね」

 

「んー、確かに帝国外から来たけど留学生というわけじゃ……ま、想像に任せるよ」

 

「一応留学生ってことになるんですかね? あはは……」

 

「む、何か事情がありそうだな。まあそれについてはとやかくは言わない。だがもし僕でよければ可能な限り力になるよ」

 

 帝国外から来た自分に対して、先ほどのユーシスのように敵意を向けることなく友好的に接してくれる。貴族の件が絡まなければ面倒見がいい良い人……いや、恐らくこれがマキアスの素なんであろう。

 マキアスの言葉に"ありがとうございます!"と礼を言いながら握手を交わしながらも、ツナヨシの内心は冷やせダラダラだ。

 先ほどは思い出せなかったが、"レーグニッツ"という苗字をもつ重要な人物を思い出したのだ。

 

 

 

 数十年前までの帝国は貴族制度が主な"旧き良き伝統"が守られ続けた旧制国家であった。しかし、ある男が政治の舞台に上がったことにより、その情勢が変わり始めているのだ。

 

 現エレボニア帝国宰相、ギリアス・オズボーン。

 

 その圧倒的政治腕を振るい大胆かつ革新的な改革を次々と実現させたことにより、現帝国皇帝から大きな信頼を置かれ、平民出身の帝国民から絶大な人気を誇っている。

 そのため、旧くから続いていた"貴族制度"に亀裂が入り、徐々にそれは広がりつつあっている。……尤も彼が行った改革を起こす過程は決して健全なものではなく、それにより貴族以外にも多くの者から恨みを買っているのだが。

 

 腐敗した旧き貴族制度を廃し、帝国に新たな革新を起こそうとするギリアス・オズボーンを中心とした『革新派』。

 そんな彼らに対し、あるべき帝国の秩序を取り戻そうとする貴族の中でも特に大きな力を有している『アルバレア家』を含めた《四大名門》を中心とした『貴族派』。

 現在その二つの派閥は表立った争いはせず睨み合いが続いている状態だが、それがいつ悪化するのかは時間の問題だろう。 

 

 そしてマキアスの父、『カール・レーグニッツ』。帝都ヘイムダルの知事であり、帝国宰相ギリアス・オズボーンと共に『革新派』の中心人物であり、ギリアス・オズボーンと共に『貴族派』が最も警戒している人物である。

 

 マキアス・レーグニッツとユーシス・アルバレア―――運命の悪戯か、『革新派』と『貴族派』の中心人物の子息達が一つのクラスへと編成される可能性があるのだ。まあ、その運命を操った黒幕を、ツナヨシは知っているのだが。 

 

(『革新派』と『貴族派』の最重要人物の息子を一緒のクラスにするとか、なに考えてるのあの皇子!!)

 

 Ⅶ組のクラス編成の()()()()はかの皇子より聞いていた。だがだからと言ってこんな見るからに色々な意味で相性最悪の二人を同じクラスにするか……と思わずにいられない。

 

 取り合えず、彼ら二人の問題はサラをはじめとする優秀な大人達に任せよう。

 マキアスについては貴族が絡まなければ基本いい人だし、それにどうやら入試の試験は次席で合格したらしく優秀、それに見た目から言って貴族の事を除けば常識人だ。だからこれから起こるであろう、問題(ボケ)に対しての注意(ツッコミ)を彼に任せようと、自分の今までの仕事(ツッコミ)を一時的に休もうとするツナヨシであった。

 

 

「ツナはもう知ってると思うけど改めて、リィン・シュバルツァーだ。これから2年間よろしく頼むよ」

 

「よろしく。……それにしても、リィンは珍しい得物を使うんだね。それ、太刀でしょ」

 

「よく分かったなフィー。帝国は勿論西ゼムリアではあまり馴染みはないんだけどな」

 

 最後はリィン。入学式前から出会ったことから彼の人柄も実力もそれなりに分かるので、他の新入生達と比べて接しやすい。

 それにしても、フィーの言う通りリィンは帝国人にしては珍しい得物を持ってる。自分にとってはそうではないが、リィンの言う通り太刀は西ゼムリアではあまり流通しておらず、主に使われているのは東方――その出身者が多く住むカルバード共和国で主に使用されているらしい。 

 

 そこでツナヨシはふと考えてしまう。

 リィンは一体どういう経緯で太刀を手に入れたのか。軽く話したが、リィンは帝国出身者で今だ帝国の外へ赴いたことは一度もないそうだ。

 

 となれば考えられるケースは外国人から譲り受けたということになるが、一体どういう過程でそんな―――と思考が及んだ瞬間、ツナヨシはある可能性に至った。

 そしてその可能性が正か否か問おうとリィンに対して口を開―――

 

「―――ま、自己紹介はこの程度でいっか。ツナ次行こう」

 

 ――くよりも早く、催促するフィーの言葉にリィンへの問いは一旦止める。別に今すぐ聞く必要もないし、同じクラスになるのなら聞ける機会はあるはずだと考え、まだ出会っていないユーシスへと意識を変える。

 

「ま、待ちたまえ! 次に行くって……また二人で行動するつもりか!?」

 

「そ、それは危ないよ! そりゃあ二人は僕よりも腕はたちそうに見えるけど……」

 

 マキアスとエリオット、そして口には出していないがリィンもガイウスもツナヨシとフィーのことを案じてくれているのが分かる。

 

「おふっ……またもや優しいお言葉を……コホン。気遣っていただけてありがとうございます。本音を言えばこのまま皆さんと一緒に最奥まで安全に行きたいんですけど……後1人、()()()になっちゃったあの貴族様をまだ確認していないので」

 

「「――ぶっ…!」」

 

「ボッチ……? どういう意味だ? あのユーシスとかいう貴族はそんな呼ばれ方をしているのか?」

 

「全然違うからな!!? ガイウスは勿論ツナも、ユーシスの前では絶対に口にするなよ!!」

 

「言うねぇツナ」

 

「ん……ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! なにとんでもないことを口走ってんの俺ぇぇぇぇぇ!!!」

 

 まさかのユーシスボッチ発言にマキアスとエリオットは思わず吹き出してしまい、ガイウスはその言葉の意味が分からず首をかしげ、そんなガイウスと発言者のツナヨシに注意するリィン、フィーは少しばかりニヤッとしており、ツナヨシは本音をポロっとこぼしたことに頭を抱えるなど、中々混沌とした状況になってきた。

 

「そ、それじゃ俺はこれからアルバレア様を探しますのでこれで失礼します!!! 後先ほどの俺の発言は忘れてください本当お願いします!!!」

 

「それじゃまた後で。バイバイ」

 

「ちょ、ツナ!!? フィー!!?」

 

 リィンの静止も聞かずツナヨシは先ほどの発言から逃れるが如く猛スピードで部屋から出ていき、フィーもツナヨシについていく形でこの場を去っていくのであった。

 

 ちなみにマキアスは先ほどのユーシスボッチの言葉が余程ツボに入ったのか今だ笑い続けていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――あ、ボッチ貴族発見」

 

「誰がボッチだ貴様……!」

 

「フィー!! そういうのは思っていても口にだしちゃ駄目だよ!!」

 

「…そもそも先にその貴族をボッチと口にしたのはツナだと思うけど」

 

「ほう…。つまり全ての要因は貴様だということか…!」

 

「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!! す、すいませんでしたぁぁ!!」

 

「……そこまで怯える姿を見ると怒気が抜けていくのだが……」

 

「ツナって面白いね」

 

 あの後、数分もしないうちにユーシスは見つかった。その時ユーシスは魔獣の群れに囲まれており、ツナヨシとフィーはそれらを一掃する形でユーシスと対面を果たし互いに自己紹介しあったのであった。

 

「ふん。俺一人でも事足りる相手だったが、少々助かったのは事実だ。礼は言っておこう」

 

「あ、ありがとうございますアルバレア……様?」

 

「様はつけなくていい、普通にユーシスで構わん。仮にも同じクラスになるかもしれんのだ、敬語や気遣いなど不要だ」

 

「りょ、了解ですユーシスさん」

 

「しくよろ、ユーシス」

 

 大貴族とは思えぬ殊勝な態度に少しばかり驚きながらもツナヨシは少しばかり緊張気味で、フィーは自然体で接する。それに対してユーシスは気にしていないのか何も言わず、ふと疑問に思ったことを口にする。

 

「俺が言えた義理ではないが、お前達は二人だけで行動していたのか」

 

「まぁ…結果的に。本当は団体行動で安全に進みたかったんですけど……」

 

「そだね。最初は私も一人で行こうと思ったけど、ツナの実力に興味があったから」

 

「…ほう。人を見た目で判断するのは愚者の行いとよく言うが……あの床のトラップから皆より遅れて降りてきたといい、魔獣が徘徊するこの区画をここまで疲労もなく来たといい、見た目に反してそれ相応の実力を持っているようだな」

 

「ん、ありがと」

 

「あ、あはは……戦闘面で評価されるのは凄く複雑ですけど、ありがとうございます。で、でも!! 俺は至って普通の一般人なので、そこだけは間違いないようにお願いします!!」

 

「……お前、普通の意味を理解しての発言なのか、それは?」 

 

「ツナって、やけに普通って言葉に拘るよね」

 

 ユーシスが見る限り、見た目だけ言えばツナヨシは普通というカテゴリーに入るだろうが、先ほどの導力銃での瞬く間の魔獣の掃討を見れば、ただの普通には入らないだろう。

 

「ふん…まあいい。それで、お前達はこれからどうするつもりだ? お前達でよければ俺と共に行くことを認めてやらんでもないが。『貴族の義務(ノブレス=オブリージュ)』としては勿論、年上として年下のお前達を導いてやろう」 

 

「是非お願いします!! ユーシスさん剣術もアーツの腕も良いのが分かりますので、そのまま是非俺を守って下さい!! 俺は後ろから応援してますので!!」

 

「ツナがいいなら異論なし。じゃ、私は眠くなったからツナ負ぶって。戦闘と移動は全面的にユーシスに任せるから」

 

「貴様ら『貴族の義務(ノブレス=オブリージュ)』を便利屋と勘違いしてないか!?」

 

 マキアスなら激怒するのが目に見える尊大な発言だが、ツナヨシとフィーは気にせず躊躇もなく己の願望を告げる姿にユーシスは思わず態度が崩れツッコミを入れてしまう。 

 

「貴様ら……もし俺が短気で平民を嫌う貴族であれば、言われもない罪を押し付けられ投獄してるところだぞ」

 

「大丈夫、ちゃんと言う相手を選ぶ目は持っているから」

 

「えぇぇ!!? フィーはともかく俺も何か気に障るようなこと言っちゃっいました!!? すいませんでしたぁ!! どうか投獄は、投獄だけは勘弁をぉ!!」

 

「"もし"もと言ったであろうが阿呆が! 人の話を聞いてるのか聞いてないのか分からん奴だな貴様は…!」

 

 普段のユーシスから考えられない声を上げてのツッコミの数々。

 どうも先ほどからこの二人に出会ってから調子が狂わされる。フィーは面白がってからかっているのがまだ分かるのでやりようがあるが、ツナヨシは無自覚で本人に一ミリの悪意もないため余計に質が悪い。

 

「全く…いくら俺が気にしないとはいえ、俺は『アルバレア家』の人間なんだぞ。平民であろうと貴族であろうと普通なら少しは畏れを抱くとお――」 

 

 

 

「―――いえ、俺はもうユーシスさんに対して畏れなんか抱いていませんよ」

 

 先ほどのようにオドオドしたり畏れ怯えていた姿とは思えないツナヨシの真剣な表情に、ユーシスは一瞬ではあるが気圧され言葉が続かなかった。

 

「そりゃ……最初は怖いって思ったし、関わらないようにしようと思ってたのは事実ですけど……それは俺の思い過ごしでした。『アルバレア家』はまだ知らないから何も言えないけど、他の皆さんと同じでユーシスさんもいい人なんだなって」

 

「……貴様の目は節穴か? 特別オリエンテーリング前の俺とマキアス・レーグニッツのやり取りの光景は見ているはずだ。あれを見て―――」

 

「言動は尊大ですけど、その中には悪気や蔑みの感情は含まれてませんでした。傲慢そうな態度も……その、どこかわざと振る舞っているような感じがして嫌な気分にはならないと言うか……。マキアスさんに対してのあの物言いも、傲慢さからくる物ではなくて……自分にとって譲れないなにかにとって、見過ごせない発言だと感じて……」

 

「……!」

 

「それに、なんだかんだ言ってこうして俺やフィーのことを気にかけて傍にいてくれるし……。まだ全てを理解してませんが……俺にとって大貴族とは関係なく、一人の人間として――ユーシスさんは面倒見がいい頼れる年上のお兄さんと思ってます」

 

「……そだね。私もユーシスに対してそんな感じかな。ツナの言葉に納得がいくのもあるけど、主な理由はカンに近いかな」

 

「……お前達」

 

 二人の言葉に、流石のユーシスも表情を崩し啞然とする。 

 

 

 大抵な人間は初めて出会う他人に対して、見た目や第一印象、そして肩書もしくは世間からの評価や噂によって、人物像を形成する。

  

 特にユーシスは貴族の中でも最上位の公爵家の地位をもつ、『皇帝家に次ぐ権力』と揶揄されるほどの権力をもつ『四大名門』の一角である『アルバレア家』の大貴族の人間だ。 

 平民であろうと貴族であろうと『アルバレア』の名を聞けばある種の畏れを抱き、ある者は関わるのを恐れ距離を置き、ある者は甘い蜜を吸おうと表面上従順しようとする輩が多いだろう。マキアスのように堂々と貴族に喧嘩を売るような発言をする輩は珍しいケースだが、それでも畏れが全くないわけではないだろう。

 

 ユーシス自身、学院生活を送る上でそのような扱いを受けるのは理解してのことだし、そんな連中と馴れ合うつもりはないし、その程度で醜態を晒すような真似は決して起こさない。

 

 現にこれからクラスメイトになるかもしれない連中に対して傲岸不遜に振る舞い、団体行動を乱すかのように単独でこの区画回路へと入り込んだ。勝手な行動をしてしまったことに対して申し訳なさを感じる程の良心はあるが、それでも自分との関わりが今後出さぬことを考えると別に越したことではない。

 必要最低限の付き合い程度はするが、それ以上の関係性になるつもりなどなかった。

 

 だが、そんな自分を見透かすかのように自身が抱える心情を、この少年は惑うことなく言った。陰謀や悪事などが絶えず蔓延る貴族界でそれ相応に生き鍛えてきた自分と、出会ってまだそんなに経っていないにも関わらずにだ。

 驚き、感心、そして畏れ。ユーシスがツナヨシに対して抱いてしまった心情であり、思わず警戒心が生まれてしまう。しかしそれは徐々に薄れていき、今は何故か安心感が湧き出てくるのだ。

 

 彼の言葉に嘘偽りといった負の感情がない本心であるからなのか、それとも最初は演技と一瞬疑った彼の怖がり屋と今の真剣な表情とのギャップからなのか、それとも……

 

 

「あ、あれ…? どうしましたユーシスさん?」

 

 こちらが黙ったままなのか、真剣な表情は崩れ先ほどの優柔不断な不安の声質が耳に届く。その瞬間、ユーシスは考えるのを止めた。

 

「ま、まさか俺とんでもなく失礼なことを!!? すいま――「やめろ阿呆が」――いてぇ!!」

 

 再びの謝罪の言葉を、ユーシスが手刀でツナヨシの頭に振り下ろしたことで遮られる。

 

「謝り続けるのが癖になっているのか知らんが、その行いが逆に人を不快させることもある。今後は注意しておけ。それと、俺は別に怒ってなどいないから気にするな」

 

「す、すみませ――じゃなくて。あ、ありがとうございます…?」

 

「ふっ。礼を疑問系で言う奴があるか、阿呆め」

 

 呆れながらも、ユーシスの表情は先ほどと比べ柔らかく感じる。

 彼らとこの場で出会ったことでいつもの調子が狂い、大貴族としてではなくユーシスという一人の人間の素を晒してしまった。

 

 今だツナヨシもそうだが、大貴族である自分に全く物怖じしないフィーに対して、正体が気にならないと言えば嘘になる。

 だが、彼らとのやり取りは今だ理解できないが、悪い気分ではない。自身が尊敬し目標としている兄とまでとまではいかないが、実家である『アルバレア家』よりは遥かにマシと言えるほど。

 

 正直このⅦ組というクラスは詳細は今だつかず他の生徒達もただの学生とは言い難い者達も何名かいるが、貴族しか所属しない貴族クラスに属するよりはこのクラスに属するのが何かと都合がいい。

 そして、彼らもいるのなら面白味もないと思っていた学院生活も、少しは退屈はせずにすみそうだ。

 

 

 

 やがて3人は一緒に行動することとなり、途中で魔獣と遭遇しながらも危な気なく最終区画まで進んでいくことになる。

 

 

 そして終着点に近づくにつれ―――激しい戦闘音が鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




Q:なんで死ぬ気モードじゃないのに、ツナは戦えてるの?

A:この世界のツナはリボーンからから直々に銃についての教え(スパルタ)を受け、更に今までの地獄のような修行のかいがあって、通常状態でも今のⅦ組に混じって戦闘できる程度の実力があります。


Q:ツナがトールズに入った理由は?

A:話が経つにつれ分かっていきます。次回の話でそれが少し分かるのでお楽しみに!



 今年は2回しか投稿できず、本当にすいませんでした!! 来年はなんとか多く更新できるよう頑張ります!!

 来年は軌跡シリーズ最新作、カルバード共和国が舞台である『黎の軌跡』。情報では初登場キャラクターが全体の9割なので、どんなキャラが出るのか、声優さんは誰になるのか凄く楽しみです!! そして《黄金蝶》さんと《破戒》さん、貴方達今度こそ出ますよね! ね!!
 大晦日はFGOの特番を見ながら年を越すつもりです。それでは皆様、こんな自分ですが来年もよろしくお願いします!!

現状この小説の1話の文字数は8000~17000文字ありまして、更新速度を速めるため文字数を5000~6000に減らして話数を増やすのか、現状維持のままでいいのか――ご協力をお願いします。

  • 文字数5000~6000字で更新速度UP
  • 文字数8000~17000字で現状維持
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