転生したらバーサーカーのマスターになりました。   作:兵庫人

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「……何だこれは?」

 

 剣の戦争の話を終えて、俺と頼光さんとジークが自分達の部屋に戻ると、部屋の前を武装した四人のホムンクルスが守っていた。

 

「お疲れ様です。孔雀原様。バーサーカー様。ジークさん」

 

 俺達に気づいたホムンクルスの一人が挨拶をしてきた。ちなみにジークは変身能力を手に入れた時点でホムンクルスの上位個体とされ、俺達マスターとサーヴァントの次に高い地位をダーニックに与えられており、最初は「ジーク様」と呼ばれていたのだが、同胞に特別扱いされることを本人が拒んだために、妥協案として今の呼び方になったのだ。

 

「ねぇ? 一体どうして俺達の部屋の前を守っているんだ?」

 

「はい。ダーニック様から皆様の部屋を守るように命じられたからです。皆様はこの『黒』の陣営に、なくてはならない方々ですから」

 

 俺の質問にホムンクルスの一人が答え、残りの三人のホムンクルスが頷く。

 

 どうやらこの前のカルナとの戦闘で、ダーニック達の俺達に対する評価は非常に高いものになったらしい。……だがそれは、これから起こる重要な、つまり危険な戦いに真っ先に送り込まれるという意味で、全く嬉しくない。

 

「……そうか。ご苦労様。あまり無理はしないでくれよ」

 

 俺は四人のホムンクルス達にそう言って部屋に入ると、そのまま部屋の奥にある大きめの水槽の元へ行き、水槽の中を覗き込む。水槽の中には様々な大きさの勾玉が水に沈んでいて、これらは俺がこの聖杯大戦の為に用意した、魔術や魔力を封じ込めたものだ。

 

「だいぶ減ったな……」

 

 この水槽は風水の「氣は水に留まり、風と共に散る」という概念を利用した、勾玉の魔術と魔力を保存できる期間を長引かせる為の魔術装置で、俺は水槽の中の勾玉の数を数えて呟いた。最初はこの倍以上の数の勾玉があったのだが、聖杯大戦が激しすぎたために予想以上に消費してしまったようだ。

 

 水槽の中にある勾玉の数は九十五。

 

 固有結界「偉大なる過去と宝の大地(ヴィシュヌ・パージュー)」を封じた勾玉が三。爆炎の魔術を封じた勾玉が五十六。補助用の魔術を封じた勾玉が十七。魔力タンク用に魔力のみを封じた勾玉が十九。これが今の俺の手札の全てだ。

 

 その上、俺は「不滅の刃の模倣(ブラフマーストラ)」という切り札を敵味方両方が見ている前で使ってしまい、その上令呪も二画使用してしまった。令呪の件は仕方なかったとして、切り札を全て晒してしまったのは痛い。こうなれば……。

 

「新しい切り札を仕込むしかないか」

 

「新しい切り札、ですか? そのようなものがあるのですか?」

 

 俺の呟きを聞いた頼光さんが首を傾げる。

 

「ええ。『偉大なる過去と宝の大地(ヴィシュヌ・パージュー)』や『不滅の刃の模倣(ブラフマーストラ)』ほどじゃないけど、アテはあります」

 

 そう頼光さんに答えて俺は、自分の右手の甲と、左手にある魔術も魔力を封じていない勾玉を見る。するとジークは驚いたような視線を俺に向けてくる。

 

「ん? どうした、ジーク?」

 

「いや……。マスターが使った二つの切り札、固有結界と英霊の宝具の再現は、世の魔術師の大半が一生をかけても実現出来ない大魔術だと聞いた。それに代わる新しい切り札を用意できるだなんて。マスターは非常に優秀な魔術師なのだな」

 

「……………………はっ! 何だよ、それ? 嫌味かよ? 俺は単に生まれた家や偶然出逢った出来事から強力なカード(魔力や魔術)をもらって、そのカードをありがたく使わせてもらっている三流、よくて二流の魔術師だよ。本当に優秀な魔術師っていうのは、例え元手がゼロでもあの手この手で人や世界を巧く騙して奇蹟を起こして、常に最良の結果を出すような人のことを言うんだよ」

 

 ジークの予想外の言葉に、俺は数秒呆けた後、思わず乱暴な言葉使いとなって答えた。

 

 確かに「偉大なる過去と宝の大地(ヴィシュヌ・パージュー)」と「不滅の刃の模倣(ブラフマーストラ)」の二つが使えることは自慢だし、誇りに思っている。

 

 だけどそれだけじゃ駄目なんだ。

 

 いつかコサラの宮廷魔術師となり、あのラーマ王の元で仕えるには、大魔術を使えるだけでは駄目だ。自分の知識や技能を使いこなし、最良の結果を出せるようにならなくては意味がないんだ。

 

「……そうか。マスターほどの使い手でようやく二流、三流というレベルなのか。……やはり魔術師というのは凄い存在なのだな」

 

 俺の言葉を聞いて、ジークが何かを考えるような表情となって呟く。

 

 アレ? 俺ってばジークに変な誤解でもさせちゃった?

 

「マスター……」

 

 どこか責めるような目で見てくる頼光さんから、俺はそっと目を逸らす。いや、違う。これは俺のせいじゃない。

 

 そして目を逸らした俺は偶然部屋にあるタンスを見て、そこに仕舞ってある物の事を思い出した。

 

(そうだ……。そういえば『アレ』も使えるかもしれないな)

 

 タンスの中には、あの剣の戦争の後で俺がこっそり回収した「ラーマ王以外の、剣の戦争に参加した四騎の英霊の聖遺物」が仕舞ってあるのだ。

 

 そしてタンスの中にある四つの聖遺物の一つに、魔術礼装としても使用出来る代物がある。その聖遺物は巧く使えば新たな切り札にもなり得るが、正直これは巧く使えるか分からないどころか、下手したら暴走してこちらを滅ぼす爆弾みたいなものだ。

 

 出来ることならあの聖遺物を使う事態が来ないことを祈りながら、俺は新しい切り札を仕込むことにした。




「はっ! 俺は三流、よくて二流の魔術師だよ!」(by施しの英雄に手傷を負わせた二千年近い歴史を持つ家の魔術師)

「…………………………ほう?」(by人を殺せそうな笑顔を浮かべている現代魔術科の君主)

「………!」(by現代魔術科の君主の笑顔に怯えて数歩後ずさる灰色ローブの弟子)
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