転生したらバーサーカーのマスターになりました。   作:兵庫人

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 ジークが俺と頼光さんに特訓をつけてほしいと頼んできてから今日で三日目。今日ジークはミレニア城塞の中庭で剣の素振りをしており、頼光さんはそれを横で見ていて時折アドバイスをしている。

 

 そして俺はそんなジークと頼光さんを、中庭に備え付けられたベンチに座りながら疲れ切った顔で眺めていた。疲れている理由は単なる魔力の使いすぎ。

 

 今日までジークは三回ほどランスロットに変身して、頼光さんを相手に実戦そのものの模擬戦をして、その度に俺は模擬戦をする場所作りに「偉大なる過去と宝の大地(ヴィシュヌ・パージュー)」を展開したのだ。しかも変身の魔力は自分持ちのジークはともかく、頼光さんはジークの仲間達からの魔力供給を受けたくないみたいなので、彼女が使う魔力と固有結界を展開する魔力は全部俺持ち。……疲れもするって。

 

「だいぶお疲れのようだね」

 

 突然横から声が聞こえてきたのでそちらを見ると、いつの間にかアストルフォが俺の隣に座っていた。そして彼の方に顔を向けたことで、カウレスとアヴェンジャー、フィオレさんとケイローンが俺のところに近づいて来ていることに気づいた。

 

「固有結界は世界を塗り替える大魔術……当然消費される魔力の量も大きいので、連日で使用すれば疲労も溜まるでしょう」

 

「というか、たかが模擬戦の場所に固有結界なんか使うなよ。世の魔術師が聞いたら正気を疑うぞ? ……まあ、お前が今更何をしたって俺は驚きはしないけど」

 

 フィオレさんが座る車椅子を押しながらケイローンが苦笑して言うと、カウレスが呆れた声で言ってきた。確かに魔術師の奥義とも言える固有結界を、ドラゴンボー◯の精神と時の部屋代わりに使う馬鹿は、世界広しと言っても俺ぐらいなものだろう。だけど……。

 

「仕方がないだろう? 触れたモノを全て自分の宝具にしてしまう、ジークが変身したランスロットの能力。あれを最大限活かせるフィールドが、俺の『偉大なる過去と宝の大地(ヴィシュヌ・パージュー)』なんだから。頼光さんも、模擬戦をするなら相手に全力を出してもらいたいと言うんだし……。力を貸してくれるサーヴァントの要望に、出来る限り答えるのがマスターの仕事だろ?」

 

「「……!」」

 

「へぇ……。君ってば中々良い所あるじゃん?」

 

「そうですね。バーサーカーは良いマスターに巡り会えたようだ」

 

「フッ……」

 

 俺がカウレスにそう答えると、カウレスとフィオレさんが驚いた顔となり、アストルフォとケイローンとアヴェンジャーが笑みを浮かべた。あれ? その反応は一体何?

 

「それよりも皆、ジークのことが気になっているみたいだけど?」

 

「アハハッ。そりゃあね? 彼が戦いに参加した理由って僕達の言葉のせいみたいだからね。ね、アヴェンジャー?」

 

「アイツの背中を押したのは主にお前の言葉だと思うが……まぁ、そうだな」

 

 俺が聞くとアストルフォが笑いながら答えてジークを見て、アヴェンジャーもまたアストルフォに小さく言葉を返してから素振りをしているホムンクルスへと視線を向ける。だがそこにカウレスが眉をひそめながら口を開いてくる。

 

「……確かにジークが活躍して、他のマスターやサーヴァントが魔力を使わなければ、魔力供給用のホムンクルスの負担も少しは軽くなると思う。でもそんなものは微々たるもので……」

 

「それでも、ですよ。例え救える仲間の数が皆無に等しくても、彼は自分にできることを必死で考え、それを成そうとしている。……つまりはそういうことです」

 

 カウレスの言葉を遮ったケイローンは、そこまで言うと様々な感情が混じった顔でジーク見る。その顔は不治の病にかかりながらも、必死に生きようとしている患者を見守る医者のように見えた。

 

「やはりアーチャーも彼のことが気になるのですね?」

 

「……はい、マスター。正直に言って、もし出来るのであれば、私は彼に手を貸したいと思っています」

 

「「………」」

 

 自身のマスターであるフィオレさんにそう答えるケイローンに、アストルフォは隠すことなく笑顔を浮かべ、アヴェンジャーは無言で煙草を吸っていたが、その口元には僅かな笑みが浮かんでいたのを俺は見た。

 

 どうやらジークの存在は、「黒」の陣営に良い影響をもたらしてくれたようだ。

 

 原作の「黒」の陣営は「赤」の陣営にも負けないくらいのスペックを持っていたのに、他のサーヴァントどころか自分のマスターとの連携が取れていないせいで自滅したイメージが強いからな。このままサーヴァント同士の連帯感が強めれば、この聖杯大戦を「黒」の陣営の勝利で終わらせることも……。

 

「皆様! 至急報告したい事があります!」

 

 俺がそこまで考えたところで、誰かに強く殴られたのか右頬が赤く腫れている女性のホムンクルスが、珍しく慌てた様子でこちらに走ってきた。その様子に俺達だけでなく、素振りをしていたジークと頼光さんも彼女の方を見る。

 

「どうしましたか?」

 

「はい。実は先程『赤』のセイバーとそのマスターの本拠地が判明したのですが、それを知ったゴルド様がセイバー様を連れて、自分達だけで『赤』のセイバーの元に向かいました」

 

「「はぁっ!?」」

 

 フィオレさんが質問をしてホムンクルスの女性が報告をすると、それを聞いていた俺とカウレスが思わず声を上げる。他の皆も、声こそは上げていないが大なり小なり驚いている様子だった。

 

「申し訳ありません。止めようとしたのですが、ゴルド様は聞いてくれず私を殴り、気がついた時にはゴルド様とセイバー様はミレニア城塞を後にしていました」

 

 深々と頭を下げて謝罪をするホムンクルスの女性。なるほど、あの赤く腫れた右頬はゴルドに殴られた痕か。

 

 というか「赤」のセイバーとそのマスターって、モードレッドとマジカル傭兵ゴーライオ……じゃなくて獅子劫さんのことだよね!? 何を考えているんだよあの馬鹿(ゴルド)は!? 「黒」のサーヴァントが連帯感を持ってくれたことに安心した矢先に何スタンドプレーをしているんだよ!

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