転生したらバーサーカーのマスターになりました。   作:兵庫人

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 赤い雷が天に昇ったのを見て、俺と頼光さんは雷が昇った現場……ジーク達が戦っている場所へと向かっていた。本当なら頼光さんに俺を担いでもらった方が速いのだが、万が一に敵の伏兵がいた場合を考えて、二人で走って移動している。

 

「マスター。今の雷は……」

 

「ええ。まず間違いなくモードレッドの宝具です」

 

 走りながら聞いてくる頼光さんに、俺も走りながら答える。あの赤い雷がモードレッドの宝具であるのは間違いないが、確かモードレッドの宝具って……。

 

「まさかこんな人里が近い所で対軍宝具を使うなんて……。獅子劫さん、勝負に出たか逃げに出たか……。まぁ、多分逃げるために、モードレッドの宝具を使ったでしょうね」

 

「逃げるために?」

 

 走りながら視線だけをこちらに向けてくる頼光さんに、俺は獅子劫さんの行動パターンを予測しながら頷いてみせる。

 

「モードレッドの宝具は強力だけど、向こうにはジークフリートとデミ・サーヴァントになったジークがいます。確実に二人とも倒せる確証が無い以上、獅子劫さんはこれ以上戦うことはせず、ここから退くはずです」

 

 そこまで言ったところで、上空でアキレウスと戦っていたアヴェンジャーが俺と頼光さんの横に降りてきて、俺達の方を見て感心したような笑みを浮かべた。

 

「ほぅ……。あの『赤』のランサー、中々の大英雄と見たが、それとやりあっても無事とはな……」

 

「何回か死ぬかと思うような目に遭いましたけどね。……それよりアヴェンジャー? 親友は無事なんですか?」

 

「……マスターとの魔力の供給線は切れていない。マスターは無事だろうさ。だが、マスター以外は分からないがな」

 

「そうですか……」

 

 俺の質問にアヴェンジャーは、意識を集中させて自分とカウレスの繋がりを確認してから答え、それを聞いて頼光さんが皆を心配した表情となる。

 

 そして俺達がジーク達が戦っていた現場に到着すると、そこは雷が落ちた……というより爆弾が爆発したような惨状となっていた。地面には大きなクレーターのようなものが出来ていて、周辺の建物や土は黒焦げで、いたる所で未だに煙が立ち上っているのが見えた。

 

「これは……!? おい、親友! フィオレさん! ジークにセイバー! 何処だ!? いたら返事をしてくれ!」

 

「……一応、ゴルドおじさんのことも心配したらどうだ?」

 

 俺が周囲を見回しながら大声で呼び掛けると、物陰からゴルドを背負ったカウレスが苦笑しながら姿を現し、その後でフィオレさんも姿を現す。

 

「親友! フィオレさん! 無事だったのか」

 

 俺がカウレスとフィオレさんの姿を見て安心すると、背後で頼光さんとアヴェンジャーも安心した気配を感じた。しかし、カウレスとフィオレさんは苦い表情をしていた。

 

「……ああ、俺達は何とか無事だ。だけどアイツは……」

 

 そこまで言ってカウレスは、クレーターの近くで立ち上っている煙の方に視線を向ける。するとちょうど風が吹いて煙が晴れ、その向こうにいる人物達の姿が見えた。

 

『『………!?』』

 

 煙が晴れた瞬間、俺と頼光さんとアヴェンジャーは、その先の光景を見て思わず驚き息を飲んだ。

 

 煙の先にいたのは、変身が解けて全身がボロボロだが五体満足のジークと、右半身が吹き飛ばされて瀕死の状態のジークフリートだった。

 

「……留人達がいなくなった後、ジークはモードレッドと、俺とフィオレ姉さんは獅子劫と戦っていたんだ。すると途中で獅子劫の奴、モードレッドに令呪で威力を上げた宝具を使わせたんだ。しかも、その宝具の向け先が気絶しているゴルドおじさんで、それを守るためにセイバーが……」

 

 絶句する俺達にカウレスが言い辛そうな表情で説明をする。

 

 やっぱりあの赤い雷はモードレッドの宝具だったのか……。そしてなるほど。気絶して動けないゴルドを狙ったら、ジークフリートは間違いなく守ろうとするだろうし、令呪で威力を強化したモードレッドの宝具なら、あの傷も納得だ。

 

 ジークフリートの傷は誰が見ても致命傷で、当然ながら獅子劫さんとモードレッドは、すでにここから撤退している。

 

 今回の戦い、カルナの黄金の鎧を外すことはできたが、こちらは令呪を二画も使った上にセイバーの脱落を防げなかった。そして獅子劫さんの方は令呪を一画使用したが、実質獅子劫さんの一人勝ちみたいなものだ。

 

「うう、ぐ……!」

 

「しっかりしろ、セイバー! マスター! セイバーに治癒の魔術を……!」

 

「いや、いい……」

 

 苦しそうな表情を浮かべるジークフリートを支えるジークが、俺にジークフリートの治療をしてほしいと言うのだが、それは本人によって否定された。

 

「セイバー?」

 

「見れば分かるだろう? 俺はもう助からない。……それよりもジーク、お前に渡すものがある」

 

 ジークフリートは小さな笑みをジークに向けると、自分の胸に左手をめり込ませ、光の玉のようなモノを取り出した。そして、その光の玉が何であるか、いち早く気づいたフィオレさんが目を見開いて驚く。

 

「それは……まさかセイバーの霊核ですか!?」

 

『『……………!?』』

 

 フィオレさんの言葉にこの場にいる全員が驚くなか、ジークフリートは己の心臓とも言うべき霊核をジークに差し出そうとして、それに対してジークは戸惑った表情となる。

 

「何故、これを俺に?」

 

「お前が戦っている理由は俺も知っている。仲間の為に剣を取るお前の姿を、俺は正しいと思い、応援したかったが……。もはや俺にできる事はこれぐらいしかない……」

 

 ジークフリートの霊核は、言ってみれば高性能な魔力炉みたいなものだ。それを取り込んで上手く制御出来れば、ジークの変身出来る時間は延びて、変身後の戦闘能力も大きく上がるだろう。そしてそうなればジークの、武功をあげて仲間のホムンクルスの待遇を向上させるという目的も、実現しやすくなるはずだ。

 

 だからジークを応援しているジークフリートは、彼にもはや先が長くない自分の霊核を譲ろうとしているのだろう。

 

「……感謝する、ジークフリート。貴方の霊核、確かに受け取った」

 

 ジークがジークフリートの霊核を受け取ると、霊核は自分から吸い込まれるようにジークの胸の中へと入っていった。それを見届けたジークフリートは小さく笑い、彼の体の消滅が始まった。

 

「ここまでか……。最後に俺のマスターに謝罪しておいてくれ。俺は、結局最後までマスターの期待に応えることができなかった……」

 

 そう言い残してジークフリートは完全に消滅した。

 

 こうして「黒」の陣営のサーヴァントで初の脱落者が出た。

 

 最初に脱落した「黒」のサーヴァントは、原作通りセイバー、ジークフリート……。

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