転生したらバーサーカーのマスターになりました。   作:小狗丸

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「それで一体どうやったんだ、親友?」

 

 サーヴァントを召喚する儀式が終わった後、俺はミレニア城塞の通路を歩きながらカウレスに話しかける。

 

「どうやったって、何のことだ?」

 

「彼の事だよ」

 

 俺はカウレスにそう言うと、彼の隣にいるサーヴァント、アヴェンジャーを見る。今この通路にいるのは俺と頼光さん、カウレスとアヴェンジャーの四人だけだった。

 

 結局あの後、アストルフォがしつこく聞いてきたのでアヴェンジャーは仕方なく「過去にこのように呼ばれていた」といった風に真名を口にして、アヴェンジャーがエドモン・ダンテスだと知ってほとんどのマスターとサーヴァントが驚いた。

 

「普通、エクストラクラスなんて呪文にアレンジを加えたり、特別な触媒とか用意しない限り召喚できないだろう? でも呪文は他の三人と同じだったし、考えられるのは触媒が特別だったってこと。親友が手に入れたあのナイフ、あれは一体何だったんだ?」

 

「ああ、これか」

 

 俺の質問に、カウレスは懐からアヴェンジャーを召喚するのに使用した聖遺物のナイフを取り出し、それを見てアヴェンジャーが目を細めた。

 

「留人はエドモン・ダンテスがどうやってシャトー・ディフから脱出できたか知っているか?」

 

「え? ああ……。確かシャトー・ディフに投獄されたエドモン・ダンテスは、そこでファリア神父と出会って、ファリア神父の死後にその死体に入れ替わって死体遺棄用の袋に入り、シャトー・ディフから脱獄したんだっけ?」

 

「そう。そしてこのナイフはその時……」

 

「シャトー・ディフから脱出した後、海の中で袋を破くのに使用したナイフだ」

 

 俺の言葉にカウレスが頷き説明をしようとすると、それを遮ってアヴェンジャーがカウレスのナイフを懐かしげに見ながら口を開く。

 

「そのナイフはシャトー・ディフでファリア神父からいただいたものだ。もしエドモン・ダンテスがファリア神父に出会うことがなければ、エドモン・ダンテスは無念のままシャトー・ディフで息絶え、復讐劇は行われずに俺という黒い怨念は世界に刻まれることはなかっただろう。……正直、俺には聖杯に託す願いなどなく、この聖杯大戦という催しには興味などなかったが、そのナイフを触媒とされれば召喚に応じないわけにもいくまい」

 

 なるほど。つまりカウレスが入手したあのナイフは、言ってみればアヴェンジャーにとって大恩があるファリア神父からの紹介状みたいなものなわけか。それはアヴェンジャーの性格から考えれば、まず召喚に応じるよな。

 

 それにしてもほぼ確実にアヴェンジャーを召喚できる聖遺物のナイフか……。前世の「Fate/Grand Order」で言えば、エドモン・ダンテスと交換できる英霊召喚チケットみたいなものだろ? 前世でもこの世界でも大金を積んででも欲しがりそうな奴が大勢いそうだな。

 

「まあ、アヴェンジャーとして召喚できたのは俺も意外で、本当はアサシンとして召喚するつもりだったんだよ。ほら、エドモン・ダンテスってハッシ(アサシンの語源となった麻薬)を混ぜこんだ丸薬を常備していたり、海賊とかいった密輸組織をまとめていたっていう逸話があったからな」

 

「そうなのですか? マスター?」

 

「ええ、そうですね。俺もその辺りはあまり詳しくないんですけど、確かそんな逸話があったはずですよ」

 

 カウレスの言葉に頼光さんが俺に質問をしてきて、俺が彼女に答えていると、それを聞いていたアヴェンジャーが納得したように頷く。

 

「なるほどな。確かに俺がもしアサシンとして召喚されたら、複数の部下を召喚する宝具なりスキルなり持っていただろうな」

 

 複数の部下を召喚する宝具、もしくはスキルか……。多分、百貌のハサンみたいな感じで実際に使えたら戦闘でもサポートでも有利になって、カウレスもそれが目当てだったのだろう。

 

 しかしステータスやスキルを確認してみた結果、やはりアヴェンジャーは「Fate/Grand Order」と同様に強いサーヴァントみたいだし、聖杯大戦で活躍してくれるはずだ。

 

 こうして考えると「黒」の陣営って、原作と比べて大分強化されているよな。原作では敗けフラグとなった原因に対する対策も俺なりやっておいたし、少しは生き残る可能性は上がってきたかな?

 

 ……まあ、まだまだ油断はできないんだけどね。


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