GOD・A・LIVE 〜雷神と宇宙の欠片達〜   作:青空と自然

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第9話 精霊の封印

「士道君が来るまで、持ちこたえるよ!」

「あいつ、生きてるの?」

 

 リアは信じられなかった。たしかにこの目で見たのだ。

 士道がライフルで撃ち抜かれ、倒れるその瞬間を。

 

「信じられないけど、そうみたい」

「そう。……おっと、話してる暇はなさそうね」

 

 十香は折紙が逃げていく姿を見つけると、その方向へと移動しようとする。

 

「行かせない!」

 

 ステラが進行方向に穴を開け、十香を先へと進ませない。

 

「ほんと、損な役回りだわ」

 

 市民の避難が完了していない今、十香を出来るだけこの場に留め、街への被害を減らすことが2人の目的だった。

 後は士道が来るまで持ちこたえるだけ。

 

 リアは周囲一帯に力を使うと、幻影を見せ、折紙の姿を搔き消す。

 

「ああああああああああああああ」

 

 だが【最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)】を持った十香は止まらない。

 その大剣をリアのいる地上に向かって突き刺した。

 

 大爆発が起き、突風が発生する。

 

「うあっ! ……ぐっ!」

 

 何とか避けたリアだが爆風に飛ばされ、斜面を転がり木に激突する。

 

「リア!」

「うっ……、だ、大丈夫、だから」

 

 十香を傷つけずに足止めするというのは、これまた無理な話なのである。

 リアは立ち上がろうとするが、体に力が入らない。

 

 十香の背後に回ったステラは、【最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)】をその空間に固定し、動かせないようにする。

 

「ふん、こんなものっ!」

「うっ、ううう……」

 

 十香はそれを無理やり動かそうと力を込める。

 その力の強さといえば、もう形容しがたいものである。

 

 ステラの表情が歪む。

 

「ふんぬぬぬっ……はあっ‼︎」

「くっ⁉︎」

 

 ついに十香がステラの力を打ち破る。

 

「終わりだ」

 

 冷たく言い放たれた一言。

 大剣が振り上げられる。

 

 ステラは咄嗟に空間を圧縮し、それを自分の前に展開。何とか直撃は免れたものの、勢いを殺せた訳ではない。

 

 ズドオォォォォ──────ン‼︎

 

 ものすごい音と共に土煙が舞い上がった。

 

「………………」

 

 えぐれた地面に横たわるステラ。

 彼女が動く気配はない。

 

「ステラっ‼︎」

 

 ようやく立ち上がったリアがステラの元に駆け寄るが、額から血を流した彼女は動かない。

 

「くっ……」

 

 頭上にいる十香は折紙を探しているのだろう。彼女が逃げて行った方角をじっと見ている。

 だが、見つからなかったのか、今度はリアの方を見て来た。

 

「貴様、私の邪魔をしたな……。シドーを殺したアイツを、逃したな!」

「士道はまだ生きてるっ!」

「嘘をつくなぁ!」

 

 十香は剣の切っ先を真っ直ぐ下に向けると一直線に急降下して来た。

 再び爆発が起き、地面に巨大なクレーターができる。

 

「うっ…………」

 

 リアはステラを抱えるとその場から逃げ出した。その後ろを憤怒の形相で十香が追いかけて来る。

 

 その時──

 

「十香あああああああああああああああああああああぁぁぁぁ‼︎」

 

 空から声がした。

 

 その声に十香の動きが止まる。

 

「シ、ドー?」

「ああああああああああああああああああああっ!」

 

 十香は空から降って来た士道を受け止めた。

 

「ふう、助かった」

「シドー、シドーなのか⁉︎」

「ああ、そうだぞ」

 

 士道は歓喜の表情を見せる十香に笑顔で答える。

 十香は楽しそうに、士道と会話を始めた。

 

 

 

 

 

 

 そんな2人の様子を、リアは山の斜面で見ていた。

 

「へへっ、何とかなったみたいだね」

「ん、起きた?」

 

 リアは膝の上で眠っていたステラを見る。

 

「体は元通りにしたけど、まだあんまり動いたらダメよ」

「ありがと」

 

 見ると、あれだけボロボロだったステラの傷は全て無くなっていた。これもリアの力の一つである。

 

「わお、あの2人ったら、大胆ね」

「み、見ちゃダメだよ!」

 

 見ると、2人が空中で唇を重ねていた。

 

 リアは珍しいものでも見るかのようにそれをじっくりと見ている。ステラは顔を真っ赤にしてチラチラとそちらを見ていた。

 

 そして、十香の霊装が溶けるように消えていく。

 

「士道ったら、なんて早業……」

「あうあう……」

 

 流石にこれにはリアも顔を赤くしている。

 ステラは顔から蒸気を出してリアの膝に顔を埋めてしまった。

 

 こうして一つの事件が終わりを迎える。

 リアはふっと笑みを浮かべると、体の力が抜けていくのを感じた。

 

「ふあぁ……ちょっと、疲れた、から、寝る、わ……」

 

 斜面に背中を預け、瞼を閉じる。

 さっきの戦闘での疲れが一気に襲い掛かり、彼女の意識は一瞬で闇へと落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 日が山に沈み、夜がやって来る。

 先ほど琴里から連絡を受けたソーは、天宮市へと向かっていた。

 何でも精霊が暴れ出したらしく、ステラとリアの2人が戦っているとのこと。

 

 間も無くその現場へと到着する。

 

「これは酷いな……」

 

 現場は凄惨な姿を見せていた。

 えぐり取られた山の斜面や切り刻まれた台地。まるで災害でも起こったかのような、そんな光景が広がっていた。

 

 そして、そんな山の斜面で横たわる2人を見つける。

 

「おい! 無事か?」

 

 だが返事はない。

 斜面に仰向けになっているリアと、彼女の膝の上に横になっているステラ。2人ともすうすうと寝息を立てていた。

 

「…………」

 

 体に怪我は見られないが、制服はボロボロになり、所々破けている。

 

「はあ、仕方ない。……よっと」

 

 ソーはストームブレイカーを置くと、2人を背負って山を降り始めた。

 空には綺麗な星が輝き始める。

 

 ふと高台の公園の方を見ると、士道に抱きつく十香が見えた。彼女の顔はこの上なく幸せそうである。

 

「あいつは上手くやったか」

 

 ソーはふっと笑みを浮かべると、明かりの灯る街へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 どれくらい歩いただろうか。

 景色は変わり、周りには住宅が建ち並ぶ。周りに建つ家を見るに、もう五河家の近くまで来ているのだろう。

 

「……うーん」

 

 背中にはステラ、その上にリアがいる。

 

「ふわあ……あれ?」

 

 近くから声が聞こえることから、目覚めたのはステラの方だろう。

 

「目覚めたか?」

「えっ? ええっ? な、何で私こんなことに?」

 

 ステラが背中でもぞもぞと動き出す。

 

「ば、馬鹿、動くな! バランスが崩れる!」

「あ、ご、ごめん!」

 

 再び大人しくなる。

 

「2人とも山の斜面で寝てたんだぞ。だから回収してきた」

「なんかごめんなさい」

「気にするな。大変だったんだろう? 駆けつけてやれなくて悪かった」

「ううん。ちょっと怖かったけど、リアが居てくれたから」

「そうか……」

 

 ステラは前に回した腕に入れる力を少し強くする。彼を、ぎゅっと、抱きしめるように。

 

「……あったかい」

「帰ったらすぐ風呂に入れよ。そんな格好してると風邪引くぞ」

「え?」

 

 ステラは言われて自分の服装を見てみる。

 制服はボロボロになっており、ブラウスは破け、スカートは大きく裂けて太ももが丸出しになっていた。

 

 顔が熱くなっていくのが分かる。

 

「も、もしかして、見たの?」

「そりゃあ、こうやってお前たちを背負っている時点でだな……」

「ダメ! 今すぐ忘れて!」

「お、おい! だから暴れるなって!」

「うう……」

 

 背中で暴れていたステラが大人しくなったかと思うと、今度は別の気配が動き出す。

 

「んん、……ここは?」

「あ、リア、起きた?」

「お前が騒ぐからだろう」

「わ、私のせい?」

 

 ステラが暴れている間にリアが目を覚ましたようだ。

 

「何これ、どうなってるの?」

「ええっと、ソーの上にわたしが乗ってて、その上にリアが乗ってる、ていう状態かな?」

「そう、悪いわね。重くない?」

「ああ、これくらい何ともない」

 

 ソーはハルクとも張り合うくらいのパワーを持っている。ステラとリアを背負ったくらいでは、どうということは無いだろう。

 

 そうしているうちに、家に到着する。

 だがここで彼は問題に気が付いた。

 

「俺は鍵を持ってないぞ」

「リアは持ってる?」

「私が持ってる訳ないでしょ」

 

 帰って来たのはいいが家の鍵がない。試しにインターホンを鳴らしてみるも、家に人がいる気配は無い。

 

「あー、琴里に連絡してみるか……」

 

 ソーはポケットから携帯を取り出し、琴里に電話をかける。数コールの後、彼女は電話に出た。

 

『あ、もしもし、あなた達、今どこにいるの?』

「家の前まで来たんだが……」

『そんな所にいたのね。2人も一緒?』

「ああ、そうだ」

『2人とも怪我してない? これから〈フラクシナス〉で治療も出来るけど……』

「……だそうだ、どうする?」

「怪我はもう大丈夫だから。それに、さっきのあの子と顔を合わせるのもちょっと気まずいしね」

「私も同意見よ」

「ということらしい。取り敢えず、鍵を開けてくれないか?」

『そう、分かったわ。ちょっと待ってて貰えるかしら?』

「ああ、分かった」

 

 そう言って電話を切る。

 

「お前達、寒くないのか?」

 

 ソーがステラとリアの格好を見て問う。

 

「少し、肌寒くなって来たかな……」

 

 ステラが肩を抱いてそう言う。と、リアがニヤリとイタズラな笑みを浮かべた。

 

「そんなステラは、少し温まって来なさーい」

 

 そう言ってステラを押す。

 

「わわっ!」

「おっと」

 

 リアに押されバランスを崩したステラをソーが抱きとめる。

 ステラはソーに体を預けるような体勢になってしまった。

 

「ソー、ちょっと彼女を温めてあげて」

「温める?」

「ちょっ、ちょっと、リア!」

「そのままこうやって……はい、完成」

 

 そう言ってリアはソーの腕を持つと、ステラの体に回してやる。

 結果、ソーがステラを抱きしめるような格好になる。

 

「ううっ……」

「これが本当の人間ホッカイロね」

「寒くないか?」

「大丈夫……」

 

 ソーはステラを温めながら、空を見上げる。

 

「見てみろ。今日も星が綺麗だぞ」

「この世界にはどんな人たちがいるのかな?」

 

 ソーの腕の中でステラは空に輝く星を見る。

 

「さあな。いつか行ってみるのも、悪くないかもしれん」

「へっ、へっくち!」

 

 その時、2人のそばにいたリアが小さくくしゃみをした。

 

「なんだ? お前も寒いのか?」

「べ、別に……」

「リア、ダメだよ、無理しちゃ。ほら、こっちに」

「あ、ちょっと……」

 

 そう言ってステラはリアの袖を引っ張ると、自分の隣に入れさせた。

 まるで3人で温めあっているような格好になる。

 

「どう? あったかいでしょ」

「そ、そうね。悪くないわね……」

 

 リアは恥ずかしそうにソーの腕の中で小さくなっている。

 

 しばらくそうしていると、誰かがやって来る足音が聞こえて来た。

 

「3人共、いるー?」

 

 家の門を開けてやって来たのは琴里自身だった。

 玄関の前で抱きしめ合っている3人を見て、琴里は一瞬硬直する。

 

「……な、何してるの、あなた達」

「人間ホッカイロというらしい。3人でやると、結構あったかいぞ。お前も今度やってみるといい」

 

 ソーが呑気にそう答える。

 腕の中の2人は顔が赤いような気もするが。

 

「そ、そう。家の鍵を持って来たから、あなたに渡しておくわね。私はまだやらなくちゃいけない事があるから」

「そうか、ご苦労だな」

「ええ、それじゃ」

 

 琴里はそう言ってソーに鍵を渡すと、また来た道を戻っていった。

 最後に、「私もお兄ちゃんとやってみれば……いや、ダメよ」と何やら呟いてはいたが。

 

「よし、鍵も手に入った。家に入るぞ」

 

 ソーは2人の肩を叩くと玄関の鍵を開け、中に入って行った。

 

 

 

 

 

 

「ふう……」

 

 やはり疲れたときのお風呂というのは、体の奥底まで染み渡るようなこの温かさが良い。

 

 浴槽には2人のシルエットがある。

 

「はぁ、他の皆はどこにいるのかな……」

「さあね。この広い世界であの個性的な子達を探すとなると、骨が折れるわ。ソーには感謝しないとね」

「大丈夫かな……」

「まあ、1人を除けば、見つけさえすれば付いて来てくれると思うけど……。そこが1番不安だわ」

「そ、そうだね」

 

 リアはぼーっと立ち昇る湯気を眺めながら、行方不明のストーン達を思い出す。

 

「それにしても、精霊ってあんなに強いんだね」

「はぁ、嫌な事を思い出したわ」

 

 リアは先程の戦闘を思い出す。

 彼女はあと一歩の所であの巨大な剣の犠牲になるところであった。ステラが居なかったら、今頃彼女はどうなっていたか分からない。

 

「ふっ……。ステラ、今日はありがとね」

「へ?」

 

 突然の感謝の言葉にステラは不思議そうな顔をする。

 

「別に、私が言いたかっただけよ。さ、体を洗いましょ。背中、流してあげる」

「あ、ちょっと……」

 

 リアはステラの手を引くと、浴槽から彼女を引っ張り上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 その頃リビングにて。

 

 ソーは1人、地図の冊子を開いていた。そこには沢山の印が付けられている。

 

「この国1番の都市でも反応は無しか……」

 

 地図に罰を付けながら、次の目的地を決める。

 

「だが、常に移動していることも考えると、また戻って来る可能性も……」

 

 そう言って開いたのは天宮市の位置。

 

「一応あいつらにも協力を頼んでおくか」

 

 彼はパタリと冊子を閉じると、ソファの背もたれに体を預けた。

 

「目指すは南だな」

 

 彼はそう呟くと、その場で目を閉じる。

 

 まだ見つかっていないストーンを探すこと。それが自分の役目である。そう心の中で繰り返すが、やはり今日の光景が蘇ってしまう。

 

 斜面に横たわるボロボロになった2人。

 自分がいない間にこういった事件が起きる可能性があるのだ。

 

「自分のあるべき姿か……」

 

 彼は1人、悩み続ける。

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