セバスとツアレが二人が部屋でお話をしているころ、ペストーニャはというと・・・・
一人、部屋で本を読んでいた。
「この本の通りに二人はうまくいくのかしら?」
偶然ペストーニャは、ナザリック地下大墳墓第十階層の最古図書館アッシュールバニパルで変な薄い本を見つけたのだった。
______普段ペストーニャは、至高の四十一人の方々が集めた本なら何でも読むのだが、最近は「恋愛」というジャンルがマイブームでそれに関する本をよく読んでいた。
そろそろ恋愛小説も定番になりつつあり、もっとなんかこう刺激的な恋愛の本が読みたいと思っていた。
しかし、刺激的な話となると人間が同性同士で・・・となるので、
「そうじゃない!私は男女の話が読みたいワン!!」と遠吠えがしたくなる気持ちを抑えて探していた時だった。
「うーん、この辺はだいたい読んだわね~ワン。」と前に読んだ本を何となく取り出すと、ぱさっと何かが落ちた。
「ん?これは?何だワン?ほかの本より薄いワン・・・」
拾い上げて見てみるとその本の表紙には、犬耳メイドと渋くて高貴な貴族と思われる男性が抱き合っているカラーイラストが描かれていた。
それを初めて見たペストーニャは、自身に稲妻が落ちたような感覚を受けた。
「こ、こんなに素晴らしいイラストは初めてだワン・・・これこそ私の探していた本だワン・・」
ペストーニャは、感動のあまり手が震えた。そして、この世界に神様がいるのか分からないが、イラストの神様にお礼が言いたかった。
「ありがとう神様。もうこの本なしでは生きていけないワン・・・」
部屋でゆっくり読むために、借りる対応をして無事部屋に戻る。
「やっと読めるワン。」
読み始めるとその本の話は、低位の犬耳メイドと渋くて高貴な貴族の許されない関係の二人が結ばれるまでの恋愛物語だった。
___ナザリック地下大墳墓の女性なら一度は夢見るアインズ様との恋愛話。
ペストーニャは今までそういう目でアインズ様を見たことがなかったが、借りてきた本を読み始めると、アルベド様やシャルティア様が、至高の御方に対して盛り上がって話しているのが少し分かったような気がした。
「いいな~私もそんな感じな事してみたいワン!でもこの話は、セバスとツアレにも見えるワン・・みんな楽しそうでいいな~ワン」
やっぱり、セバスとツアレがくっついてほしいと思うペストーニャだった。
「次はスパにセバス様も呼べないかしら・・・ワン」
そして、ツアレは自室から出て、食堂へ向かうため廊下を歩く。
今では普通に廊下を歩いているが、仮メイド就任当初は周りのモンスター達から「人間臭い!離れろ!」「旨そうな人間だな~」「何故人間ごときが、ここで働いてるのか?」
などと、すれ違いざまに言われたりして、ツアレは居心地は悪かったのだが
それを見ていたセバスから教えてもらった言葉が、今になっても嬉しい思い出だ。
「ツアレ、ナザリック地下大墳墓内の食事を取り続けて、ここでずっと働いていれば皆ツアレの存在に慣れるでしょう・・・。あまり周りの事は心配しなくて大丈夫です。私がいますから安心して働いてくださいね」
さすが!セバス様!!と今でも廊下を歩く際に時々、思い出しては顔がニヤニヤしてしまう。
「もう一度そんな言葉をセバス様の口から聞きたいです・・・」
今日は初めての食堂での朝食という事もあってか、思い出が鮮明に浮かび上がった為、ついポロっと口に出してしまった。
「ツアレ、何を私の口から聞きたいのですか?分からない事でもありましたか?」と優しくて渋い声が背後から聞こえた。
「そうですね~やはり褒め言ばばばばばっ・・・・・!?」
ツアレは最後が言葉にならないほど驚き、がばっと後ろを振り向いた。
昨日はとても良い休日を過ごしたツアレは、
幸せな気持ちですやすやと深い睡眠の中にいた。
(セバス様、かっこいい・・優しい・・・むにゃむや・・・)
そして、朝になり起きるのがもったいないぐらい毛布の中は心地良いのだが、また今日もセバス様とお話がしたい為、毛布に後ろ髪引かれる思いだったが、直接セバスと話せる現実を選んだ。
「よし!今日も仕事頑張るぞ~!!」
両手を大きく天井へ向かって伸ばした。
朝はまず顔を洗い、歯を磨く。
そうすると気持ちが切り替えられるのだ。
その後は、メイド服に着替える。
初めてメイド服を着用した際は、ひらひらフリルやスカートが動きづらいな~と思っていたのだが、慣れるとそうでもなかった。むしろスカートの方が動きやすいのではないか?と思うぐらい体に馴染んだ。
そして、身だしなみを全体的に整えて、完了!
髪型にもこだわりたいな~と最近思っているのだが、なかなか良い髪形が思いつかない。
先輩のプレアデスのような素敵な髪形になりたいな~と思ってはいるのだが、あの美人の顔を見てしまうと自分には似合わないんだろうな~というのが正直な気持ちだ。
そして、今まで朝食はペストーニャさんやセバス様と自室で食べたり、セバスの執務室で食べたりと、慣れるまでは他のメイド達とは個別に食べていた。
そして先日セバスから、ツアレは環境に慣れてきたという事もあり、休日が明けたら他のメイド達と一緒に朝ご飯を取るようにとの伝達があった。
その為、今日が初めての他のメイド達との一緒の朝ご飯だった。
「緊張するけれど、親睦を深めるには良い機会だし!」
そして、頬を軽くたたいて気合を入れた。