あの日、ホウエンに星は落ちた   作:ラピリー

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衝動で書いた。
続かないかもしれない。


EP1:エピソードΔ

不意に、延々と降り続けていた豪雨がピタリと止んだ。

ついさきほどまで鉄砲水のような大粒の雨に打たれながらも、この物語の行く末を眺めていた私は空を見上げる。

 

空を見上げれば、先程まで空を覆っていた分厚い暗雲が少しずつ散っていく。程なくして青空が見えるだろう。同時に、反対側で大地を焼くほど照りつけていた太陽も光を弱めていく様子が分かる。

 

 

「……はぁ、失敗したか」

 

半年かけて仕込んだ計画が水の泡なったと知り、ため息を吐く。

確かにこの結果は可能性のひとつとして考えていた事だった。でも、チャンピオンが直接邪魔しに来るわ、報告に上がっていた子供が実は二人だっだわと本当に予定外の事が起こりすぎている。

 

どういう訳か海底遺跡へ直接出向いてきたチャンピオン相手に時間稼ぎする羽目になるし、なんとか撒いたと思えば団員から忘れ去られ潜水艦に乗り遅れてしまうなど最悪だった。

 

私には利害の一致する協力者が一人いる。だから、本当なら協力者と共にイレギュラーを排除するべく動ければイレギュラーにも対応できたと思う。けれど、残念ながら私と協力者は、初めて会った当時には既に相対する組織に潜入していた。

 

組織はいずれ抜けるつもりだったけれど、所属する組織と敵対する組織の一員と連絡を取り合っていると万が一にも勘づかれてはならなかった。下手すると目的を達する前に自分が舞台から退場しかねないのだ。だから、協力者とは本当に必要最低限の連絡しか取り合えなかったのだ。

 

お互いの持つ情報のすれ違い。これも計画失敗の一因だろう。

 

後はやはり、一つの地方を私情で大混乱へと陥れる事を躊躇し、無意識に手心を加えてしまったか……。

 

ある地域では止まない雷雨と暴風による洪水が起こり、ある地域では夜でも登り続ける太陽によって未曾有の干ばつが引き起こされた。その両方の見舞われた災害の中心地であるルネには悪かったと思ってるし、下手すればホウエン地方が滅びてしまっただろうから罪悪感が無いわけでは無い。むしろ少しだけ心は痛む。

 

ニュース欄に流れる各地の災害による被害状況を一通り見ていると、マルチナビが何度か震え――電話がかかってきた事に気づいた。

私のマルチナビには一人しか登録されていない。だから、相手が誰なのかなんて分かりきっている。

 

《あ、繋がった繋がった。ずっと連絡が取れなかったから心配したんだよ?》

 

本当に心からこちらを心配するような声で協力者が言う。

私は何も問題ない旨を協力者へ伝える。あちらもなんとか五体満足で離脱できたようだ。

 

《じゃあ早速本題に入ろうか。もう分かってると思うけど、超古代ポケモン2匹をぶつける作戦は失敗だよ》

 

やはり、止めたのは例の子供なのだろうか。そう聞けば、協力者は肯定する。

 

《うん、もしかすると将来のチャンピオンにだってなれる逸材だとは思ってたけど、まさか伝説のポケモンをたった一人で鎮めるなんてね。これは流石のわたしも創造力が足りなかったかな》

 

四天王やジムリーダーは何やってたんだ、と問いかけたい。トレーナーになって一年も経ってない子供に全部任せるな。あんなのジムリーダーが総出でかかっても抑えられるか怪しいのに。しかもゲンシカイキ?とかいうパワーアップまでしていた。2匹共。

下手したら死んでたぞ。

 

《それはまあ、思うところがない訳じゃないけど》

 

あそこまで上手くいっといて失敗するとか、何か運命力的なパワーを感じる。

 

《もー、何のためにあんな臭くてダサい衣装着て面倒な任務とやらをしたと思ってるのさー!火山へ駆り出された時なんて暑いし灰まみれになったし最悪だったよ!》

 

うがー、と愚痴る協力者。そういえば、その頃の私は119番道路にある天気研究所の占拠作戦の準備をしていた気がする。

 

自分達の目的、正体、掴んでいる情報の一片たりとも漏れて無いのだから全く問題ないだろう。そんなニュアンスの事を言い、荒ぶる協力者を電話越しに宥めておく。

 

一番ダメージがデカイのは散々利用させてもらったあの超過激自然保護団体2つとホウエン地方の環境だろう。

今後しばらくホウエンの経済が傾くのは確実だ。

 

《じゃあ、第二の計画へ移るけど……変更はないつもり。手順や詳細は前に説明したけど、大丈夫かな?》

 

それはこちらも問題ない。

次の計画の要であるキーストーンなる戦闘限定の進化の石、のような物を集める。手段は問わず、数は多ければ多いほど良い。

 

《うんうん、分かっているなら良いよ。入手の手段は奪う、盗むが基本になるだろうけど……やり過ぎないようにね。キミは立場が立場だから気持ち的には分からなくは無いけど》

 

どうやら私の思考は読まれていたらしい。

忠告されなければ、最初から最後まで暴力に訴え奪い盗るつもりだった。まあ、仮に事情を話したところで所持者達が素直に渡してくれるなんて考えてもいない。どうせ貴重なキーストーンを盗むための嘘だと思われるに決まっている。

 

心配せずとも、件の竜神サマが目の色変えて飛び付きたくなるくらい大量に集めてやろうではないか。

 

《へぇ、言うじゃない。じゃあ期待しているよ、協力者くん》

 

そちらこそ頼むよ、協力者――いや、ヒガナ。

 

会話を終え、ポケナビの電源を落とす。

 

それにしてもこのマルチナビは本当に性能が良い。機能もポケモンの分布データまで入ったマップ、サーチ機能、テレビナビにスパトレなる特訓機能と幅広い。一部の機能はカロス地方の発明家の研究を参考にしたとか、してないとか。

 

何にしてもアレだ。かがくのちからってすげー。

少なくとも、私の子供時代にはこんな便利なアイテムは存在しなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、108番水道。

その半身を海に沈める巨大船、シーキンセツ付近の砂浜にて、二人のトレーナーがバトルを繰り広げていた。

 

 

「ヘルガー、『かえんほうしゃ』」

 

「馬鹿め、炎が水に勝てるかよ!ヤドラン、『ハイドロポンプ』で迎撃しろ!」

 

ヘルガーの口から発射された炎は相手の放った『ハイドロポンプ』とぶつかり合う。しかし拮抗したのは数秒だけ。押し勝った炎は慌てて逃げようとしたヤドランを飲み込んだ。

 

普通なら『かえんほうしゃ』が押し負けると思うだろう。

だが、これは『にほんばれ』と大量に積まれた『わるだくみ』で強化された『かえんほうしゃ』だった。その威力は例え苦手である水タイプすら容赦なく焼き払い、瀕死にまで追い込める。

 

「なっ!こっちはメガシンカしたんだぞ!?なのに何で……!!」

 

現実を受け止めきれないエリート風のトレーナー。

その腕には目的の物であるキーストーンが縫いつけられた手袋を嵌めてあり、まさかストーンに不具合が!?と自分の実力不足を認めず喚く様はいっそ憐れでしかない、と彼女は嘆息していた。

 

「さ、どうする?負け、認める?」

 

「ふ、ふざけんな!俺はまだ負けてない!」

 

「俺は……ね。じゃあ、そこのヤドランに聞こうか。君は、まだ戦える?」

 

地面に倒れ伏したヤドランは震えながらゆっくりと顔を上げる。

その目にあるのはたった一撃、それも不利な技でメガシンカした自分を叩きのめした、ただのヘルガーとそのトレーナーに対する恐怖だった。

 

トレーナーは「まだ立てるだろ!お前なら出来る!」と励ましの言葉を送っているが、現状では逆効果である。

ここで立ち上がるという事はつまり、目の前に立つ黒い悪魔の炎に再び焼かれる事を意味するからだ。

 

ヤドランは思考する。

主人の力になりたい。負けたくない。

けれど、けれど――

 

自分はたった一回の『かえんほうしゃ』で瀕死寸前となった。

なら、もう一度まともに受けてしまったら?

ふらつく身体で避けられるか?

今の体力で耐えられるのか?

 

ヤドランには、出来なかった。

 

 

 

 

「……そんな、ヤドラン!?」

 

体力的に既に限界であったヤドランは、未だ激励の言葉を送り続ける主へ悲しそうな顔を向けると、そのまま意識を手放し貝の鎧をまとったメガシンカ形態から元の姿へと戻ってしまう。

 

ポケモンは道具じゃない。

意思、感情を持ち、思考できる生命だ。これが物言わぬ機械であれば四肢がもがれようと命令のままに、粉々に壊れるまで戦えただろう。しかし、一個の命である以上はどんなポケモンだろうと必ず限界がある。

 

体力も尽き、心は折れた。なら、もう戦えないだろう。

 

「さて、勝敗もついた事だし、早速キーストーンを渡して貰おうか」

 

「だ、誰がお前なんかに!」

 

「……はぁ、最初に約束したよね?この勝負に勝ったら私は君のキーストーンを貰う。君はこのメガストーン…だっけ?これを譲る。負けた奴がうじうじするな、さっさと渡せ」

 

彼女は呆れたようにため息を吐く。

 

「ウゥゥゥ!!」

 

いつまでもキーストーンを渡さないトレーナーの態度に業を煮やしたのか、彼女の隣に寄り添っていたヘルガーが牙を剥きながら唸り声を上げる。口からは火の粉を漏らし、今にも飛びかかっていきそうな様子だった。

 

「ヒイッ!」

 

「ヘルガー」

 

さっきよりも更に低い声に、トレーナーは顔を真っ青にさせる。

こいつは本気だ。ヤドランと同じ目にあいたくは無いだろう?だから、さっさと寄越せと、そう言っているのだ。

こんな冷たい目をできる奴だ。きっと、もしもう一度問いかけて自分が即答しないのならば、今も火の粉を散らし続けるヘルガーへこう命令するだろう。

 

焼き払え、と。

 

 

「わ、分かった。渡す!渡すから、だから…命だけは……」

 

「いらないよ、そんなの。石だけで良い」

 

顔をひきつらせたトレーナーは遂に屈し、外した手袋を恐る恐る差し出した。最初から素直に渡してくれればヤドランが傷つくことも、怖い思いもしなくて済んだのに。ぶつくさと内心で文句を言いつつ、手袋を受け取った。

 

回収したキーストーンを確認すると、懐の小袋へと仕舞う。そして、次のターゲットのいる場所へと移動しようとして、思い出す。

 

「ああ、忘れる所だった」

 

鞄から小さな包みを取り出し、地面に座り込むトレーナーへ投げつける。てっきりキャッチするかと思ったのだが、呆然としていたトレーナーは飛来物に反応できず、投げた包みが顔面に直撃した。

 

固いが、そこまで重量のある物では無かったので、トレーナーの額がやや赤くなっただけで傷はない。

 

「あー……中身は『げんきのかけら』と『まんたんのくすり』だ。ここからポケモンセンターは遠いからね。野生のポケモンに襲われたくなければ、意地を張らずに使うことをオススメしよう」

 

しばらく意味が分からないと呆けていたが、敵に情けを掛けられたと理解したのだろう。トレーナーは顔を真っ赤にし、去り行く彼女の背中へ思い付く限りの罵声をありったけ浴びせた。

 

何と言われようが響かない。敗者がどれだけ正義や正論を振りかざしたとしても、勝者からすれば所詮は負け犬の遠吠えでしかない。彼女は後方で怒鳴り散らすトレーナーを無視し、今度こそ次のターゲットの元へと移動を開始した。

 

 

その後も何人かのトレーナーを狩り、同じようなやり取りも何回もした。ポケモンとトレーナーを心身ともにボコボコにし、追い討ちで脅しをかけてから戦利品を頂く。去り際に情けと施しを与え、「人でなし」と罵声を浴びせられるまでがワンセットだ。

 

この日の戦果は3つ。こんなものじゃ全然足りない。通話越しにあれだけ大見得を切ったのだから、せめてこの10倍は欲しいところだ。

 

空を見れば、太陽はもう沈み始め周囲も暗くなり始めている。

できればもう2、3人ほど狩りたかったと思うも、指示を出すだけの自分はともかく、実際に戦い傷を負うポケモン達の負担は減らしてやりたかった。

 

周囲に人の気配が無いのを入念に確認をした所で、ボールから出したポケモンに乗って赤みを帯びた空へと飛び立つ。

 

 

明日もまた、トレーナー狩りを万全の状態で行えるように。

彼女は休息のため己の拠点へと姿を消した。

 

 

 




原作との相違点

・オリキャラとヒガナがそれぞれの潜入した先で唆した為、エメラルドのようにアクア団とマグマ団の両方が超古代ポケモンの復活に動く

・悪の組織が2つあるため、ハルカとユウキでW主人公的な扱い。流石に一人任せは無理。

・オリキャラの行動の影響で海底洞窟に、早い段階でチャンピオン乱入。




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