黒く、厚い雲に覆われ、星の輝きなど見えないと
まるで、邪悪に呑み込まれたようだと。
そして、
どうかこの私に、その輝きを見せてくれと。
最悪の侵攻から6時間、オラリオ史上最も被害の多かった夜が空ける。
アストレア・ファミリアは、寝ずの被害鎮圧に向けて、都市中を駆け回っていた。
そして、日も登り、惨状が露わになった時間。ようやく一息付けるタイミングが訪れた。
「……これで、終わりか…?けが人の救護は?」
「そう思いたい…もういない、いたとしても…すでに物言わぬ屍だ。」
ライラと輝夜はいつものような軽口も鳴りを潜め、濃い隈を作るほどに憔悴していた。
「疫病の対策は?」
「腕っこきの聖女がいるから問題ないとさ。」
「聖女…あぁ、あの銀髪のお人形みたいな娘ね…なら平気かしら。引き上げるわ。」
「あー…シャワー浴びてぇ、スープ飲みてぇ、寝てぇ…」
「最後のは叶わん。補給がすんだら、すぐに巡回展都市のあちこちで闇派閥の掃討だ。」
そんな輝夜の現実を突きつけるような言葉に、ライラはうへぇーと力が抜けるように肩を落とした。
しかし、その中でもリューだけは、俯き何も語らなかった。ベルの裏切り、親友の安否は未だにわからない。
そして、神の一斉送還。
善であるはずの彼が、この事件の一翼を担っていたとは考えにくい。しかし、現に彼はベル・クラネルは───アルケイデスは、人を見限った。
絶望的な現実は、正義の派閥の中で最も青かったリュー・リオンは、爆発寸前であった。
「リオン。下を向いちゃだめよ。何かしゃべらないと…あれからずっと塞ぎ込んでる。ため込むと、いつか爆発するわ。仮設のキャンプで話を───」
そう、アリーゼが声をかけている最中。
民衆が、前に立ちふさがった。
「な、なんだよ、お前ら…」
この時、リューは思い出した。
神エレン───邪神エレボスが語った正義の脆さを。
アルケイデスが語った、己の正義の在り方を。
「───アストレア・ファミリアは正義の派閥じゃなかったのかよ!!」
「みんなを、助けてくれるんじゃなかったの?守ってくれるんじゃなかったの…?」
その民衆の言葉を聞き、爆発した。
「嘘つき!!」
お前たちのせいだ。何が正義だ。何とかしろ。
これが、戦った者に対する返礼だった。
残酷で、身勝手に、力なき愚者はただ不満を叫ぶだけだった。
「貴様ら…!団長…!今前に出ては!」
輝夜がキレる寸前。アリーゼが前に出た。石を投げる民衆の前に立てば、どうなるかは目に見えていたのに。
「…っ……」
アリーゼの額から血が流れる。それを見て、一瞬民衆の動きが止まったように見えたが、それも束の間。続けざまに罵倒が投げられる。
それを聞いて尚、アリーゼは頭を下げた。
「ごめんなさい。」
それだけ、そう言うしかなかった。
守れなくてごめんなさい。
頭を地面につけるほどに頭を下げた。それでも、民衆の言葉は、石は止まらなかった。堰を切るように、止まることはなかった。
アリーゼは、わかっていた。彼らの不満を。彼らの悲しみを。だから、己がそれを塞き止めなければならないと、組織の長として最良の選択を選んだ。
何度も、何度も石を投げられ、言葉が突き刺さった。それが数秒続き、突然。罵倒も、投げられる石も止まった。
不思議に思ったアリーゼが顔を上げれば、その沈黙の理由を知った。
「…ベル…?」
「無駄な傷を増やすな、アリーゼ。」
そこには、真っ白だった頭髪は真紅に染まり、瞳も竜のように鋭くなってはいたが、同じ空間で過ごした少年が立っていた。
前の様に、彼女たちを庇うように。
投げられた石を掴み、それをゆっくりと握りつぶす。
「…本当に…どこまでも救いようのないクズどもが…」
数時間前の、恐怖の象徴がそこにいた。
それに気が付いた民主は、恐怖を張り付けた。
「あ、アルケイデスだ…!?」
「こ、殺されるっ、逃げろ!!」
「───『動くな』。」
その一言。たった一言で、彼はその場を支配する。
「動いたものから殺す。冒険者はいざ知らず…愚鈍な民衆に掛ける情けはない。」
その言葉に偽りがないことは、その場にいる誰もが理解した。彼は動いたものから容赦なく殺すだろう。
咄嗟に民衆を守ろうとしたアストレア・ファミリアの団員すらも、その場に縫い付けられた。
「安心するといい、正義の派閥。私は君たちと戦うつもりは無いとも。」
「っ…!舐めやがって…!」
「まて輝夜!!折角なんもしねぇって言ってんだ!刺激すんじゃねぇ!」
「…猛獣みたいな言い方は辞めてくれライラ。」
「はっ、存在そのものが暴力みたいなやつに言われたかねぇぜ…しっかし、本当に…いや、本物のアルケイデスだったなんてな。英雄サマは神すら騙せるってか?」
「馬鹿だなぁ…少し考えればわかるだろう?人質が居た…それだけの事だ。」
歪んだ笑みを浮かべるアルケイデスの言葉に、輝夜の感情が最も早く沸騰した。
「貴様ッ!!あの方をどうするつもりだ!」
「そう熱くなるなよ、輝夜。もう用はない…ただこれからの逸材を見る必要があった…それだけだ。」
その言葉に、嘘はないように思えた。つまりは、全て嘘だったのだろう。あの優しげな彼も、リューを偽りなく愛していたあの仕草すらも。
「……クラネル、さん…っ!」
「…いいや、リュー。私はもうあの
「っ……!」
あの少年は、自分を守ると、君の正義を見つけるのだと、強く語った少年は、もうこの場にいない。
私が、止められなかったから……?
思考が沈む彼女を、アルケイデスは見透かした上で、問いかけた。
「アリーゼ、輝夜、ライラ……そして、リュー。今一度、君たち…【正義】に問いかける。」
その審問は残酷であり、彼女達の命題でもある。
「君達が守りたかった者は、『こんなモノ』だったのか?」
『────』
緊張したように体を強ばらせた彼女たちに、アルケイデスはさらに続ける。
「この愚図共は、今こうしてアリーゼに石を投げ、君たちに文句を垂れていられるのが、君たちのおかげだとすら考えられないシアワセ者だ。」
「それは…俺たちに戦う力がないから…っ!」
勇気ある民衆は声を上げる。その言葉に、そうだそうだと続くが、アルケイデスは一瞥の後ため息を吐き出した。
「この神時代において、恩恵という絶対平等の力を与えられる上でよくその発言ができる。才能の差はあれど、恩恵を得れば守りたい物も守れたかもしれない。お前たちの怠惰を彼女たち冒険者に押し付けるか、恥を知れよ。」
静まり返るその場を無視して、アルケイデスは冷酷に続ける。
「お前たちを見捨てる選択肢を取れば、もう少し事は有利に運んだ。私を討つのは無理だったにせよ、彼は…ザルドは討てていただろう。その時点で闇派閥は壊滅。あとは時間の問題だった。」
苛ついたように口調が強い。あまり感情を出すことがない彼には珍しい。たった数週間の間ではあったが、共に過ごしていた彼女たち全員が抱いた感想だった。
そこで、少し間を開けて、アルケイデスはいいことを思いついたと呟く。
「……あぁ、そうか。お前たちがいなければ、彼らも遺憾無く力を発揮するか。」
そうして手を民衆の群れに翳すと、膨大な魔力の波がその場を濁流のように飲み込んだ。
「魔法!?詠唱もなしに!?」
「エルフじゃねぇが私でも分かる…!これ、やべぇ!!」
彼の本気の殺意。それは容易に民衆を消し炭に変え、その場を更地に変えることができるだろう。
彼は、本気でこの場で民衆を殺す。
そう考えたとき、全員の体は勝手に動いた。
「……っやめてください…あなたは…そんな、人ではないはずだ…!」
「させないわ。あなたに、それだけはさせない!」
「ちっくしょう…!動いちまった!これ絶対死ぬ!」
「…柄にも無いことを…!」
「どけ、アストレア・ファミリア。君達は殺すには惜しい。」
「アルケイデスっ…!なぜ、何故こんなことを!」
動機を問うリューに、アルケイデスは間髪入れず、澱みなく答えた。
「淘汰。それだけだ。弱さは罪だ、弱さは悪だ。何もそれは肉体的な話じゃない。君達は見たはずだ、守られた者が、君たちにどのような返礼をしたのか、その矮小さを知ったはずだ。その弱さを間近でみたはずだ。」
「っ…それは…!」
「守られるだけのゴミ共ならば、大人しくしていれば痛い目に遭わずに済んだものを…私の逆鱗に触れたのが運の尽きだった。」
無機質なその言葉と、冷酷な目は、守ろうと考えたリュー達の決意を叩き壊す程に恐ろしかった。
まだ、戻れると。また、手を取り合えると。そんなリューの甘い考えは、泡沫のように破裂した。
自分を抱きしめ、手を握ってくれた彼はもう存在しない。
「君が知る少年は…もう、死んだ。」
「──────」
「リオン!?」
彼のその言葉が、リューにとどめを刺した。
絶望に膝をついたリューを抜かし、アルケイデスが再び民衆の前に立った瞬間。
確かに、アルケイデスは笑った。
「……来たか…!」
「ぬぅりゃぁぁぁあっ!!!!」
上空から強襲したガレスの一撃を、アルケイデスは薄い笑みを浮かべながら受け止める。
「ガレスの叔父様…!」
とてつもない衝撃で民衆を吹き飛ばしたことも気にする余裕はないガレスとは違い、アルケイデスはガレスの斧を腕一本で受け止め、弾き返した。
「元気そうで何よりだ、ガレス・ランドロック。割と強めに叩いたんだけど。」
「ふんっ、老骨には随分と厳しい一撃じゃが、それも戦士の意地、戦場に舞い戻ったわ!」
「重畳。それに、お前だけではないようだしな。」
そう呟いて、首を傾けるだけで不意打ちを躱し、回し蹴りで下手人を弾き飛ばす。
「ぐぅっ!?…っ完璧に気配を消したはずなんだけどね。」
「甘いな【勇者】、私にそれだけで通じるとでも?自分で言うのもなんだが、人類史上最強の英雄だぞ?だが、安心した。まだその心までは折れていないようだ。」
「あぁ…覚悟を決めた
「ステータスも随分上がったようだな。」
「ふむ、今の1合でバレるか。たったの数分にも満たない戦闘であれほど経験値を溜められたのは初めてだ。」
「その点においては感謝しておくよ……アルケイデス。」
にやりと笑ったアルケイデスは猛った。
「剣を、槍を、盾を、正義を掲げ立ち上がれ冒険者共っ!さもなくばこの場の───いいや、この下界を蹂躙し尽くしてやるッ!!!」
アルケイデスは荒々しい宣言と共に、その場の冒険者に戦えと叫んだ。
ビリビリと、崩れかけの民家すらも揺らすほどの強者の覇気は、先まで恐怖で立ち竦んでいた民衆を失神させる。
穏やかに笑い、民を助け、子供を抱き上げたベル・クラネルはもういないのだ。悲壮に落ちたリューの感情は、幼子のように、その言葉を吐き出した。
「───つき……嘘つきっ!!」
「─────────」
その叫びは貫くようにアルケイデスの耳に届いた。一瞬曇るように彼の顔が無表情になったのも束の間。
「リュー、君だけだ。」
「なにをっ…!」
「君だけが、覚悟がなかった。」
ギリッと奥歯を噛み締めたリューに、残酷に叩きつける。
「君だけだ。私が裏切る覚悟も、救えない者がいる事の覚悟も、罵声を浴びせられる覚悟も足りなかった。この中の誰よりも、君は未熟だ。」
「だから…だからなんだッ!」
「君が唾棄すべき言葉をもう一度告げてやる、誰よりも純粋な正義の使徒よ。覚悟無き正義はとても脆い……そして、覚悟無き正義はともすれば、悪よりも醜い。」
「────────っ貴様ァッ!!!」
激情に任せるように、リューは飛び出した。認めたくなかった、自分が信じる正義が、悪よりも醜いなんてこと。
リューの攻撃を受け止めたアルケイデスに、唾を飛ばす勢いで噛み付いた。
「私の正義は私だけの物だ!あなたにだって否定できない!そう言ったのはあなただ!!」
「正義の本質を見据え、昇華したものであれば私も肯定しよう。しかし、君のソレは想いと呼ぶには未熟にすぎる。子供の夢を見ているようだ。外面は綺麗だが、それが崩れれば子供のように喚くしか手がない────今の、君のようにな。」
「────っ!!」
「それじゃ君は強くなれない。言ったはずだぞ、自分だけの正義を見つけろと。」
「ガァッ!?」
「リオンっ!!」
怒りにより大きく振りかぶったリューの攻撃を、剣も使わずにアルケイデスは受け流し、リューの腹に一撃を加えて吹き飛ばす。
壁に叩きつけられたリューは、明滅する意識の中、膝をつき武器を握った。
「リオン…!立てる!?」
「とめ、なくては……彼を、止め……て……」
「……っリオン…」
傍によったアリーゼは、ほとんど気を失いながら、うわ言のように繰り返すリューを、見ていられないと言うように視線を逸らした。
「ほんとに…罪深いわね、ベル…貴方、この子にこんなに深い傷をつけたのよ…!」
燃え上がった拳を握り、剣を抜いた。
「絶対頭下げて謝らせてやるわ!!」
足に溜めた爆炎を解き放ち、駆けた。
「【アガリス・アルヴェンシス】!!」
「アリーゼ…魔法なんてあったのか。」
アリーゼの二つ名の由来ともいえるその魔法は、生中なものではない。通常ならば鍔迫り合いをすることすらも難しい程の熱量に、炎の爆発により速度も増している。第一級冒険者といえど、それは効果を示すはずだ。
しかし
「随分涼しい顔ね…っ!ほんとに規格外!!」
「そうでなければ英雄は名乗れない。」
「ぐぅっ、ああぁぁぁっ!?」
それでも、アリーゼの剣は届かなかった。片手で燃える剣を掴まれ、思い切り建物に投げつけられ、瓦礫に埋もれる。
「団長っ!?くそっ!!」
「あー、くそ!こうなりゃ自棄だ!!」
「遅れるなガレス!」
「小娘共に一番槍を取られるとはな!しかし、本当に威勢のいい娘っ子共よ!!」
「四人か…来い!」
ほぼ同時に繰り出される四方からの攻撃。常人ならば躱しようはない。Lv7の身であったとしても、優しくはない。戦力的にはLv6間近の二人と、Lv4とLv3がいるようなものだ。
『取った!!』
四人が抱いた確信にも近いそれは、ただ彼が一歩踏み出しただけで越えられた。
輝夜の剣の刀身を叩き、ライラの攻撃の軌道に強引に割り込ませ二人の攻撃を防ぎ、ガレスの拳とフィンの槍は脅威と判断し、槍を、拳を掴み、防ぐ。
『?!』
「何を驚いている?言っただろう。この程度もできなければ、英雄は名乗れんと。」
「ば、化け物め…!!」
「何よりむかつくのが…あたし達の攻撃が歯牙にもかけられてねぇって事だ…だが…!」
「防いだね?」
「あぁ、しっかりとな…つまり、儂達の攻撃は通用するということじゃ!」
そう、二人の攻撃にのみ注意を配ったが故に、二人の攻撃ならば通用するという事実を露呈してしまった。
しかし、尚もアルケイデスは不遜に笑う。
「それがどうした?当たらなければ意味はない。そおら、飛んでけ
「なぁぁぁぁぁぁ────!?」
「フィン!!」
「人を気にする余裕があるのか、ガレス?」
「っ!!」
飛ばされたフィンに視線を移す寸前。アルケイデスの言葉にハッとしたガレスは、空いていた拳を突き出す。
「────ッ」
ガレスにとって最高の射程で繰り出された拳すらも、アルケイデスは難なく掴み防いだ。
(まさか…儂の射程を見切り、ワザとこの間合いに…!?)
「どうした、青ざめているぞ?」
その言葉の数秒後、複数の衝撃がほぼ同時に顔面と胴に襲いかかる。
殴られたと知覚するまでに数秒。ほぼ本能で踏ん張り、両手の拘束を振り払い、拳の連打を浴びせる。
「ラッシュの速さ比べ?いいね、受けて立つよ!」
「ぬぉァァァァァァッ!!!!」
雄叫びと共に繰り出される拳は、岩を砕き鉄を割く。しかし、そんな威力の拳打を目の前の英雄はわざとぶつけてきやがる。
全ての軌道を見切り、ワザと拳を合わせるアルケイデスは、にやりと嗤った。
「ぐむぅっっ!!?」
「また、お前は敗北の泥を舐める。」
クロスカウンターのような形で一撃を入れあった両者だったが、余裕そうなアルケイデスに反し、ガレスの顔面に深く突き刺さった拳は、容易に頬骨を砕いた。
虚ろに落ちかける意識の中、ガレスは確かに見たのだ。
「─────────」
どこか、期待を宿す金の竜眼を。
知っている、その眼を。
知っている、その感情を。
知っている
知っている
誰よりも屈強で、誰よりも戦いに誇りを求めた、巌のような戦士を。
その金瞳の奥底に隠されたモノが、ガレスの感情を爆発させる。
ドワーフの戦士は、吼えた。
「ぬ、オォッォォォォォォォ!!!!!」
「────流石だ、ガレス。」
突き刺さった拳を押し返すように、ガレスは意地を見せた。
アルケイデスの拳を押し返す。
へし折れた拳を硬く握り、1歩踏み込んで、全体重を乗せた一撃。
破裂するような拳打音を響かせながら吹き飛んだアルケイデスは、倒壊しかけた家屋に激突し、完全に瓦礫にした。
拳を突き出したまま半分気絶しているガレスは、たたらを踏んで何とか持ちこたえていた。
「────はぁ……はぁ…っ!どうじゃあ、大英雄!!」
ガレスの声に反応するように、崩れた瓦礫が吹き飛び、パチ、パチ、パチという音が土煙に紛れ反響した。
「見事流石。この私に一撃を当て、少ないとは言えダメージを与えるなんて…正直、期待以上だ。」
ゆっくりと歩むアルケイデスは、ダメージの欠片も受けたようには見せず、まだまだ余裕そうだ。
もう笑うしか無かったガレスは、力なく後ろに倒れながら、呟いた。
「くははッ…化け物め……────」
「……おめでとう、ガレス。君が最初だ。」
苦笑するように笑ったガレスは、白目を向いて気絶した。
既に気絶したガレスは何も聞こえないだろうと、ベルは相変わらずのドワーフに微笑む。
そして、ベルは真横から飛来した光の槍を右手で弾き、口角を上げた。
「次は…どっちかな。」
そうして1人微笑んだベルは、スイッチを切りかえ、英雄として声を上げた。
「…戯れにしては上出来だった。今日、この場では答えを得ることが出来なかったが…暇つぶし程度にはなったよ。では、また会おう冒険者諸君。」
「まっ、て…待ちな、さい…!」
ふらつきながらアルケイデスの前に立ったリューに、視線をよこした。
「リュー、君は…まだその時じゃない。 」
「なに、を……」
「自分を見つけて。仲間に頼ってもいい、誰を支えにしたっていい。だから…いいや、忘れて…僕が言うべきことじゃない。」
「…っ…貴方は……」
倒れこむリューの体を支え、そっと壁に寄りかからせた。
安らかとは言い難い寝顔のリューの頬を撫でたベルは、誰にも見えないように、満足気に笑ってその場を去った。
数時間後、ガレス・ランドロックのランクアップが報告された。
感想、高評価よろしくお願いします。
これこのペースで行くと番外だけでで20話超えるな…