名前:
個性:マリオネット
想像したものを実体化する事ができる
ただし人形に限る
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1* 触れられない友達
───憐憫一族
その言葉を聞けば誰もが表情を変える
憐憫一族は世界トップクラスに君臨する有名な財閥で
そのひとり娘である私のまわりには、
今日もメイド服を身にまとった使用人がいる
私の朝はメイドさんの「お目覚めくださいませ。」で始まる
気怠けな返事を返せば
コンコンコンと規則的な律動の後、ガチャリと木製の扉が開きひとりのメイドさんが入ってくる
メイド「おはようございます、怜音お嬢様。
今日のお召し物はこちらです。」
未開封の複数個の箱を手渡され、メイドさんは部屋を後にした
手渡された真新しい箱を天蓋付きベットへ乱暴に放り投げる
周りには同じく未開封の箱が転がってる
そのほとんどはごっこ遊びのセットで占められている
おおよそ床の半分を埋め尽くすおもちゃを蹴り飛ばさないように天蓋付きベットに向かい、ダイブする
ふかふかのベットで身体か沈む
天井を見上げれば豪華に装飾されたデザインが目に入る
他にもバルコニーがあったり、宝石がちりばめられたドレッサーもある
でもそんなのはただの"お飾り"に過ぎなかった
何かが吹っ切れたように、勢いをつけて身体を起こし、個性を使ってお人形さんを作り出す
この子の名前はエリカ
庭に咲き乱れるツツジの名前から取った
怜音「エリカ!今日は何して遊ぶ?」
エリカ「なりきりごっこしようよ!」
エリカの提案でそこらに転がる箱から真新しい服やアクセサリーを取り出し、彩っていく
おもちゃのティーカップを持ってお姫様ごっこをする
エリカといる時、1番落ち着けて素直になれる
お父様やお母様とか、堅苦しい言葉を使わなくてもいい
本来の10歳の自分を楽しめる
夢のような時間はとてもあっという間で部屋の壁にかけられた鳩時計が12時を知らせる
鐘がなり終わる頃、再び扉がノックされた
この時間になるとメイドさんが部屋までお昼を持ってきてくれる
はぁい、と無機質な返事を返し片付けを始める
エリカと一緒に、開封された箱を部屋の隅に寄せて食べるスペースを作る
箱を積み上げてる時、エリカがおもちゃに足をぶつけ
前のめりに転んだ
床に散らばってたおもちゃや服を箱にしまってた私は思わず手に持ってたものを投げ出してエリカのそばまで駆け寄る
怜音「エリカ!大丈夫!?」
エリカ「えへへ…、ごめんごめん。」
床に倒れ込むエリカに笑いを飛ばしながら手を伸ばした
*
…つもりだった
私の手は虚しく空を切った
───嗚呼、まただ
目に溜まった涙を隠すようににぃ、と無理やり口角を上げて笑いを貼り付ける
怜音「あはは!忘れてたよ」
エリカ「………」
いつものように『ごめんね』と小さく呟くと
周りの情景に馴染むようにエリカは消えた
エリカは友達、触れられない幻の
触れられる友達が欲しくても"憐憫一族"、
その肩書きだけで重苦しい空気が流れる
もちろん学校では自分が一族であることは隠してた
でも隠しきることは出来ず、うっかり作ってしまった隙間から本来の自分の姿が晒されてしまった
それから友達も先生もみんな
ビクビクしながら、ひとりまたひとりと
私の周りから離れていった
みんなの1歩引いた扱いから逃げるように私は学校を辞めた
正確には不登校って事
学校にいても誰も普通に接してくれない
高貴なお姫様のように扱うみんな
それに耐えきれなかった
お父様とお母様はその事を知らない
この家にいるのは私と数人のメイドさんだけ
時折、帰ってくるが知らない女の人・男の人を連れて帰ってきては身体をを重ねる
お母様とお父様は互いに不倫している
お母様が不在の時にお父様は女の人を連れて自室に
こもり、一通りを終えるとまた家から出ていく
お母様もお父様が家をあとにしたのをわかってるのか
いつもお父様が去ってから男の人を連れて帰宅する
2人とも帰ってきては私の部屋に来て毎回おもちゃを
手渡して言葉を交わすことなくどっかに行く
同じ家にいても顔すら合わせることない日々が
何年か続いている
私の個性(マリオネット)を知ってか、いつも二人分のおもちゃをプレゼントしてくる
ふたりがいつもおもちゃをお土産に帰ってくる理由は
だいたい理解できるようになった
─────私を閉じ込めるため
一人っ子の私にふたり分のおもちゃを手渡しておけば
必然的に個性で人形を作り出す事になる
そしておもちゃで遊んでいる間に自分らも遊ぶ
その邪魔をされたくないから部屋に押し込める
もう私は子供として見られてない
2人から見て私は"邪魔者"
与えるものだけ与えて閉じ込める
いつしか私まで"架空のお人形さん"になっていた
もう一度さっきとは違うドール人形を作り出して
ひとりで2役を演じながら動かしていく
何も楽しくない
感情なんてなく、ただ黙々と同じ動きを繰り返す
時間が過ぎていくのを待つ
日が傾き、闇夜が部屋を包む
電気もつけずノック音に反応して用意されたご飯を
口に運んでまたお人形さんごっこを続ける
眠気が来るのを待つかのように