「こんばんは。本日はお誘い頂きありがとうございます」
セバスは集合場所の噴水広場にいた。
「がははははは!今日は急に誘ってすまんな!!!そして、集合場所も変わってしまってすまんかった!がははははは!」
お約束相手のでっぷりと太った中年男性は、やはり笑い方が下品だった。
(・・・いくら仕事でも、金持ち相手でもあまりご一緒したくない相手ですね)
セバスは顔にこそ出さないが、気持ちは嫌悪感でいっぱいだった。
「・・・さて、セバス様!では私おススメの飯屋に行きましょう!!がははは!」
お腹を大きく揺らした男性はセバスを引っ張りながら、お目当ての店に向かって歩き出した。
男性のお目当てのお店に着くと、そこはセバスとツアレが本日泊まるホテルと同じくらいの高級感のある料理店だった。
「着きましたぞ!!ここが私のおすすめの料理店ですぞ!!がはははは!!」
先ほどの料理店の静かな雰囲気を壊すように大きな声で入店していく。
「おお。ここが本日の目的の店ですね。素敵な雰囲気です」
(やれやれ、料理店の方々に、大声以上の迷惑を掛けなければ良いのですが・・・)
セバスはこの後何か起こりそうな、嫌な感じがしていた。
二人は案内された奥のVIP席に座り、メニューを見る。
「私のおススメは金粉が掛かった肉だな!おい!店員!それをくれ!!」
セバスに確認も取らずに、男はさっさと注文をし始める。
「かしこまりました。只今お持ちします」
若めの男性店員が注文を受けると一礼をして、この場を去っていった。
「遅いな~セバス様。何を悩んでいるのかね?がはははは!!!」
中年男性は待ちきれないようで、セバスの注文を急かす。
「色々種類があって迷っておりまして・・・何分私のような身分ではこのような高級店は不慣れなもので・・・」
セバスは男性をご機嫌にするために、小さな嘘をつく。
「何だ~そうだったんだな~!じゃあ私が選んでさしあげよう~!!」
男性は得意顔で、また店員を呼んだ。
「おい!!!誰か!!ちょ、そこの奴!!俺は予約してないが、金のフルコースを二人前でお願いできるか??」
「は、はい!!かしこまりました!!予約なしのフルコースですと・・全てお出しできるのに1時間以上は掛かりますが、よろしいでしょうか?」
店員は申し訳なさそうな、怖がっているような雰囲気で応対をした。
「オーナーの俺が言っているんだから、今すぐやれ!!料理長にそう伝えろ!!!・・・がはは、セバス様すみませんね~対応が遅くて・・・」
店員に強気の中年男性はとても声がうるさかった。
すると、セバスが店員に声を掛けた。
「・・・店員さん、オーナー様はそうおっしゃっていますが、急なフルコースが無理なら、私の料理は今出せる料理のみで大丈夫ですよ。気にしないでください」
セバスは店員が怒鳴られてかわいそうなのと、男性の大きな声が周りのお客様の迷惑になるので、さっさと注文を終わらせたくてつい口を挟んだ。
「お客様、気を使わせてしまい申し訳ございません。しかし大丈夫です。急ぎ対応致しまして、料理を提供しますのでご安心くださいませ」
店員は冷や汗をかいていたが、冷静を装って話した。
そして、店員がキッチンまで向かう様子をセバスは観察をしていた。
(うむ・・・この料理店は雰囲気もあって店員の質も悪くない・・・しかし何故か空気が悪いですね・・・焦っている感じが全体的に感じられます・・・何故でしょう?)
以前の洋服工場の家に行った時と同じ違和感を感じているセバスだったが、今回も何故違和感を感じるのか分からなかった。