疾風に想いを乗せて   作:イベリ

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第一章
第1話:探す者


足音が反響する。

 

次の瞬間に、ズドンと重い音と、ビチャリと粘り気のある音が響いた。

 

「────99…」

 

地面にめり込んだ大剣を引き抜き、血を振り払って背中に納める。

ふぅ、と息弱々しくを吐いたのは、白髪赤目の、兎ような少年だった。

 

身の丈程の大剣を背に預けながら、洞窟の奥へと進む。

 

ここは、ダンジョン。地下深くに繋がる、道に溢れた未だ謎の多い場所。そこに、今日も潜り続ける少年がいた。

 

少年が今いる場所は6階層。苦手なアドバイザーに言われてここまで来ては行けないとされていたが、それを無視してこの場所に来ていた。

 

「…足りない…物足りない…────何だ…?」

 

洞窟の暗闇のその向こう、そこから何か重い物がこちらに近づいてくる音が聞こえる。地面が揺れるような音と共に、少年の目の前に現れた。

 

『────────ッ!!!』

 

「…うるさっ…でも、漸くまともに戦えそうだ。」

 

少年は、眼の前の角の生えた怪物に対しても無表情を貫き、淡々と大剣を引き抜く。

大剣を片手で遊ばせ、一気に怪物に突貫する。

 

「シッ!!!!」

 

怪物は何の事もなさそうに大剣を受け止め、弾き返し、余裕そうな笑みを浮かべてから、少年に大斧を振りかざし、少年に振り下ろす。

 

この少年と怪物では、数メドル程も差がある。普通、少年に受け止められる余地など無い。だが、少年は大剣を下から掬うように振り上げ、怪物の斧を弾く。その衝撃は、身体的な有利の有る怪物を仰け反らせる程のもの。

 

怪物は負けじと踏ん張り、再度大剣と斧を激突させる。少年はその威力に浮かされ、数メドル吹き飛ばされる。そんな少年を仕留めようと、腰を沈めて突進する。

少年は突進をひらりとかわした後に、軽いステップを踏みながら背後に周り、怪物の広い背中を深く二回切り刻む。

 

「──────────ッ!?」

 

背中に激痛が走り、怪物は喧ましい絶叫を響かせる。

 

困惑する怪物に追い打ちのように少年は接近。大剣を振るっているとは思えない程のスピードで、足の腱、手首の腱を大剣で絶ち、怪物の動きを止める。怪物は四肢の腱を断たれた事により、膝から崩れ落ち両手をダランと垂らしながら、荒い鼻息を漏らしていた。

 

「…君も…結局、この程度か。」

 

肉厚の片刃のクレイモアを突きつけながら、少年はつまらなそうに呟いた。

少年は、大剣を横に構え憐憫の眼差しと共に、謝罪する。

 

「─────ごめんね」

 

その言葉を境に、少年は怪物の胴体に大剣を突き刺し、胴体を切り進み顔を突き抜け、勢いのままに自身の背後に大剣を叩き落とす。

怪物は上半身を両断され、勢いよく血を吹き出し、少年に雨のように降りかかる。

 

血塗れた少年は、大剣についた血を振り払い、息を整えながら背中に大剣を収める。

 

「─────100…まだ、足りない。」

 

足りない、まだ足りない。そのココロとは裏腹に、少年の体力は既に限界。それもそのはずで、少年は既に15時間もダンジョンに潜っているのだ。

 

クラリと蹌踉めいた少年は、そのまま地面に倒れる─────ところを、何者かによって、支えられる。

 

「大丈夫…?」

 

「─────だれ…?」

 

「…アイズ…アイズ・ヴァレンシュタイン。君は…?」

 

少年は、疲れすぎてわからなかったが、恐らくは女であろう声を聞いて、反射的に答えようとする。

 

「僕は…─────」

 

しかし、疲れすぎた少年は、そのまま気絶した。

残された少女─────アイズは、その少年を背負ったまま自分の仲間たちのもとに帰っていく。

 

少年の名は知らない。しかし、装備からして、駆け出しなのは間違いない。なのに、Lv2にカテゴライズされる牛型のモンスター。ミノタウロスを切り伏せた。その事実は変わらない。

 

ただ、訪ねたかった。

 

 

どうして、君はそんなに強いの?

 

 

アイズは、ほんの少しだけ頬を緩ませながら、仲間のもとに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「で、あの子を拾ってきたのかい?」

 

「…うん、そう。」

 

「まったく…いや、でもあの子が死んでなくてよかった。どこのファミリアの子か、わからない…死んでしまっていたら、いくら自己責任と言えど、流石に寝覚めが悪い。良い判断だったよ、アイズ。」

 

眼の前にいるのは、金髪の子供。いや、小人族(パルゥム)の青年は、安心したように口を開いた。

 

その青年は、このファミリア───ロキ・ファミリアの団長、フィン・ディムナ。Lv6 のベテラン冒険者。

 

アイズは、地上に帰ってくるまで少年を離すことなく、空き部屋まで運んでいった。そのことについて、なにか言いたげな団員は数人居たが、自ファミリアの問題に巻き込んだことに若干の罪悪感もあったのか、何も言うことはなかった。

 

「彼は…目覚めなかったのかい?リヴェリア。」

 

「あぁ…どうやら相当に疲労が溜まっていた様だ。風呂にも入っていなかったし、生傷も到るところにあった。相当無茶をしたのだろう。」

 

そう語ったのは、エルフの王族(ハイエルフ)。リヴェリア・リヨス・アールヴ。Lv6の高位の魔法使い(マジックユーザー)

 

そのリヴェリアが、少年の様態を診察して、経過を報告していた。

 

「…ちょっと、会いに行ってくる。」

 

「おい、待て…行ってしまったか…しかし、珍しいことも有るのだな。あの子が他人に興味を示すなんて…」

 

「…運ばれた彼、なんでも駆け出しらしくてね…それも、装備を見た感じに過ぎないけれど…ミノタウロスを単独で撃破したらしい。」

 

「まさか…しかし、あの子が嘘を付くはずもないか…」

 

二人は、まさに娘を見守る親のような感覚でアイズのことを思った。

 

 

 

 

 

「……よし。戻ろう…」

 

部屋にて気がついた少年は、目を覚ましたと同時に装備を再びつけ直し、大剣を背負い部屋を出ようとしたところ。そんな時に、アイズが部屋に入ってきた。

 

ベルは、少しアイズに視線を送った後に気にせずに準備を始める。

アイズは、そんな少年をなんとも言えない表情で見つめ続ける。

 

「……なに?」

 

「…聞きたいことがあって…」

 

少年は耐えられなくなったのか、アイズに声をかけた。

少年は、アイズの問に無言で首を縦に振り、促す。

 

「…君は、どうしてそんなに強いの…?」

 

「…貴女にいわれたくない。僕より…いや、このオラリオでも一握りしか居ない化物だ。アイズ・ヴァレンシュタイン。戦闘狂いのサイコ女ってギルドで聞いた。そんな化物に、どうやって強さなんて教えるんだ。」

 

 

少年はそれだけ言うと、部屋から立ち去ろうとする。アイズが答えに不満を持って、少年を止めようとしたとき。

 

来訪者が現れる。

 

「おーう!運び込まれたんやってなぁ!調子はどうや?……っと、取り込み中だったんか?」

 

エセ関西弁の赤髪の女神、ロキ。このファミリアの主神だ。

その主神に、少年はぶっきらぼうに返す。

 

「別に、もう出るところだった。何か用?」

 

「いや、最近できた眷属が運び込まれた言うたら誰でも心配するわ!」

 

「…ごめん。迷惑かけた(・・・・・)。」

 

「……気にせんとき。大丈夫や。でもな?これから出ていくのは感心せんで?周りに迷惑かかる(・・・・・)んと違うか?」

 

ロキがそう言うと、少年は直ぐ様大剣と装備を外し、ソファーに座った。

 

「よし、ええ子やで。」

 

頭をおとなしく撫でられる、そうすると、二人の幹部が入ってくる。

 

「何だ、目を覚ましていたのかい?」

 

「おい、ロキ。他所の眷属にちょっかいを出すな。」

 

二人は、少年への行為を止めさせようとするが、ロキは『あっ』という顔をして、少年を紹介する。

 

「そう言えば…みんなが遠征行ってる時に拾ったんや。新しい眷属やで!ホレ、自己紹介や!」

 

そう言われて、少年は面倒臭そうに答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロキ・ファミリア所属。ベル…ベル・クラネル。早速で悪いけど…強いエルフの冒険者を知らないか?」

 

 

 

 






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