GOD・A・LIVE 〜雷神と宇宙の欠片達〜   作:青空と自然

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第28話 嵐の夜

 真っ暗な森の中を懐中電灯を持って歩く2人。ステラとリアは何処かに潜んでいる3人目、マイを探していた。だが先程まで静かだった森が急に嵐にでも遭遇したかのように荒れ始める。しかもその強さは立っていることすら困難な程だ。

 

「くっ……何なのよ急に!」

「いくらなんでも強すぎじゃない⁉︎」

 

 何とか地面に這いつくばって飛ばされないように堪える2人。

 

「ステラ!」

「ぐうぅ、分かった!」

 

 リアの合図と共にステラは自分達の周囲1メートル程の空間を確保する。そして確保した空間の中の状態をリアが操作し一定に保つ。

 

「ふう……」

 

 ようやく落ち着いた2人は改めて周囲の状況を確認する。外は相変わらずの嵐である。

 

「さっきまで晴れてたよね」

「誰かの仕業かしら? 流石にマイではこういったことは出来ないだろうし」

 

 外がこれだけ荒れると捜索も困難になってくる。2人は一旦捜索を中断して対策を考えることに。

 

「ソーに連絡しようよ」

「そうね。この嵐じゃあ、気付くかも分からないけど」

 

 リアは携帯を取り出して連絡を取り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃森の中では。

 

「もおー、何で急にこんな風が⁉︎」

 

 後ろからイタズラを仕掛けようとステラとリアの後をつけていた小柄な少女、マイは突然の嵐に遭遇し、突風で数十メートル程飛ばされていた。

 お陰で頭にタンコブができる始末である。

 

「誰よ、私の計画を邪魔しようとしてるのは! ただじゃおかないわよ!」

 

 髪の毛に葉っぱが付いたまま悪態をつく彼女。その様子をたまたま見つけたソーはどうしようか木の影に隠れて考えていた。

 とりあえず近付いて声をかけて見ることに。抵抗して来たら取り押さえればいいだろう。そして彼は1人でぶつぶつ言っているマイに近づいて行くと声をかけた。風の中でも聞こえるように大きな声で。

 

「おい、お前!」

「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 彼が接近している事に全く気が付いていなかったマイは驚きの余り彼に向かって力を行使すると同時に藪にひっくり返った。金色の光が流れる。

 

「うわっぷ、もう、何?」

 

 何とか藪から這い上がった彼女は肩に付いた葉っぱや土を払い落としながら急に話しかけて来た人に向かって抗議する。が、何処を見ても誰もいない。

 

「あ、あれ? いない……」

 

 慌てて近くを探してみたがやはり誰もいなかった。

 

「もしかしてこれって……結構まずかったり?」

 

 自分は驚きの余り話しかけて来た人につい力を行使してしまった。相手の精神を支配する力を。そしてその対象が行方不明。

 

「や、やばいよ。どうしよう。このままリア達に見つかったりしたら……」

「私たちがどうかしたのかしら? ねえ、マイ。元気そうで何よりだわ」

「イヤアアアアアアアアアアアア! ゴメンなさあああああああぁぁぁぁい!」

 

 突然背後に現れたリアから逃げ出すマイ。

 

「あ、コラ、待ちなさい! ステラ、あんたはソーを探して。私がマイを追うから」

「分かった!」

 

 リアは森の中を逃げ回るマイを追い掛け、ステラは連絡の取れないソーを探し森を走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「副司令! 或美島にて風の渦が発生しています!」

 

 艦橋にクルーの緊迫した声が響く。

 

「おかしいですね。今までそんな気配はどこにも無かった筈ですが……。村雨解析官から連絡は?」

「依然、通信は途絶えたまま、ソー君との連絡も取れていません」

 

 空席の艦長席の隣に立つ神無月はしばし思考に耽る。

 

「やはり何者かの妨害が入っているとみていいでしょう。連絡員の準備をさせてください。直接島に降り立ちます」

 

 〈世界樹の葉(ユグド・フォリウム)〉を展開し、島内との通信を試みる。まずは島内の状況を確認しなければならない。

 

 

「レーダーに反応あり!」

「何? こんな所で一体誰だ!」

 

 DEMの空中艦〈アルバデル〉の船内では突如現れた船の反応にどよめきが広がっていた。

 

「あれは、空中艦です!」

 

 艦長、パディントンは画面に映る空中艦に眉を吊り上げた。今の今まで船の反応は無かった。だとすれば映像のこの船は不可視迷彩(インビジブル)を使用しているということになる。そんなはずは無い。あの技術はDEMでも最近実現したばかりの最新技術だ。

 

 そこまで考えて1つ、彼の中に心当たりのある組織が浮かび上がった。

 

「──〈ラタトスク機関〉」

 

 そうか、と納得が行った。精霊と対話を試みようなどという頭のおかしい目標を掲げる組織。奴らは敵、敵は沈めるに限る。

 

「全員、攻撃用意。合図で撃て」

 

 

 

 

 

 

 

「何だこいつら!」

「分からぬ。だが嫌な予感しかしない」

 

 暴風の中で衝突する耶倶矢と夕弦の戦いを見ていた士道。だが気が付くと自分達の周囲を妙な物体が取り囲んでいる。そしてそれらの間から1人の女が姿を現した。

 

「お前は……」

「カメラマンのエレンではないか。こんな所で何をしているのだ?」

「ようやく隙を見せてくれましたね、〈プリンセス〉」

 

 ただのカメラマンだと思っていた人物の口から出て来たのは精霊の識別名。十香の顔が警戒で染まる。

 

「何の真似だ!」

「邪魔な存在が一匹居ますが、まあ問題ないでしょう。捕獲作戦を実行します。さあ、〈プリンセス〉。私にあなたの力を見せて下さい」

 

 黄金の光が煌めき、その光が収まるとそこにはワイヤリングスーツとCR-ユニットを纏ったエレンがいた。その雰囲気は先ほどまでとは異なり、異様な強さを感じる。

 

「さて、あなたはどこまで通用しますかね」

「シドー、下がっていろ。あいつは危険だ。ものすごく嫌な感じがする」

 

 十香はその手に〈鏖殺公(サンダルフォン)〉を顕現させるとエレンにその切っ先を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオン‼︎

 

 轟音と共に船体が揺れ、映像がぶれる。

 

「ら、落雷です! とても大きな落雷が直撃しました!」

「落雷? そんなものでこの船がここまで揺れる筈はありませんよ」

 

 〈フラクシナス〉には高性能な顕現装置(リアライザ)が搭載されており、落雷は愚か大抵の障害では全くダメージを受けない。だが今の揺れは落雷にしては明らかにおかしい。そう感じた神無月は船体上部のカメラを確認した。

 

「これは、まさか⁉︎」

 

 

 

「おい、誰が勝手に砲撃しろと言った!」

 

 敵空中艦を発見した〈アルバデル〉はしばらくその様子を伺い、攻撃のタイミングを推し量っていた。だが突然閃光が走ったかと思うと敵艦が大きく揺れている。

 

「ま、まだ何も行なっていません!」

「何だと⁉︎ では誰があんな攻撃をしたというのだ!」

「分かりません」

 

 よく見ると周囲の天候が激変している。先ほどまで静かだったこの空域が雷雲に覆われ、辺りにはひっきりなしに雷が落ちている。

 

「何が起こっている。……だがこれは好機。敵艦を堕とす。──総員、攻撃用意」

 

 

 2度目の轟音と共に再び船体が大きく揺れる。

 

「て、敵艦です! 左舷に被弾、随意領域(テリトリー)20%減少!」

「今度は敵艦ですか。不味いですねー。恐らくこの落雷の犯人も考えると対処しづらいですよ。箕輪さん、先程飛ばした世界樹の葉(ユグド・フォリウム)を経由してステラさんと通信を行なって下さい」

「ステラちゃんとですか?」

「なるべく早くお願いします。彼女ならすぐにやって来ますよ」

「り、了解!」

 

 箕輪に通信を任せると神無月は現れた敵艦に目を向けた。

 

「さて、久しぶりの実戦ですよ。司令の船を落とさせるわけにはいきませんからね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヤアアアア! 来ないでええええ!」

「何で逃げるのよ! さてはあんた、またロクでもないこと考えてたわね!」

「何もしてないからあ!」

「だったら止まりなさいよ!」

 

 森の中をひたすら駆け回る2人の少女。こんな暴風の中で鬼ごっこを始めて早くも10分が経過しようとしている。

 

「はあ、はあ……これでも食らえ!」

「ちょっ、あぶなっ! やめなさい!」

 

 何とかリアから逃げようとエネルギー弾を投げつけてくるマイ。それを避けながら追いかけるリア。簡単に捕まる気はさらさら無さそうである。

 

 

「はい、ソーがそこに? わかりました。直ぐに行きます。どれくらい? 1秒で」

 

 そして視界が一瞬で森の中から島の上空へと移り変わる。そこは雷雲が立ち込め、雷があちこちに落ちている。そして〈フラクシナス〉と思われる空中艦にもう一つそこへ砲撃を仕掛けている空中艦が。ステラは〈フラクシナス〉の上に目的の人物を見つけた。

 

「いた! ソー!」

 

 だが彼の反応は無く、感情のない青い瞳でステラの方を見るだけである。そして次の瞬間、何の前触れもなく彼女の頭上に雷が落ちて来た。

 

「え? うわっ」

 

 慌ててそれを回避し、再びソーの方を見ると今度は回転する斧が飛んでくる。

 

「くっ、どうしてこんな事するの?」

 

 と彼に問うも返事が返ってくる気配はない。対話を諦めたリアは深呼吸をすると彼の方を睨んだ。

 

「先に謝っておくよ。手加減出来なかったらごめんね」

 

 ソーが斧を振り上げて襲い掛かる。ステラはサッと手を広げると目の前の空間を手の平で叩いた。

 次の瞬間、ソーの身体が吹き飛ばされる。広がる衝撃波は2つの空中艦の元まで届いていた。

 

「恐ろしい力ですね……」

「さあ、向こうは彼女に任せて、我々はあの船を何とかしますよ」

「は、はい!」

 

 神無月はその頭脳で顕現装置を完璧に制御していた。敵が砲撃をしてくる場所をピンポイントで当て、その場所に随意領域(テリトリー)を展開。そのお陰で〈フラクシナス〉は最初の一撃以降まだ一度も攻撃を貰っていなかった。

 

「クソ、なぜ当たらんのだ!」

「被弾する場所だけに随意領域(テリトリー)を展開しているようです」

「そんな馬鹿なことがあってたまるか!」

「そう言われましても……」

 

 〈アルバデル〉では当たらない攻撃にパディントンの苛立ちが増していた。何とかして攻撃を当てようと考えていると、何かが船体に向かって飛んでくる。飛んできた2つの影は船体後方を貫通してそのまま島の方へと飛んで行った。

 

「何事だ!」

「艦長、大変です! バンダースナッチの制御室に被弾、火災が発生しています!」

「何だと⁉︎ 直ぐに消火せんか!」

 

 

 

「この程度とは、残念です」

「十香!」

 

 〈鏖殺公(サンダルフォン)〉を砕かれた十香が地に伏せる。このままでは十香が連れ去られてしまう。士道は何か方法は無いかと考えるがどれもあの女の前では無力。

 

「くそっ、何かないのか、このままじゃあ十香が!」

「さっさと連れて行って下さい」

 

 機械の人形が十香に近寄る。

 守られるだけの存在なんて嫌だ。十香を守りたい。そう強く願った次の瞬間、彼の手に光が溢れる。十香を囲んでいた機械人形がばらばらと崩れ落ちた。

 

「な……その剣は先程私が砕いたはず。あなたは何者ですか」

 

 士道の手には光輝く剣が握られていた。

 

「人間さ。一応な」

「いいでしょう。あなたも連行します。捕らえなさい」

 

 エレンはバンダースナッチにそう指示を出すが機械人形からは反応がない。それどころか機械人形たちは奇妙な動きをし始めている。

 

「な、なんですか急に」

 

 そこへ〈アルバデル〉から通信が。

 

「制御室に被弾? 空中艦と交戦? そんな指示を出した覚えはありません。くっ、使えない!」

 

 エレンが通信をしている。これは好機だ。士道は十香を抱えて逃走を図る。

 

「っ、待ちなさい!」

 

 エレンは慌てて後を追おうとするが、何かに足を取られ顔面から地面に突っ伏した。

 

「何ですかこんな所でっ!これはまさか高速穴掘り術の……え?」

 

 落とし穴にはまった所へ壊れたバンダースナッチの身体が倒れ込む。

 背後に聞こえた悲鳴を無視して士道はひたすら走り続けた。目の前の空で無意味な争いを繰り広げる姉妹を止めるために。

 

 

 

 

 

 

「もお、しつこい!」

「くっ、こんの、いい加減にしなさい!」

 

 終わらない鬼ごっこに痺れを切らしたリアは右足を強く地面に踏み込む。すると森の木々が意思を持ったかのように動き出し、前を走るマイに絡みつく。

 

「うわっ、何これ、離してよ! うわあぁ⁉︎」

 

 全身を縛り上げられ、空中に吊るされたマイにゆっくりとリアは近づく。

 

「はあ、はあ、やっと捕まえた」

「うわわわ、こ、来ないでえ! ごめんなさい、私が悪かったですからあ!」

 

 彼女は今更謝ってくるがそんな事はお構い無しにリアはズンズンと進んで行く。そして彼女の目の前に立つと足元に落ちていた木の枝を拾い上げ、パシパシと手の平に打ち付ける。

 

「さあて、何をしてたのか洗いざらい話して貰おうかしら」

「ひっ⁉︎」

 

 リアは木の枝でマイの頬をなぞると悪いな笑みを浮かべる。だがマイの視線が自分の後ろを見ている事に気が付き、咄嗟にその方向を向いた次の瞬間、体に強烈な衝撃が走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空中での交戦は激しさを増していく。ソーの雷撃があちこちから降りかかり、それを避けると今度は直接の攻撃が襲い掛かる。ステラは何度か隙を見てソーに話しかけようとしたが、全く反応が返ってこなかった。まるで攻撃する事にしか意識が向いていないかのように。

 

「まさか、操られてる?」

 

 考えた末に1つの可能性にたどり着いた。もし彼が誰かに操られているのだとすれば、攻撃する事にしか意識がない事にも納得がいく。そして今この島でそんなことが出来る人物は1人。

 彼女は犯人にようやくたどり着いたが、戦闘中に相手から意識を外すことは禁物。気がついた時にはストームブレイカーが目の前に迫っていた。

 

「やばっ……」

 

 鈍い音と共に彼女の体はいとも簡単に吹き飛ぶ。体は地面を抉り、木をなぎ倒しながら守りを突っ切って行った。そして森の中にいた2人組に激突する。

 

「は? ……うぐっ」

「うきゃっ⁉︎」

 

 衝突した2人を巻き込んで森を抜け、ステラは海岸の砂浜に転がった。

 

「痛ったぁ……うう、意識が飛びそう」

 

 お腹にモロに強烈な一撃を貰ったステラは砂の上に血を吐き捨てるとヨロヨロと立ち上がる。と同時に自分の後ろに2つの影が転がっていることに気が付いた。

 

「……何なのよいきなり」

「今日は散々だよ……」

「2人とも、こんな所で何してるの?」

 

 荒れ狂う空を見上げたまま呟く2人にステラは話しかけるが反応がない。

 

「お、おーい、大丈夫?」

「あんたのせいでしょうが」

「ご、ごめんなさい」

 

 ステラも2人の視線につられてその方向を見ると、そこには物凄い速さでぶつかり合う2つの影があった。

 

「耶倶矢に夕弦……あの2人、精霊だったのね」

「士道君は?」

「分からない」

 

 戦う2人の表情は真剣そのもの。だが何故かリアにはそんな2人に違和感しか感じられなかった。そう、彼女たちには本気で相手を殺しに行くような雰囲気が欠けているのだ。

 そうやって八舞姉妹のことを考えていたが何かを忘れている。

 

「そう言えばステラは何で飛んできたの?」

 

 ようやく立ち上がったマイの一言でステラとリアは正気に戻る。

 

「やばっ!」

「どういうことよ!」

 

 そんな3人の元へ、雷撃を纏った斧が森の木を薙ぎ払いながら迫っていた。

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