転生したらバーサーカーのマスターになりました。   作:小狗丸

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「聖杯って……聖杯っ!?」

 

 俺の言葉にカウレスが驚いた声を上げて、頼光さんとアヴェンジャーの二人も、カウレスほどではないけど驚いた顔となって俺を見てくる。……まあ、それはそうだろうな。

 

「留人、その勾玉の中に聖杯があるってどういうことだよ?」

 

「親友。親友には以前、俺の家、孔雀原家に伝わる魔術のことを教えたよな?」

 

「あ、ああ……。確か、勾玉を触媒にした一種の宝石魔術だよな?」

 

「そうだ」

 

 勾玉とは日本に伝わる金属や鉱物で作られた装身具で、その歴史は古く、単なる装身具だけではなく神を祀る祭事などにも使用されていた。

 

 その勾玉の神秘に目をつけ、勾玉に魔術や魔力を封じ込めて有事の際に解放させるのが孔雀原家の魔術で、その内容は宝石魔術と似ていた。そして触媒である金属や鉱物を勾玉の形に加工する必要があるが、その手間さえ惜しまなければ触媒にかかる費用は宝石魔術の半分以下、下手したら四分の一以下となる。

 

「つまり俺の魔術は、魔力や霊的な存在を封印する事を得意としている。そしてこの勾玉には聖杯……正確には俺が以前参加した亜種聖杯戦争、剣の戦争で現れた聖杯と呼ばれる魔力の一部と、一人のサーヴァントの霊基が封印されている」

 

「聖杯の一部と、一人のサーヴァントの霊基? どうしてそんなものを封じているんだ?」

 

「……剣の戦争に参加したマスターの一人は、剣の戦争の開催者だったんだ。そしてその開催者はかなりの完璧主義者な上に神経質な奴で、何年も時間をかけて自分の亜種聖杯戦争を成功させて、更には自分が勝利者になろうと準備をしていた。

 でもいざ亜種聖杯戦争を開催してみると予期せぬ事態が幾つも起こって、剣の戦争なんていうトンデモ剣士大戦になった上、せっかく超一流のサーヴァントを呼び出したのに、最後の最後でイレギュラーの参加者……つまり俺に負けそうになって……。

 そしてついにその開催者は『キレて』しまったんだ」

 

「キレた?」

 

 首を傾げるカウレスに俺は頷いて答えた。

 

「そう、キレた。土壇場でその開催者は、令呪を使って自分のサーヴァントに『狂化』の属性を与えた上に、聖杯の器に集まっていた魔力、その一部を注ぎ込んだんだ。……もう、俺を倒して勝ちさえすれば後はどうでもよかったんだろうな。

 まあ、結局その開催者は自分が狂化させたサーヴァントに斬り殺されて自滅したんだけど、大変だったのはその後なんだよ。

 狂化の属性を帯びた上に、聖杯の魔力を注ぎ込まれた開催者のサーヴァントは聖杯と魔力のラインが繋がっていて、その影響で聖杯が暴走を始めたんだ」

 

「聖杯が暴走!?」

 

 俺の言葉にカウレスは顔を青くしながら驚くが、仕方がないだろう。実際あの時は俺も死ぬのを覚悟したからな。

 

「あのままだったら、山の一つは軽く吹っ飛びそうな爆発が起こりそうだったからな。俺は持っていた勾玉に暴走の原因となったサーヴァントと、それと一体化した聖杯の魔力の一部を封印した。そして残った魔力は暴発する前に、俺と一緒に戦ってくれたサーヴァントの願いに使ったんだ。これで剣の戦争は無事……とは言えないけど終わったってわけだ」

 

「……それが剣の戦争の結末か。でも狂化の属性を帯びたサーヴァントの霊基とか、そんな危険なものを使って大丈夫なのか?」

 

「その点は大丈夫だ。剣の戦争が終わってから、俺は富士の霊峰などの清らかな『気』に満ちた力場を巡って、狂化の属性を少しずつ治めていって、つい最近ようやく安全に利用できるレベルになった。……まあ、これを受け入れるかどうかはお前が決めることだ。起きているんだろ?」

 

「………」

 

 カウレスの質問に答えてからベッドで横になっているジークに声をかけると、ジークは目を開いてこちらを見てきた。

 

「話を聞いていたと思うけど、もう一度説明するぞ。この勾玉を使えばお前は助かると思う。でも、勾玉の魔力に生命力が枯渇しかかっているお前の体が耐えきれず、死んでしまう確率も高いし、助かっても何らかの副作用が出るかもしれない。……それでもいいか?」

 

「………俺は」

 

 俺がジークに聞くと、彼は視線をさ迷わせながらしばし黙った後、ある種の覚悟を決めた目を俺に向けて口をひらいた。




番外編とかで剣の戦争を書いたら読んでくれる人っていますかね?

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