話の展開上、こちらの作品で番外ではなく、正史としてオリオンの矢を書こうか迷ってるんですけど…まぁとりあえずこの遠征が終わってから考えます。
すみません、今回もちょっと長くなりました。
龍の滝壺を落下する二人は、追いすがる
「【解き放つ一条の光 聖木の弓幹 汝、弓の名手なり】!」
杖を突き出し、攻撃の回避をベルに任せ、詠唱を始める。ベルに抱えられ、空を飛んでいる不思議な感覚に楽しささえ覚えながら、レフィーヤは魔力を集結させる。
「【狙撃せよ妖精の射手。穿て、必中の矢】ッ!」
「レフィーヤ!あの速い個体を仕留めて!」
花のような魔法陣が足元に広がり、ベルが指示した強化種であろう個体を補足する。
「【アルクス・レイ】ッッ!!」
放つ直後、一気に膨れ上がった極太の自動追尾弾が、翼竜を補足。逃げる翼竜を追いかけ回し、爆音とともに撃ち落とす。
その威力は、レフィーヤでさえも呆気に取られるほどに威力が異常に跳ね上がっていた。
「───えっ?」
「あっ、多分僕のスキル。ほら、【
「…やっぱり、ベルってちょっと幼いですよね。」
こんな状況でも、可愛らしく微笑むベルにちょっと和んだレフィーヤは、慌てて佇まいを直す。
「ほ、ほら!次きますよ!」
「わかってる。」
その会話が終わったと同時に、真下から大口を開けた複数の翼竜が襲い来る。それを余裕を見せて、ベルはレフィーヤを抱え、翼竜の鼻先を踏みつけ、時に強力な蹴りを巧みに繰り出し翼竜を軽々と交わす。
そして、全ての翼竜を追い抜かした時。ベルはレフィーヤを壁に向かって投げる。それを承知していたレフィーヤは、目標を自身に変えた翼竜を引き連れ、壁を強く蹴って駆け下りて行く。
「【誇り高き戦士よ、森の射手隊よ。押し寄せる略奪者を前に弓を取れ】ッ!」
レフィーヤが取った行動は詠唱、そして回避。放たれる火球を跳んで避け、左右に振って逃げ続ける。それを見た翼竜は、苛ついたかのように、火球の弾幕を張り、レフィーヤを攻め立てる。しかし、その火球の弾幕をも、盾を広げたベルがレフィーヤの背後に立ちふさがり、受け止める。
合図もなく紡がれる連携に、レフィーヤは尚も歌う。
「【同胞の声に応え、矢を番えよ。帯びよ炎、森の灯火】」
それは、拙いながらも完成させた並行詠唱。傍から見れば、逃げているように見えるだろう。だが、それでも良い。ただこの詩を歌い切れれば、どれほど惨めだろうが構わない。
(ベルに頼ってばっかじゃいけないんです…!私が…ッ…私だってッッ…!!!)
守られる事は、恥ではない。けれど───それだけではいけないと、レフィーヤは己に喝を入れる。
「【撃ち放て妖精の火矢。雨の如く降り注ぎ、蛮族共を焼き払え】ッ!!」
詠唱が完結したその瞬間。レフィーヤは、後ろを振り返り、強く壁を蹴って、空中に躍り出る。
振り返ったレフィーヤは、自身に迫る翼竜の大群を見ても尚不敵に笑った。
「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】ッ!!!!」
天高く突き出した杖の先端に集結する、極大の魔力の玉。その玉は、ベルのスキルの効果により無数の極大の火矢に弾け飛び、殲滅の滝を降らす。それは、レフィーヤの真後ろにまで迫っていた飛竜も、距離を問わず蒸発させていく。
空中を落ちて行くレフィーヤは、ただ満足したように笑った。
瞬時に聞き分ける、翼竜よりも強く、澄んだ翼の音。
「────ナイスキャッチです、ベル!」
「ヒヤヒヤした…」
示し合わせたように、ベルがレフィーヤを抱え、深くため息をついた。それでもレフィーヤは、してやったりと笑う。
「でも、間に合ったでしょう?」
「むぅ…そろそろ、下に着くから。しっかり掴まってて。」
得意げに笑ったレフィーヤに、若干納得がいかないベルは、見えてきた地面スレスレでホバリング。軽やかな着地と同時に放たれた複数の大熱線を全て盾を展開して弾き返す。
「ここが取り敢えずの終点…みたいだね。」
「えぇ…私もここまで来るのは初めてですけど…早速歓迎されてるみたいです。」
58階層にて、咆哮をあげる巨竜を前に、2人は一切と言っていいほどに恐怖の感情を見せなかった。
「まぁ、僕達なら…余裕。」
「あったりまえです!」
「強いのお願い。それまで、僕が守る。」
「えぇ、頼みますよ。ベル!」
それは、強い信頼。オリヴァスとの戦闘を経験してきたベルとレフィーヤの間に繋がる確かな絆。
ファミリアの中で、最も強い連携力を持つ2人は、ただ役割を分ける。
「想像より、小さい。」
対峙する巨龍に手を翳し、薄く笑って、握り潰す。
背に固定された大剣抜き放ち、刃を地面に叩きつけ、ユラリと構える。
「ここから先には、通さない。」
「詠唱、開始します!」
並行詠唱はできるに越したことはない。しかしだ、ベルの自論ではあるが、後衛に並行詠唱を
状況と戦況を見極め、並行詠唱をするのはいい。だが、大魔法を放つ魔術師に、回避を選択させてはならない。
並行詠唱を頻繁に
自分はそんなお粗末な事はしない。
ベルが髪を掻き上げると、瞳孔が縦に伸びる。
スキル【
次の瞬間、ベルを襲う太く、硬い甲殻に覆われた尻尾。
とてつもない爆音と共に巻き上げる土煙、普通のものがくらえば、その威力で即死は免れないだろう。
しかし、ベルは
土煙が晴れたその場には、片手でその尻尾を止めるベルが仁王立ちをしていた。
重厚な光を反射する鱗に覆われた右腕で、尾部の甲殻を握り潰し、筋肉を隆起させる。
「クッ───オオオオオオオオオオッ!!」
飛び上がり思い切り腕を振り上げ、片手でその巨竜の巨体を引っ張り上げ、棍棒のように振り回し竜の大群に叩きつける。
「────────らァッ!!!」
肉と甲殻が弾ける音が何度も響き、群がる巨竜が吹き飛んでいく。最後の仕上げと言うように、振り回していた巨竜を上に投げ、空中を舞う巨竜の頭を飛んで掴み、地面に叩きつけ押し潰す。
砕けた竜の頭を確認し、続け様に翼を羽ばたかせレフィーヤの背後に着地。迫る大量の芋虫に、手を翳す。
「【
レフィーヤの背中が、三本の極光で塗りつぶされる。チラリと振り返れば、背後にいたはずの巨大芋虫は跡形もなく消し飛ばされていた。ベルの新たな発展スキル、連射による発動するだけで、連続で詠唱を省いての連射。
その様に、レフィーヤは乾いた笑いを漏らした。
「は、はは…これで、前衛の魔法で…無詠唱とか…ホントふざけてます…違うファミリアだったら、絶対ベルのこと嫌いでした…」
「…褒めてる?」
「魔法使おうとしたら全部片付けられた人の気持ち考えたことあります?褒めてはいますけど。」
若干不機嫌になったレフィーヤに、不思議そうな顔を向けたあと、うんざりとしたように背後に剣を構える。
その鋒の向かう先には、既に生れ出るモンスターと、階段からワラワラと降りてくる大芋虫。
「次から次へと…」
「こ、今度こそ魔法でやりますから!」
「なら、さっさと詠唱するんだね。」
「むぅ~…!」
バキッ、と頸を鳴らしたベルは、大剣を肩に担いだ。
「さぁ、来るよ。」
「わかってますよっ!」
「隊列を変更!アイズ、ベート、ティオナ、ティオネを前衛に!ガレス、リヴェリア!そのまま後衛についてくれ!このまま一気にベル達に追いつくぞ!」
「前方、敵9!」
「【
「オラァッ!!!」
一番に飛び込んだベートとアイズが、道を切り開く。
レフィーヤとベルが58階層にたどり着いた頃。フィン達分隊は55階層に進軍する。
「前よりずっと早いっす…!」
「全員の気がたってるからかしら。ベルのおかげね。」
「砲撃が止んだ…あの二人が抑えているのか?」
「多分な。ベルなら、全滅させて俺らのこと待ってるだろ。」
「うーむ、否めんなぁ。」
椿とヴェルフが呑気なことにそんな話を続けていると、更にモンスターが湧き上がる。
「ヴェルフ!魔剣を頼む!」
「おうよ!」
フィンの一声で中衛から一気に躍り出たヴェルフが、紅蓮の魔剣を抜き放ち、火花を散らす。
「【炎獄】!!」
吐き出される大炎流は、通路ごとモンスターを熔解する。振り抜いた魔剣を肩に担いだヴェルフは、その真価を発揮した。
「…こ、これがクロッゾの魔剣っすか…!?」
「私の魔法にも引けを取らない…森を焼き払ったという話も、あながち嘘では無さそうだ。」
「おいおい、嫌味か女王サマよ?」
「…すまない、配慮が足りなかった。」
「…構わねぇよ…事実だ。」
ヴェルフとエルフの間には、ある確執が存在する。しかし、リヴェリア自身さして気にしてもいないし、先祖の罪を彼に押し付けるのはあまりにも理不尽である。今こうして自分達を手助けしている事実だけで、リヴェリアは十分だった。
若干皮肉ったヴェルフ自身も、反省の色をみせて頭を掻いた。
確執があれど、この2人はしっかりと互いを尊重出来る大人であるのだ。
「『赤匠』!右方向に新種だ!」
「あいよ女王様ッ!!」
再び大爆炎を巻き起こし、芋虫の大群を焼き払う。
「さて…僕も、仕事をしなきゃね。」
各々の活躍に、フィンも己を奮い立たせ、最前衛に躍り出る。
「ティオネ!僕に続け!」
「はいっ!団長っ!」
槍を構えたフィンは、世にも珍しき【魔槍】の穂先を怪物に向ける。槍の形をした魔剣。という認識がヴェルフの見解であり、フィンのためだけに作られた一品である。
「さて、性能は如何ほどかな?」
フィンが振るう、黄金の魔槍が淡い光を帯び、徐々にその色を強くしていく。
「ハァッ!!」
「オラァッ!!」
フィンとティオネの特攻により、前方に集中していたモンスターを吹き飛ばす。
「フィン!まだ来るぞ!」
「わかってるさ…それに、来たようだ。」
迫る追加の
「正面突破だ!リヴェリア、詠唱開始!」
『殺レ』
黒衣の人物の合図で、ヴィルガは示し合わせたように一斉に腐食液を吐き出す。その様子を見て、やはりテイマーだったか、とフィンは納得し、速攻を仕掛けた。
フィンは、その槍の真価を発揮させる。白金の輝きが螺旋を成し、槍に帯びる。フィンの魔槍、その効果は至極単純。光属性付与による、怪物に対する特攻。そして────
「吹き飛べッ────!!!」
狙いを付けた状態から、鋭い刺突と共に放たれる、黄金の極光。たった数秒の魔力蓄積により、武器内で魔力を反響・増幅させ、その穂先から一気に吐き出す。
降り注ぐ腐食液を蒸発させ、分厚い肉の壁を容易く貫通。
その熱線の威力は、さながらベルの雷霆を想起させ、フィンですらもその威力に一瞬気を取られた。
「ハハっ…これは、さすがに予想外だ…」
『馬鹿ナッ…!?』
「───ほれ、がら空きじゃ。」
「貰ったー!!」
「くたばれ、クソッタレ!」
『
その極光を目くらましに突貫したガレス、ティオナ、ベートは見事に背後を取り、それぞれの獲物で殴り飛ばす。苦し紛れに地面から迫り出させた食人花に道を阻まれるが、3人の狙いは追撃ではない。
仮面の怪人が吹き飛んだその先には、我らが最強の魔道士リヴェリアと、都市史上ベルと並ぶバグキャラと言われるヴェルフが待ち構える。
「一発ブチかましてやらァッ!!」
「【吹雪け、三度の厳冬───我が名はアルーヴ】!」
深い空色の直剣を振り上げたヴェルフと、詠唱を完結させたリヴェリア。もはや、この直線の通路で逃げ道はない。
「【
「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」
ヴェルフがその魔剣を振り下ろし、リヴェリアが杖を掲げる。瞬間、全員の視界が白一色に包まれ、吹き荒れる吹雪に目をそらした。
「…やったか…?」
ヴェルフが呟くと、氷漬けになった通路を確認するフィンが、首を横に振った。
「逃げられた…とてつもない早業…いや、逃げ足だね。」
「追うか、フィン。」
「…いや、今はベル達との合流を優先する。アイズ、前衛を頼む。」
「うん」
ここで無闇に追撃を仕掛けるのは無意味であると判断したフィンは、アイズに指示を出し、隊列を再編成する。
その様子を見守っていたサポーター組───ラウル、アリシア、ナルヴィが驚嘆を見せる。
「…俺たち、いる必要あるんスかね…」
『うん、無いかもしれない』
「そんな揃って言わなくてもいいじゃないっすか!?」
ラウルの弱気のつぶやきに、全員が揃って笑顔で肯定。だけど、とナルヴィが続けた。
「うん、でもさ。できることをやらないと。ベルだって言ってたんだよ?『サポーターは戦うよりもやることあって、すごいと思う』って。一応、我らが最高戦力にお墨付き貰ってるんだからさ…できることやらないと。ねっ、アリシア。」
「えぇ…少し前ならいざしらず。今の彼が、そう言ってくれたんです。少しでも力を尽くさないと。彼に失礼ですしね?」
そう言われたラウルは、少し驚いたようにポカンとしたあとに、グッと拳を握った。
「…金魚のフンの意地…見せてやるっす!!」
ラウルは、今までの恐怖を押し込め、立ち上がる。
1番身近にいる、白い英雄の言葉を自身への鼓舞にして。
「暑くて死にそう。」
「暑いですね。水飲みます?」
「飲む。」
レフィーヤに投げ渡されたボトルの水をちびちび飲んで、喉を潤す。
二人は、積み上がる砲竜の灰の山をバックに、地面に腰を下ろし、モンスターが湧かないように近場の壁や地面を破壊して、のんびりと休みを挟んでいた。それも、ベルとレフィーヤが圧倒的な火力で攻めきり、58階層のモンスターを全滅させたのだ。
「まだかなぁ。早く帰りたいのに…叔母さんも来るし…」
「…叔母さんですか?」
「うん、皆が殺されて…その後に、僕を14まで育ててくれた人。」
「…そう、なんですね。じゃあ、貴方の家族ってことですか。」
「うん、多分。僕は、お爺ちゃんと叔母さんしか、そう呼べるものを知らないし。」
他愛ない会話で、その場を繋ぐ。それから、色々と話した。ベルがオラリオに来た経緯。ロキ・ファミリアに入るまではどうしていたのか。身の上話を、ベルは辿々しく語った。
「それで、お爺ちゃんが『ハァァ〜レムを築くのじゃぁァァ』って。」
「でた!ベルの超破廉恥お爺様!ベルの倫理観を歪めた張本人!!」
「…否定できない。」
最近、漸くまともな倫理観を身につけたベルは、祖父が言っていたことが、どうやら途轍もなくおかしなことであることに気がついた。
それはそれとして、とレフィーヤは一つ質問をこぼした。
「ベルは…両親を全く知らないんですか?」
「うん、欠片も。顔も知らないし。2歳まで一緒にいたらしいけど…物心ついた頃には、お爺ちゃんだけだったから…それが当たり前だと思ってた。」
デリケートな内容では有るが、どうしても気になった。
ベルの出生について。これだけ強いベルの両親が気になったし、アイズと同じ詠唱の魔法を使う。もしや、二人は姉弟なのでは無いかと疑っている。
「うーん…名前も知らないんですか?」
「母親の名前は知ってるよ。叔母さんが教えてくれたから。」
「それって…聞いてもいいですか?」
遠慮がちに聞くレフィーヤに、ベルは可笑しそうに笑った。
「良いよ、そんなに気まずそうにしなくても───アルクメネっていうらしいよ。僕の名前も、その人がつけてくれたものらしいよ。」
「…いいお名前を、貰いましたね。」
「あり、がとう…?」
なんて返せばいいかわからないベルは、とりあえずお礼を言って、顔を少し赤くした。その様子を微笑ましく思ったレフィーヤは、あることに引っかかりを覚えた。
(…アルクメネ…?…なんか、どっかで聞いたことが…)
そんな疑問を浮かべている内に、入り口から爆音が響く。それは、フィン達がこの階層に到達した合図になった。
「あっ、来た。」
「ベル!後方に魔法をたのむ!」
「了解。」
フィンの指示にすぐさま飛び出し、ベルは一番後方に着地。魔法と魔剣を連射。速攻で殲滅するのも、手慣れたものだ。
合流したベル達は、ある程度の補給を行って、小休止を挟む。その頃には、アリシアがレフィーヤとベルに55階層での事を共有していた。
「黒い仮面の人物…」
「3人目の怪人ですか。」
「あぁ、数で圧倒して早々に片付けたのですが、生きています。不自然な迄に逃げ足が早かったですので、注意してください。」
そう語ったアリシアは、ガレスに呼ばれその場を後にする。なにやら考え込んでしまったレフィーヤをその場に残し、部隊から少し離れる。ベルはレフィーヤとの会話を思い出して、黄昏れる。
「お母、さん…か…」
実際には、初めからいなかった訳ではなかったらしい。と言うのも、少なくとも2歳までは共に暮らしていたのだそうだ。しかし、ベルが経験した強烈な記憶が、障害となってその記憶を埋めてしまった。
捨てられたのか、それとも死んでしまったのかもわからない。ただ、ベル・クラネルと言う名を少年に刻み込んで、どこかに行ってしまった。
この姓も、両親のどちらのものでもないらしい。ベルの過去を知る義理の祖父に叔母も、父親の存在は知らぬ存ぜぬを貫いていた。きっと、妾の子だったのだろうと、いつからか思うようになっていた。
それでも、別に良かった。愛されていなくとも、両親が居なくとも。ただ、1度だけでいいから────母に会ってみたかった。
「どうしたんだい、ベル────ベル…?」
「……えっ、あ…いや、なんでもない。」
黄昏れていたベルの隣には、いつの間にかフィンが立っていた。その様子を見て、部隊に半刻の休憩を呼び掛けて、ベルを離れたところに連れていく。
「さて…本当にどうしたんだい、ベル?」
「本当に…なんでもないんだ。」
「ベル、いくらなんでもそれは無理がある。君、泣いていることに気づいていないのかい?」
「うっ…」
さっきから、気づいていた。頬を伝う生暖かい涙。本当に、悲しいとかそういう感情はなかったのに。どうしてか、流れていた。
「話してくれ、ベル。少しでも団員のストレスを抱えたまま、未開拓領域に進みたくないんだ。わかってくれるね?」
「…うん。」
そうして、俯きがちに語る自分の出生。母の事に、名前の事。思った事を、ポツポツと語っていった。
話し終えたベルに、フィンはなるほどと苦笑した。
誰かに送る愛情を知ったベルは、急に怖くなった。知ったからこそその存在を強く感じ、よりベルの中の恐怖を煽ったのだ。
彼は、まだまだ子供なんだ。そう改めて実感した。
「ふむ…まぁ、直接あったこともない親のこと、ましてや事情が事情だ…そう悩むのも無理はない。でも、僕の感じたことは少し違うかな?」
「どういうこと…?」
「君の姓である『クラネル』この意味がわかるかい?」
ベルに優しく尋ねると、首を傾げてから横に振った。
「これは神々の言葉で『月桂樹』を意味するんだ。そして、花言葉は『勝利・栄光』だ。こんな名誉有る姓を付けたのに…愛していないわけがないだろう?君だったら、愛してもいない子供にこんな意味のある名をつけるかい?」
「それ、は…つけない…と、思う…」
「だろう?この【
「そう…なのかな…そうだと、いいな…」
いつもの余裕のある笑みを浮かべたフィンは、幾らか顔色が晴れたベルを見て、頭に手を置いた。
「さぁ、ベル。僕の親指も疼いてるんだ。君の力はまだまだ必要だ、力を貸してくれよ。」
「うん…!」
「よし、じゃあ行こうか。」
背中をパンッと叩くと、ベルは嬉しそうに微笑んだ。
「過去に、ゼウス・ファミリアが残した記録によれば、この先は氷河地帯…のはずなんだが…」
「逆に、蒸し暑い…」
アイズは、フィンの言葉に耳を傾けると同時に、パントリーでレヴィスに言われたことを思い出していた。
(「お前の知りたいものが有る」…何が…言いたかったの…?)
しかし、あの女の言うことは正直当てにならないと、アイズは目の前のことに集中するように、階段の出口に目を向ける。
「此処から先は、誰もが目撃したことのない、完全な───『未知』だ。」
59階層に続く連絡路の出口を抜ける、そこには
「密林…?」
階層一帯に、密林が広がっていた。天井を見上げれば、パントリーで見た食人花が開花を待つ蕾のように生えている。
「前進…」
それは、未だに眠るように静寂を保っているが、いつ暴れだすかわからない。フィンは、警戒を怠ることなく、部隊に前進を指示した。
奥に進むと、何かを咀嚼するような音が近づく。そして、地面の砂漠化が目立ち始める。そして、一団が密林を抜ける、その奥に鎮座するのは、51階層で見た、いつかの女型のモンスターに似通ったものだった。
「何だあの変形したモンスターは…
そして、フィンは異変を知る。この砂漠化したような砂の山。いいや、この灰の山の意味を悟る。
「魔石を差し出している!?───そうか、これはすべてモンスターの灰!?」
「不味いっ…!強化種じゃっ!!」
「……なんだ…この感じ…?」
知っている。ベルが何度か感じたこの空気を、どこかで知っている。隣を見やれば、同じ状態で佇むアイズが目に入った。
そして、次の瞬間にベルとアイズはその空気の正体を無意識の内に知った。
『………ア─────アアアァァァァァァァアアア!!!!!!!!』
劈くような絶叫に、殆どの団員が耳を塞いだ。ベルとアイズを除いて、その正体を知るものがいなかったから。
その叫びを皮切りに、タイタン・アルムは、溶け落ちるように変形。泡を立てるように不快な音を鳴らしながら、蛹の殻を破った。
「う、嘘…」
「なんで…こんなところに…!」
蛹から生まれ出た花のような少女。ソレは、こちらを振り返り、可憐に笑ってみせた。
「…アリア!アリア!!」
そしてその笑みは、名を呼ぶ毎に醜悪に歪んでいく。
そして、甲高い嗤い声が響く中。小さな声で、されど全員の耳に届いた。
「精霊だ…」
ベルの一言が、全員の驚愕を誘う。そして、フィンは報告にあった宝玉の役割に至った。
「そうか…あれは精霊に反応していた…!新種は触手に過ぎなかった、女型をあの状態に昇華させるための…謂わば『種』だった!!」
「アリア、アリア!会イタカッタ、会イタカッタ!!貴方もモ一緒ニナリマショウ?───貴方ヲ、食ベサセテ?」
ゾクッと全身の肌が泡立つ。それは本能による生体反応。目の前の生物が、如何に危険かを全員が悟る。
ただ一人、その恐怖を勇気を持って抑え込んだ勇者は、鼓舞するように叫ぶ。
「総員、戦闘準備!!」
その声に、反射的に全員が反応する。
「フィン、儂も前衛に上がるぞ!!」
「どうせやることは変わらねぇ!!ぶっ殺す!!」
「レフィーヤ!狙いはあの精霊!詠唱開始!ラウルたちは「魔剣」でアイズを援護しろ。」
「はい!」
「はいっす!!」
その間に、前衛に飛び出たヒリュテ姉妹は、このモンスターの強さを体感していた。
襲い来る触手を弾くと、想像の数倍もある威力に、押し戻される。更に女体型を守るように進軍するヴィルガにも手を焼いていた。
戦況を見極めるフィンは、親指の痛みを抑え、嫌な予感に冷や汗を流す。
「…リヴェリア、詠唱は待て。」
「…っフィン?」
「親指の疼きが止まらない…何かが…来る。」
その言葉を発した瞬間、その予感は的中する。
「【火ヨ、来タレ──】」
予想外の、詠唱。
「詠唱!?モンスターがじゃと!?」
「フィン!!」
「いいや!手は打ってある!」
響く恐怖の調べ。驚愕と予感に、全員が支配される。しかし、フィンはその恐怖を退けた。
その中で、ニ人、その詠唱を止めようと動くものがいた。
「ベルッ!」
「うん!!」
ヴェルフとベルが、動いた。ヴェルフは腕を突き出す。それは、ヴェルフの持つ唯一の魔法。効果は、アンチ・マジック・ファイヤ。魔道士に対して、絶対的な優位に立つ事のできる、切り札である。
「【燃えつきろ、外法の業】!!!」
ヴェルフが詠唱をしたと同時に、ベルが深く構える。
そして、ヴェルフと視線を交え、地を蹴った。
「【ウィルオ─────………は…?」
しかし、ヴェルフの声はそこで途切れる。誰も、ヴェルフですら反応ができなかった。
ヴェルフの腹を貫く、三本の触手。ソレは、地面を伝い、ヴェルフを正確に貫き、宙ぶらりんにしたヴェルフを投げ飛ばした。
それを目にして、一番に混乱に陥ったのは
「────ヴェルフッッッ!!!!??」
ベルだった。
空気を蹴り飛ばし、一直線にヴェルフのもとに向かう。それから、戦線が崩れる。
「リヴェリア!結界を張れ!!総員砲撃!!敵の詠唱を止めろォォォ!!!」
「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!!」
「斉射ッ!!」
キャハッ、と笑った精霊は、翼のような前腕を盾に、強大な火力すらも防御してみせた。
「ハハッ…あれが効かないというのか…!?」
椿ですら、やったと思った砲撃を、いとも簡単に防がれた。
もう、この魔法を止める術は無い。
「【舞い踊れ大気の精よ、光の主よ】」
「【紅蓮ノ壁ヨ、業火ノ咆哮ヨ、突風ノ力ヲ借リ世界ヲ閉ザセ】」
そして、二小節目を紡ぐその瞬間、リヴェリアは異常に気づく。
「【燃エル空燃エル大地燃エル海燃エル泉燃エル山燃エル命全テヲ焦土ト変エ怒リト嘆キノ号砲ヲ我ガ愛セシ英雄ノ命ノ代償ヲ──】」
「【森の守り手と契を結び───!?」
超長文の詠唱に加え、高速詠唱。魔法を扱う者としての、格の違いを見せつけられた。
「【大地の歌を持って我らを包め。我らを囲え】!」
「【代行者ノ名ニオイテ命ジル与エラレシ我ガ名ハ火精霊炎ノ化身炎ノ女王──】」
「【大いなる森光の障壁となって我らを守れ───】!!!」
ギリギリ、本当にコンマ数秒の単位で、詠唱が完結する。しかし、リヴェリアには確信があった。
(…防げない!!!)
「総員、リヴェリアの結界に下がれ!!!ベル!!」
「【我が名はアールヴ】!!」
全員が結界まで撤退を余儀なくされ、一塊になる。
「【ヴィア・シルヘイム】!!」
「【ファイア・ストーム】」
両の手から、優しく吹き出された火種は、急激な魔力暴走を起こし、周囲一帯を焦土にせんと焼き尽くす。それは、リヴェリアの森光の障壁すらも焼き払う。
ひび割れる障壁、傷ついた仲間。混乱に陥ったベルは、迫る大爆煙を前に、ただ恐怖に苛まれる。
この攻撃は、強すぎる。一撃で死に至らずとも、瀕死にさせられる。だめだ、駄目だ。嫌だイヤだッッ!
その想いを孕んだまま、ベルは走った。
「リヴェリアッ!!!」
叫んだベルは、スキルを全力で行使。【
「ガレス!!アイズ達を──!!?」
守れ、そう発する前に、体が宙に浮く。前を見れば、ベルが罅割れた障壁の前に、剣を構えていた。ベルが、リヴェリアを後ろに投げたのだ。
「ベルっ!待っ────」
その瞬間、結界が完全に破壊され、大爆流がベルに殺到する。
ベルは、ただ静かに、振り上げた剣を振り上げ、魔法を打ち返さんと真正面から対峙した。
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ァァァァァァァァァ───ッッッッッッ!!!!!!」
拮抗する爆炎とベル。しかし、その爆炎はベルの全身を焼き、鱗の色を変色させる。激痛がベルを襲い、気絶しかける。しかし、ベルは踏みとどまった。
後ろにいる、守りたい人たちがいるから。
「ベルッ!?」
叫ぶリヴェリアに、反応を返す余裕すらない。強くなったと自負していたベルでさえも、この魔法を完全に無傷で弾き返すことはできなかった。
それによる代償は、ベルの力を奪っていく。
爆風の音で気づくことができなかった。その威力に耐えられず、剣の半ば程に罅が入っていた。
「────」
ついに半ばからへし折れた剣は、爆風に飛ばされ、ベルは両の手でその炎を受け止める。
「ギィッッ!?ク、オアアアアアアアアアッッッ!!!!!!」
そして、力を振り絞り、気力だけで炎の嵐を上に跳ね上げるも、ベルはその威力に踏ん張りが効かず、吹き飛ばされる。それを間一髪で受け止めたラウルは、あまりの怪我の具合に言葉を失った。
所々失われた指先、爛れた皮膚。全身から血を吹き出し、荒い息と痛みに耐える呻き声だけを漏らしながら、ベルは動けずにいた。
しかし、それを嘲笑うかのように、精霊は絶望を送った。
「アハッ、デモ、オシマイ──【地ヨ、唸レ──来タレ来タレ来タレ大地ノ殻ヨ黒鉄ノ宝閃ヨ星ノ鉄槌ヨ開闢ノ契約ヲモッテ反転セヨ空ヲ焼ケ地ヲ砕ケ橋ヲ架ケ天地ト為レ降リソソグ天空ノ斧破壊ノ厄災──】」
「───ベルを守れぇぇ!!!!!」
「【代行者ノ名ニオイテ命ジル与エラレシ我ガ名ハ地精霊大地ノ化身大地ノ女王──】」
フィンが叫ぶ中、ベルは確信していた。この攻撃を防げるのは、自分しかいないことに。自分を抱え、絶望に染まるラウルに掴みかかる。
「ラ、ウル…!剣、を…手に、巻いて…!」
「なッ、何言ってるっすか!?無茶っす!さっきのを防いだだけで満身創痍なのに、次も防ぐなんて無茶っす!!!」
「僕しか!!できないんだ…ッ!!頼む、ラウ、ル!!」
「俺に!ベルを殺させるきっすか!?絶対にイヤだ!!!死なせはしない!」
拒否し続けるラウルに、ベルは懇願するように叫んだ。
「僕に、皆を守らせてくれッッッ!!!」
「────────ッッ!!!!!」
その言葉に、ラウルは覚悟を決めた。彼が、まだ戦いたいと願ったのだ。ラウルは、無力感に打ち拉がれながら、声を張り上げた。
「ナルヴィ!革のベルトを寄越すっす!疾く!!!」
「待って、ラウル!?やらせるつもりなの!?いくらなんでも…!!!」
「うるさいッ!良いから寄越せッッ!」
いつもは見せないラウルの剣幕に、ナルヴィはぎょっとしたが、泣きそうな顔をしながら革のベルトを渡した。
「ごめん…ラウル…僕の、ワガママに付き合わせて…」
「俺には…此のくらいしかできないから…!悔しい…悔しいっす…!!!」
涙を流すラウルの頭に、ベルは手を置いた。
「違うよ、ラウル…君は、自分が思ってるよりも、ずっと凄い。自信を、持って…君は、最善の判断ができる人だから…」
「…ベル…っ!」
「ありがとう、ラウル────後は、任せる。」
そう残したベルは、立ち上がり、精霊を見据えた。ボロボロのベルを侮辱したような目で見た精霊は、その引き金を引いた。
「【メテオ・スウォーム】」
ベルたちの上空に咲き乱れる巨大な魔法陣の群れ。その魔法陣から放たれる、超巨大な岩山の雨が降り注いだ。
(この魔法に、僕の想いのすべてを乗せろッ!)
深く息を吸って、空を睨んで、ベルは、英雄の片鱗を見せた。
「【
爆発する雷霆を、ベルはまだ足りないとばかりに魔力を注ぎ、更に爆発させる。
「【
眩い光を放ち、自身を唯一つの雷霆に変えたベルは、飛び上がった。
無数に降り注ぐ岩山を、貫き、斬り裂き、魔法を使っては破壊する。
純白の轍を残し、落下する全ての岩山を破壊し尽くし、ベルは力尽きるように落ち、それと同調するように、折れた大剣は、跡形もなく砕け散り、その体は本当に死んでしまう程に疲弊し、ボロ雑巾の様になった。
落ちるベルの着地点にフィンが走り、なんとかキャッチする。
「ベルッ!!しっかりしろ!!」
「ふぃ、ん…?」
「そうだ…よく、やってくれた…誰も、傷一つつかなかった…」
「そ、う…よかっ、た…」
その間にも、精霊は放出された魔力を吸い上げ、再度の砲撃準備に入っている。
為す術はなかった。誰もが信頼を置いていた最大戦力が、敗れ去った。自分たちを守って。もはや、言葉はなく、フィンですら絶望を予感していた。
此の場にいる全員が悟る。
死を
しかし、たった一人の少年は、仲間を、何よりも目の前の【勇者】が、必ず立ち上がると信じていた。
自分を信じる英雄を、ただ愚直に信じていた。
「…信じ、てる、僕の…英雄、達…」
「……ッ!」
眠るように気絶したベルに、エリクサーを振りかけ、そっと地面に寝かせる。優しく頭を撫でたフィンは、絶望を顔に貼り付ける団員を前に、ただ呟いた。
「────あのモンスターを、討つ。」
フィンは、折れなかった。いいや、ただ一人の少年の言葉が、【勇者】たるフィンを奮い立たせた。
「君たちに勇気を問おう。その瞳には何が見えている?恐怖か?絶望か?破滅か?」
静かに、されど熱く、フィンの闘志は燃え上がる。今まで、一族を導くために目指していた、曖昧な英雄という像雅、ハッキリと形を持った。
強く、強く憧れた。明確な憧憬が、目の前にいる。
白い英雄に、酷く憧れた。
「僕の目には、倒すべき敵、そして勝利しか見えていない。退路など、もとより不要だ。此の槍を持って、あの怪物を討ち滅ぼす。
今は、一族の為でなく。身命を賭して、自分たちを守った少年の名に誓って。
そして、フィンは静かに命ずる
「ついて来い。」
その呟きに、恐怖に震えていた誰もが、拳を握った。
「それとも…ベルの真似事は、君たちには荷が重いかッ!」
叫ぶフィンの言葉に、全員の心に一斉に火が灯る。激しく燃え滾る闘志が、伝播する。
「己よりも強大な力の波に、彼はたった一人で立ち向かったぞ、ベート!」
震える銀狼に問いかける。
「彼は全てを出し切って、生と死の境に身を投じたぞ、ティオナ!ティオネ!」
地を這い、大地を裂く姉妹に問いかける。
「彼は誰よりも前に出て仲間を守ったぞ、ガレス!」
重傑の戦士に問いかける。
「彼は恐怖に打ち勝ち成し遂げてみせた、彼との絆はその程度のものか、レフィーヤ!リヴェリア!」
妖精の師弟に問いかける。
「ベルは…限界を、絶望をひっくり返して見せたぞ、アイズ!」
風の精に問いかける。
誰もが、武器を握り、立ち上がった。絶望から、たった一人の少年が、彼らを叩き起こした。
「聞くまでもねーだろうが!!蹴り潰すだけだッ!!」
銀狼は月に吠えるように、野蛮に地面を踏み抜いた。
「まだ…全っ然です団長!!」
「だね!!あたしも、負けてられない!!」
姉妹は不敵に笑い、己の武器の柄を握った。
「舐めるなッ!!儂は、ドワーフの戦士!英雄の真似事なんぞ、容易くこなしてみせるわッ!!」
戦士は大戦斧を担ぎ、大地を踏みしめた。
「いつも、私を、守ってくれてるから…!今度は、私がベルを守るッ!」
「言ってくれる…エルフの誇りを見せてやるッ!!最大砲撃に移る!お前達、私を守れッ!!!」
エルフの師弟は、杖を振りかざした。
「……うん。今度は、私の番。」
風の精は、敵を見据え、ただ滅ぼさんと剣を取った。
一人の英雄が、全員の心に眠る、真の勇気を呼び覚まし、勇者を英雄へと押し上げた。
そして、椿は未だ眠るヴェルフに語りかける。
「ヴェル吉…お前は寝ているだけか。守られ、ただ眠り、英雄の勝利を待つだけの者か!」
ヴェルフは、反応しない。
「ならば寝ていろ腰抜けめ。手前は、此の英雄たちの一助となるぞ!」
前衛に上がる椿が走り去る。
聞こえている。聞こえているのだ、その言葉が。悔しくて堪らない。自分がもっと強ければ、ベルはあんなにボロボロにならずに済んだのに。
(アイツを1人になんてしたくないんだッ!アイツの期待に応えたいんだ!)
グッと、ヴェルフの手が動く。瀕死のヴェルフは、その意志だけで再び立ち上がる。
「ふっ、ざけろ…!!」
笑う膝に喝を入れ、剣を支えに、血を吐きながら立ち上がる。
「守られっぱなしでいられるか!俺は、ベルの専属鍛冶師だ!腑抜けた真似なんざできねぇ!!」
焔を宿す熱血の鍛冶師は、魔剣を構え立ち上がった。
役者は揃った。後は、道を示すだけだ。
「たった今!此の突撃をもって奴を貫く!!
鋒を突きつけ、英雄たちの灯火にならんと道を指し示す。
「ロキ・ファミリア団長、フィン・ディムナが各団員に命ずる!!道を切り開けッ!!」
魔槍を構えたフィンは、魔槍に魔力を込めて黄金の螺旋を生み出し、石突を地面に叩きつける。
「あのモンスターは、僕が討つッッ!!!」
英雄達の、進軍が始まる
滅茶苦茶長くなった…読んでくれてありがとうございます。
原作との相違点。
ヴェルフが居る。戦闘時にみんなが無傷。精霊の魔法が強くなっている。
遠征編佳境に入りました。次回もお楽しみに。