疾風に想いを乗せて   作:イベリ

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第8話:少数精鋭部隊

「急げ!あの馬鹿者を探せッ!」

 

「あぁ!もう!どうしてウチには馬鹿ばっかなの!?」

 

4人は、破竹の勢いで下層へ進む。

その強行軍の中、リヴェリアは考え続ける。

 

(どこへ向かった…!?一体どこに!下層なのは確か!18階層で情報収集を行った後にすぐ様行動に移すしかない…!)

 

リヴェリアは、奥歯を噛み締める。

ベルが他人と距離を置き続けたあの意味が、覚悟の上だった事、アイズとそれほど変わらぬ少年が、背負っている運命を呪った。

 

「どけぇぇえぇぇ!!!!!」

 

荒れるティオナは、ベルの手紙の最後の文が、許せなかった

 

「誰が誰を嫌いだって!?絶対許さない!!私の気も知らないで!勝手に思いこんで!一発殴ってやる!」

 

「やめなさい!あの子死ぬわよ!?」

 

「…でも、皆怒ってるのは事実!お説教はする!無茶したら…リヴェリアも…私も」

 

「やけに実感籠もってるわね…その発言…!」

 

三人もリヴェリア同様、キレていた。

 

「あぁ!私も同感だ!このまま18階層に強行する!全員急げよッ!」

 

「「「了解!!!」」」

 

四人は、ダンジョンを駆け抜ける。

 

 

 

 

 

「まさか、貴女が来てくれるとは…しかし、頼もしい限りだ。」

 

「私も、お前が来るとは思っていなかったよ『疾風(リオン)』。私もお前がいるならば頼もしい。」

 

「シャクティ、リューと知り合いなの?」

 

24階層の入口、そこでベルは協力者に尋ねた。それに答えるのは、ハシャーナと同ファミリア、そしてその団長。

 

シャクティ・ヴァルマ。Lv5の第1級冒険者。称号を【象神の杖(アンクーシャ)】、ベルが知る中で恐らくは五本の指に入るレベルで強い人物だ。

 

「…あぁ、まぁな。付き合いは6年を超えている。あと…ハシャーナの件だが…ありがとう。アイツは…いつもお前を気にかけていた。」

 

「シャクティ…ううん。僕こそ、ごめんなさい。結局、ハシャーナの遺品しか持っていけなかった…」

 

「十分だ。冒険者はなにも残らないことだってある。」

 

「仇だって…まだ取れてない…」

 

「……」

 

シャクティは、この少年の事が前から気にかかっていた。出会ったのは、偶然検問にいたベルを対応した事だ。初めは、どこにでもいる少年だと思った。少し内気で、何かを秘めているのはわかっていたが、それだけ。しかし、悪い子ではない。それが最初の印象。しかし、蓋を開けてみれば、見る見るうちにLv3まで上り詰め、超新星として話題を攫った。

 

そのベルに、シャクティは危うさを感じていた。歪な程に復讐に燃え、恐怖を覚えるほどに執着している。

 

この少年は、どこに向かっているのだろうか?

 

シャクティは、そんなことを考えるが、頭を振って思考を切り替える。

 

「…24階層のパントリーか…」

 

「シャクティ。貴女は今回の事件どう見ますか…?」

 

リューに問われたシャクティは、顎に手を当てて考え始める。

 

まず、このモンスターの大量発生は偶発的に起きた事なのか、という事だ。しかし、それは有り得ない。偶発的にこんなことがか起きているとしたら、ダンジョンは今頃誰も入れていない。

 

「…まず、偶発的に起きたと言うことは有り得ない。何かが起きているのは確かだ。」

 

「えぇ、私も同感です。…それの正体が、パントリーにある…そういう事でしょう。」

 

2人が考察をしていると、先頭のベルが立ち止まる。

 

「クラネルさん…?どうしました。」

 

「…すごい数…」

 

24階層、渓谷が広がるその階層。ベルが覗くその渓谷に広がっていたのは、無数のモンスター達の大行進(パレード)

 

「これは…問題になるのは確かですね…しかし、邪魔ですので、片付けるしかありません。」

 

リューが立ち上がり、木刀に手をかける。しかし、それをベルがリューの手首を掴む。

 

「僕に、やらせてくれ。」

 

リューが目を見開き、ベルに聞き返す。

 

「…一人でやると?さすがに無茶です!」

 

「平気…新しいスキルも試したい。」

 

そう言って、ベルは崖下に飛び降りる。

 

「待ちなさいっ!クラネルさんッ!!」

 

「やらせてやれよ。」

 

すぐ様飛び降りようとするリューを、ヴェルフが止める。キツく睨むリューに、ヴェルフはおどけたように肩を竦める。

 

「…何故止める【赤匠】…!」

 

「いいから、見てろよ。」

 

「一体何を言って────」

 

そう言って、ベルの方向を見やる。そこで、リューは驚愕した。

大剣を最小限の動きで振り抜き、三体同時にモンスターを仕留め、速攻魔法で複数を仕留め続けるベルがいた。

 

その動き、判断力は以前とは断然に違い、既に()()()()()()()()

 

ベルがモンスターを仕留める。

 

モンスターに振るわれる自然武器ですら、無造作に腕で受け止め、握り潰す。

 

「なるほど…中々に上がる。」

 

昇華したステータス。そして、新たなスキル。

それは、今の状況で使うにはうってつけ。試しの機会には丁度よかった。

 

ただ1人、ベルは戦った。あの男────オリヴァス・アクト、レヴィスとの戦闘でも。ただ一人、ベルはあの二人を本気で殺しに行っていた。

 

ベルは、失った。だから、孤独に戦い、死ぬ道を選んだ。もう、悲しまないように。

 

その姿、正に孤高にして孤独。

 

その偉業に、その未知に、運命が与えたスキルは、強力にして残酷なものだった。

 

【孤軍奮闘】

・単独での戦闘時、ステータスを昇華、及び自身のスキル効果を上昇

・味方の戦闘介入時、1段階強化が解除され、味方の人数により強化制限

・自身よりも強力な敵との戦闘時、その力量に応じてステータス、スキル効果を上昇

・スキル使用時、被ダメージ増

 

このスキルを用いて、モンスター共を蹂躙する。

そんな蹂躙劇のさなか。あるものが目に入る。

 

「……」

 

それは、下半身・上半身を失った冒険者達の亡骸。モンスターの大群から逃げ遅れたのだろう。ベルは、亡骸に貪りつくモンスターを叩き殺し、2つの死体をそのままに詠唱を始める。

 

「【轟け、雷鳴(我が名)雷鳴(我が怒り)】」

 

それは、その冒険者たちに対する、せめてもの弔い。

ベルの右手に黒い光が溜まり、チリン、チリン、と鈴の音を鳴らす。

 

「【其は、(カラ)の境界を穿つ断罪の雷霆(ヒカリ)。】」

 

約20秒のチャージ。ベルのスキル【無慈悲な復讐(グリム・リベンジ)】のチャージ能力の効果は、昇華したステータスとスキルにより、短く、素早くなった。

 

「【雷鳴の賛歌、天の勝鬨、即ち王の証明。霊王たる我が名は【天雷霊(アルクメネ)】、 我が制裁こそ天の意思─────墜ちろ。】」

 

このまま魔法を放ち、雷を落とすのは簡単な事だ。しかし、ベルは考えた。

 

雷の落ちる方向を決めることは出来ないのか?

 

指定した場所に落ちるのなら、指定した方向にだって出来るはず。

 

ベルは、渓谷に挟まれた崖を進むモンスターの大群に向けて、その指先を向ける。

 

 

 

「【雷霆(ケラウノス)】」

 

 

 

瞬間、ベルの指先から、極光が一閃した。音の壁を突き破り、ただ光の線を残し、渦巻く雷霆が全てを飲み込む。冒険者の死体すらも灰に変え、モンスターを、地形を瞬く間にその熱量で溶かし、一瞬の合間に消し飛ばしていく。

 

その雷霆が過ぎ去った後には、もはや生物は存在せず、広がっていた渓谷地帯も漏れなく吹き飛び、ベルの目の前にはドロドロに溶けた更地が広がっていて、ただベル1人が立っていた。

 

「……死体は持って帰れない…モンスターの餌になるよりも…いいや、言い訳だ。ごめんなさい…恨むのなら……」

 

ベルは、目を閉じて祈祷を捧げた。

 

その様子を見ていたリューは、違和感を感じる。

 

彼は、あそこまで他人の死に興味があっただろうか?ダンジョンに共に潜った時、死体を見た時の憐憫の感情はあった。しかし、あんなにも慈しむように祈った事があっただろうか?

 

何かが、違った。ベルの目が、ベルの瞳に宿る光が

 

あれは────あの目は、まるで…

 

「強いだろ。アイツ。」

 

そこまで考えていたところに、ヴェルフが言葉を差し込む。

 

「…えぇ、見違える程だ。少し見ていない間に…しかし、あれでは…!」

 

 

 

 

「壊れに行っている────だろ?」

 

 

 

 

そこまで分かっているのに、何故…!

 

リューの口からでかかった言葉は、ヴェルフの次の言葉で掻き消された。

 

「俺はなぁ、鍛冶師だ。特に、魔剣に関しちゃその辺の鍛冶師にゃ負けねぇ。」

 

「…えぇ、そうでしょう。貴方はクロッゾの血を持っている。」

 

何を言っているんだ。当たり前の事を。

目の前のヴェルフを睨む。しかし、ヴェルフはそれも気にせずに続けた。

 

「アイツはな────魔剣なんだ。」

 

「…は?」

 

「もちろん、あいつ自身が魔剣って意味じゃねぇぞ?存在が似てるって事さ。アイツは、このまま行けば必ず死ぬ。誰の忠告も聞かず、ただ砕け散る。」

 

ヴェルフが見ていたベルの在り方。それは、正に魔剣そのもの。使えば使う程摩耗していき、いつかは砕けてしまう。

 

「そう…俺は鍛冶師だ、誇りがある。武器を治すことは出来る。どんなに消耗していても、元があればまた輝かせてやれる。だが、魔剣(アイツ)は違うんだ。いくら折れない魔剣を打てても…そんな俺でも、アイツと言う1本の()は、どうやっても…折れない魔剣には出来なかった…」

 

ヴェルフは、諦観したその目をベルに向けてから、リューに視線を移した。

 

「だから、って訳じゃねぇが…俺は、お前みたいなエルフが居ることが嬉しかった。アイツが心を許せて、側にいて、こんな頼みまでするほど信用したエルフ…ちょっぴり、悔しいが…お前さんはベルの特別なんだろう。」

 

「それは…どういう…?」

 

リューの言葉に返事をせずに、ヴェルフはベルの元に行った。一体なんだったのだろうか。

 

近くに寄ってきたベルが、リューに質問を投げかけた。

 

「リュー、僕は…強くなった?」

 

「…え、えぇ…もしかしたら、もう私よりも強いかもしれない。」

 

「…本当?」

 

そして、ベルの感情のない真顔が、まるで最後の、死ぬ間際に見せる様な顔で、悲しくて、辛かった。

 

「…これで…僕は、1人でも────」

 

その言葉が、心に刺さった。

 

リューは、思わずベルの手を取った。その事に、シャクティもヴェルフも一様に目を丸くした。

 

「貴方は、決して1人ではない。もし…1人になったのなら、思い出しなさい。貴方には、私がいる(・・・・)。だから、どうか…無茶だけは、しないで…」

 

リューの懇願に、ベルはただ無感情に頷いた。

 

「……わかった…なるべく…君の事を考えるよ、リュー。」

 

「えぇ、約束です。」

 

そう言って、リューも微笑んだ。

その笑顔を見て、ベルは鼓動が跳ねた事を感じた。

 

「…リューは、もっと笑った方がいいね。」

 

「え…?」

 

 

 

 

「────君の笑顔は、綺麗だから。」

 

 

 

 

そう言って、今日初めて微笑んだベルの顔は、優しくて、暖かい微笑みだった。

 

リューは、自身の顔に熱が篭もることを感じた。

普段、仏頂面のリューの口元が、ほんの少しだけだらしなく歪む。それをフードとマスクで隠して。どうしてか、必死に少年から目を逸らしてしまう。鼓動が速かった。

 

「…リュー、なんで顔隠すの?」

 

「な、なんでもありません。えぇ、なんでも。」

 

「……?」

 

わからなそうに首を傾けたベル。その後ろで、口元を押えて肩をヒクヒクと揺らす、ヴェルフとシャクティの姿。リューは、また頭に血が上ったが、やはりやめた。

 

こんなに赤い顔を、この少年に見せないように。

 

 

 

 

「ボールス!ボールスはいるかッ!!」

 

リヴェリアが、18階層の大衆酒場に入り、怒鳴るように声を上げながらボールスを呼び出したのは、ベルが18階層を発ってから、数時間後。

 

「おぉおぉ、なんだよ…って、またおめぇらかよ!?今度はなんだってんだ!」

 

「ベルだ。」

 

「は?」

 

「ベルを見たかと聞いているんだ!」

 

その鬼気迫る表情に、何か違和感を感じたが、ボールスは思い浮かべた。

 

「な、なんだよ…ベル…【迅雷】の事か?」

 

【迅雷】それは、ベルの称号。ロキが前回の神の集会で勝ち取った称号。

 

突如舞落ちた雷の様に衝撃を与え、神々の未知を刺激したベルに対して、面白みをもって付けられた称号。

 

しかし、今そんな事はリヴェリア達にはどうでも良くて、ベルの足取りだけが気掛かりだった。

 

ボールスがこの街を仕切っているからと言って、全てを知っている訳では無い。

 

「…わからねぇなぁ…見ちゃいねぇぜ。」

 

「くっ…そうか…」

 

「ほんっとにこういう時に使えない男ねッ!」

 

「んだとコノヤロウ!────あ、でも変な連中は見たぜ?フード付けた集団でよ…1人は義手なんか付けてやがっ!?」

 

その言葉をボールスが言った瞬間に、リヴェリアがボールスの胸倉を掴み、睨みながら淡々と語った。

 

「言え」

 

「ひ、ヒィ!?」

 

「言えと、言っている。」

 

ボールスは、Lv6の殺気とも取れる威圧を受けて、完全に腰を抜かしていた。

 

「あ、アッチだ!リヴィラの街外れだ!た、多分あの方向は…そうだ!【黄金の穴蔵亭】がある!多分そこなら何か知っているかもしれない!」

 

ご苦労。そう言わんばかりに、リヴェリアは雑にボールスを放り投げると、すぐ様ボールスが指した方向に向かって走り出す。3人もそれに続き、酒場を目指した。

 

 

 

 

「────もう契約外だから構わんか…あぁ、来たぜ。」

 

「本当!?」

 

【黄金の穴蔵亭】の寡黙な店主は答えた。ティオナが乗り上げるように前のめりに店主に迫る。それを鬱陶しそうに見た店主は、ティオナから避けるように酒棚の整理を始める。

 

「いつここを出た?」

 

「……4時間くらい前だな。」

 

「1人か?」

 

「いいや?エルフの女が1人、あとは赤髪の…ありゃ【赤匠】だな。後は【象神の杖】と24階層に向かうと言っていた。」

 

「…24階層…まさか、パントリーか?」

 

リヴェリアは、最近起きていたモンスターの大移動についての情報を思い浮かべた。

 

(あの赤髪の女に、レフィーヤを殺した男…偶然では片付けられないか…)

 

リヴェリアは、粗方を頭の中で整理して、行動に移す。

 

「24階層のパントリーに向かう!恐らくそこに、ベルがいる。私達なら、急げば2時間────いいや、場所を絞れれば1時間で着く!急ぐぞ!」

 

「「「わかった!」」」

 

4人が急ぐ中、店主がリヴェリアを止めた。

 

「おい。お前さんは、あの坊主と親しいのか?」

 

「…ある程度はな。それがなんだ?」

 

「んじゃあ、義手を付けた小娘(・・・・・・・・)を知ってるか?」

 

「義手をつけた娘…?」

 

ベルとは、親交関係の話を度々していた。しかし、その中で「義手を付けている」人間の話は出て来なかった。

 

「『その少年がどこに行ったかわかるか?』そう聞かれた。」

 

「種族は?」

 

「さぁな。フードを深く被っていたんでわからん。しかし、だいぶ若く感じたな。…それに、どうも気にかかってな…」

 

名前で呼んでいることから、ある程度の親しさが窺えるが、そんな人物は1人も聞いたことがなかったリヴェリアは、思案を停止させる。

 

「…とにかく、頭の隅に置いておく。協力感謝する。」

 

それだけ言って、リヴェリアは急ぎ店を発った。

 

 

 

「なんだこれ…シャクティ、この先にパントリーがあるんだよね?」

 

「ああ…だが、こんなものは無かった…」

 

いま、ベル達の目の前にある通路を塞ぐように、肉の壁の様な物が聳えていた。ベルは、それに手を当てると、ドクンッと言う、鼓動にも似た脈動を感じ取る。そして、確信した。

 

「……この先に…奴がいる。」

 

確かに、感じ取っていた。奴が────オリヴァス・アクトがいる。憎き怨敵が、すぐ向こうにいる。

 

ベルの体に、稲妻がパチッと迸った。

 

そんなベルに、リューが背中に手を当てて。優しく語りかける。

 

「落ち着きなさい…クラネルさん。逸ってはなりません。冷静に、貴方の怒りの手綱を握りなさい。」

 

「怒りの、手綱を…?」

 

「えぇ、貴方にとって怒りとは原動力だ。その怒りは正しい。だから、正しく使いなさい。決して飲まれてはいけません。」

 

リューの言葉に、ベルは肺いっぱいに息を吸った。

 

「………わかった。」

 

迸る雷を奥の奥にしまい込み、ベルは懐から緑色の結晶を取り出し、それに声をなげる。

 

「フェルズ、聞こえる?」

 

『────あぁ、ベル・クラネルか。聞こえている。現在の状況を報告してくれ。』

 

(この声は…)

 

リューは、結晶から流れる音声を聞いて、ある人物を思い浮かべた。過去、自身が復讐を行っていた最中。あの災害(・・・・)を口止めした人物の声。

 

「パントリーに向かう正規ルート上に、シャクティですら見覚えのない障壁がある。」

 

『了解した。後発隊にも伝えておく。先に突入してくれ。』

 

「了解、これより突入する。」

 

通信を切り、ベルが障壁の目の前に立つ。

 

ダンジョンに突如現れた巨壁。この中の誰もが息を殺し、この先に潜む闇に、固唾を飲んだ。

 

ベルの手から伝わる鼓動。ただそれだけが、やけに大きくベルの耳朶を叩き、煩わしさを加速させる。

 

その心さえ、命取りになりかねない。この先は、きっとそういう場所。

 

ゆっくりと、ベルの中で燃え上がる黒い炎が、火の粉を巻き上げ薪を欲する。

 

 

────あぁ、すぐに焚べてやる。

 

 

復讐を達成すること。ベルが生きる意味は、最早それのみ。

自身の復讐を捨て、誰かの為に剣を振るう。

 

 

 

────僕の命で、奴を殺す。

 

 

 

その決意だけで、ベルはこの場に立っている。

 

いいや、立たなければならなかった。

 

 

「準備は?」

 

「平気だ…いつでも構わない。」

 

「問題ありません。私が背中を守ります。」

 

「遊撃は任せとけ!とっておきもあるしな。」

 

全員が全員、何かに特化している。

 

このパーティーなら…もしかしたら…

 

ベルはそっと微笑んだ。

 

 

 

 

「…行こう」

 

 

 

 

ベルが、その巨壁に指先を向けた。

 

 

「────【雷霆(ケラウノス)】」

 

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