疾風に想いを乗せて   作:イベリ

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第9話:疾風迅雷①

「…変な感覚だ。柔らかい床…どうも気持ち悪い…」

 

ベル達が進むその通路は、今までのダンジョンとは打って変わって雰囲気や、空気がガラッと変わった。

赤い肉壁に淡い光。ブニブニとしたその感触が、どうにも気持ち悪かった。

 

「なぁ…なんだかモンスターの腹の中を進んでるみたいに感じないか?」

 

「やめろ【赤匠】…そうにしか見えなくなってきたじゃないか…」

 

気味が悪そうに、顔をしかめるシャクティは周りを警戒しながらベルの隣を歩く。

 

「しかし…気味が悪いのは確か…異様なまでの静けさも…不気味だ…正規のマップが意味を成さない。」

 

そんな魔窟を進む一行、マッパーと警戒を同時にこなすリューは、変わり果てたダンジョンに限りない胸騒ぎを抱えていた。

ベル、リューを含めたこのパーティーは、冒険者であれど『完全な未知』に挑んだことなど、殆ど無い。地図があり、モンスターを知り、対策を練ることができる。しかし、今この状況は『その完全なる未知に挑む』事に他ならない。役に立たない地図、どんなモンスターが出るかもわからない。ほんの少し判断を誤れば、その先はすでに断崖絶壁。ちょっとした事で、理不尽な死など溢れかえっている。

 

四人は、その意味を理解し、気を引き締めた。

 

「…止まって。」

 

ベルの合図で、全員が周囲の警戒度を最大限まで上げる。

目線の先にあったのは、灰の山。何者かがここを通り、モンスターを片付けた痕跡。

 

「…灰溜まり?ドロップアイテム…魔石はどこだろ…?」

 

そう言って、灰溜をまさぐったと同時だった。

 

 

 

 

 

「────上です!クラネルさん!」

 

 

 

 

 

その声を聞いた瞬間、ベルの行動は速かった。

 

自身の上を見ることもなく、ただ上に飛び、剣を振るう。それは、信頼の証であり、その信頼の深さを伺わせる。彼は、わかっていた。己が信頼を寄せるエルフは、どこまでも実直で、誠実で、真面目で、何よりも、正しい事を。

 

一薙で数体の食人花を斬り払ったベルは、残りの個体を壁を蹴り、縦横無尽に空中を飛び回り、次々に斬り伏せる。しかし、次から次に肉壁からあふれるように出現する。

 

そこに、シャクティが叫んだ。

 

「ベル!ここは私と【赤匠】に任せて先に進め!」

 

「シャクティ…!でも!」

 

「コイツらが相手ならば、何体来ようが敵ではない!クエストの目的────お前の目的を忘れるな!」

 

「…!」

 

ベルは、奥歯をグッと噛んだ。ここで、何をすべきなのか。

ここで消耗することではないことは確かだった。

 

ベルは、決断する。

 

「ここは任せる!ヴェルフ!魔剣を2本くれ!」

 

「おうよ!持ってけ!そいつも壊れねぇが、俺が使わねぇとただのクロッゾの魔剣だ!気をつけろよ!」

 

「十分!リュー!これを!」

 

「はい。…まさか、私がこの魔剣を持つことになるとは…!」

 

ヴェルフが投げたナイフ型の魔剣と直剣型の魔剣をしっかりと懐に括りつけ、駆け出す。

だが、ベルはそれで納得するような男ではない。

 

「置き土産だ…!」

 

先程の戦闘中に溜めていたチャージを行使し、ヴェルフ達の後方に指先を向ける。

 

「【雷霆(ケラウノス)】!」

 

約五秒のチャージによって強化された雷霆が、無数の食人花を焼き尽くす。

置き土産を置いていったベルの背を見ながら、ヴェルフは快活に笑う。

 

「ハッハッハッハッ!景気が良いな!んじゃあ、こっちも行くかねぇ!」

 

「脚を引っ張るなよ、【赤匠】!」

 

「誰に言ってやがる!」

 

そう言って、ヴェルフは自身が創作した最高の一振りを振り回す。

 

「こちとら、あのベルに武器の使い方を教えたんだぜ?あいつにばっかりいい格好させられねぇよなぁ!!」

 

「そう来なくてはな!」

 

二人が、互いの背後に迫った食人花を斬り伏せる。

 

「オラ、喰らえ!煌月(かづき)ぃいいいいいいいい!」

 

ヴェルフが振るう大剣から、濁流のように吐き出される紅蓮。その大炎流をもってして半数を削る。

 

魔剣、それは必ず折れる。しかし、この男。ヴェルフ・クロッゾが打ち鍛えた魔剣は折れない(・・・・)。そして、何よりも恐ろしいのが、その威力。正にそれは、精霊の奇跡。正にそれは、神の一撃が如く敵を撃滅する。本職の魔道士が卒倒するレベルの大砲撃を弓矢の様に撃ち放つ。

そんなヴェルフのことを、神々は口を揃えてこう叫んだ。

 

 

 

《公式チート》

 

 

 

振り回した大剣を、肩に担ぎながら、ヴェルフはグッと拳を握った。

 

「おっしゃあ!マジックポーションもタンマリもってきた!移動砲台として存分に使え!」

 

「あぁ、使わせてもらおう!────焼き払え!」

 

「任せろォォ!!!」

 

炎が、空間を飲み込む。

 

 

 

 

駆けるベルとリューは、何も敵襲がないことに違和感を感じるも、ただまっすぐ進む。

ベルは、結晶に向かって叫んだ。

 

「フェルズ!後発隊は今どこだ!」

 

『先程君たちが見ていた肉壁の近くだ。何かあったか?』

 

「敵と交戦。協力者の二人を置いて来た!至急そっちに応援に行って貰いたい!」

 

『わかった、報告しておく。気をつけてくれ。』

 

そのままベルは、乱暴に通信を切って、また我武者羅に走り抜ける。

 

しかし、嫌な予感が収まらない。

 

(なんだ…、この嫌な予感は…!拭えない、拭いきれない…!)

 

隣を走るリューにチラリと目線を向ける。

 

リューは強い、レフィーヤよりも近接と言う点において、圧倒的に。あの男相手でも、自分も合わせれば恐らくは圧倒できる筈だ。なのに、不安が拭いきれない。

 

あの光景がまた頭を過る。レフィーヤの顔が。すっかりと固まり、冷たくなってしまったあの感触が、はっきりと蘇る。その顔が、リューと入れ替わった。

 

その瞬間に、吐き出しそうになる。逆流してくる胃酸を堪えるように飲み込んだ。

 

「…クラネルさん、止まりなさい。」

 

リューの声に、機械的に止まったベルは、逸る気持ちを抑えながら、流れる血に気付かずに唇を噛みちぎっていた。

 

垂れる雫に気づき、ベルを落ち着かせる為に止まりベルに近寄る。

 

「ハァッ…ハァッ…ッ…!」

 

「クラネルさん…クラネルさん。私を見なさい。」

 

目の前にある、リューの顔に驚いたように荒らげていた息を止めたベル。

 

緊張、恐怖、後悔。全てが綯い交ぜになってゴチャゴチャの心は、ついひと月前まで戦いを知らなかったベルには、知らない物で、人生で初めて経験する事だった

 

「────あ…なに、リュー…?」

 

リューが、今まで以上にベルの懐に近寄り、頬に両手を当て、少し高い位置にあるベルの瞳を自身の瞳に合わせるように寄せて、額を合わせた。

 

「怖いですか?」

 

「…」

 

「逃げても構いません。不用意な冒険はただの無駄死にです。」

 

「でも、それじゃあ…!」

 

「それは貴方の心か。」

 

その言葉が、妙にベルの耳を叩いた。

 

「貴方は無知だ。無垢、純粋と言ってもいい。貴方は色々な事を知らな過ぎる…しかし、一つだけ知っている感情がある。それが復讐心だ。貴方は知らない感情や情報を、憎しみに無理やり変換しているに過ぎない。」

 

「────」

 

図星、だった。

 

ベルは、ロキ・ファミリアに入って、オラリオに来て知らない事を知った。いいや、思い出してしまった。

 

 

誰かと笑い、誰かと生きる喜びを。共に歩み、共に悲しみ、誰かと日々を生きる嬉しさを。

その感情は、ベルには不要なものであり。古く忘れ去った物であり。懐かしい感情で、酷く困惑した。

 

知っている物(憎しみ)だと思いたかった。

 

この暖かい感情が、黒い物(憎しみ)であるはずは無いのに。

 

ベルはそう自覚した途端に、怖くなった。

 

次はなにを奪われる?次は何を犠牲にして自身の炎を燃やせばいい?死にたくない。死んで欲しくない。

 

怖い、怖い、怖い

 

本当に2人で勝てるのか?

 

不安が頭を駆け抜けた。しかし、それと同時に心の中に存在する、黒い自分が語りかけるのだ。

 

仇をとれ。

 

お前が今までレフィーヤにしてきた冷たい態度。彼女は傷ついただろう。最後まで彼女のことを見なかった。後悔はないのか?憎しみは無いのか?ほんの少しでもあるのなら、彼女の仇を取れ。それが彼女に対する、最大の弔いなのだから。

 

耳元で囁かれるように、聞こえてくる幻聴。

 

その瞬間、ピタッと震えが消えた。

何事も無かったかのように、怖かったことが嘘のように、全て消えた。

 

ベルは、虚ろになった瞳をリューに向けてから。肩にあるリューの手に自身の手を翳す。

ベルの様子に、リューは違和感を抱く。

 

「クラネルさん…?」

 

「……行こう。」

 

「…はっ?」

 

リューは、素っ頓狂な声を上げる。先程まで震えていた少年が、急に覚悟を決めた様に震えが止まり、目の光が消えたのだ。

 

「まっ、待ちなさいクラネルさんっ」

 

「リュー」

 

ピクっと、リューが肩を揺らす。

 

「頼む」

 

それだけを呟いて、ベルは歩を進めていく。

呆気に取られたように目を見開くリューは、困惑した。

 

なにを言えばいいのか、自分でもわからない。でも、なにを言えるかも分からない。自身の貧弱な語彙力が憎らしかった。だから、心にある物を、そのまま口に出す。

 

「…っベル(・・)!」

 

「…リュー…?」

 

急な名前呼びに驚き、ベルは振り返る。すると、リューが微笑んだ。何よりも、綺麗に。

 

「何度だって…私は、言います。貴方は一人ではない…私がいます…それを、忘れないでください。」

 

「……」

 

俯いたベルは、小さく笑ってまた歩き出す。

リューはそれを見届けてから、満足げにベルの背中を追った。

 

 

 

キュポッと栓を抜き、無造作に飲み干して、硝子を握り潰す。それを都度4回。完璧に体力と魔力を回復させて、ベルは歩みを進める。

 

「…」

 

その後ろ姿を、背後に気を配りながら歩くリュー。

 

「…リュー、注意して…複数の息遣いが聞こえる。」

 

「えぇ、私も聞こえています。数的に数百…それ以上でしょうか…」

 

二人は、パントリーに繋がる通路の前で、息を顰めて様子を伺っていた。二人の高いステータスにより、僅かな息遣いですら聞こえる。

目を合わせ、頷いた二人は一気にパントリー内に突入する。

 

そこで二人が見たものは、異様な光景だった。

 

「何だ…あれは…」

 

パントリーの大主柱。そこに絡みつく2つの巨大な宿り木のような物。

 

「まさか、柱から出る養分を…!?」

 

(っ、肉壁から食人花が…!やはりここが巣穴…っ、あれは、檻?)

 

リューの眼下に広がっていた景色は、異質。謎の檻に、無尽蔵に生まれる食人花の群れ。その時、ベルが何かを見て目を見開いた。

 

「あれは…あのときの宝玉…?」

 

ベルが見つめるものをよく見ると、確かに何か宝玉のようなものがあった。

しかし、ベルはあるものを視界に収めると、一瞬でそれのみに集中した。

 

 

「オリヴァス・アクト…!」

 

 

その奥に、腕を組み貫くようにベルを睨みつける男がいた。

 

「…来たか…ベル・クラネル…!」

 

視線が交わる。

 

「同士よ!我らが悲願のため!刃を抜き放て!愚かな侵入者共に死を!!」

 

「「「「「死を!死を!死を!」」」」」

 

集団が叫ぶ。その姿は歪さと、狂気を孕んでいる。

リューがその男の下に居る集団を一瞥した。白装束の覆面の集団。リューは、瞬時に奴らが何者かを悟る。

 

「闇派閥…その残党か…」

 

リューが、木刀を抜き片手に魔剣を持ち、二刀の構えを取る。

 

「クラネルさん、雑魚は私が。貴方は、自身の目的を果たしなさい。」

 

「…ありがとう。」

 

「私もあらかた片付けたらすぐに向かいます。」

 

ベルは、前を見据えながら頷く。

 

 

 

瞬間、ベルが崖から飛び降りる。

 

 

「【轟け、雷鳴(我が名)雷鳴(我が怒り)。曇天に雷霆を宿し、吹き荒べ】」

 

いつもの詠唱よりも素早く、無駄なく、飛び降りる時間を使う。ベルの体に、黒い雷が迸る。

 

心に、雷が迸る。

 

 

 

 

 

 

 

怒りが、迸る

 

 

 

 

 

 

 

 

「【迅雷(ブロンテ)】」

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、ベルは文字通り迅雷と化す。

黒い光の轍を残しながら、一直線にオリヴァスの元に駆け抜ける。

 

「来たぞ!なんとしても仕留めろ!」

 

その声に呼応するように、ベルの前に立ちふさがる。しかし、それはまったく意味をなさない。

 

「────蹴散らしなさい、【雷入道(らいにゅうどう)】!」

 

魔剣開放のその一言と共に、上空から稲妻を伴った嵐が闇派閥の残党たちを飲み込んだ。

瞬間にして、大規模な爆発を起こす。それは階層全体が揺れてしまう程の威力。

 

「コレがクロッゾの魔剣ですか…いや、流石に違うでしょう…奴らのことだ、自決用の火炎石でも仕込んでいたか…」

 

闇派閥の習性を理解しているリューは、見事に正解を言い当てた。

殆どがその爆発に殺られ、塵も残らず死滅する。残りは数少ないボロボロの者たちだけだ。

その様子を、上から見ていたオリヴァスは舌打ちをしてから、侮辱するような目を向けた。

 

「役立たずの愚者共が…」

 

眼の前に立ち上る爆煙。オリヴァスは興味無さげに視線を逸らす。あの爆発では、その渦中にいたベルでさえも無事では済まないと考えた。愚かなものだ、仲間ごと薙ぎ払うとは…そう考えた。

 

しかしその瞬間

 

 

煙の一部が、揺れた

 

 

 

 

 

 

 

────死ねッッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

ボロボロの状態のベルが煙から飛び出し、オリヴァスに突貫。すでに目の前にいた。

コレも、ベルの策。自身のスキル【無慈悲な復讐(グリム・リベンジ)】の効果を十全に発揮し、全力を確実に叩き込むため。

 

目を見開いたオリヴァスに、全力で振り下ろす。

 

しかし、オリヴァスは反応してみせた。

 

「舐めるなっ!!!!!」

 

自身の足元に即座に腕を突き刺し、天然武器を引きずり出す。

そして、向かってくるベルの大剣に激突させる。その衝突音が階層に響き渡る。一瞬の拮抗を見せるが、スキルの力を十全に発揮したベルの渾身の振り下ろしは、天然武器を叩き折り、神速の連撃をオリヴァスに叩き込む。

 

「オオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッッッッッ!!!!!!!!」

 

「グオォォォォォォォォォォ!!!!???」

 

そのベルのスピードに、オリヴァスは反応の限界を迎え、体中を切り刻まれる。しかし、黙って殺られるほど、オリヴァスは弱くない

 

「この小僧がァァァァァァァァァ!!!!!!!」

 

ベルを圧倒的に上回る膂力で負傷覚悟でベルの大剣に拳を叩き込み、その衝撃でベルを吹き飛ばす。ベルは痺れる腕に気を回すこと無く、空中でクルリと回り着地する。そして、二人が睨み合う。

 

(想像よりもタフだな…面倒な…!!)

 

(速い…!とにかく速い。何故あんな大剣であれ程まで…私では目で追うのがやっと…しかし、膂力では私が上!あの変身をされなければ…勝機は十分にある!)

 

ベルとオリヴァスが思い思いの事を感じているその時。オリヴァスの背後から、何かがベルに投じられた。

それを見る間もなく、ベルが跳ぶ。

 

オリヴァスの目に写ったのは、白い塊。その固まりを、ベルが蹴飛ばしてくる。

無意識に、無造作に、他愛ない攻撃だと片手で受け止める。すると、ゴロゴロっと布からその全てが落ちた。そして、オリヴァスはゾッとした。

それは、闇派閥の残党が使っていた火炎石。それが数十の単位で布に包まれ、オリヴァスの手に渡った。

咄嗟に逃げようとするが、もう遅い。

 

ベルが、人差し指を向ける。

 

 

 

 

「【雷霆(ケラウノス)】」

 

 

 

 

またも、爆発がベルの鼓膜を揺らす。

 

オリヴァスが吹き飛び、壁に叩きつけられ、瓦礫に押し潰される。ベルの隣に、リューが舞い降りた。

 

「ナイス、リュー。」

 

「えぇ、クラネルさんこそ。よく咄嗟に理解してくれました。」

 

「当然、もうアイコンタクトで大抵のことはわかる。」

 

「それは好ましい。しかし、油断はなさらないように。」

 

「わかってる。リューより…あいつには少し詳しい。」

 

ベルが目を細めながら、オリヴァスが吹き飛んだ方向に視線を向ける。その数秒後に瓦礫が弾き飛び、雑にオリヴァスが飛び出してきた。

 

「くっ…貴様ら…!」

 

オリヴァスの傷が蒸気を上げながら塞がったと同時に、ベルの体の傷が塞がる。

 

「クラネルさん…それは…」

 

「コレはスキルの応用。ダメージを魔力に変えて、身体機能…つまり、自然治癒力を底上げしてる。あいつも似たようなスキルだと思う。」

 

「なるほど…しかし、あまり多用しないように。ポーションならまだあります、積極的に使っていきます。それに後続部隊もまだいます。シャクティ達が居るので、そっちの物資は私達に回せるはずです。」

 

「……わかった。」

 

「さて…向こうも終わったようです。いけますね?」

 

「あぁ。」

 

ベルとリューが背中を合わせ、大剣と魔剣を向ける。

 

「貴様らは…四肢を引き裂いて惨めに殺してやる…!!」

 

そのオリヴァスの言葉にも、二人は動じずに構える。

 

 

 

 

「やってみるといい、外道。私達についてこれるのならな。」

 

 

 

 

リューは油断なく構え、軽く挑発する

ベルは、オリヴァスの姿を目に焼き付ける。怒りが、ベルの心を支配する。しかし、リューの言葉を思い出し、その場で怒りを開放する。

 

 

「────ここがお前の墓場だ…オリヴァス・アクト!!!!」

 

 

「抜かせ!!人間風情が!!!!」

 

 

三人は、弾けるように駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……な、んだ…これは…?」

 

「階層の地形が…吹き飛ばされてる?」

 

「うっそ…殆ど更地じゃん…!」

 

「…」

 

ベルを追う4人は、目の前に広がる景色に唖然としていた。渓谷地帯がドロドロに熔け、崖や壁面が抉れ、まるで噴火が起きた後の森の様に更地にされた景色が続いている。

 

「…!リヴェリア、これ!」

 

アイズが周囲の痕跡を探っていると、ある痕跡を見つけた。

 

「これは…戦闘の痕だ…」

 

壁に深く刻まれた、戦闘の痕跡。その痕跡は、付けた者の膂力を象徴するように、壁ごと破壊されたようにも見える。

そして、リヴェリアは気づく。

 

「…これは……この魔力の残滓……感じたことがある」

 

「じゃあ!ベルがここに居たってこと!?」

 

「可能性が高い。」

 

リヴェリアは淡々と告げながら、ベルの能力の高さに驚きを隠せないでいた。

あの爆撃の様な跡も、ベルがやったであろうことは予想がついている。

 

(この短期間で…いくら何でも成長しすぎだ…筋力だけで言えば、Lv4の域に到達しているというのか?)

 

そんなことを考えるが、今考えることではないと頭を振って、考えをはじき飛ばす。

 

「…この先のパントリーに居るということは確実だ…急ぐぞ。」

 

ティオナは、その場で目を瞑る。

弟の様な彼を、それほどに変えてしまったレフィーヤの笑顔も思い浮かべた。

きっと彼女も、ベルには死んで欲しくないはずだ。

 

(…レフィーヤ…まだ、ベルはそっちに行かせないから。)

 

決意を込めて、壁の傷に触れる。深い傷に指を這わせる。

 

「私、馬鹿だけど……ずっと、君の成長を見てきた…もう、こんな所まで来ちゃって…私の事も置いていっちゃうの…?」

 

悲しさを含んだその言葉が、ベルに届くことは無い。

そんなティオナを三人は見ていた。その瞬間

 

「っ何だ!?」

 

「この揺れ…普通じゃないわよ!!」

 

階層全体が揺れるほどの地震が起きた。リヴェリアは顔を歪める。

 

「まさか…もう戦闘が…!」

 

「リヴェリア!早く行こう!」

 

「もしかすると、ベル達の協力者に接触できるかもしれん!そこで、敵を一気に叩くぞ!」

 

「わかった!行こう!」

 

駆けるティオナに追従するように、三人が駆け出す。

 

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