僕のヒーローアカデミア:BEAST ON! 作:u160.k@カプ厨
相澤先生の告知から二週間。時間はあっという間に過ぎ去り、今日はいよいよ雄英体育祭当日!
「そう言えば、選手宣誓の内容は大丈夫なのか?」
「うん、初めてだからかなり難しかったけどね」
ジャージに着替え、控室に移動した僕は尾白君と準備体操を兼ねたストレッチをしていた。
「相澤先生が先に言っておいてくれて良かったかもね!」
「確かにね。いきなり言われたら緊張して噛みまくってたかも」
「違う違う、緑谷君が呼ばれたのにうっかり飯田君が返事したりしそーだなー、って思って!」
「いやいや、それは……ないんじゃない?」
葉隠さんのもしも話に麗日さんが突っ込むけど、歯切れが悪い。しっかり者の飯田君がそんなことする訳が……ない……よね?
「皆、準備はいいか!入場の時間だ!!」
「もうそんな時間か……行こう、緑谷」
「うん!」
「よっしゃ!」
「頑張って目立つよー!」
飯田君の号令により気合いを入れる。
……しかし、葉隠さんはなぜ鼻眼鏡とトナカイの角なんか着けて参加しようとしているのだろう?
----------。
『いよいよ始まるぜ、雄英体育祭!括目しろ、オーディエンス!群がれ、マスメディア!』
プレゼント・マイクの熱の籠った実況がスピーカーから流れ、同時に聞き覚えのある羽音も聞こえて来る。
『実況はボイスヒーロー、プレゼント・マイクさんと私、スクラッチ特別開発室広報担当バエ!解説は抹消ヒーロー、イレイザーヘッドさんでお送りいたします!』
そう、羽音の発生源はなんとバエさん。授業見学に来ていたバエさんと偶然出会ったマイク先生、二人は妙に馬があったらしく、先生の方から今回の実況役に誘ったらしい。
『早速一年生の入場だァ!どうせテメーらのお目当てはコイツらだろ!? ヴィランの襲撃に不屈の精神で立ち向かった期待の新星!!』
初の大舞台に皆が今までにないほどに緊張しているのに、プレゼント・マイク先生の僕たちを持ち上げるような紹介で一層拍車がかかる。
飯田君や峰田君は手足が揃って出てしまっているし、切島君は個性で文字通りガチガチだ。さすがのかっちゃんも手汗がスゴイ、さっきからバチバチと火花が散っている。
「梅雨ちゃん、しっかり!!」
「あまりのストレスで擬死状態になってる!?」
麗日さんと耳郎さんの悲鳴に振り向くと、なんと梅雨ちゃんが仰向けに倒れていた!
……これも与えられた試練なのだろうか? なら、これも高みを目指すために乗り越えるだけだ!
『ヒーロー科!一年A組だろォォォーーー!!』
そして、競技場内に入った僕たちを経験したことのないほどの大歓声が出迎えた。
『続くはB組!普通科のC、D、E組もやって来たーーー!』
サポート科、経営科と続き、全11クラスの生徒が列を成す。しかし、普通科の人達は『自分達はどうせ引き立て役だ』と呟くほどに士気が低い。例外はずっと僕を見ている心操君ぐらいだ。
「選手宣誓!」
ピシャン!と鞭を鳴らして主審である18禁ヒーロー、ミッドナイト先生が雄英体育祭の開幕を告げる。そのコスチュームやスタイル、美貌から男女問わず人気の高いヒーローの登場に会場にいる人達の多くが魅了されている。
「18禁なのに高校にいても良いのか?」
「いい!」
常闇君の疑問を峰田君は力強く肯定した。
「静かにしなさい!選手代表!!1年A組!緑谷出久!!」
「はい!」
壇上に登り、空に向けて手を上げる。入場するまでとは異なり、不思議と気持ちは落ち着いている。
「宣誓!僕たちは日々高みを目指し、学び、変わって来ました!今日はその成果を優勝と言う栄光を勝ち取ることで示し、更なる高みを目指す
宣誓の締めに会場中がざわつく。それもそうだ、無個性の人間が雄英の、それもヒーロー科に所属しているなど前代未聞の事だ。しかも優勝を狙うと宣言したことは耳を疑うことだろう。
「ハッ!デクのクセに1位狙いかよ!」
「……」
かっちゃんが獰猛な笑みを浮かべ、轟君は静かに闘志を燃やす。
「熱いな!コレ!!」
「やる気満々だぜぇ!!」
「ときめくぜ」
それまで緊張で固まっていたり、クラスや学科への劣等感などから投げ槍だったり、意気消沈していた参加者に火が着いたのを感じる。
「無個性で入試首席?」
「どんだけ努力したんだ?」
「わからない……けど私達だって負けてない!」
「アイツができんなら俺たちだって!」
それは普通科の人達も例外ではなかった。
「良い感じに昂って来たところで、最初の競技を始めるわよ!ここで毎年多くの生徒が
ミッドナイト先生が鞭で示した先のスクリーンモニターに東映……もとい、投影されたのは『障害物競走』の文字。
「ルールは簡単!このスタジアムの外周4キロに設置された障害物を突破してゴールしなさい!!コースを守れば、基本的に何をしても構わないわ!さぁ皆、位置につきまくりなさい!!」
ゲートに設置されたシグナルが点灯する。1つ……、2つ……、3つ!今!
「スタート!」
全員が一気に走り出した!
----------。
『さぁ、始まったぜ!雄英高校体育祭の第一種目!障害物競走!!早速だがイレイザー、この競技の見どころはどこだ!?』
『……今だよ』
『スタートダッシュを決めて最初にゲートをくぐったのはA組推薦入学枠の轟選手!他の選手は……おーっと、これはなんということだーーー!? 狭いゲートに選手が一気に押し寄せて身動きがとれなくなっているーーー!!』
「悪いがここで足止めさせてもらう」
『トップの轟、個性を発動!地面ごと他の選手の足を凍らせて妨害を開始!!この男、容赦ねーな!!』
「そう上手くいかせねぇよ、半分野郎!」
「甘いわ!轟さん!!」
『しかぁし!その妨害をモノともせず飛び出したヤツラがいるぜ!So Cool!!』
『爆豪に八百万、切島、青山……轟の個性を知る奴らだな。氷結の妨害を読んでたか』
『しかし轟選手!一度後続の選手たちを見たものの、何を言うでもなく走り続けます!』
「くっ!滑って走り辛いし、このままじゃ追いつけない!!……はぁ!!」
『なんだァ!? 入試首席の緑谷が地面を踏み付けたと思ったら氷が全部砕け散ったァ!!?』
『震脚で周囲の氷を砕いたか』
『そのようです!路面状況が改善されたことで各選手、一気に加速しています!!』
「ありがとよ、緑谷ァ!氷がなきゃこっちのモン、ダベェ!?」
「峰田くーーーん!?」
『個性を使って飛び跳ねるように疾走していた峰田選手が何者かにブッ飛ばされたー!?』
『ここで最初の障害だ!第一関門、ロボ・インフェルノ!!コイツを切り抜けなきゃ、先には進めねェぞ!!』
「一般入試組が実技試験で戦ったっつーヤツか……もっとスゲーのを用意して貰いてぇな」
『入試のお邪魔ギミックに使ってた
「あそこ通れるんじゃねぇか!?」
「行くぞ!」
「よっしゃ、ラッキー!」
『後続の選手が動かなくなった巨大ロボの隙間を駆け抜けようとしています!轟選手、凍結による攻略と妨害のつもりが宛がはずれてしまったのかーーー!?』
「? ……違う!切島君!鉄哲君!戻って!!」
「「!?」」
「不安定な体勢の時に凍結させた、……そろそろ崩れるぞ」
『あーっと、氷結ロボが倒れるぅー!しかもその下には人がいるぅーーーー!!』
「ッ!間に合えぇーーーー!!」
「緑谷!?」
『どうした緑谷ァ!自分から下敷きになりに行くなんてどーゆーつもりだァ!?』
「(受験の時は
『なんと緑谷!アッパー一発で巨大ロボを打ち上げたーーー!?!?!?』
「魂込めて……」
『更にそれを追い掛けるように跳躍ゥ!何する気だァ!?』
「撃つべし!」
『渾身の右ストレートォ!ブッ飛ばされた巨大ロボがその軍勢に向かって急降下ァ!!そのデカさ故に迅速な回避運動を取れないロボ共をあっと言う間にスクラップと化しちまったーーーー!!!』
「よし!」
『入試の時は激技とやらを使ってようやく一体だったが、今回は素の力だけで六体近く撃破か……』
「助かったぜ、緑谷!でも手加減しねーぜ!!」
「どういたしまして!臨むところだよ!!」
「……」
『緑谷選手、他の選手の助けになってませんでしょうか?』
『むしろ逆だな。生徒の多くは個性の強化を優先しがちなヤツがほとんどだ。故に緑谷の身体能力の高さに圧倒されて足が止まってる者も多い』
「鉄哲!なにボーっとしてんの!!まだ挽回できる!走るよ!!」
「ッ……あぁ!負けてたまるかァ!!」
『止まってしまっていた鉄哲選手!拳藤選手の激励を受け、再度走り出しました!!』
『そうだぜ!ここはまだ序盤!!トップ集団のA組に追いつき、追い越せリスナー……いや、
『確かに困難を経験し、乗り越えたA組は抜き出ているのが多い。しかしそれは覆せない程の差ではない』
「覆せない差じゃない、だって? ……おい、ロボ野郎」
『ターゲット発ケ……』
「オマエが他のロボ共を破壊してくれ」
『……ターゲット発見!ロボ野郎ブッコロ!!』
「そーでなくてもやってやるよ……俺だって!」
襲い掛かってきたはずの仮想ヴィランに命じ、己を守らせる心操は決意を新たに
『さてここで、トップグループが第二関門に到達した模様です!』
「いつの間にこんなモノを……これ、自分で浮いても向こうまで渡り切れるんかな……?」
麗日が思わず戦慄するほどの大穴が参加者の前に口を開けていた。底が全く見えないほどの深さは地球の反対側に繋がっているのではないか、と思わずにはいられない。
『さて次の障害はァ!落ちれば
『底が見えない大穴と複数の足場、そしてそれらを繋ぐ一本のロープのみ!トップの轟選手が氷結でロープの上を滑るように滑走すれば、爆豪選手は爆風で大穴を飛び越え、後続集団を大きく引き離しております!』
「確かに深い……けど道は見えてる!」
「で、デク君!そっちはロープもなにも……って、えええーーーっ!?」
『緑谷オマエどこ走ってんだァ!?』』
『垂直に切り立つ崖を足場に走り抜けるか。コースは守っているし、落下の危険を抱えたまま低速度で綱渡りするよりは合理的だな』
『そう言う問題か!?』
『緑谷選手!轟選手、爆豪選手に次いで3位でザ・フォールを突破しました!』
(多少大回りになって、かっちゃんと轟君に遅れた!なんとか次で追い越さないと距離的に逆転は難しくなる!!)
『早くも最終関門!辺り一面は地雷原!!その名も、『怒りのアフガン』!!』
『地雷が埋められている場所はよく見ればわかるようになっております!なお音と光は凄まじいのですが、威力はないモノを使用しておりますのでご安心ください!!』
『地雷に安心できる要素があるのか?』
「待てや、半分野郎ォォォーーー!」
「爆豪か……後続に道を作っちまうが仕方ない」
『轟選手!個性を持って地雷原を一面凍結させたようです!!』
『爆豪は飛んでるからな、地雷が足止めにならない。ならば自分がより早く進むための道を作ったんだ。合理的判断だ』
『そうこう言ってる間に爆豪が轟と並んだー!』
「良く聞け半分野郎ォ!俺は今日!テメェにも、デクの野郎にも勝つ!!俺がここで一位になったるから首洗っとけや!!」
「……」
『爆豪、轟に宣戦布告するもシカトされてやんの!ウケる!!』
「ウルセェェェェーーー!!!」
『両者デッドヒートを繰り広げながらも、間もなく地雷原を抜けようとしています!もうこの二人に追いつける者はいないのでしょうかーーー!?』
「いるワk、ぐあッ!?」
「っ!?」
『なんだなんだァ!? いきなり爆豪と轟が吹っ飛んだァーーー!? 一体、何が起こりやがったァーーー!?!?』
『緑谷選手だー!緑谷選手が両者の足元を穿穿弾で地雷ごと吹っ飛ばしたーー!!そして今、二人を……抜いたぁーーー!!!』
『喜べマスメディアーーー!!!オマエら好みの展開だぜ、YEAHーーー!!!』
「俺の前を走ってんじゃねぇ、このクソデクがァァァーーー!!!」
「……!!」
『なんという復活の早さでしょうか!爆豪選手、轟選手ともに必死の形相で緑谷選手を猛追しております!!』
『イレイザー、オマエどんな教育してんだよ? マジでスゲーぞ、アイツら!!』
『俺は何もしてない。アイツらが勝手に焚き付けあってんだよ』
『さぁ、手に汗握る展開です!熱戦!接戦!!大激戦!!!間もなくゴールという所でトップの緑谷選手を轟選手、爆豪選手が追うデッドヒートであります!!』
トップの三人がゴールに向かい、ラストスパートを掛ける!
『彼が来ることを誰が予想したでしょう!? 推薦組も含めた全員を抑え、トップでゴールしたのはこの男ォッ!!!』
『一着!緑谷出久だァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!』
割れるような大歓声が上がる。
次いでゴールしたのは轟、爆豪。出久と轟は肩で荒い呼吸を繰り返し、爆豪は個性を使い過ぎたのか掌に走る痛みに顔をしかめる。
「やったね、デク君!悔しいよ、チクショー!!」
「う、麗日さん!お、お疲れさま!(ち、近い~っ!)」
続々とゴールする選手達。16位となった麗日の後ろでは得意な徒競走系の種目でありながら6位の飯田が茫然としていた。
~バエの獣拳(?)アカデミー~
バエ「雄英高校!出久さんやオールマイトさんの母校であるヒーローの育成機関です!」
出久「学科は全部で四つ!まずは僕たちが所属する『ヒーロー科』、心操君がいる『普通科』、サポートアイテムの研究・開発を学ぶ『サポート科』、ヒーローの活動方針などをマネージメントなどについて学ぶ『経営科』です!」
バエ「この四つの学科が一堂に会することはそれほど多くないそうで、その少ない機会の一つがこの体育祭なのです!」
出久「入学式に出ていない
バエ「さて次回!次の競技で出久さんがピンチに!? そんな所にサポート科の生徒が急接近!?」
出久「サポート科? 誰か知り合いとかいたかな?」
??「私のドッ可愛いベイビー達が大活躍ですよ!」
出久「さらに向こうへ!?」
バエ&出久&??「「「Puls Ultra!!!」」」
バエ&出久「「……今の誰?」」