セバスから手渡された服は、ツアレの知っている服の中の一つであるセーターのようだった。
「セバス様、ありがとうございます!嬉しいです!夢みたいです!」
嬉しくてしょうがないツアレは、セーターをぎゅっと抱きしめた。
「このセーターはとても触り心地が良いですね!何の毛なんでしょうか?」
まさかこの服が魔法で出来ていると思わない。
「実は、この服は魔法で作られているのですよ♪びっくりしましたか?」
セバスにしては珍しくおちゃらけて話した。
「え!!魔法で服って作れるんですか!?すごいです・・・だからこんなに良い手触りなのかな・・・?魔法ってすごい・・・」
驚くツアレはまじまじとセーターを見つめた。
セバスはこの服には補助魔法がかかっていることなど、服の効果について説明は、あえてしなかった。
ツアレに服の効果を伝えてしまうと、もし喜んだツアレが服の効果を周りに話していつか噂になったときに、「珍しい服の所有者」として悪意ある人物に狙われてしまうのを防ぐためだ。
効果の説明を隠して、服の説明した後セバスはきゅっと胸が締め付けられる感じがしたので、自分の手を自分の胸に当ててみた。
(隠し事ってこんなに胸が締め付けられるものでしたか・・?)
セバスは最近、どんどん自分が精神的に弱くなったりしているのではないか?と心配になるぐらい、ツアレに関することになると安定さを欠くようになった。
しかし、この違和感をまだ認めたくない気持ちもあった。
一方その頃ツアレは、説明するセバスを見て内心かっこいいと思っていた。
(セバス様って、やっぱりかっこいい・・・)
以前、私が街の中で捨てられた時に現れたセバス様、
その後、お腹の空いた自分にご飯を持ってきてくれたセバス様、
アインズ様に事情を説明して私を生かしてくれたセバス様、
悪人に攫われたときに戦ってくれたセバス様、
どの姿もとても素敵で優しくて、かっこよかった。
そして、こうやって雑談しているときのセバス様も凛としていてかっこいい。
お互いがお互いのことを想って、自分の世界に入っていた。
でも二人は、お互いのことを想いあっている事には気づかない。
そして、先にセバスが現実に戻ってきた。
「ツアレ、なかなかこうしてお話をしていると楽しくて、あっという間に時間は過ぎてしまうものですね。お互い明日もあることですし、そろそろ私は退散いたします。」
さっと椅子から立ち上がり一礼をする。
「そうですね、セバス様。本日は服のプレゼントありがとうございました。嬉しかったです」
ツアレは名残惜しかったが、うとうとし始めていたので寝る事を優先することにした。(今までのセバス様の事を思い出していたら、安心して眠くなってきたわ・・・)
部屋のドア付近に二人は移動し、おやすみの挨拶をする。
「セバス様、おやすみなさい」
「ツアレもおやすみなさい」
セバスが帰るとツアレは部屋の中のドアにもたれかかり、しゃがんだ。
(またセバス様の袖を引っ張ろうかと思ったけど、そこまで長い時間引き留めるのは相手に迷惑だし、嫌われてしまうだろうし、自分の心臓がもたないと思ってやめたんだけど、今日の私はなんだか行動力があり過ぎて、何だか変だったなあ・・・)
ツアレ自身なんで今日はこんなに行動力があったのか分からない!と今日一日を振り返ってみたが、やっぱり分からないので眠ることにした。
ベッドに横たわると、緊張が解けたためか自然と深い眠りに吸い込まれていった。