GOD・A・LIVE 〜雷神と宇宙の欠片達〜   作:青空と自然

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第5話 人の上に立つ者

「ふ、増えてる……」

 

 玄関で帰ってきたソーを出迎えた士道はその後ろにもう1人いることに気付き、呆然としていた。

 

「ついさっき、そこの公園で会った」

 

 ソーが合図をすると、少女が一歩前へと踏み出る。

 

「こんばんは。あなたがソーの世話をしている人?」

「え、えぇっと…………」

「ちょっと士道! いつまでそこに……誰?」

 

 士道が戻って来ないので確認しに玄関へと出てきた琴里も固まった。

 

「…………リア?」

 

 琴里の後ろから顔を覗かせたステラが少女の姿に気が付いた。

 

「ステラ? あなたが何故ここに……」

「俺をこの世界に引きずり込んだのはそいつだからな」

「だ、だって、皆を探すのを手伝ってほしかったからさ」

 

 2人が玄関とリビングの間で言い合いを始める。今日一日でこの光景を何度見たことだろうか。

 

「はいはい、2人がお似合いなのは分かったから。リア、だっけ? あなたもこの2人のお仲間ってことでいいのかしら?」

 

 そんな2人を無視して琴里は玄関に立つ赤い少女に問いかける。

 

「仲間、なのかは分からないけど、同じ立場の者ね」

「そう。取り敢えず上がってちょうだい。これからどうするか考えるわ」

「ご迷惑をお掛けするわ」

 

 リアは玄関に靴を揃えると、五河家へと上がり込んだ。

 

 

 

 

 

 

 それからリアについても対応を確認し、ひとまずこの家で保護することとなった。

 最後に全員でお風呂に入る順番を決め、就寝の準備をすることに。

 

「ステラとリアは客間に布団を敷いておいたから、そこで寝てちょうだい」

「ありがと」

「何だか悪いわね」

 

 2人は琴里に連れられて、客間へと案内される。

 

「俺は適当な場所で寝るぞ」

「ダメに決まってるだろ」

 

 リビングのソファーで寝ようとしたソーは士道に首根っこを掴まれる。

 

「ウチの両親の寝室が空いてるから、そこ使え」

「いいのか?」

「ああ、ウチの親は滅多に帰ってこないしな」

「助かる」

 

 ソーは二階の寝室へと案内された。

 

「それじゃ、おやすみ」

「ああ、おやすみ」

 

 士道が出て行き、部屋には静寂が訪れる。

 ソーは電気を消し、窓の側へと歩いて行くと夜空を見上げた。そこには果てしなく広がる星空が見える。

 

「父上、俺は皆の元へ帰るため、そして全てに決着を付けるため、もっと強くなると決意しました。ですが、分からないのです。俺は皆の上に立つ者として相応しかったのでしょうか……」

 

 彼は満点の星空に、そう問いかける。

 だが彼の問いに、答えてくれる者はいない。

 

 

 

 

 

 

 翌日、士道は高校へ、琴里は中学校へと登校して行き、家にはお邪魔している3人が残されることとなった。

 

 朝、白いリボンを付けた琴里を見たソーが、「頭がおかしくなったのか?」と言ったところ、鳩尾にドロップキックをお見舞いされていたのだが。

 

 そんなこんなで時間は過ぎ、現在は3人でソファーに腰掛け、ぼーっとしている。

 

「…………って、ダメだよ! 皆を探さないと!」

 

 ステラがガバッと立ち上がり、2人に向かって叫ぶ。

 

「探すって言っても、どこにいるか分からないじゃない」

「全くお手上げだな。何も出来ん」

「それはそうだけど……」

「いいから座れ」

 

 ソーに促され、ステラはソファーに腰を下ろす。

 

「そうだな。どこにいるかは分からんが、情報の共有くらいは出来るだろう。他の奴らの特徴を教えてくれ。容姿でも性格でも、参考になるだろう」

「そうね、ここで一度全員の特徴を教えておきましょう」

 

 という訳で、行方不明のストーン達の特徴を聞くことに。

 

「えーっと、まずはマイだね。精神を操り、支配してしまう力の持ち主」

「マインドストーンか。あれも厄介な力を持っていたな。そいつはどんな奴なんだ?」

「アホね」

 

 リアが即答する。

 

「もう、リアはそうやってすぐ人の事を悪く言うんだから」

「だって事実じゃない。ウルトロンが生まれたのだって、あの子が興味本位で力を使ったからでしょ」

「た、確かにそうらしいけど……」

「ここ数年問題が起きてなかったのは所有者がまともだったからよ」

「ヴィジョンか……」

 

 ソーが呟く。彼もまた、サノスの犠牲になった1人だ。

 

「いい奴だった。俺のハンマーを持ち上げた奴だからな」

「マイも、彼のことは結構気に入っていたみたい。サノスが近づくたびに警告を出してたみたいだしね……」

「ま、あの子が一番繊細かもね。……アホだけど」

「最後が余計だよ……」

「あ、そう言えばハンマーで思い出したんだけど……」

 

 リアはそう言って立ち上がると、ローテーブルの反対側へと回る。

 

 そして空中で手をかざすと、真っ赤な液体のようなモノが現れ彼女の手を包み込む。

 彼女が手を振り払うと液体も消え去り、そこには鈍い金属の輝きを放つ一本のハンマーが置かれていた。

 

「っ…………」

 

 ソーが少し動揺する。

 

「……なぜ、こいつが存在している?」

「私はあらゆる物質を変化させることが出来る。全てを無に還すことも出来れば、その逆も然りよ。ま、逆を行うためには中身を理解してなきゃいけないんだけどね」

「でもリア、どうしてこれを?」

 

 ステラがテーブルの反対側に立つリアに問う。

 

「彼が迷ってるみたいだから、1番手っ取り早い方法を思いついた訳」

 

 そう言ってリアはテーブルに置かれたハンマーを指差す。

 

「ムジョルニアは王の武器。相応しき者だけが持つことができるもの。ソー、あなた、自分がアスガルドの王として民の上に立つのは相応しくないと思ってるんでしょ? だったら、そいつに聞いてみればいいじゃない」

 

 3人の視線がテーブルに置かれたムジョルニアへと集まる。

 

 

 ソーはゆっくりと手を伸ばし、柄に手を掛けようとして、躊躇う。

 

「ソー?」

「…………くっ」

 

 そんな彼を見てリアはやれやれと呆れた表情を浮かべた。

 

「恐れているわね。もし持ち上がってしまったらどうしようとか、そんなこと考えてるんでしょ? ……まあ、いいわ。それはあなたにあげる。使うかどうかはあなた次第よ。さて、話が逸れてしまったわね。次は誰だったからしら?」

 

 リアはそう言うと、テーブルを回ってソファーに座る。

 

 テーブルの上では何も語ることのないムジョルニアが静かに置かれている。

 ソーはただ、ハンマーを握ることの出来ない自分の手を見つめることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 その後もまだ見つかっていないストーンの情報を共有し、昼は士道が作り置きして行ったチャーハンを食べた。

 

 そして午後。

 時間を持て余した3人は各自思い思いの事をしていた。

 ステラはリビングにあったテレビをつけ、ドラマを見ている。リアは面白がって士道の部屋の捜索。そしてソーは、寝室のベッドに仰向けに寝転がっていた。

 

 部屋の天井を眺めながらリアの言葉を思い出す。

 

 自分は人の上に立つ者として正しくあれただろうか。いや、違う。何故自分がもう役目を終えたような考えになっているのか。

 

 ぐるぐると思考が頭の中を渦巻く。

 

 そうやって考え続け、気付けば2時間が経過していた。

 

「はぁ………………」

 

 彼は溜め息を吐くと、部屋から出て階段を降り、リビングに入る。しかし、散歩にでも出たのだろうか、ステラとリアの姿は無い。

 

 彼はローテーブルに置かれたムジョルニアを見る。

 どっしりとテーブルの上で構えるその姿は、まさに今も自らを持ち上げる者を待っているかのようだった。

 

 ソーはその柄に手を掛けようとするが、どうしてもそれを持ち上げる気になれない。

 

 黙ってその場を離れると、コップを食器棚から取り出して水を汲み、椅子に座る。水を飲んで一息、だが彼の気持ちが晴れることはなく、彼はそのままテーブルに突っ伏した。

 

 外は日が傾き始め、夕日が窓から差し込み始めている。下校する子供達の楽しそうな声を聞きながら、彼の意識は闇へと落ちた。

 

 

 

 

 

 

 トントン、と誰かが自分の肩を叩いている。

 一体誰だろうか。自分は今、こんなにも気持ちよく眠っていたというのに。

 

「……ん、んぁ?」

 

 彼はゆっくりと目を開けると、自分を起こした者の方を見た。

 

「お、起きたか?」

 

 士道がエプロンを着けて横に立っている。

 

「こんな所で寝てると風邪引くぞ」

「……なんだ、別に俺の勝手だろう」

「そうは言ってもだな……。何かあったのか? 気分が良くなさそうだぞ?」

 

 こういう所に気付いてくるあたり、彼は人の感情に敏感なのだろう。ソーは何でもないと適当に答える。

 

 ふと窓の外を見ると、日は沈みすでに暗くなっていた。

 

「もうこんな時間か……。お前、いつ帰った?」

「20分くらい前だぞ。琴里も一緒に帰ってきたからな。……そう言えば他の2人はどうしたんだ?」

 

 ソーは言われて2人が夕方からいないことを思い出す。

 

「そう言えば、俺がここに来た頃には居なかったな……」

 

 2人がそう話していると、玄関の扉が開く音がした。

 

「ただいまー」

 

 どうやら噂をすれば何とやら、というやつだ。

 

「丁度帰って来たみたいだな」

 

 士道はそう言うとキッチンへと向かう。

 一拍置いて、リビングにステラとリアの2人が入って来た。

 

「あ、出て来たんだ」

「何だその言い方は」

「てっきりまだ思い詰めてるのかなー、って思ってたから」

 

 最初に部屋に入って来たリアが、ソーの姿を見つけるなりそう言ってきた。

 

「お前達こそ、どこへ行っていた?」

「街の散策だよ」

 

 ステラがソーの隣に座る。

 

「もしかしたら誰かいるかも知れないと思ったから、一度街の方をぐるりと回って来たんだ」

「ま、結局収穫は無しだったんだけどね」

 

 リアも椅子に座り、今日の出来事を話し始める。

 

「そう言えば、士道は今日訓練だったな。どうだったんだ?」

 

 ソーの唐突な質問にキッチンで料理をしていた士道の動きが固まる。

 

「いや、その、だな……」

「その顔は、何かあったのかしら?」

 

 リアが興味深そうに士道の方を見る。

 

「ええ、それはまあ、ひどい様だったわ」

 

 その時、二階から降りて来た琴里がリビングに入って来た。

 

「あ、あんなの初見でクリア出来るわけねぇだろ!」

「何? 何か文句でもあるの?」

「ぐっ……、でもあんなシチュエーション起こるわけが……」

「そう。じゃ、もしそのシチュエーションが起こった場合はペナルティ二倍ね」

「なっ⁉︎」

「当然でしょう? あなたが文句を言ったのだから」

 

 士道はその言葉に絶句する。何しろそのペナルティというのが……。

 

「ねえ、そのペナルティって何なの?」

 

 ここで士道の訓練に興味を持ったリアが2人の会話に割り込んで来た。

 

「あら、知りたい? だったら明日の放課後、学校に来て見るといいわ」

「本当? じゃあその時間にお邪魔させてもらうわ」

「興味深いな。俺も覗かせてもらおうか」

「じゃあ私も行こうかな」

 

 リアに続き、残りの2人も付いてくることに。

 

「そう、じゃあ入校手続きはこっちで適当にやっておくわ」

「ま、待て! お前ら俺を殺す気か!」

「一体どんなペナルティなのかしら、ますます興味が湧くわね」

「でしょう? もう目が離せないわよ」

「も、もう嫌だ──────‼︎」

 

 リビングに士道の絶叫が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

「うぅ…………」

 

 食器を片付け終えた士道は、1人ソファーに座り込んで落ち込んでいた。

 なぜなら士道の訓練に興味を持った3人が明日の放課後にそれを覗きに来ることになったからだ。

 今日の訓練でさえ、士道の精神パラメータをゴリゴリと削り取っていったというのに、そこにあの3人が加わると思うと……。

 

 士道はそこまで想像して思考を停止した。

 これ以上は考えてはいけないような気がする。

 

「はぁ、憂鬱だ……」

 

 そう言って頭をグデンと、ローテーブルに置く。

 

 ふと、視界に見慣れない物があることに士道は気が付いた。

 

「……何だこれ?」

 

 それはハンマーだった。

 不思議な模様が彫られ、鈍い金属の輝きを放っている。

 

 少なくとも、朝士道が家を出た時点でこれは置いていなかったはずだ。

 となると、今日家にいた3人の誰かの物ということになる。

 

「置き忘れたのか?」

 

 士道は誰かが置き忘れたのだと思い、それを持っていってやろうとハンマーの柄に手を掛けた。

 だがハンマーが持ち上がらず、手を滑らせてしまう。

 

「おっと。ふんっ…………あれ?」

 

 手が滑ったのだと思い、もう一度持ち上げようとする。だがどうやってもハンマーは持ち上がらない。

 

「ど、どうなってるんだこれ?」

 

 それから色々な方法でハンマーを持ち上げようとしたが、結局ピクリとも動くことは無かった。

 

「テーブルが凹んだりしてないよな……」

 

 士道はどうやっても持ち上がらないハンマーでテーブルが壊れないか不安になる。

 だが、テーブルの裏から確認してみても傷などが入っている痕跡は無かった。

 

「大丈夫そうだな。……でも何で持ち上がらないんだ?」

 

 士道はもう一度柄に手を掛け、力を入れて見る。が、やはり結果は同じだった。

 

「まあ、明日誰かに聞いてみればいいか……」

 

 ようやく諦めのついた彼は、電気を消しリビングを後にするのだった。

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