転生したらバーサーカーのマスターになりました。   作:小狗丸

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 俺が頼光さんと親友のカウレスと一緒に、サーヴァントを召喚するための聖遺物を探す旅に出てから、早いものでもう二ヶ月経った。

 

 剣の戦争ではたまたま露店商で買った石が聖遺物だった俺は、聖遺物の探索が具体的にどんな作業か知らず、てっきり地道な調査や持ち主との交渉だと思っていたのだが、それは大きな間違いであったとこの二ヶ月の旅で嫌というほど思い知らされた。

 

 何しろ聖遺物の情報を知っている情報屋を訪ねると、その情報屋を狙う魔術結社気取りのはぐれ魔術師の集団と鉢合わせになって戦闘になり、

 

 情報屋から聖遺物を所有している魔術師の住所を聞き出して、その魔術師がいる山奥の村へ向かうと、何故か幻想種の棲息地に迷いこんで幻想種の群れに追いかけ回されて、

 

 ようやく魔術師が住む村に辿り着いたと思ったら、魔術師の実験の失敗のせいで、魔術師を初めとする村の住民全てが死徒もどきとなっていて、死徒もどきの群れとの激戦を繰り広げることになったのだ。

 

 そして俺達は、何とか死徒もどきの群れを全て倒して村から脱出。今は村から少し離れた場所で休憩をとっていた。

 

 正直、聖遺物一つ手に入れるためだけに随分な大冒険になったと思う。途中で何回か、頼光さんがいなければ俺も親友のカウレスも仲良く死んでいた場面もあったし、この二ヶ月の旅の記録を文章にしたら、それだけでライトノベル一冊は確実に書けるだろう。

 

「なぁ、親友? 聖遺物を探すのって、こんなに大変なのかい?」

 

「そんなわけないだろ? 今回がたまたま例外だっただけだ」

 

 俺の質問にカウレスが疲れた顔となって答える。

 

「マジか。俺ってばつくづく例外とか偶然と言った事態に縁があるな。……こんな修羅場は去年、魔術結社同士の抗争に巻き込まれて、フリーランスの死霊魔術師と一緒に切り抜けた時以来だな」

 

 俺がその時知り合ってお世話になった、死霊魔術師のことを思い出しながら言うと、カウレスは疲れた顔から呆れた顔になってこちらを見てきた。

 

「魔術結社同士の抗争に巻き込まれたって……。お前、どれだけ運がないんだよ」

 

「言わないでくれ、親友。自分の運のなさに絶望して泣きたくなるから……」

 

「それにしても現代の世界も中々に物騒なのですね。それでも平安の京の夜に比べればまだ平和な方ですね」

 

「「………!?」」

 

 カウレスの言葉に俺が若干気分がへこませていると、それまで死徒もどきの生き残りがいないか周囲を警戒していた頼光さんが口を開き、そんな彼女の言葉に俺とカウレスは思わず頼光さんを見た。

 

 マジかよ? 平安時代の京都ってばどれだけ危険だったんだよ?

 

「そ、それより親友? 目的の聖遺物は見つかったのか?」

 

 このままだと怖い想像をしてしまいそうだったので、俺は強引に話題を変えることにした。村にいた時は死徒もどきとの戦いや村からの脱出に気をとられていたけど、これだけ苦労して目的の聖遺物が手に入っていなかったらマジで泣くぞ?

 

「ああ、それなら大丈夫だ」

 

 そう言ってカウレスが俺と頼光さんに見せたのは、一本の古びたナイフだった。原作では確か、完全な人間の設計図とかだったはずなのだが、やはりここでは違う聖遺物のようだった。

 

 しかしカウレスってば一体どんなサーヴァントを召喚するつもりなんだ? 今まで何度か聞いてみたけど、誤魔化すだけで特徴すらも教えてくれなかったし……。

 

 だが、まあいいか。とにかくこれでカウレスもマスターとして聖杯大戦に参加することが決まって一安心だ。

 

 その後、俺達は「黒」の陣営の本拠地であるミレニアム城塞へと戻り、フィオレさんを初めとする他のマスター候補達も、それぞれ自分の聖遺物を見つけてミレニアム城塞へ戻ってきた。そしてそれをきっかけに、ダーニックは聖杯大戦を開始することを俺達に告げ、魔術協会に宣戦布告をするのであった。

 

 ……いよいよ原作が始まる。


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