前編まえがき
このおはなしの設定は、アニメ1期・2期本編から得られる情報を膨らませて作っており、それ以外の情報(書籍で公開された情報等)はあまり盛り込んでいません(例外あり)。それなので、公式設定からのズレが生じている可能性があります。
このおはなしは、短編集「ジャパリ・フラグメンツ」に投稿する予定だったものですが、書いているうちに長くなったので、単品で投稿しました。
小説とは呼べないような、変な書き方をしています。好き勝手に書いています。
全体のあとがき(第4話扱い)に、ホテル関係の考察を書きました。
脚注に画像があります。マウスオーバーで読みづらい場合は、下の方をお読みください。
2019/10/13 歌詞引用楽曲の作品コードを付加しました。
「とどけこえ」から「ふたつのホテル」に改題しました。
「とどけこえ」は「アラウンドラウンド」の歌詞の引用でしたが、歌詞をタイトルに使うのは、「歌詞使用のガイドライン」の禁止事項であるためです。今まで違反(グレー)状態だったわけですごめんなさい。こういったルールがあると安心して書けます。
ジャパリホテルが沈んでから数日後。 ホテル跡近くの砂浜。
オオミミギツネとハブとブタが立っており、その向かいにプレーリードッグとアメリカビーバーが立って話をしていた。
オオミミ 「遠くから来ていただいて、ありがとうございます」*1
プレーリー 「おもしろそうな仕事があると聞いて、野越え山越えやってきたであります!」
ビーバー 「さっそくなんッスけど、新しいホテルの模型をいくつか……」
オオミミ 「ええ!? もう!?」
プレーリー 「ビーバーどの、その前にごあいさつであります!」
プレーリーが、オオミミギツネに顔を近づけていった。
ビーバー 「だめッスよ!」
ビーバーがプレーリーの肩をつかんで止めようとした。だがプレーリーの勢いの方が強かった。
ハ ブ 「やめろ!」
ハブがオオミミギツネとプレーリーの顔の間に手を入れて、ふたりの唇がくっつくのを遮った。ハブの手がふたりの唇に挟まれて、オオミミギツネの口をふさぐ形になった。オオミミギツネが目を見開いた。
プレーリーが唇を離して、振り返った。
プレーリー 「なぜとめるでありますか?」
ビーバー 「それは、その……なんども言わせないでほしいッス……」
ビーバーは、プレーリーを見て、少し恥ずかしそうに笑った。
ハブの手が、オオミミギツネの口から離れた。
オオミミ 「ぷはっ、な、なにするのよー!」
オオミミギツネは、顔が赤かった。
ハ ブ 「おう! わりい! 手が勝手に動いたんだ!」
オオミミ 「そんなわけないでしょう?」
ブ タ 「ふふっ、不器用な手ですねぇ」
ハ ブ 「へんな勘違いするなよ……」
ビーバーが、木製のキャリーカート*2 を開けて、中から建物の模型を取り出した。模型は四つあり、それらは、たくさんの部屋がある建物で、高さがあるものや平屋のものなど、形は様々だった。*3
ブ タ 「すごいですね。これが大きくなるんですか?」
ビーバー 「ええ。実物は、これの30倍くらいッスね」
オオミミ 「部屋数はいくつ?」
ビーバー 「これが一部屋で、5部屋くらい作れるッスよ」
ビーバーが、模型の一つを指差した。
ハ ブ 「普通じゃ物足んねーなー」
オオミミ 「そういうこと言わない!」
ビーバー 「あのホテルほどのものは、ちょっと無理ッスね……」*4
皆が遠くを見た。海上に、崩壊して半分沈んだホテルがあった。そこのヘリポートや瓦礫の上で数人のフレンズが作業しているのが見えた。*5
プレーリー 「あちらではなにをしているでありますか?」
ブ タ 「ペパプライブの準備をしてるんですけど、なんかおおごとになっちゃって……」
オオミミ 「あの傾いたヘリポート……たいらな屋根、傾いたままだとライブができないから、その上にステージを作ってるんです。瓦礫をどけるのと、下を固めるのと並行して」*6
プレーリー 「できることがあれば、手伝わせてほしいであります」
ビーバー 「あれ木を組んでるんスね。オレっちたち、ああいうの得意ッスよ」
オオミミ 「向こうを手伝うなら、確認したいんですけど、あなたたち、逃げ足は速いほうですか?」
ビーバー 「水に潜って逃げることはできるッス」
オオミミ 「しょっぱい水の中はどう?」
ビーバー 「ちょっと苦手かもッスね……」
プレーリー 「穴の中を走るのは得意であります」
オオミミ 「あの瓦礫の中に隠れられるかな?」
ビーバー 「あぶないッスよ! 崩れそうだし、重そうだし、硬そうだし……それに、とがってるものとかあったら怪我しちゃうかも……」
プレーリー 「厳しい環境でありますな……」
オオミミ 「もう一つ、変なこと訊きますが……あなたたち、死んだ動物って見たことあります? そういうの平気な方ですか?」
プレーリー 「仲間が死んだところは、何度も見たであります……この姿になる前は平気でありましたが、今は……」*7
ビーバー 「オレっちも見たことはあるッス。でもあんまり……慣れるものじゃないッスね……」
オオミミ 「……やめたほうがいいわね。むこうには行かないでください」
プレーリー 「なぜだめでありますか?」
オオミミ 「ちょっと厄介なのが、埋もれてるかもしれないから」
オオミミギツネは、崩れたホテルを見つめた。
プレーリー&ビーバー「?」
プレーリーとビーバーは首をかしげた。
ハ ブ 「あんたらは新しいホテル作りに専念してくれよ。作ってる間はジャパリまんいくらでもやるぜ? ペパプのライブも無料だ」*8
プレーリー 「おおー! 気前いいでありますな!」
オオミミ 「また勝手なことを……」
オオミミギツネがハブをにらみつけた。だが口調はそれほど強くはなかった。
ハ ブ 「んじゃ、オレは向こうを見てくるからー!」
ブ タ 「あ! 待ってくださいー!」
ハブとブタが走り去っていった。そちらには桟橋があり、ボートが係留されていた。*9
ビーバー 「そんなによくしてもらったら悪いッスよ……」
オオミミ 「いいえ。感謝してもしきれないくらいです」
オオミミギツネは、明るい声と表情だった。
プレーリー 「オオミミギツネどのは、なぜホテルを営みたいでありますか?」
オオミミ 「うーん……。なんでかなー……」
オオミミギツネは、走り去っていくハブとブタを見つめた。
ビーバー 「……あのふたりのためッスか?」*10
オオミミ 「ええ!? 違います! 趣味みたいなものです!」
二日後。高台の上、新ホテルの工事現場。*11
新ホテルの基礎部分の工事が行われていた。そこでは、プレーリーとビーバー他、数人のフレンズが作業していた。*12
ハブとブタが、工事現場へ歩いてきた。ふたりが工事現場を見ると、オオミミギツネが、真剣な表情で工事現場を見回っているのが目に入った。
ハ ブ 「趣味だねえ」
ブ タ 「あんなふうに、一つのことを極めちゃうくらい、夢中になれたらいいですね」
オオミミギツネは、見回るのをやめて、工事中のホテルを見つめた。
その背後から、ハブとブタが近づいていった。
ハ ブ 「従業員にやさしくしてくれるともっといいんだけどなー」
オオミミギツネは、工事中のホテルを見つめたままだった。
ハ ブ 「支配人? おーい……」
ハブが、オオミミギツネの肩を叩いた。
オオミミ 「え!? あ、はいっ!?」
オオミミギツネは、ビクッと驚いた。
ハ ブ 「なんだよ、どうしたんだ?」
オオミミギツネが、ハブとブタの方を向いた。そして、耳に片手をあてた。
オオミミ 「なんか、ピーって音がしてて、気持ち悪いのよ……」
ハブが、耳に片手をかざして、耳をすます仕草をした。
ハ ブ 「そんなの聞こえねーぞ?」
ブ タ 「だいじょうぶですか? 少し休まれたほうが……」
オオミミ 「え……えっと……」
オオミミギツネは、反応が鈍く、ぼんやりした様子だった。
ハ ブ 「ホテルのことばっか考えてないで、たまには遊べよ」
オオミミ 「え?」
ハ ブ 「休むか遊べって!」
オオミミ 「……遊びたいけれど、少しお預けね」
オオミミギツネが、少し寂しそうに微笑んだ。
オオミミ 「今しかできないことが、たくさんあるわ」
ハ ブ 「……あんた……」
ハブは、少し険しい目でオオミミギツネを見た。
オオミミ 「なに?」
ハ ブ 「いーや、なんでもねぇ」
さらに二日後。新ホテルの工事現場の前。
ハブとブタが海を見ていた。だがそこは木が多く、木々の隙間から海が見えていた。旧ホテル跡もかろうじて見えた。
ハ ブ 「結局、あいつは見つからなかったってさ」*13
ブ タ 「どこへ行ったんでしょうねぇ……」
ハ ブ 「さーな。あのあと、だれも見たやつはいないらしい」
ブ タ 「ハブさん、向こうばっかり見てますけど、売店のほうはいいんですか?」*14
ハ ブ 「売るものがねーんだよ。あんたのほうこそ、ホテルの掃除は?」
ブ タ 「ここは、そうじしてもすぐに汚れちゃうんです……」
ブタが振り返って、工事中の建物を見た。太く大きな柱が数本立っていて、まわりに足場が組まれていた。木造の割には高さがあった。そばでは、数人のフレンズが木材の加工をしていた。
しばしの沈黙。
ハ ブ 「……いつもなら、こういうはなしをしてたら現れるぞ」
ブ タ 「あのときのせい、でしょうか……」*15
ハ ブ 「しばらくは、ちゃんと聞こえてたんだけどな……」*16
翌日の朝。砂浜。
泣き出しそうな空模様だった。
オオミミ 「なに! どこへ連れて行く気!」
ハブがオオミミギツネの手を引いて歩いて行った。
ハ ブ 「いいから来てくれ!」
オオミミ 「わたしには仕事があるのよ!」
ブ タ 「支配人、ちょっと調子が悪いみたいですから、はかせたちのところへ……」
ブタも付き添って歩いて行った。
ハ ブ 「急がねーと降ってくるぞ!」
ホロリ、と雨粒がこぼれた。
午後。かばんの研究所。
冷たい雨が降り始めた。
研究所の大きな部屋には、オオミミギツネとかばんだけがいて、隣り合って座り、紅茶を飲んでいた。
オオミミ 「あそこ、木が多くて海がよく見えないんですけど、新しいホテルの上なら、きっと最高の眺めですよ!」
オオミミギツネは、楽しげにしゃべっていた。
かばん 「いいですね! わたしも泊まってみたいです!」
かばんは、オオミミギツネの耳に顔を近づけてしゃべった。
オオミミ 「あたらしい景色がきっと見えるはずです! それにライブステージも……」
研究室(ガレージ)では、ハブ、ブタ、はかせ、助手が、深刻な面持ちで会話していた。
はかせ 「……ヒトはそれを、音響外傷と呼んでいたのです」
助手 「ただ、かばんによれば、ヒトの音響外傷とは違うらしいのです」
ハ ブ 「なんだそりゃ」
はかせ 「耳のいいフレンズ特有のもの、なのです」
助手 「おそらく、物理的に損傷したのは、ヒトの耳なのです」
はかせ 「ヒトの耳とけものの耳は、つながっているのです。両方から音が入って、両方に影響が出るのです」*17
ブ タ 「戻らないんですか?」
助手 「食事療法や薬で、多少、回復するかもしれませんが……」
ハ ブ 「望みはうすいってことだな」
ブ タ 「そんな……」
中編へ続く
2期の設定的に、プレーリー&ビーバーをここに登場させるのは間違いなのでは? という問題もありますが……。ビーバーはダムを離れたくないようですし……。
↓解決策を考えて、図を描きました。ジャパリホテル関係の考察も入った図です。
A案:ヘリポートを水平に戻す。ヘリポート(ヘリパッド)を建物から切り離して、下から持ち上げて水平に戻し、出来た隙間に瓦礫を詰め込む。
B案:傾いたヘリポートの上に、ステージと客席を増設する(ステージの床は水平に作る。客席はヘリポートの傾斜を利用して階段状にする)。
A案B案共に、ヘリポートの下の瓦礫が崩れそうなので、下を固める工事も行います。固めると言っても、瓦礫の空洞に瓦礫や土を詰め込むだけですが。
☆ このおはなしはではB案を採用しました。
「瓦礫をどける」と言っていますが、完全に除去するのではなく、あの子の捜索と、観客の安全確保と通路を作るために一部分だけ除去しています。
加えて、ライブの機材(音響機器、照明等)への電源供給のために、旧ホテルへつながっていた電線をつなぎ直しています。
↓アニメ本編から得られる情報だけで地図を描きました。矛盾だらけですが……。
青で書かれている所が候補地で、そのうちのどれかは決めていません。東側が最有力です。
フレンズのけもの耳は、けものプラズムで出来ており、動物の耳とは違うものだと思われます。内耳が存在するのかも不明です(物理的な内耳があったら脳に食い込みます)。あれは、一種のブースターであり、ヒトの耳とリンクしていて、音の情報を、ヒトの耳(あるいはヒトの耳から脳につながる神経)を経由して脳に送っているのではないか、と筆者は考えています。第11話のあのシーンでは、オオミミギツネはヒトの耳をおさえており、同時にけもの耳が倒れています。
このおはなしでは、耳が良いフレンズの場合、耳に入ってくる音の情報が多いため、ヒトの耳にかかる負荷も大きくなる、という設定にしています。
前編あとがき
読んでいただきありがとうございます。
長いので、前・中・後の3話に分割しました。全体のあとがきと考察などは第4話扱いです。
今回も、無駄な苦労と空回りをしてる気がします。考察、地図、設定……。あんまりやっても意味ないですが、これが結構楽しかったりするから困ります。この前編は、本文よりも脚注のほうがメインみたいになってしまいました。
あとPPPの曲の歌詞を混ぜるとか、余計なことをやっていたら、投稿までに時間がかかってしまいました。
このおはなしに出てくる難聴は、現実にある難聴とは違います。あと建築関係の描写もいい加減です。筆者の知識不足です。“けもフレはファンタジーだから”で済ませています。