転生したらバーサーカーのマスターになりました。   作:兵庫人

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 アタランテの消滅を確認してから周りを見てみると、獅子劫さんやモードレッドだけでなく、頼光さんにジーク、そしてジャンヌとこの場にいる全員が驚いた顔となって俺を見ていた。まあ、俺みたいな若い魔術師がいきなり魔術師の奥義とも言える固有結界を使ってサーヴァントを倒したら驚きもするか。

 

(頼光さん。いつまでも驚いていないで、ジークを連れてこっちに来てください)

 

(……あっ! わ、分かりました)

 

 俺が念話で指示を飛ばすと、頼光さんは慌ててジークを背負ってこちらへ跳んできてくれた。そして彼女に背負われたジークはと言うと……うん、大丈夫だ。顔色は悪いが、魔力の流れも安定しつつあるし、これなら少し休めば元気になるだろう。

 

「マスター、無事か?」

 

「ああ、何とかな。……いや、それにしてもやっぱり凄いな、お前の切り札は」

 

 駆け寄ってきたモードレッドに獅子劫さんはそう答えると、次に俺に話しかけてきた。獅子劫さんには一年前、魔術結社同士の抗争に巻き込まれて共闘した時にこの「偉大なる過去と宝の大地(ヴィシュヌ・パージュー)」を見せたことがあった。

 

「一年前にこの固有結界見た時も『これは下手なサーヴァントくらいなら倒せるんじゃないか?』と思っていたが、まさかあれ程とはね……。これはもう『封印指定』されても可笑しくないんじゃないか?」

 

 封印指定。

 

 それは時計塔に属する魔術師にとって最大の名誉であり最悪の烙印。

 

 学問や研鑽だけでは決して修得できない一代限り、その術者限りの稀有な魔術を修得した魔術師が現れた場合、魔術協会はその才能を惜しんで永久に封印しようとするのが封印指定。永久に封印とは、具体的に言うとその術者の脳をホルマリン漬けにして時計塔の地下深くにある倉庫に保管するということで、実質処刑と変わらなかった。

 

 そしてこの封印指定が俺が今も「黒」のマスターとしてユグドミレニア一族に協力している最大の理由である。

 

 自分で言うのもどうかと思うが、俺はいつ封印指定に指名されても可笑しくないと思う。セイバークラスのサーヴァント五騎が参加した亜種聖杯戦争で優勝して、一騎のサーヴァントの霊基と聖杯の魔力の一部を封じて自分だけの魔術礼装にして、トドメに固有結界も修得していて……最初の一つはともかく後の二つは封印指定にされる要因となるだろう。

 

 だから俺は鉱石科の一生徒として振る舞い、いつ封印指定されても自分の身を守れるだけの実力と後ろ盾を得ようとしていた。そんな時に令呪が宿ってダーニックに「黒」のマスターにされたのだ。

 

 俺は「黒」のマスターとして聖杯大戦に参加する際、ダーニックにこの事を説明して、聖杯大戦に勝利した時にはユグドミレニア一族に後ろ盾になってもらう事を約束してある。……ダーニックがどこまで約束を守ってくれるかは分からないが、それでも時計塔にいるよりかはマシだろう。

 

「そうですね。でもダーニックさんはユグドミレニアなら悪いようにはしないと言ってくれましたから大丈夫ですよ」

 

「……なるほどね。それがユグドミレニアに肩入れした理由か」

 

 俺がそう答えると、獅子劫さんはそれだけで俺が「黒」のマスターになった理由を察してくれたようだ。

 

「さてと……。そろそろ時間じゃないか?」

 

 獅子劫さんが笑みを浮かべてそう言うと、周囲の景色が元の夜の道路へと戻っていった。なるほど。獅子劫さんが急に俺に話をふってきたのは、固有結界を展開できる時間制限を待っていたからか。相変わらずこういうところは抜け目ないな、この人。

 

「じゃあ、今日のところはここで帰らせてもらう……ぜ!」

 

 獅子劫さんは懐から閃光弾を取り出すとそれを地面に叩きつけ、次の瞬間強い光が生じて何も見えなくなってしまう。そして光が収まってようやく視界が戻ってきた時には、獅子劫さんとモードレッドの姿はどこにもなかった。

 

(マスター。あの二人、追わなくて良いのですか?)

 

(はい。今日はサーヴァントを一人倒せただけで良しとしましょう。獅子劫さん達は今日のところはほうっておきましょう)

 

 念話で話しかけてくる頼光さんに俺も念話で返事をする。

 

 原作でも獅子劫さんとモードレッドは最後の戦いで「黒」の陣営と協力関係にあった。だからこの世界でも獅子劫さん達と協力関係になれる目はある。……見た感じ「赤」のアサシンとそのマスターに洗脳されている様子もないしね。

 

(それに……これ以上手の内を晒したくありませんから)

 

 そう言って空を見上げると、そこには一体の鳥型のゴーレムがこちらを見下ろしていた。間違いなくこちらのキャスターが作ったゴーレムだ。俺が鳥型のゴーレムに気づいたのは「偉大なる過去と宝の大地(ヴィシュヌ・パージュー)」を展開した時なのだが、まず間違いなくあの鳥型のゴーレムを通じてダーニックを初めとする「黒」のマスターは俺達の戦いを最初から見ているのだろう。

 

 もし獅子劫さん達を追撃するのなら自然とそこから生じる戦いは更に過酷となり、俺はもう一つの切り札を使わざるを得ないだろう。聖杯大戦の序盤で、今は味方とはいえ「黒」のマスター達が見ている前で手札を全て見せる気にはなれなかった。

 

 だから今日の戦いはここまで。獅子劫さんとモードレッドも追わないというわけだ。

 

「それで? 俺達はミレニア城塞に戻りますけど、ルーラーはどうしますか?」

 

「え? 私、ですか?」

 

 俺がジャンヌに話しかけると彼女は自分を指差した。

 

「はい。ルーラーはこの聖杯大戦の裁定をするために来たんですよね? それだったら両方の陣営の意見も聞いてみてもいいんじゃないですか?」

 

「……そうですね。確かに貴方の言う通りです。……申し訳ありませんが、私もそのミレニア城塞に連れて行ってもらえませんか?」

 

 ジャンヌは俺の提案に頷く。良し、これで最初の命令も達成できたものだろう。

 

「分かりました。じゃあこちらにどうぞ。車があります」

 

 俺はそう言うと頼光さんとジークと一緒に、離れた場所に停めてある車までジャンヌを案内する。ちなみに行きはジークが車を運転していたのだが、今の彼はとても運転できる状態ではないので帰りは俺が運転した。

 

 後のジャンヌの説得はダーニックとランサーに任せるとしよう。……絶対に成功するとは思えないけど。

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