「いい天気ですね」
「ええ、そうですね」
いつものサーヴァントの格好ではなく、現代の服を着ている頼光さんの言葉に俺は返事をした。
剣の戦争の出来事を「黒」の陣営の皆に話した日から三日後。俺と頼光さんの二人は、ミレニア城塞の近くにあるトゥリファスの街を歩いていた。
俺がここにいるのは頼光さんに「たまには息抜きをしないと体に毒ですよ」と言われて強引に連れ出されたからだ。そしてジークは今、ミレニア城塞で新たに取り込んだジークフリートの霊核を体に同調させるための調整を受けている。
昼間のトゥリファスは聖杯大戦の気配なんて感じさせないくらい平和で、こうして街並みを見ながら歩いているだけで自分がリラックスしていくのが分かる。どうやら俺は自分でも思っている以上に、精神を張り積めさせていたようだ。
「頼光さん。今日は街に誘ってくれてありがとうございます。……それと、これもありがとうございます」
俺は頼光さんに礼を言うと、ポケットから金属製の勾玉を取り出して彼女に見せる。これは俺が新しく仕込んだ「切り札」の一つで、頼光さんの協力がなければこれを作ることはできなかった。
「いえ、気にしないでください、マスター。それでマスター? 少しは『目標』に近づけましたか?」
「……!」
頼光さんは俺の言葉に笑顔でそう返してくれると、不意にこちらの目を覗きこんで尋ねてきて、俺は思わず言葉を失った。
「ふふっ。この間の剣の戦争の話を聞いたら誰でも分かりますよ。マスター、貴方は剣の戦争で出会ったラーマ王に憧れて、彼と並び立つに相応しい力を得ようとしている。召喚されたばかりの頃は、ただ死にたくないから生き残る策を考えているのこと思いましたが、実際は少しでも自らを鍛える時間がほしいから生きようとしているのですね」
絶句する俺を見て笑う頼光さんの言葉は全て正しかった。別に隠していたわけではないのだが、こう正確に言葉にされると、どこか肩の荷が降りた気分になって俺は一つ息を吐いた。
「……はぁ。そうですよ。俺は
「……ほう? それはまた興味深い話だな?」
『『……っ!?』』
俺が自らの決意を頼光さんに向けて言うと、背後から聞き覚えのある男の声が聞こえてきて、俺と頼光さんは同時に背後を振り返った。
俺達の背後にいたのは見知った顔の三人の男女。一人目はルーラー、ジャンヌ・ダルク。二人目は「赤」のセイバー、モードレッド。そして三人目は……。
「『
「そのネタ、いつまで引っ張る気だお前は!? というか段々酷くなってきてねぇか!?」
全く予想していなかった獅子劫さんとの再会に驚いて、ついて心の声を出してしまうと、獅子劫さんのアイアンクローが俺の頭を鷲掴みにした。ギブッ! ギブギブギブッ! 頭蓋骨がきしむ嫌な音が直接脳に響いてくるぅ……!?
「そこまでです、ごーらいおん殿! 私のマスターにそれ以上狼藉を働けば容赦はしませんよ!」
「………あー、頼むからその呼び名はもう止めてくれ。……ほらよ」
刀を取り出して身構える頼光さんの言葉に、獅子劫さんは毒気を抜かれたような顔となって、俺の頭を離してくれた。あー、痛かった……。
「だが、まあいい。ここでお前達と出会えたのは好都合だ」
「好都合? 一体どういうことですか?」
どうやら獅子劫さんはここへ戦いに来たわけではないらしい。俺が獅子劫さんの言葉に首を傾げて聞くと、彼は人懐っこい笑顔(ただし元が恐いため好感度上昇率ゼロ)を浮かべて、とんでもない爆弾発言をしてきた。
「ああ。俺達、『赤』の陣営を抜けて
「……………ハイィッ!?」