GOD・A・LIVE 〜雷神と宇宙の欠片達〜   作:青空と自然

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第23話 近づく期末試験

「それでそれで?」

「この写真は〜」

「一体どういうことで?」

「え、ええっと……」

 

 目をキラキラと輝かせて詰め寄ってくる3人に、ステラは困惑していた。

 先日、ようやく学校生活に復帰したステラ。勉強などはリアやクラスメイトに助けてもらい、何とか追い付こうと頑張っている状況である。

 そんな彼女だが、昨日は久し振りに外出をした。ソーに誘われたのだ。ステラがその誘いを断るはずもなく、その日はウキウキで出掛けていった。

 街を歩き、昼はファミレスに入り、夕方は景色を楽しみ、思えば今までの記憶の中でも最高の思い出だっただろう。だがいつもよりテンションが高くなっていたため、注意力が散漫になっていた。そのためステラは自分達が周りに見られているという事を忘れてしまっていたのだ。

 

 そして仲良く歩く2人をその時背後から観察していたのが隣のクラスの仲良し3人組。亜衣、麻衣、美衣である。

 ステラはこの3人とは十香繋がりで友達になった。これまでは十香の恋路を応援する3人の手助けなどもしてきたのだが、まさか自分がその対象になるとは……。

 

 目の前で表示されている写真は一体いつ撮ったのだろうか。場所から考えるとお昼を食べた後だろう、一番気分が高揚していた時だ。

 

「それで? この背の高いイケメンはどこの誰なの?」

「もしかしてステラちゃんの彼氏⁉︎」

「知らぬ間にいい男を引っ掛けてるとは」

 

 3人して食い入る様にステラに詰め寄ってくる。

 

「ううえぇ⁉︎ べ、別に彼氏とか、そんなんじゃ……」

 

 咄嗟に否定しようとするがだんだんと赤くなって声が萎んでいってしまう。

 

「ほほぉう」

「なるほどなるほど」

「つまりこれは……」

「「「恋ですな」」」

 

 3人の声が見事にピッタリと揃った。

 

「あうぅ……」

「こらこらあんた達、ステラを虐めないの」

 

 そこへその様子を見かねたリアがやって来る。

 

「おお、お姉様のご登場ですよ」

「お姉様から見たステラちゃんの様子はいかがでして?」

「この男の人との関係は?」

 

 すると今度はリアの方へと話を聞きに3人は詰め寄っていった。

 

「まったく、元気だよなあいつらも」

「シドー、ステラは誰かに恋をしているのか?」

「あー、それは俺からは言わない方がいいと思うから、本人に聞いてくれ」

「そうか! 今度聞いてみるぞ!」

「あ、あはは……」

 

 心の中でごめん、と謝る士道。

 彼女が自分の心の内を明かさない限り、あの様にして恋に興味津々な人たちにいつまでも詰め寄られるのだろう。

 

「もうすぐ修学旅行か……」

 

 すでに7月に入った今日この日。来週は期末試験があり、それが終わったら修学旅行を経て夏休みとなる。

 士道は初めて行く沖縄の事を色々と想像してみる。やはり海は綺麗なのだろうか。そんな事を考えていると誰かに背中を思い切り叩かれた。

 

「よう、セクシャルビースト五河。今日もやってるかい?」

「いっつつ、何すんだ!」

「何だよ、ちょっとした挨拶じゃないか。そんな事より、もうすぐ修学旅行だぜ。青い海、白い砂浜、そして輝く女子達の水着姿!」

「はいはい、分かったから落ち着け」

「くうっ! どうして五河の周りには十香ちゃんや鳶一さんの様な花がいるのだ。クソッ、クソッ! 砂浜に埋めてやりたい」

「本人の前で言うなよな」

 

 士道の前で涙を流しながら机を拳で叩く殿町に士道は苦笑する。しばらく泣いていたと思っていた殿町だが、すぐさま顔を上げると無駄にキリッとした表情になった。

 

「だがまだ隣のクラスがある!」

 

 先程とは一変して希望に満ちた雰囲気を纏った殿町はあれやこれやと修学旅行に対する決意を語り始め、それにウンザリした士道は1人熱く語る殿町を残して教室を出るのだった。

 

 

 

 

「それにしても、ステラちゃんが恋ねー」

「周りはみんな青春してるのね」

「マジ引くわー」

 

 3人に詰め寄られたリアにあっさりと自分の心情をバラされたステラは抗議の視線を向ける。

 

「ちょっと、リア!」

「別にいいじゃない、いい加減はっきりさせなさいよ」

「うう……」

 

 そんな時、亜衣がふとなにかを思い出したかのように呟いた。

 

「それにしても、この写真の男の人、どっかで見た気がするのよね」

「「え?」」

 

 亜衣の発言にステラとリアの声が重なる。

 

「どこかでって、街とかじゃなくて?」

「いや、そうじゃなくてさ……何処だったかなー」

 

 うんうんと唸りながら思い出そうとしている亜衣。しばらくして思い出したのか、ばっと顔を上げると高らかに叫んだ。

 

「そうだ! この前のテレビ番組よ!」

「テレビ番組?」

 

 なぜソーがテレビ番組に出ているのか、まったく見当が付かないステラとリアは2人揃って首をかしげる。

 

「確か、地方で高齢者の畑仕事を手伝ってる気前のいい男性って紹介されてたんだけど……みんなは見てないの?」

「私は……」

「見てないわね」

 

 ステラとリアは揃って否定し、麻衣と美衣は指でバツを作る。

 

「あいつがテレビ番組? 一体どう言うことかしら」

「力持ちで優しいから、地方では畑のヒーローって人気者らしいわよ」

 

 そんなテレビ番組がいつ入っていたのか知らないリアはスマホを取り出して調べ始める。

 そして検索をかけてみると本当に畑のヒーローというタイトルとともに何件もの情報がヒットした。

 

「げっ、本当にあるじゃない」

「見せて見せて!」

 

 ステラがスマホの画面を覗き込む。

 

「じゃあ、ステラちゃんの彼氏は畑のヒーローってこと?」

「何それ、有名人が恋人ってこと?」

「マジ引くわー」

「だ、だから、恋人とかそういうのじゃ……」

「あんなことまでしたのに?」

「「「あんなこと⁉︎」」」

 

 リアの一言に3人が一斉に反応した。

 

「ちょ、ちょっと、リア!」

「何よ、私の前でイチャイチャして。こっちの身にもなってみなさいって話よ」

「お姉様、その話、詳しく」

「ステラちゃんが大人に⁉︎」

「お姉様、ご愁傷様です」

 

 もうすぐ終わる昼休みは、まだまだ盛り上がりが止まることを知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、なんであなたがテレビに出てるのかしら?」

「ああ、それか。以前畑を手伝っていた時に変なやつらが集まって来てだな、取材が何とかと言っていたから答えてやっただけだ」

「ふんっ!」

「いっ⁉︎」

 

 呑気にそう返してきたソーに琴里は回し蹴りを容赦なく叩き込む。

 

「痛ってぇ! 何しやがる!」

「バカなの? ねぇ、あなた、本当にバカなの?」

「な、何がだ」

「あれだけ目立つなと言っていたのに、こんなテレビ番組に出てどうするのよ! お陰で全国に知れ渡っちゃったじゃない!」

「その脳筋に何を言っても無駄よ。諦めなさい」

 

 激昂する琴里をリアが宥める。

 

「まったく、これで変なやつらが嗅ぎつけて来てもおかしくない状況になったわね」

「別にただ質問に答えてやっ「黙りなさい」」

 

 もはや発言権すら与えられていないソー。

 

「ま、まあまあ、過ぎたことは直せないんだし、これからどうするか考えようよ」

 

 ステラは頼りないフォローを、リアはやれやれと呆れている。そこへその様子を見ていた士道が口を開く。

 

「なあ、要するに一番目立つとまずいのはこの2人なんだろ?」

 

 そう言ってステラとリアの方を見る。

 

「まあ、そうね。2人の力が誰かに知られれば、ロクでもない問題が舞い込んでくるからね」

「だったらソーの方に注目を集めておいて、こっちの2人を隠れさせるってのはどうなんだ?」

「それで簡単に目くらましができるのならそう苦労はしないのよね。何より、既に近づいて来ている厄介な連中もいるしね」

「厄介な連中?」

「いえ、こっちの話よ。あなたは十香達のケアに専念しなさい」

「あ、ああ」

 

 士道はその厄介な連中というのが気になる様子だったが、今は十香達の方を優先させようと大人しく頷くのだった。

 

「さて、今日はもう解散。ソーは明日から捜索よね。あまり悪目立ちしないように」

「そうか」

「これは絶対分かってないわよね」

「あはは」

 

 適当な返事を返したソーを見てリアはため息をつき、ステラは曖昧な笑みを浮かべる。

 

「じゃ、俺はそろそろ寝るかな。明日も学校あるしな」

「ステラはこれから勉強よ」

「うえぇ……」

「当たり前でしょ。もうすぐ試験なのよ? みっちり行くわよ」

「そんな……」

 

 嫌がるステラをズルズルと引きずって、リアはリビングから退場して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高速で風を切りながら、目的の場所へと一直線に向かう。今日から捜索するのは九州地方。あと2週間ほどで士道達は修学旅行らしく、それまでにこの地方の捜索は終わらせたいところである。

 

 突風と共に山中へと降り立つと落ちていた木の葉や枝が一斉に舞い上がった。

 

「さて、とっとと終わらせるかな」

 

 カバンからセンサーを取り出し、肩をグルリと回して斧を握り直すと簡単にこれから向かう方角を決める。そしていよいよ出発しようとした時、ソーは何かの気配を感じ取って周囲を警戒した。

 

「何処のどいつだ? 俺は今忙しいんだ。邪魔をするなら叩き潰すぞ」

「あらあら、随分とお怖いこと」

 

 視界の端。地面の一角に影が広がったかと思うと中から真っ赤なドレスを纏った狂三が姿を現した。

 

「何の用だ?」

 

 ソーは注意深く狂三を見据える。

 

「そんなに警戒しないでくださいまし。わたくしはただあなたのお手伝いに参っただけですわ」

「あんなことをしたお前をそう簡単に信じろと?」

「そこは士道さんの顔に免じて、保証致しますわ」

「…………ふん、好きにしろ」

「ありがとうございます」

 

 ソーは警戒を解くと山の中を歩き出す。

 

「それで、士道さん達の修学旅行までに、ここの捜索を終えたいのでしょう?」

「何故お前がそれを知ってる……」

「わたくしもそれなりに情報網は持っていますので」

「そうか、まあ、そうだな。それまでにここの捜索は終えたいと考えていたところだ」

「2週間、いえ、1週間も掛かりませんわ」

 

 どうやってそんなに短く? とソーは聞こうとして、以前の光景を思い出した。あの大量に湧き出て来た分身体のことを。

 

「便利な力だな」

「その分、代償は大きいのですけどね」

「お前は何故俺を手伝う? お前にメリットなど無いはずだ」

「これはちょっとした罪滅ぼしですわ。わたくしは士道さんに命を助けられてしまった以上、何も返さない訳にはいきませんもの」

「それなら士道を手伝えばいいじゃないか」

「もちろん士道さんにも、これから力となっていくつもりですわ。ですが、あなたにも多少はお力添えをしておかないと、後が怖いというのでしょうか……」

 

 そこまで言って狂三はだんだんとその顔が恐怖に染まっていく。

 

「ぷっ、はっははは!」

「ちょっ! 笑わないでくださいまし!」

「あれだけ威勢の良かったお前もこうなると可愛いもんだな!」

「あなたに言われても嬉しくありませんわ!」

 

 馬鹿にされているのが気にくわない狂三はそっぽを向いてしまう。

 

「にしても、そんなにあいつが怖いのか?」

「べ、別に恐れてなどいませんわ。リアさんだって、ただの女の子ではありませんの」

「宇宙を滅ぼすほどの力を持ったな」

「ああ、もう! やめてくださいまし! せっかく忘れようとしていたというのに!」

「悪い悪い。お前の目的が何なのかは知らないが、あいつらに手を出すのはやめておけ。ただじゃ済まんぞ」

「身にしみましたわ。でも、あなた達もお気をつけなさって。あなた達に近づく者は、他にもいますわよ」

「そんな話を琴里もしていたな。警戒を続けるに越したことはなさそうだ」

 

 そうやって2人で話しながら歩いているうちに木々の向こうに光が見え始めた。どうやら山を抜けたようだ。木の間からは建物が見えている。

 

「さて、ここからは手分けして探しましょうか。地図を貸してくださいまし」

「お前、探せるのか?」

「でなければステラさんを攫うことは出来ませんわよ」

「それもそうか。よっと、これだ」

 

 ソーは地図を取り出すと狂三の前に広げてみせる。

 

「ここから、ここまで、わたくしは6日ほどで出来ますけど、あなたはいかがでして?」

「問題ない。俺も6日で終わらせる。それで行こう」

「では、6日後にここで」

「ああ」

 

 そう言うと狂三は影の中へと潜って行った。

 

「さてと、行くか」

 

 ソーは深呼吸をしてから街の方を見据えると、空へと飛び立って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁー、もう疲れたよー」

「そんな事言ってると、どうなっても知らないわよ」

「あー、ごめんなさい。真面目にやるから見捨てないでぇ」

「ぐぇっ、分かった! 分かったから引っ張らないで」

 

 五河家の居間ではステラが机に向かって格闘していた。側ではリアが自分のノートを持ちながら所々指摘を入れている。

 期末試験まで残り1週間を切っている。ようやく一ヶ月分の遅れを取り戻して来たステラは、既にくたばりそうであったが修学旅行の為にと試験勉強に奮発していた。

 

「うう、試験まで時間がないよー」

「喋ってる暇があったら手を動かしなさい」

「はい……」

 

 そして2時間後、切りの良い所まで進めて一旦休憩を挟むことにした。

 

「はぁー、疲れた……」

「教える側も疲労が凄いのよ。自分の勉強もしないといけないし」

 

 2人揃って畳に背中を預ける。

 

「修学旅行って何をするのかな」

「さあ、旅行って付いてるんだから、観光でもするんじゃないの? 調べてみたけど、綺麗な所よ」

「楽しみだなー」

「なら期末試験をきちんとクリアしないとね」

 

 その瞬間、ステラはバッと体を起こすとガッツポーズを決めた。

 

「よし! 修学旅行のためだったら、私は何だって出来るよ!」

「はぁ、なんか最近どこかのバカが感染してないかしら。妹の行先が不安だわ」

 

 リアは最近バカが目立つステラのことを心配しているが、当の本人は全く自覚していない。真面目に机に向かい始めたステラを見て、今は自分も勉強しようとそう思うのだった。

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