GOD・A・LIVE 〜雷神と宇宙の欠片達〜   作:青空と自然

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第31話 新たな来訪者

 セミの声があちこちで鳴り響き、季節はすっかり夏へとなった。来禅高校は今日から夏休み。皆が楽しい思い出を作ろうとあちこちで立てた計画を実行していく中、ステラとリアの2人は五河家のリビングにて夏休みの宿題に取り掛かっていた。

 

「あー、もう疲れた……」

「そんなこと言ってるといつまでも終わらないわよ。手を動かしなさい」

 

 夏休みを楽しむためには先に宿題を終わらせるに限る。そう考えた2人は初日から早速ペンを走らせていた。夏休みというのは長いようでとても短いもの。まだあると言って宿題を放置していると、気がつけば翌日が登校日になっているのである。

 

「夏休みは絶対遊ぶんだから!」

「だったら手を動かしなさい」

「はい……」

 

 せっかく考えた予定も、この宿題が終わらなければ実行出来ない。リアに言われてステラは渋々と手を動かし始めた。

 

 それから3時間手を動かし続け、すっかり夕方になってしまった。2人はペンを置くと大きく伸びをしてそのまま床に大の字で倒れる。

 

「ふわぁー、疲れた」

「そう言えばマイは?」

「あの子はマンションの方の下見とか言って出て行ったわよ」

 

 先日マイが合流したことにより、彼女たち姉妹の半分が揃った。これから人数が増えることも考えると五河家の客間では場所が心許ないだろうということで、琴里が精霊マンションの方へと移動することを提案して来たのである。特に宿題などもなく暇であったマイは真っ先にそちらの方へとついて行った。そのまま帰ってこないのであるが。

 

「迷惑掛けてないといいけど」

「それをあの子に言っても無駄よ。いっつも思い付きで行動し始めるんだから」

「はは、そうじゃ無かったらマイじゃないよ」

 

 2人は机の上に広げてあった勉強道具を片付けると隣に立つ精霊マンションの方へと向かう。恐らく彼女はここにいる筈だ。マンションの中に入るとある部屋からワイワイと声が聞こえてくる。

 

「何を騒いでるのかしら」

「聞いてみればいいんじゃない?」

 

 声が聞こえて来る扉の前へと立つ。たしかこの部屋は先日から同じクラスになった八舞姉妹の部屋だ。インターホンを押すとドタドタと足音が聞こえ、扉が開かれる。

 

「あれ、ステラちゃんじゃん。何しに来たの?」

 

 中から出て来たのはマイだった。ここは八舞姉妹の部屋だった筈だが。

 

「何であんたがこの部屋にいるのよ」

「なんか楽しそうなことしてたからさー、つい? まあ、とりあえず上がったら?」

「マイの部屋じゃないよね……」

 

 そう言いながらもマイに続いて部屋に上がる2人。部屋のリビングにはテーブルが置かれ、そこに耶倶矢と夕弦、そして十香の3人が座っている。3人の手にはトランプが握られており、耶倶矢が夕弦の方にそれを向けて自分のカードを引かせようとしていた。ババ抜きをしているようだ。

 

「さあ、我の変幻自在なる仮面の前にひれ伏すがいい」

「選択。そいや……むっ」

「ふはははは、掛かったな夕弦!」

 

 どうやら夕弦は見事にババを引いたようである。

 

「挽回。最後に持っていなければいいだけの話です。さあ、十香」

「よし! 私の番だな!」

 

 今度は十香が夕弦の持つトランプをじっくりと眺めてどれを選ぼうか考える。

 

「むむむむ……」

「無心。マスター折紙のように、心を無にするのです」

 

 十香が指で1枚ずつカードを指差して行くがひたすら無表情で空を眺める夕弦。十香はしばらく悩んだ末、1番端のカードを引いた。結果はセーフ。ババは夕弦の手元に残ったままである。

 

「よし、次だ!」

「ふっ、眷属の身で我に敵うと思うな」

 

 

 5分後。

 

 

 

「くぅ、何故毎回負けてしまうのだ?」

 

 結局最後までババを持っていたのは十香であった。

 

「すぐ顔に出るからじゃないの?」

「十香らしいわね」

「だがマイはすごく強いのだぞ。6回やって全部一抜けだからな」

「ま、当然ってことよ!」

 

 十香に言われ、偉そうに胸を張っているマイをステラとリアは訝しげな目で見る。

 

「な、何かなその目は」

「いやー、マイのことだしねー」

「どうせズルでもしたんでしょ」

「ひどい言われようだね。こんなもの相手の頭の中見れば簡単に勝てるでしょ」

「それをズルって言うんだけど……」

「え? なんで?」

 

 どうやら最初からズルをしていたようである。当の本人は理解していないようだが。

 

「まったく、そんなことだろうとは思ってたけどね……あら?」

 

 リアの携帯が振動している。誰かが電話をかけて来たようだ。

 

「もしもし? ええ、そうよ。みんなでマンションにいるわ。ええ、分かった」

 

「何だったの?」

「士道がそろそろご飯だってさ」

 

 ここに来てババ抜きを観戦していただけだったのだがいつの間にか大分時間が経っていたようである。

 

「今日の夕餉は何なのか、楽しみだぞ」

「晩餐の席に1番に着くのはこの我である!」

「対抗。豚足の耶倶矢に負けるつもりはありません」

「んな異名いらんわぁ!」

 

 ワイワイと騒がしく部屋を出て行く一行。夏休みはまだまだ始まったばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから3日で夏休みの課題を全て終わらせたステラとリアは、テストや修学旅行でしばらく行っていなかった帰り道の探索を再開した。ソーの方は国内でまだ捜索を行なっていない地域の方へと出向いている。

 

「今日は何回くらい出来るかな?」

「あんたが1発で見つけてくれればそれで終わりなんだけど」

「私もそうしたいんだけどね。中々難しいというか、なんで繋がらないのか分からないというか……」

「本当に大丈夫なのかしらね?」

「面目ないです」

 

 最初の実験では異空間との接続を短時間に連続して7回行ったステラが倒れ、狂三に拐われるというハプニングがあったが、それからはきちんと間隔を決めてやっている。何度もやっているうちにステラも大分慣れたのか、間隔はだんだんと短くなってはいるが、それでもまだ発見には至っていない。

 

「でも大体の感覚は合わせてるの。そろそろ繋がってもいいと思うんだけど」

「昨日なんてヘドロみたいな生物が出てきたじゃない。もう本当に最悪だったわ」

「ご迷惑をお掛けします」

 

 基本的にステラが異空間との接続を行い、もしそこから出てきたものが有害な物だった場合はリアが即座に処理する、というスタイルをとっている。有害なものは大抵異臭を放っていたり見た目がグロテスクだったりするため、リアはいつも文句を言っている。

 

「それじゃあ、今日も始めるよ」

 

 部屋の中の顕現装置(リアライザ)を起動すると、2人は実験を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どれくらい眠っていただろうか。瞼の上から差し込む光で目を覚ましたが、まだ頭がぼんやりとしている。

 

『ボス、キャプテンがお見えになっています」

「はあ、今更何だって言うんだ?」

 

 頭を掻きながら体を起こし、身なりを整えるとモニターに写っている人物を確認する。

 

「何をしに来たんだ?」

『トニー、話がしたい』

「聞くだけだぞ」

 

 スティーブを通したこの家、もといラボの主人である彼、トニー・スタークはソファに腰かけると訪問してきた相手の目を見た。

 

「前にも言った筈だ。サノスも石も、ソーも行方不明。打つ手は何もない」

「だからって、ここで諦めるわけにはいかない」

「私にどうしろと?」

 

 ダメだ。またイライラしている。さっきからまともな会話になっていない。

 

「ネビュラがサノスの居場所を特定した。奴を捕まえて石を取り戻せるかもしれない」

 

 僅かな可能性。それで消滅した者が戻って来るのかは分からない。それに自分はようやく安定した生活を得ようとしている。自分が参加する意味は無い。

 どれだけそう思い込もうとしても、彼の頭の中から1人の少年の姿が消えることは無かった。

 

「…………リスクしかないぞ。こっちはたった1人に敗北してるんだ」

「分かってる。今回はダンヴァースが同行する。ここでやらなかったらもう何も出来ない」

「作戦はいつ決行するつもりだ?」

「2日後だ」

 

 トニーはしばらく悩んだ末に、覚悟を決めた。

 

 

 

 

「まったくもって、平穏に恵まれない人生だ」

『ボスらしいではありませんか』

「私は全然嬉しくないんだがな」

 

 トニーは作業台の上に置かれていたリアクターを胸に取り付ける。

 

「こいつの調子はどうだ?」

『大きな問題は確認されていません。これより最終テストを始めます』

 

 胸のリアクターに触れ、スーツを起動させると全身が自動的に包まれて行く。

 

『マーク51起動完了』

「サノスの前まで行って、不具合が生じましたってのは笑えない冗談だな」

『その時は私が看取ってあげますので』

「おいおい、助けようとは思わないのか?」

『私には何も出来ませんので』

「冷たい奴だ」

 

 一通り簡単なテストを済ませ、動作に不具合がないことを確認する。作戦は2日後。船で一緒に生活していたあの青い女──名前はネビュラと言った──がサノスの場所を特定したらしい。彼女は元々サノスの義理の娘らしいし、何か思い当たるところでもあったのだろう。

 何にせよ、2日後には再びサノスと相対することになる。前回は顔面に月を投げつけられた上にボコボコにされたのだ。あれは軽くトラウマになりつつある。だがこれも消えてしまった者達の為。救える命を見捨てることは、彼には出来なかった。

 

 ふと時計を見る。そろそろペッパーが帰って来る時間だ。ちゃんと出迎えてやらないと。

 そう思い、ラボを後にしようとした時だった。

 

 目の前の景色が青色に染まったかと思うと、景色が急激に変貌した。

 

『ボス! 緊急事態です。衛星通信の遮断を確認。座標が測定不能です』

「何が起きてる?」

 

 一瞬にして景色が変わる。気がつけば、彼は機械的な部屋の中に立っていた。後ろを振り向くと赤色の髪の少女がこちらに向かって何かをしようとしている。

 

「リア!」

「わかってる!」

 

 その声とともに、目の前で信じられない現象が起こった。

 部屋の床が意思を持ったかのように動き始めると、自分の方へと伸びてきたのである。

 

 咄嗟にそれを回避。そしてこの現象を起こしていると思われる赤い髪の少女を取り押さえる。

 

「うっ……」

 

 これで抑えられると、そう思っていた。

 

「何?」

 

 少女の力は凄まじかった。スーツを装着した自分の手が、少しずつ押し返される。ピピッという警戒音が、もう1人が攻撃を仕掛けていることを知らせる。

 襲って来るもう1人をリパルサーレイで弾き飛ばすと一旦赤い少女から離れ、彼は部屋の床に向かってミサイルを発射した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 艦橋にレッドランプが灯り、アラームが鳴り響く。

 

「何事⁉︎」

「艦内で爆発です! 火災が発生しています!」

 

 琴里は突然のアクシデントに慌ててモニターを確認した。爆発の発生場所を特定する。

 

「あそこは……あの2人は⁉︎」

「彼女たちの安否は不明です!」

「とりあえず消火作業に入って!」

「了解」

 

 クルーが現場へと向かおうとする。だが、クルーが現場へと到着するよりも先に、艦橋の扉が吹き飛ばされた。

 

「っ⁉︎」

 

 一同がそちらへと一斉に振り向く。

 

「全員手をあげろ」

 

 そこには、ロボットのようなものが立っていた。

 

 

 

 

 

 

「あなたは何者?」

「同じことを聞こうと思っていたところだ」

 

 緊張した空気が流れる。

 琴里が突然現れた侵入者に対して質問をすると、向こうも全く同じことを返してきた。

 

「あー、不審な動きは見せないほうがいいぞ」

「ひっ⁉︎」

 

 モゾモゾと視界の端の方で動いていた椎崎に腕を変形させ、砲口を向ける。

 この時点で琴里は反撃すべきなのか必死に頭を働かせていた。今、クルーの1人が砲口を向けられている。どんな武器なのかは分からないが、あの変形の仕方を見るに、ただの人間が受ければただでは済まないだろう。最悪即死である。ならばどうするか。

 琴里は腕をこっそりと後ろに回す。敵はたった1人。直ぐに終わらせればいい。

 

「神無月、船を海上に移動させなさい」

「はっ」

 

 琴里はそう指示を出すと後ろに回した手に炎を纏わせた。

 

 

 

 

 

 

 

「もう、何なのよ!」

「多分こっち!」

 

 ステラとリアの2人は廊下を全力で走っていた。

 突然現れた人型のロボットのようなもの。リアが取り押さえようとしたがそれを潜り抜けてこちらを襲って来た。そしてリアの助太刀に入ろうとしたステラを吹き飛ばし、部屋の中でミサイルを発射したのである。爆風で壁を突き抜けたリアは少し気絶していたがステラに起こされ今に至る。

 

「確かこっちに行った筈なんだけど」

「ちょっと待って。ここって艦橋の方じゃない?」

「あ……」

 

 琴里に怒られる。2人の頭にまず初めに浮かんだのはその一言である。だが今問題なのはそこではない。あそこには非戦闘員のクルー達もいるのだ。

 

「行くわよ!」

 

 2人は慌てて艦橋の方へと走り出した。廊下を直進し、突き当たりを左折。それで艦橋への扉が見えて来る筈。

 2人が角を曲がったその時だった。

 

「──〈灼爛殲鬼(カマエル)〉」

「え?」

「は? ……うぐっ⁉︎」

 

 2人まとめて飛んできた何かに押しつぶされ、反対側の壁へと叩きつけられた。

 

「ううっ、いったぁ……」

「ちょっと、タイム、モロに入ったわ……」

 

 2人は自分達を吹き飛ばしたものを見る。それは先程空間の穴から現れたあの人型のロボットだった。

 

「あれ? これってもしかして……」

 

 ステラはよく見るとこのロボットに見覚えがあるような気がしてどこで見たのか思い出そうとする。だがそれを考えるよりも先に、琴里がこちらに向かって攻撃しようとしていることに気が付いた。

 

「ちょっと⁉︎ 琴里ちゃん⁉︎」

 

 

 

 

『ボス! 意識を持ってください! 次の攻撃が来ます』

「うう……なんなんだいきなり」

 

 突然目の前に高熱反応が現れたかと思うと自分の体が吹き飛ばされていた。正直気持ち悪い。何とかフラフラする頭を叩き起こして次の攻撃に備える。

 いつの間にか隣にさっきの2人組がいた。あの爆発をくらってまだピンピンしているとは、彼女達は一体何者だろうか。

 

 と、考えている暇はないようだ。次の攻撃が飛んでくる。トニーは腕をサーベルへと変形させると先程の司令官らしき少女が持っている巨大な斧を何とか食い止めた。

 

「ぐうっ……」

 

 だがその熱と勢いに押され、簡単に弾き飛ばされてしまう。廊下を真っ直ぐに突っ切って壁に激突し、床に転がる。

 顔を上げると、そこにはすでに巨大な斧が迫っていた。

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