僕のヒーローアカデミア:BEAST ON! 作:u160.k@カプ厨
獣拳と出会った少年、緑谷出久は日々
僕、緑谷出久が
「……もう諦めなくちゃいけないのかな……?」
「どうしたオヌシ? なにをそんなに泣いておる?」
不意にかけられた声に顔を上げるとそこには不思議な雰囲気を纏った猫のおじいさんがいた。
最初は知らない人(猫?)と言うことで警戒していた僕だけど、気がつけば悩みや泣いていた理由や、『ヒーローになる』という夢が
それを猫のおじいさんは僕の話をただ黙って聞き止めてくれていた。
「なるほど、オヌシは無個性じゃったか」
「……はい」
無個性。文字通り、何の個性も持たない人間。医師から『ムリだね、諦めた方がいい』と宣告され、母を泣かせてしまう。
幼なじみに『何も出来ない木偶の坊』と言う意味のアダ名まで付けられ、バカにされる。それが当時の僕だった。
「……オヌシに一つ聞きたい、ヒーローとはなんじゃ?」
「え?」
何かを考え込んでいたおじいさんはそんな疑問を口にした。
「優れた個性を持ち、力が強く、頭が良い。それだけでヒーローになれるのものなのかの?」
幼い頃の僕には難しくて答えられなかった。けれど、それは違うと感じたのは確かだった。
「ワシはヒーローのことは全く知らぬ……しかし、かつて袂を別ってしまった友や道を違えてしまった弟子を救えなんだワシはヒ-ローではないことは解る」
どこか遠くを見つめるおじいさんの糸のように細い目がどこか悲しそうで、寂しそうだった。
「しかし道を違えた者をまた正しい道に引き戻してくれた弟子達、そやつらも個性など持っとらんかった……それでもやつらは正しくヒーローと呼ぶに相応しい……少なくともワシはそう思う」
さっきとは対照的に、どこか自慢気な言葉。そんなスゴイ人を育てたおじいさんもまたヒーローなのではないか。
そして、僕もおじいさんのお弟子さんみたいに誰かを助けられる人になりたい。
そう思わせるには充分過ぎた。
「……ワシも若いの、
僕が尊敬の眼差しで見ていたことに気付いたおじいさんは、ちょっと恥ずかしそうにそう呟いた。そういえばおじいさんは一体いくつなんだろうか?
おじいさんの姿も最初はそういう個性かと思いきや、おじいさんはまだ人間が『個性』を持つ以前より生きていて、この姿は己の『技』によるものだと語った。
「なぁ、オヌシ……獣拳をやってみぬか?」
いろんな疑問を抱いていた僕に、おじいさんはそう提案してきた。
「じゅうけん、ですか?」
「獣の拳と書いて獣拳と読む。心に獣を感じ、獣の力を手にする拳法……それが獣拳じゃ」
先ほど出てきたおじいさんのお弟子さんもまた獣拳というものを学んだらしい。その提案を僕は一つの光明のように感じた。
「獣拳を学んだとしても個性なるものは得られぬ。じゃが、日々学んでいくことで違う自分に変わるキッカケにはなるハズじゃ」
個性を得られなくたっていい。それでも僕が憧れた
「僕でも……無個性でもヒーローになれますか? 今の僕から、誰かを笑顔で助けられる、そんな人に僕でも変われますか?」
「……それはわからぬ。じゃが、ヒーローやオヌシが目指すオヌシになれるか。それはオヌシの志次第」
残酷なまでの現実を突き付けられたあの日からずっと欲しかった言葉。母からですら貰えなかった僕が本当に欲しかった言葉。
「オヌシがその夢を抱いた時の気持ちを忘れず、精進を続ければいつか……」
その言葉にどれだけ救われただろう。
その言葉がどれだけ欲しかっただろう。
「オヌシはヒーローになれる」
あの日から僕ですら自分に送れなかった言葉を、ようやく貰うことが出来た。
ヒーローに『なりたい』なら、ヒーローに『なれる』と言ってくれる人がいるなら、ヒーローに『なる』努力をしなくちゃいけない。
「ぼ、僕の名前は緑谷出久です! 僕に……僕に獣拳を教えてください!」
「いいじゃろう、ワシの名はシャーフーという。出久よ、修行は明日より開始するぞい」
「はい!よろしくお願いします、
数年後、マスターは『やらねばならないことができた』と言って、どこへともなく去ってしまった。
しかしマスターと再会したときに少しでも『高み』へ、『ヒーローになる』という夢に近づけられるように修行を欠かすことはなかった。
そして、いくつかの季節が巡り、僕は中学三年になっていた。
この頃になると進路を決めなければならない。それは超人社会になっても依然として変わっていない。それはともかくとして、僕は
……だが、その選択は担任の不用意に晒されてしまい、同じクラスの人達の侮蔑と嘲笑の的になっていた。そして幼馴染からは暴言を吐かれ、彼の個性によって威嚇された。
「オイ、デクゥ! 没個性どころか無個性のテメーが!なんでこの俺と同じ土俵に立とうとしてんだ、あぁん!?」
幼馴染みのかっちゃんこと、爆豪勝己。頭脳明晰、運動神経抜群にして『爆破』という優れた個性を持ち、幼いころから長年僕を『デク』や『クソナード』と虐げてきたヤツだ。昔はよく一緒に遊んだりしていたが、いつしか彼は僕を目の敵に、僕は彼が苦手に、そんな関係になっていた。
「かっちゃん、僕は君と同じ土俵に立つつもりはないよ」
昔の僕だったら彼の脅しや同級生たちの侮蔑と嘲笑に俯き、悔しさに唇を噛むだけだっただろう。けど、今の僕は昔の僕と違う。
「僕の道は僕のモノだし、僕が決めることだ。かっちゃんや他の誰にも……例え相手が神様であろうとも文句を言われる筋合いはないよ」
そう言い切ると、幼馴染も担任や他の同級生たちも黙ってしまった。そうしている内に終業時間になると、未だ固まる同級生たちを残して僕は一人教室を後にした。
『諦めは未来を閉ざす行き止まりへの道。諦めない限り、開けない道はない』。
だが、もしこの言葉がなかったら、僕はどうしていたのだろうか?
「ま、答えなんか出る訳ないか……ソレよりもあのかっちゃんに言い返す日が来るなんて、我ながらビックリだ」
彼に対して今日のように強く言い返したのは初めてのことだった。おかげで長年胸の中にあったモヤみたいなモノが少し晴れた気がした。
「ちょっとスッキリしたからか、ちょっとおなかすいたな……メンチカツでも食べに行こうかな」
商店街にある精肉店。そこの絶品と評判で行列のできるメンチカツを買い食いして行こうかと思ったその時、
「ッ!」
不穏な気配を察知してその場を飛び退くと、そこに突然異臭を放つ泥がアスファルトの路面に広がった。
「Mサイズの隠れ蓑ぉ~……なぁボウヤ、ちょっとその身体貸してくれよぉ……大丈夫大丈夫、苦しいのをたった45秒ガマンしてくれればあとは楽だからさぁ~」
マンホールから現れたらしい喋るヘドロ。その正体は『ヘドロ』の個性を持ち、『個性』を違法に扱う者『ヴィラン』だ。言動から察するに恐らく警察やヒーローから逃走中なのだろう。
誰でも笑顔で助けるヒーローに憧れる僕でも他人に身体を、それも今の今まで下水道を移動していたヤツに身体を貸すなんてゴメンだ。
「なんだぁ、この俺とやる気かぁ~?」
人通りが少ないとは言え、住宅地のド真ん中で姿を現して僕を隠れ蓑にしようとするならば近くにヘドロマンを追跡する人がいるハズだ。
ならば下手に逃げるよりはここでちょっとした騒ぎを起こしてソレを聞き付けてヒーロー達が来てくれる(ハズ)のを待つ。これがベスト、と判断した僕は獣拳の構えを取る。
「安心したまえ少年!」
それと同時に僕とヘドロマン以外、第三者の声が路地に響いた。
「なぜって?」
突如吹き抜ける突風。それは一発のパンチの拳圧によるモノで、僕と対峙していたヘドロマンを爆散させる強烈な一撃。
「私が来た!」
そのパンチを放った人物、それは僕が
「オールマイト……!」
夢か現か幻か。筋骨隆々でムキムキな体躯と不敵な笑顔が特徴のNo,1ヒーロー、オールマイトの姿がそこにあった。
~??の獣拳アカデミア~
??「獣拳とは!四千年以上の歴史を持つ、獣を心に感じ、獣の力を手にする拳法です!ブンブーン!!」
出久「心に感じる獣は個性と同じように千差万別!親子で同じ人もいれば兄弟でまったく違う人もいますよ!」
??「動物だけでなく、鳥や魚などの海洋生物。そして虫や節足動物なんかもいますが、我らが出久さんの内なる獣の姿とは!?」
出久「さらに向こうへ!」
出久&??「「Puls Ultra!」」