「ーーーっ!?」
頼光さんが放った宝具、釈提桓因・金剛杵がカルナの首に命中した瞬間、凄まじい光と衝撃が生じて俺は思わず目を閉じた。周りの様子は見えないが、それでもカルナの魔力が激しく揺らいで弱まっていくのを感じた。
……アレ? これってば俺の作戦成功したの? 聖杯大戦で最強の一角のカルナを倒すことができたの?
もしそうだったらアレだ。俺、滅茶苦茶テンションが上がるよ? 思わず今ここで本場インドの人達が驚くくらい、キレッキレの喜びのインド風ダンスを踊る自身あるよ?
サンキュー、ヴィシュヌ神! グラッチェ、インドラ神! 俺、今度から貴方達を心から感謝して祀るよ。俺、一応仏教徒だけど、仏教のルーツはインドにあるからセーフだよ……ね……?
俺が内心で喜んでいたその時、先程まで激しく揺らいで弱まっていたカルナの魔力が突然、前以上に強くなっていくのを感じた。まさか、あれで倒せていないのか……?
周囲の光も治ったようで、俺が恐る恐る目を開くとそこには、黄金の鎧は装備していないが、代わりに漆黒の刃を持つ長大な神殺しの槍を右手に宿したカルナが宙に浮かんでいた。
「………!」
「確かに命中したはずなのに……!」
宙に浮かびカルナを見て俺が絶句して、頼光さんが信じられないといった表情となり、そんな俺達を見下ろしたカルナは笑みを浮かべる。
「フッ……。流石に今のは危なかった。まさか黄金の鎧の不死を焼き払い、更にはインドラの武器を持ち出してくるとは……。あの時とっさに黄金の鎧を外し、インドラより授かったこの槍を取り出して防がねば、俺は今頃敗北していただろう」
つまり、あのままいけば、俺の狙い通りに頼光さんの宝具でカルナを倒せたのだけど、カルナはとっさの判断で、頼光さんのと同じインドラの武器の宝具を取り出して、それを防いだってこと? ……確か、自身の神話の関係で、一度神殺しの槍を取り出すと、もう二度と黄金の鎧を装着できないというデメリットがあったはずだよな? そんなデメリットがあれば普通、躊躇いが生じて判断が遅れるはずなのに、あの一瞬で最適の行動を判断して実行したってこと?
…………………………うそーん?
ちょっと待てよ、そんなのアリ? こっちは必死に作戦考えて、怖いのも我慢して頑張って、しかも貴重な令呪を二画も使ったのに、倒せないどころかほとんどダメージ無しってアリかよ?
所詮、何の取り柄も才能もない一般人の俺が立てた作戦なんて、イケメンの超チート英霊には通用しないということですか!?
俺が心の中でそう嘆いていると、制限時間を超えてしまったらしく「
「どうやらそう長い時間、己の世界を保っていられないようだな。……しかし手加減はしないぞ。先程の見事な策から、俺はお前達をこの第二の生における最大の好敵手と認めた」
『『………!』』
カルナに神殺しの槍の切っ先を向けられて、俺と頼光さんはとっさに身構えた。
クソッ! 神殺しの槍を持って本気モードになったカルナと二回戦かよ!? こっちにはもう切り札なんて……いや、待てよ? そういえば「コレ」って使えるのか?
俺はカルナを警戒しながら、自分の右手の甲に視線を向ける。右手にある「コレ」は記念のような感じで取っておいたものだが、もしかしたら……ん?
「………」
俺が自分の右手を見ながら考えていると、急にカルナが虚空を見つめて、しばらくしてから俺と頼光さんに申し訳なさそうな視線を向けてきた。
「申し訳ないがマスターより帰還を命じられた。この戦いの続きは後にとっておこう。そして次に戦う時こそ、俺達の決着をつけよう」
それだけ言うとカルナは、こちらに振り返ることなく空を飛んでこの場を去っていった。そしてそんなカルナの後ろ姿に向かって俺は……。
「もう二度と会いたくねぇよ……」
と、呟くことしかできなかった。
とりあえず
「マスター……仕損じてしまい、申し訳ありません」
幸い「
「別に頼光さんのせいじゃありませんよ。あれはカルナが一枚上手だっただけですよ」
これは俺の本心の言葉だ。あの戦いで俺と頼光さんは、自分の持っている全ての力を出してカルナを追い詰めた。それでも土壇場でこちらの必殺の一撃を防ぐなんて、流石はインドの大英雄と言ったところか。
「カルナの対策はまた改めて考えましょう。それより今は親友達の所に行き……!?」
俺がそこまで言った時、ここから離れた場所から赤い雷光が轟音を立てて天に昇っていった。
「何の取り柄も才能もない一般人の俺……」(by固有結界やら英霊の宝具の模倣やら色々としでかしている「黒」のマスター)
「……………!?」(by額に無数の青筋を浮かべて能面みたいな無表情となっている現代魔術科のカリスマ教師)