戦車乗りの憤怒   作:タンカー・ウルティマ

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被弾が怖くて戦車に乗れるか。

 被弾が怖くて戦車に乗れるか。

 

 彼はそう言って、爽やかな笑顔で我々の盾となった。難攻不落の鉄壁の要塞と化した彼は、笑い声を上げながら、次々と被弾、炎上しながら同じ数だけ殴り倒していく。

 

 そして、彼は死に際に叫んだ。

 

 死を恐れるな、死した者を越えて、必ずや仲間が勝利を勝ち取ってくれる。決して、断じて無駄な死ではないのだ!と。

 

 爆発炎上する彼の車輌に、生存者などいるはずもなく。燃え尽きる車輌を越えて、我々は雪崩れ込んだ。

 

 試合の後に、彼に聞いてみた。怖くないのかと、悔しくはないかと。すると、彼はこう答えた。

 

 もし、被弾が怖かったり、被弾してイラつくのなら、君は戦車乗りやこの手のゲームには向いていない。なにせ、こういうゲームは被弾してもなんぼのもんじゃいと進んで相手を殺さなきゃならない。悔しいのなら、その悔しさを持ち続けて、正しくバネにするといい。変な方向に舵を切って、芋りや煽り屋になられては困るからね。

 

 彼はこうも付け加えた。

 

 戦車なんて、撃って撃たれて。お互いにお互いの弱点をド突き合うんだから、撃たれたところでダメコンはコッチの仕事なのさ。後は……そうさな、自分が撃てるときは相手からも撃たれる時だってのを覚えておくといい。決して優位な環境など無いと知れよ。

 

 その後、彼と出会うことはなく、戦場の一欠片と消えていった。彼の名を検索してみても、引っ掛かるのは歴史の波間。恐らくは繋がりが無いのだろう。

 

 とは言え、かれの言うことは十全に理解できた。俺は、別段被弾が怖いとか、そういうちんけな考えを持つことなんてほとんど無い。あるとすれば、乗員が丸出しなのに機関銃が牙を向く時だ。撃たれれば、死ぬ。撃てば、殺す。単純明快かつ至極当然な過程だが、その過程をどれだけ複雑にしてどれだけ自分に優位な過程とできるかで勝敗は決する。

 

 だが、自分一人で戦局をひっくり返せる者など、そうはいない。故に、味方を信じるほか無いのだ。例え、後ろの方で籠っている味方が居たとしても、仲間が全滅すれば残党狩りに合うのはその味方だ。例え、勝つために行動する味方が居たとしてと、その行動について行く者がいなければ無駄死にである。

 

 例え、戦局が絶望的になっても。誇りの問題になるだけだ。コソコソと逃げ回り、隠れている所を引きずり出されて嬲られるか。せめて一矢報いよ、興廃はこの突撃に有り。とするならば何時か英雄的な所業を成し得るだろう。

 

 だからこそ、彼はこういったのだ。被弾が怖くて戦車に乗れるか。

 何時か、味方と共に横隊を組んで突撃してみるといい。人間の本性と蛮勇が試されるはずだから。

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