旅のとき、そこでしか食べれないものが食べたくなって 作:鳥頭堂正太郎
そこで同人誌に書いた中で食べ物に関する店にだけ書く事にした。
炭焼きレストランさわやか
炭焼きレストランさわやかは、静岡県浜松市中区に本社を置く、さわやか株式会社が運営する、静岡県のみにチェーン店を持つステーキ、ハンバーグレストランである。
名物メニューはげんこつハンバーグで、注文をして、しばらく待つと、大人の拳ほどはありそうな、網目のついた焦げ茶色の挽肉の塊が、牛の形をした熱く熱せられた鉄板に乗せられて客席に運ばれてくる。
ウエイトレスのお姉さんがブッチャーフォークとナイフでもって、客の前でハンバーグを丁寧に縦半分に切り分ける。
切断面を下に向けて、二つのハンバーグを横一列に鉄板並べかえると、フォークとナイフでもって、一個ずつハンバーグをぎゅっと鉄板に押し付けると、ジュゥ~と肉の焼ける音と匂いがして、肉汁が溢れ、白煙があげる。
二度ほど焼きを入れて、適度な焼き加減になったところでオニオンソースかデミグラソースをかけて付け合わせとともに提供される。
外側は炭火でしっかりと焼かれていて、弾力が凄く、まさに肉を食べているという気になり、噛み締めるほどにギュムギュムッとした弾力が伝わってくる。
中側はまだ赤みが残っていて、柔らかく、肉の甘みと旨みが噛み締めるほどに溢れてきて、オニオンソースの甘酸っぱさが肉の旨味を引き立て、それはもうなんとも言えぬほどにうまい。
さわやかは基本的にどこも人気店で、入店時に待たされるのだが、郊外型の店舗が多く、静岡駅の近くにあるのは、このセノバ店だけという事もあってか、普通に一時間待ちとかである。
整理券を発行しているので、待ち時間をスマホで確認できるようになっているので、待ち時間に買い物などに行っても良いと思う。
だが、待ち時間の割りに提供されるのは早いので、席に着いたら早い。
石部屋
静岡市の名物菓子といえば、安倍川餅である
安倍川餅とは、つき立ての餅に黄な粉をまぶし、その上から白砂糖をかけた物であるが、現在では、黄な粉をまぶしたものとこし餡を絡めたものの二種類を一皿に盛った物となっている。
伝承によれば、江戸時代初期、徳川家康が安倍川の川岸の茶店に立ち寄った所、そこの店主がつき立ての餅に黄な粉をまぶし、当時、安倍川上流(梅ヶ島)で取れていた砂金に見立てて、「安倍川の金な粉餅」と称して献上した。
家康はこれを大層喜び、安倍川にちなみ、安倍川餅とせよ。と言ったといわれている。
その後、東海道中膝栗毛には「五文どり」(五文どりとは安倍川餅の別名)として登場している他に、歌川広重の浮世絵の「東海道五拾三次之内 府中 安部川」にも、安倍川餅の店が描かれているのだが、その描かれている安倍川餅の店こそが、この石部屋と言われている。
創業は店先の看板に書いてあるように、文化元年(1804)からなので、東海道五拾三次が描かれた天保3年(1833)には、石部屋は営業していた事になるから、可能性としてはありえなくないが、創業時の店舗は戦災で焼けてしまい、現在の店舗は古民家を移築したものらしいので、判別がつかない。
だが、土間の座布団を敷いた床机と、ちゃぶ台が置かれた小上がりは雰囲気たっぷりで、江戸時代にタイムスリップしてしまったような気にさせるほどだ。
まぁ、そんな事はともかく、今も本通り沿いの安倍川橋そばにあって、元祖と銘打たれた石部屋の安倍川餅は昔ながらの製法を頑なに守り続け、注文を受けてから、つきたての柔らかい餅を固まらないように湯煎し、4cmほどに手で絞り、黄な粉をたっぷり入れた桶の中に落としてまぶすと、黄な粉に。
それとは別に漉し餡をつけ、指先で丸めてあんこ餅に。
一皿にそれぞれ5個ずつの餅を乗せ、きな粉餅には白砂糖が上からどばっとかけられて、提供される。
味は柔らかいながらもちゃんとした歯ごたえもあって、餅の香りと食感、きな粉と砂糖の香ばしさ、程よい甘みの濾し餡と、なんともうまい。
私は昔はあまり安倍川餅は好きではなかったのだが、石部屋の安倍川餅を食べて、そのうまさを知ってから、静岡で少しでも時間があったら、安倍川餅を買って食べるようになってしまった。
しかし、当然、石部屋のそれではないから、まったくもって、味は異なるのであるけれども、それでもつい買い求めてしまうのだ。
あと、甘いものが苦手な人の為にか、わさび醤油で食べるからみ餅もあるのだが、
考えてみたら、餅を焼いて砂糖醤油を着けて食べたりするのだから、餅と醤油の相性が悪いわけがない。
湯煎にかけられた餅をわさび醤油で食べるわけであるから、それはもう、うまくないわけがないのだ。
私は再度訪れて、安倍川餅とからみ餅を食べ比べてみたが、すっかりからみ餅を気に入ってしまった。
安倍川餅よりからみ餅を持ち帰りたいほどだ。
安倍川餅、からみ餅とも1人前700円。みやげ用安倍川餅は2人前1400円~。
田尻屋総本家
静岡といえば、安倍川餅に並ぶ名物といえば、わさび漬けだろう。
静岡の観光協会でも、わさび漬けを作っているメーカーの全貌を把握しきれないほどの数あるらしい。
ホビーショーで合流した静岡県在住の提督に、
ここのを食べたら、よそのわさび漬けは食べられない。
田丸屋が有名だけど、そこじゃないんだ!
と言われて案内してもらったのが、田尻屋総本家であった。
なんでも、わさび漬けの発祥は、江戸時代の宝暦年間(1751年~1763年)で。
駿河国の商人であった田尻屋利助が、現在の静岡市葵区有東木に伝わるワサビの茎の糠漬けを元に考案し、売り出したのが始まりとされているそうである。
つまり、宝暦3年創業で、元祖をうたう田尻屋こそ、まさにわさび漬けを最初に売り出した店という事になる。
よく宣伝上手な新参の店が、たくさんの種類のバリエーション豊かな商品を販売したり、大きく立派な店に改装したり、宣伝をしまくって有名になってしまったりして、元祖の店がこじんまりとして、知られざる店と化しているのはよく見かけるが、田尻屋も静岡駅から少し離れた所にあって、寂れた観光地の売れない土産物屋のごとき外観をし、同じように時代を感じさせる看板には元祖、本家、総本店とあるのが面白い。
店内に入ると、わさび漬けを漬けるのに使うであろう大きなわさび色の樽が鎮座ましましており、老舗の風格を醸し出している。
他にも賞状などが飾られていて、長い歴史を持つ老舗なのだと感じさせる。
よくある事だが、メイン以外にもたくさんの商品があって、店内を埋め尽くすくらいに値札が貼り付くされていたりするのを見かけるが、田尻屋ではまったくそれらを見かけない。
というのも、田尻屋では、わさび漬けの他には、わずかに茶漬けやふりかけや醤油漬けなどがあるのみで。
わさび漬けはパック、樽、缶と入れる容器と重量の違いしかない。
値段も三百円から二千円までと安い。
私が買ったのはパックのであったけれど、パッケージには富士山を背景に、江戸時代の田尻屋と東海道を行き交う人々が背景に描かれており、大きく元祖わさび漬けと書かれ、これまた大きくわさびが描かれている。
開けてみると、白いクリーム状の酒粕の中に細かく刻まれたわさびが入っている。
食べてみると酒粕はねっとりとクリーム状の滑らかな味わいで一瞬、ほのかに甘いが、強く主張するわけではなく、すぐに辛味が来る。
刻まれたわさびは繊維質が生きているかのようで、噛み締めるとジャキジャキしていて心地よい。
そうしているうちに爽やかだが強烈なわさびの辛味がツーンと口いっぱいに広がり、鼻から消えていく。
これまで、わさびにはあまり興味が無かった私だけれども、田尻屋のわさび漬けを食べてみたら、まるで他のものと違っていて、確かに他のものは食べられないと思ったものだ。
やはり、老舗の逸品なのだ。
ところで改めて買い求めに行ったら、10時開店であったのにも関わらず、11時二十分頃にたどり着いたら、すでに完売していた。
昔は15時であっても買えていたのに、いやはや、人気は凄いものである。
ネットで要予約とあったから、私はあらかじめ予約してあったから買えたが、予約していなければ無駄足を踏んでいたかもしれない。
もし購入しようという方は気をつけて頂きたい。