僕のヒーローアカデミア:BEAST ON!   作:u160.k@カプ厨

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`19.7.2:誤字の修正を行いました。7w76kxZ/Nc様、ありがとうございます。


修行其の十五:ヒエヒエでメラメラな少年

『早速、結果発表と参りましょう!』

『1位!見事1000万を死守して、ハチマキヌンチャクでポイントをごっそり奪った緑谷チーム!!』

 

「皆のおかげだよ!ありがとう!!」

「何を言う、この勝利は緑谷の策と指揮の賜物だ」

「そうそう!でも轟君にハチマキを取られた時は焦ったよー」

「そんなことよりあの約束の履行をお願いしますよ!1位の人!!」

「あれ? もしかして名前すら憶えて貰ってない?」

 

 

『2位!飯田の切り札と轟の指揮が光ってたぜ!轟チーム!!』

 

「すまねぇ、緑谷に一杯喰わされた……」

「謝らないでください、轟さん!私たちの誰も、それこそ先生方にすら気づかせなかった緑谷さんが上手だっただけですわ……」

「次だ、次の競技で勝とう!」

「そうだぜ!ここから騎士転生だ!!」

「上鳴君!それを言うなら起死回生だ!!」

 

 

『3位!一度は0(ゼロ)ポイントになりながらも見事に返り咲いたモンだな!爆豪チーム!!』

 

「ックソがァーーーーー!!!!!!」

「悔しいのは事実だけどよ、次に進めるだけ良しとしようぜ?」

「ドンマイ!ドンマイ!次だよ、次!!」

「なんだ? ドンマイって言葉で変な胸騒ぎが……」

 

 

『4位!最後まで上位陣に食らいつくたぁ、奮闘したな!心操チーム!!』

 

「……あー……その……」

「待った。今、礼をいうのは無しで頼む」

「その通りだよ、ムッシュ心操☆」

「この後はまた個人戦。名残惜しいが友誼を深めるのは後にすることを推奨する」

「……りょーかい、やりづらいね。どうも……」

 

 

『以上4チームが最終種目に進出決定だぜYeah!!』

『この騎馬戦を持ちまして午前の部は終了。午後の部はお昼の休憩を挟んで一時間後の開始となります。選手の皆さんは集合時間のお間違いのないようにご注意ください!』

 

 バエさんのアナウンスを聞いて肩の力を抜く、同時にお腹の虫が鳴いた。

 

「緑谷、ワリィが少し時間をくれ。話がある」

「うん、別に構わないよ」

 

 験担ぎのメンチカツ丼は少しお預けのようだ。

 

 

 

 轟君に連れられた僕は人通りのない通路に辿り着いた。日陰になっているからだろうか、少し空気がひんやりとしていた。

 

「詳しく聞くつもりはねぇが、オマエ……オールマイトの隠し子かなんかか?」

「……はい?」

 

 轟君の予想外な話題を切り出しに面喰ってしまうのと同時に、目の前にいる轟君に妙な違和感を感じた。お互いに目を見ているハズなのにどこか別のところを見られているような気がする。

 

「違ったか?」

「う、うん。僕の両親は二人ともヒーローですらない一般人だよ?」

「そうか……でもオールマイトに目ぇかけられてるよな?」

「……」

 

 目を掛けられている。そう思われることについては、二つほど思い当たる節があった。

 

 ーーーーーーーーーー。

 

「緑谷少年がいたーーー!」

「お、オールマイト!?」

 

 心操君達に宣戦布告を返した翌日、「ゴハン、一緒に食べよ」とやたら女子力が高いお誘いを受けた僕はオールマイトとなぜか仮眠室で一緒にオールマイトお手製弁当(可能なら家宝にしたかった)をつついていた。

 

「君へ送った合格通知の中で私が言ったことを覚えているかい?」

「はい、なぜオールマイトが獣拳を知っているのか。知りたければ雄英(ここ)に来い……そう言ってました」

「その通りだよ、緑谷少年」

 

 獣拳はかつては広く知られた拳法だった。しかし個性の発現に伴い、知る人も珍しい流派となってしまった……その獣拳をなぜオールマイトが知っているのか。と、ずっと疑問に思っていた。

 

「あれは私がまだヒーローとしては新人(ルーキー)だった頃、アメリカに一時期留学していてね。その時、ニューヨークで一人の小説家と出会ったんだ」

「小説家、ですか?」

 

 その小説家は物静かで理知的な雰囲気を持ち、個性とは異なる不思議な力を感じたらしい。そしてオールマイトはその人から獣拳の存在を教えて貰ったそうだ。

 

「その小説家の名前はゴリー・イェン。拳聖と呼ばれているそうだ」

「け、拳聖、ゴリー・イェン……!」

 

 拳聖。獣拳の始祖に最初に師事し、リーダーである師匠(マスター)を含めた七人の獣拳使い。他の獣拳使い達の頂点に立つ方々であり、僕にとっては雲の上の存在だ。まさかそんなスゴイ人の名前が出てくるなんて夢にも思わなかった!

 

「あぁ、そして日本に戻ってからゴリー君の紹介でとある人に出会ったんだ」

「ある人? ……もしかして!」

「そう、君のお師匠であるマスター・シャーフーさ!」

「まさか師匠(マスター)とオールマイトがお知り合いだったなんて……本当に驚きました!」

「ははっ、まぁね」

 

 その後、少しの時間ではあるがオールマイトが二人の拳聖との思い出を話してくれた。

 

「おそらくだがマスター・シャーフーもゴリー君も君の活躍を楽しみにしていることだろう。頑張ってくれたまえ!」

「は、はい!ありがとうございます!!」

 

 ----------。

 

 どこかにいる師匠(マスター)とまだ見ぬ拳聖が見てくれている、そんな激励をあのオールマイトから送って貰えたことは轟君でなくとも『目を掛けられている』と思われても仕方ないことだった。

 

「オマエの師匠とオールマイトが知り合い、か……」

「うん。だから隠し子どころか血縁関係もないし、師弟関係ですらない……僕の師匠はマスター・シャーフーだけだよ」

 

 『目をかけられてる』と思われるもう一つの要因、それはUSJの時の事だろう。

 

「USJでの件がそうだったとしたら、アレは僕があの脳無ってヴィランとの戦いで消耗したのを心配してくれただけで他意はないと思うよ?」

「……」

「もしあそこで倒れそうになったのが轟君や他の誰であっても、きっとオールマイトは駆け寄って支えてくれたよ」

「そうか……あのパワーやスピードはオールマイトを感じさせるものがあったんだが、俺の勘違いか……すまねぇ」

「謝られるほどのことじゃないよ」

 

 それより気になるのはどうして僕とオールマイトの関係を聞こうと思ったのか、ということだ。轟君はそれを察したのか、どこか言い辛そうに口を開いた。

 

「……俺の親父は、万年№2のヒーローのエンデヴァーだ」

「!」

 

 フレイムヒーロー・エンデヴァーは僕たちが生まれる前から活躍していて、事件解決数史上最多記録を保持するヒーローだ。その威厳のある言動から支持率は高くないけれど、確かな実力者でもある。そんな人が父親であるのが少し羨ましいと思うけど、轟君の様子からそれを口に出すのは憚られた。

 

「親父は異常なほどに上昇志向が強くてな……ヒーローとして破竹の勢いで名を馳せたこともあって、『生ける伝説』オールマイトの存在は疎ましく思ってんだ」

 

 そのヒーロー名の通り、努力を続けている期間は僕では足元にも及ばないだろう。それほどの長い間、届かない背中を追い続けるというのはどんな感覚なのか。……僕には少しだけわかるような気がする。

 

「自分ではオールマイトを超えられない、それを理解した親父は次の策に出た」

「次の策?」

「個性婚、って知ってるか?」

「!」

「それと俺には兄が二人、姉が一人いる……ここまで言えばあとは解るよな」

「……ッ!」

 

 個性婚。優れた個性を子供に引き継がせることを目的とした、倫理観の欠落した前時代的な行為……それをエンデヴァーは行った。尊敬していたヒーローの常軌を逸した行動に、僕は何も言えなかった。

 

「あの野郎はまだ幼い俺に虐待に近い訓練を課して、それを諌めようとするお母さんにまで手を上げた……そのせいでお母さんはいつも泣いてた……心を壊して、俺に「オマエの左が醜い」と煮え湯を浴びせてからずっと病院に押し込まれたまんまだ……」

 

 思い起こせば、轟君は前半の競技でも、戦闘訓練でも左の炎を全く使っていなかった。その理由がようやく分かった。

 

「俺はアイツの左の炎(チカラ)を使わずに、お母さんの右の氷(チカラ)だけで勝つ!それでアイツ(エンデヴァー)を否定してやる……俺はアイツの道具なんかにはならねぇ!」

 

 冷え冷とした氷のような冷たい怒りの炎がメラメラと瞳の奥で燃え上っている。

 

 何も持っていない僕には優れた個性や才能を持つ轟君の悩みや苦しみは想像もつかない。それでも轟君の『左の炎は使わない』つまり『全力は出さない』という発言は聞き捨てならなかった。

 

「轟君は……僕が№1ヒーロー(オールマイト)の『ナニカ』を持ってるなら絶対に勝たなきゃならなかった、ってことだよね?」

「あぁ、だけど勝つってことは変わらねぇ」

 

 僕がオールマイトの子供や弟子でないと解ってくれたらしい。しかし轟君に感じる妙な違和感が消えない。

 

「客観的に見て、実力は俺の方が上だ……朝の時点まではそう考えてた。けど既に2回もオマエの後塵を拝してる以上、そうは言えねぇ」

 

 僕を見ているようで見ていない。ならば轟君は何を見ているのだろう?

 

「親父を否定するためにも、もう負けるつもりはねぇ」

「!」

 

 ……違和感の正体がようやく判った。

 

 轟焦凍君。僅か4つしかない雄英高校の推薦枠を勝ち取り、最初の実戦訓練でも桁外れの力を示した。先のUSJでもたった一人で十数名のヴィランを氷結によって瞬時に無力化したと葉隠さんから聞いている。

 確かな実力を持つが故に周囲に敵はいないと思っていたのだろう。以前のかっちゃんと同じで轟君は僕を、いや……()()()()()()()

 

 轟君が見ているのは……お父さん(エンデヴァー)だ。

 

「僕だってそうだよ……最初に宣誓した通り、全力で一位を獲りに行く!」

「……そうか」

「……あともう一つ」

「?」

「目の前の僕たちを見ずに、本気を出さない君にだけは譲るつもりはない」

「……そうかよ」

 

 僕にそれだけ言うと轟君は背を向け、その場をあとにした。

 

 ----------。

 

 実は轟君……いや、他の誰にも言えないことがある。

 

 オールマイトと昼ごはんを一緒にした昼休み、オールマイトと二人の拳聖の思い出話が一区切りした時、僕は5()()()にいなくなってしまった師匠(マスター)の行方について尋ねた。するとオールマイトの雰囲気が先ほどまでの朗らかなモノから一変し、非常に重苦しくなってしまった。

 

「……6年前、私はあるヴィランと戦った」

「6年前、と言うと毒々チェーンソーですか?」

「詳しいね、けどそんなチンピラじゃない……もっと凶悪で強大な力を持つ『裏社会の帝王』なんて呼ばれていたヤツさ」

 

 裏社会の帝王……オールマイトが表情をここまで険しくするということは、相当危険な存在だったと理解できる。しかしなぜそんな存在がここで出てくるのだろうか?

 

「そんなヤツに、手下の一人があるモノを献上した。それは『世界を滅ぼすチカラを封じられている』なんてファンタジーな代物だった」

 

 世界を滅ぼすチカラを封じられているモノ。それは普通ならオールマイトの言う通り、ファンタジーやフィクションだと笑ってしまうだろう。けど僕にはそれが実在すると分かった。

 なぜなら昔、師匠(マスター)からそれと同じような存在が一人の獣拳使いによって守られていると聞いたことがあったからだ。

 

「君の想像した通りだよ、緑谷少年」

「慟哭丸。不死の邪龍を封じ込めた物だと、師匠(マスター)から聞いてます……」

「あぁ、ヤツの部下は慟哭丸を守っていた獣拳使いからソレを奪い、己の主に献上した。しかし封印の解き方も使い方もわからなかったのだろうね。使わずに放置されていたのは不幸中の幸いだった……それがキッカケとなって、慟哭丸を奪還すべくマスター・シャーフーを始めとした獣拳使いが多くのヒーローと共に私に加勢してくれてね。その巨悪を討伐し、慟哭丸も無事に奪還できたんだ」

 

 なんてことだ……師匠(マスター)とオールマイトがお知り合いと言うだけでも驚いたのに、他の拳聖や獣拳使いの方々と共闘したことがあったなんて驚きを通り越してすっかり感動してしまった。

 

「だが、その戦いを最後にマスター・シャーフーとは会えなくなってしまったんだ……君の期待に沿えなくてすまないね……」

「そんな!オールマイトが謝ることなんてありませんよ!!むしろ師匠(マスター)のことが知れたことの方が嬉しいです!!」

「……そう言って貰えると助かるよ」

 

 大きな身体を少し小さくしていたオールマイトはそう言って笑ってくれた。

 ただ、師匠(マスター)達がオールマイトと共に巨悪と対峙した、ということは『戦った』と言うこと。それが僕の中に不安をもたらした。

 

「ところで緑谷少年、私も……一つ君に聞きたいことがあるんだが良いかい?」

 

 オールマイトが僕に聞きたいこと、一体なんだろう?

 

「緑谷少年、もし『他人に個性を譲渡できる個性』というモノがあったとして……そして私がそれを持っていて、君に譲りたい。と言ったら……君はどうする?」

 

 考えたこともない話だった。

 

 無個性でも誰かを助けることが出来る。それを示してくれた人がいると知った今でも個性が欲しくないと言えばウソになる。

 オールマイトの言う『他人に譲渡できる個性』なんてモノが実在して、しかも憧れのオールマイトから譲ってもらえるなんて夢のような話。実際にインターネットの『個性を発現させるサプリメント』なんて怪しい広告をクリックしてしまったことがある僕は是非もなく飛びついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 けどそれは師匠(マスター)と獣拳に出会う前だったら、の話だ。

 

「たぶんですが……お断りすると思います」

 

 今の僕には獣拳がある。僕は師匠(マスター)と出会ったあの日から『獣拳の力で誰かを助けるヒーローになる』。そう決めたのだ。

 

 それを伝えるとオールマイトはどこかその答えを予想していたように「そうか」と笑った。ただ、その笑顔がいつもと違って少し寂しげに見えたのは気のせいだろうか……。

 

「すまない緑谷少年、変なことを聞いたね!この話は忘れてくれたまえ!あと、笑われてしまうのも恥ずかしいから他言無用で頼むよ!!」

「わ、わかりました!」

 

 もしもの話なのになぜ忘れたり、他言無用なのか。と思わないでもないけど、他ならぬオールマイトが言うことだ。他人に話すことでもないだろう。

 

 しかし、以前にオールマイトの気配が弱くなったように感じたことと同様、この()()()()()の話は僕の胸の中に残ってしまっていた。

 

 ーーーーーーーーー。

 

 その後、なぜか屋外で泣きながら伸びたラーメンを啜っている尾白君に合流して昼ご飯を済ませた僕が会場に戻ると、とんでもない光景に目玉が飛び出そうになった。その表情はかなり間抜けなことになっていたと思う。

 

「……いやー、葉隠さんって身体柔らかいんだなー」

 

 隣の尾白君も遠い目をしながら関心しているのも無理はない。なぜなら麗日さんや葉隠さんA組の女子達がチアガールの格好をして応援合戦に参加していたのだから。

 




~バエの獣拳アカデミー~

バエ「拳聖!獣拳の始祖に師事した七人の獣拳使いです!!」
出久「僕の師匠であるマスター・シャーフーをリーダーとした、僕たち獣拳使いの頂点に立つ方々です!!」
バエ「七人の中でも、心・技・体をそれぞれ最も極めた三人は『マスター・トライアングル』と呼ばれる称号を持ってますよ」
出久「どんな人達なんですいか?」
バエ「気難しい性格の人も多いですが、全員人格者で、弟子への面倒見は非常に良い方々ですよ!表の世界でも立派な社会的地位を得ている者が殆どです」
出久「へぇ、いつかお会いしてみたいです!」
バエ「ニューヨークに(いるゴリーさんに会いに)行きたいかー!!」
出久「?」
バエ「あれ、このネタ知りません?」
出久「は、はい」
バエ「Oh……」

出久「さ、さて次回!いよいよ雄英体育祭も後半戦に突入です!!」
バエ「次は一体どんな競技が出久さん達を待ち構えているのでしょうか!?」
出久「さらに向こうへ!」
バエ&出久「「Puls Ultra!!」」
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