続きが書きたいけど今はちょっと無理な作品置き場。 作:PL.2G
色々休載中なのに、思い付いたら書かずには居られませんでした。
俺の名前は
ちょっと訳ありで妹と二人暮らしをしている事以外は至って普通のサラリーマン。
そんな普通の俺には前述の通り妹がいる。
とても自慢したくなる位自慢の妹がいる。
そんな自慢の妹の名は『
世間で名の知れたアイドルである。
千早が居てくれたお陰で今日まで、色々とあった辛いこともなんもかんもすべてやって来られたと言っても過言ではない。
千早は俺の大事な大事な大切で唯一無二の自慢な妹である。
今日も今日とてそんな妹の事を考えながらふとテーブルの上を見ると、千早の為に作っておいた弁当の包み袋がおいてある事に気が付いた。
「千早、気付かなかったか?」
独り言が漏れる。
千早は昨日、仕事のため今日は早めに出ると言っていた。
その時千早は寂しげな顔をして、『明日は兄さんのお弁当は無しなのね……』と言って居たのがとても印象的だった。だから俺はそんな千早の為にサプライズで早目に起きて、こっそりお弁当を作っておくことにしたのだが、どうやらそれが裏目に出てしまったみたいだ。
ちなみに俺達は、千早が割と小さいころから二人暮らしをしていた事もあり、基本的に家事全般を俺が担当している。
その所為もあってかどうかは不明だが、千早は割と自分に無頓着で、ご飯関連なんかは放っておくとミキサーでスムージーを作って終わり、とか、カップラーメンだけとかになる。
それを見かねた俺はある時、千早も年頃になったのだから料理くらい覚えたらどうだと言った所、『私は兄さんの作ってくれたご飯が好き。それじゃあダメかしら……?』と、
少し瞳を潤ませて言われた事もあり、それ以来俺は千早に料理をしろと言わなくなった。
正し、ちゃんと家で食べられる時は家でご飯を食べるようにと言った。
それを言った時は、普段あまり見れない物凄い良い笑顔で、物凄いハキハキとした良い返事をもらったのを今でも覚えている。
……話が逸れた。そうそう千早の弁当。
運が良い事に彼女が所属しているプロダクションの事務所は俺の務める会社の近くにある。
俺が昼休みの時に事務所に届けるとしよう。
千早が仕事中で事務所に居なかったとしても音無さんに渡しておけば千早に渡しておいてくれるだろうし。
「さて、良い時間だしそろそろ出勤しますか」
そしてまた独り言ちる。
8X―………………………………
― PM 0:00 ―
キーンコーンカーンコーン
「ふああぁぁ……」
大欠伸と共に両腕を上に伸ばし、上体を後ろに反らす。
「百千くん、今日は屋上でご飯にしましょうよ。天気も良いし」
先輩の
「すみません。妹に届け物があるんで外出るんですよ。折角誘っていただいたのに申し訳ないです」
「あら、そうなの? 妹って千早ちゃんよね?」
「はい。じゃあ、ちょっと行ってきますね」
席を立つ。
「今夜は空いてる? 折角の金曜だし飲み行きましょうよ?」
「折角のお誘いなのにすみません。今夜は妹と約束してしまってるんで、また今度お付き合いします」
頭に手を当て深く腰を曲げて謝る。
百瀬さんは毎週のように後輩の俺を飲みに誘ってくれる。
きっと、気を使って誘ってくれているんだろうと思う。
百瀬さんは正直、はっきり言って美人だ。社内で百瀬さんを狙っている人はきっといっぱいいると思うが、
以前、『付き合っている人が居る』らしい的な噂を聞いたので、たぶんそれは噂では無く、事実だと思って居る。
だって百瀬さんは美人でスタイルもよく器量良し。正にパーフェクトな女性だ。
普通に考えても付き合っている男性が居ない方がおかしいだろう?
はぁ、彼氏さんがうらやましいぜ。
「もー……。まっ、別に付き合いが悪いって訳じゃないしね、オッケー。先週も付き合って貰ってるしね。わかったわ、気を付けて行ってらっしゃい」
バシンッと背中を軽くたたかれる。
「はい」
気合が入った俺は百瀬さんとの会話を切り上げ、千早の弁当を忘れずに持ち、会社を出た。
8X-………………
会社を出て十分と掛からず、目的地であるビルに到着する。
そのビルの一階は定食屋のようで、時間が時間のため客の出入りが多い。その店の前を通過し、隣のビルの間にある脇道に入り、上階へ上がる階段をのぼって行く。
階段を上がると『765プロ』と書かれたプラカードの貼られたアルミ扉が見えた。
その扉のノブに手をかけ、ノックも無しに扉を開けた。
「お邪魔しまーす」
入ってから声をあげる。
「はーいっ」
パーテーションで仕切られた室内の奥から女性の声がする。
「あら、百千くん? こんにちは。どうしました? 千早ちゃんでしたらまだ仕事で出てますけど……?」
声をの主は前述した音無さんこと『
「やっぱりそうですか。じゃあ……これを、仕事から戻ったら千早に渡しておいて貰えますか?」
弁当の包み袋を差し出す。
「これは……お弁当、です、よね?」
「はい。今朝作っておいたんですけど、俺が何も言わずにいた所為で、千早は気付かずに仕事に行っちゃったんですよ」
「え? もしかしていつも千早ちゃんが食べてるお弁当って、百千くんが作っていたんですか?」
「はい、そうですけど?」
「これは……」
音無さんはそう呟くと顎に手を当て何かを考えるようにブツブツと俺には聞こえない音量で何かを呟き始めた。
「あの? 音無……さん?」
「はっ!? はい!! なんでもないです!! お弁当ですねっ!! 任せてください!! 責任を持って、私が千早ちゃんに渡しておきますねっ!!」
物凄い剣幕で早口で喋り出す。
「え~と……はい、お願いします。あと……申し訳ないんですけど、ここでお昼を済ませて行っても良いですか?」
今から会社に戻り弁当を食べ始めるとなると、存外バタバタしてしまう可能性があるし、百瀬さんに外に出ると言った手前、中途半端にご飯が食べられる時間に帰るのも気が引けてしまう。
「はい。それくらい全然構いませんよ」
とても良い笑顔で素晴らしい返事を頂けた。良かった。
「良かったらこちらでどうぞ。今お茶を用意しますね♪」
そう言って応接用のスペースだろうか? パーテーションで仕切られ、ガラステーブルと立派なソファーのある場所に案内された。
「ありがとうございます」
ソファーに腰掛け、持っていたもう一つの弁当の包みを開け、弁当の蓋を開ける。
「はいどうぞ。わぁ、美味しそうですね♪」
左側から弁当の横に湯飲みがおかれる。
「ありがとうございます。突然来たのになんかすみません」
素直に申し訳なくなってきた。
「いえいえ、気にしないで下さい。でもなんか、納得できてなそうな顔してますので、良かったら私の話し相手にでもなってください。先程から一人で暇していましたので」
「僕で良いなら喜んで」
音無さんは本当に良い人だ。彼氏とか居るのかなぁ? 居るんだろうなぁ、彼氏さんが羨ましいぜ。
「いただきます」
手を合わせ挨拶。弁当箱を右手で持ち上げ食べ始める。
「百千くんは左利きなんですね」
食べ初めたら早々に音無さんが声を掛けて来た。
食べ物を飲み込み返事をする。
「えぇっと、正確には右利きなんですが、右手を骨折した時の名残で左で箸を持つ癖がついちゃったんですよね。結構小さい時にやっちゃった事でしたから、癖になるのが早かったと言いますか」
「なるほど。両利きって事ですね」
確かに、字も書こうと思えば左で書ける。でも左で書くと高確率で手が汚れるし蛍光ペンとかでなぞるのが難しかったり、あんまりメリットがない。
ただご飯を食べる時だけは特にデメリットも無いので、まぁ、誰かと一緒に食べる時、座る位置によっては腕が当たると言うデメリットはあるけど、一人の場合はそんな事は無い。と、言う事で、そのままで過ごしている。
「ちなみに、今日の千早の仕事って何なんですか?」
ふと気になったので聞いてみる事にした。
「あら? 千早ちゃんに聞いて無いんですか?」
「はい。千早は基本的に仕事の話はしてくれないんですよね」
から揚げを頬張る。
「もしかして、百千くんたちは家で会話とかあまりしない感じなの……?」
音無さんは気まずそうに聞いてくる。
「そんな事ないですよ? どちらかと言うと会話は多いと思いますね。ただ、やっぱりその会話の中で千早の仕事の話は出て来ないですし、千早が話そうとしないですから、それに対して俺は無理に聞こうとは思わないですね」
きんぴらごぼうをつまむ。
「そうなんですね……」
「話してて、ここで聞くのも悪い気がして来たのでやっぱり話さなくて良いです」
「あら? そんなものなの?」
「はい、そんなものです」
そう言って俺は昼飯を続行する。
「あのー、ちなみに千早ちゃんって家ではどんな感じなんですか?」
音無さんはおずおずと言った感じで質問をしてくる。
家での千早かぁ。
「至って普通ですよ?」
「普通? 普通って具体的にはどんな感じなんですか?」
なんかすごい興味津々だな。
「あーっと……、料理はしないけど代わりに食器の準備や片付けは手伝ってって言えば嫌な顔せずに手伝ってくれたり、千早が暇な日は炊事以外の家事は率先してやってくれるし、朝は一人で起きられるし、自分でお金は稼いでるし、本当に出来た妹ですよ」
「本当に普通ですね」
「それは一体どう言う……」
「あらっ……ごめんなさい。別にその、変な意味じゃなくてですね、千早ちゃんって昔程じゃ無いけど結構事務所内でも物静かって言うか、時間があれば本を読んで、事務所の他の子達と進んで会話しないって言うか……いや、春香ちゃんとは良く喋ってるかも……」
あぁ、なるほど。
「そんな事は家ではないですよ。大体いつもニコニコしてますし、はきはき喋りますしね。まぁ、それとなく知ってると思いますが、過去の事があって一時期塞ぎ込んでて人との繋がりを拒んでた事もありますから、その時のがまだ若干尾を引いてるだけだと思います。確かに率先して話すタイプでは無いですけど、別に人と話すのが嫌いって訳じゃないですから、気を悪くしないで上げてください」
そう言って頭を下げる。
「いやいや、大丈夫ですよ!? なんかごめんなさい、私の方こそ失礼なこと言ってしまって」
そこでお互い笑いあった。
「はぁー、でも話を聞く限り、お兄さんである百千くんにはすごく懐いているって感じなんですかね? 兄妹仲が良いのは良い事です」
「全くですね。まだまだ先だろうけど、千早もその内彼氏とか作って俺の所に妹さんを僕に下さいとかって言われたりするのかなぁ……」
そんな事を口にしてたら急な寒気が襲ってきた。
「兄さん……」
「「えっ?」」
パーテーションの陰から片目だけ覗かせた千早がこちらを睨みつけていた。
「ち……千早ちゃん!? 仕事は終わったんですか?」
「ええ、だから戻って来たのだけれど、帰って来た事に気付かれず、更には聞き馴染んだ声が聞こえたもので、少し驚かせようと思って居たら、不穏な言葉が聞こえたので……つい……」
「千早、お疲れ様。とりあえずビックリしたよ。千早のドッキリは成功だ。あと、弁当は小鳥さんに渡しておいたから、お腹空いてるようだったら食べてくれ」
「えっ!? 兄さんのお弁当があるの!? ここにっ!?」
パーテーションの陰から頭だけ出して会話していた状態から、全身が飛び出し、目をキラキラさせてきょろきょろし始めた。
「小鳥さん、今すぐ下さい。早く。早くっ!」
千早は音無さんに詰め寄ると、キスでもするんじゃないかというような距離で捲くし立てる。
「こら、千早。仕事終わりですごくお腹が空いてるんだろうけど、親しき中にも礼儀ありだぞ。いつも言ってるだろ?」
「あ……。ごめんなさい、兄さん。少し取り乱しました。それに、小鳥さんもごめんなさい」
千早は落ち着きを取り戻すと、素直に謝る。千早は本当に素直ないい子だ。
「それと、兄さん。お弁当、いつもありがとう」
そう言って俺に優しい微笑みを向ける。
「うんうん。まぁ、俺は千早の兄として当たり前の事をしているだけだけどな。むしろそう言う方面でしか俺は如月家を支えていけてない気がする……」
それは一家の大黒柱としてはどうなのだろう……やばい、気が沈んできた。
「兄さん!! 兄さんがしている事はそれだけ何てことは無いです。私は兄さんに何度も何度も救われてきました。それは到底お金だけじゃ返し切れないほどの恩を、兄さんから受けました。いや、未だに受け続けています。だから、私は兄さんにこの恩を返し切るまでは、私は兄さんの傍を離れるつもりはありません」
「千早……」ジーン
「あのぉ……」
申し訳無さそうに音無さんが声を掛けてくる。
「はい?」
「お時間は、大丈夫でしょうか?」
「お時間?」
時計を見る。
針は12時50分を指していた。
「やば、昼休み!?」
昼休みは13時で終わりである。
「兄さん。兄さんのお弁当箱は私が責任を持って、持って帰りますので、そのまま仕事に戻ってください」
「サンキュー千早。お言葉に甘えるよ。あ、音無さん、場所とお茶ありがとうございました。また、どこかでゆっくりお話ししましょう。千早、今日は定時で上がるからな」
2人にそう告げて、急いで会社に戻る俺であった。
昔の妄想力を取り戻したい。