2章ラストです。
曲「......さーや。」
ポピパの他の4人は怯えて声が出てない。そりゃ親友の1人が包丁持って登場して冷静でいられる方がおかしい。
悲しみの〜向こうへ...ってふざけてる場合じゃない。
沙綾「何してるの曲。まさか浮気?」
曲「う、浮気!?」
待て!そもそも付き合っていたのか?
トントンと一段ずつ降りてくる沙綾。蔵は地下だから逃げ場は当然ない。
曲「何...するつもりだ?」
落ち着いて会話しようにも口も震えて思った通りに喋れない。
沙綾「消すの。」
彼女は無表情で答える。
曲「消す...俺をか?」
沙綾「何言ってるの?あなたを消す理由がないじゃない。」
もはや口調も変わってる...
曲「まさか...」
不味いな...最悪俺を殺すつもりはないから警察に電話して時間を稼ぐしか...
携帯はどこやったけ?
しかしいくら探しても携帯は見つからない。
曲(しまった...バッグの中だ。)
ここで大声出しても興奮させるだけだ!
沙綾「だからどいて曲♪」
沙綾が初めて笑った。でもそれはいつもドキッとさせるものじゃなく、魔女みたいな不気味な笑顔だった。
少し振り返ってみるともう腰を抜かしてる。おたえだけは平然を装っているが、ビビってるのがバレている。後の3人は文字通りの真っ青だな。
沙綾「どいてよ曲。」
曲「どかないよ。」
沙綾「...邪魔しないでよ。刺しちゃうよ?」
曲「何がしたいか分かるからどくことは出来ないな。」
沙綾「ふーん...っそ。」
そして包丁を構えた沙綾は直立不動の俺に目掛けて走ってきた。
有咲「危ない!」
しかし気づいた時はもう沙綾は間近にいた。
『キャー!!!』
色々な悲鳴がこだまする。
下に目をやると包丁が体から生えてるように見えた。
あぁ......冷たいな、包丁って......
沙綾「曲......なんで......なんで避けなかったの!?」
沙綾は俺がヘタレだから避けると思い突進したんだろうな。
曲「お前を...犯罪者...にさせたく......ないし、大事な......友人を失わせたく...ないから。」
そもそも緊張して体が動かなかっただけなんですけどね。仮に動いてもどくつもりはなかったけど。
曲「なんで...こんなことするんだ?」
沙綾の耳に囁くようにしか喋れない。
沙綾「......ないと思ったから...」
曲「?」
沙綾「こうしないといけないと思ったから!」
そして彼女は哭き叫ぶ。
沙綾「あの時好きって言ってくれて嬉しかった!なのに断った!!ポピパに入る前と同じ...だった。だから、だからそんな私を殺してしまおうと!」
語る少女の瞳にはハイライトが灯っている。
それにしても読みが当たっていたとは...
沙綾「そして失望した曲を振り向かせようと、あらゆる接触をした。なのに曲は怯えるばかり!そして他の女の子と話してるとイライラして...」
そっか......不気味だからこその表現だったのか。嫉妬の矛先も俺以外関係なしまでと思うなんて...
曲「バカだな...さーや。」
沙綾「私は真剣にって...え?」
刺されると麻痺ってするんだな。
だから右手で沙綾の頭をくいっと自分に寄せる。
曲「俺はそんなちっぽけな男じゃないさ。そんなことで失望したりしない。さーやの事は嫌ったり、絶交したりしない。これが何よりの証明だよ。」
沙綾「私...やっと分かったよ、曲。」
彼女の目には涙が浮かぶ。
曲「これから恋人として...付き合ってくれるか?」
沙綾「うん......でも曲は...私が!」
そっか、もう死んじゃうのか。
さてどれぐらい出血したのかな?もう1回目を下にやると...あれ?出てない。
曲(そういえば血の匂いもしなければ生暖かくない。痛みもあまりないし...まさか?)
左腕を上に上げてみる。
カランカラララン
金属の音が蔵に響く。
一同「「「「「へ!?」」」」」
どうやら刺されてはいなかったらしい。体と腕に挟む感じで保っていた。なんと運がいいことでしょう!
冷たい感じはただ服1枚から伝わったわけで、麻痺も声が薄れるのもただの思い込みだったようだ。
曲「とりあえず...この包丁何とかしたいな。」
有咲「盆栽の土にでも刺しとく?」
曲「そうしてくれ。あまり刃物の部分は見たくないし、何らかの事故で刺さったらいかんからな。」
包丁を拾って、有咲が出した盆栽の土にぶっ刺す。これで大丈夫だろう。
沙綾「みんな、本当にごめん!」
ここから完璧な土下座と言える沙綾の謝罪タイムが始まった。
香澄「もう気にしすぎだってば〜」
りみ「あの時はビックリしちゃったけど、沙綾ちゃんが戻ってきてくれたからよかったよ〜」
改めて深い絆があることを知った。
殺されかけたのにポピパのみんなは沙綾のことを許してくれた。もうしないという約束もちゃんと結ばれている。
しかしまだ気まずい空気が流れている。ちょっと冗談も交えるか。
曲「そういえば誰かチビってないか?今なら『仕方ないよねー』って言ってみんなで掃除するだけで済むぞ〜。」
有咲「うちの蔵では辞めて欲しいんだが...」
たえ「実はちょっと...」
有咲「嘘だろおい。」
たえ「嘘。」
有咲がおたえに「お〜ま〜え〜は!」と言って噛み付いている。
怯えていたが、4人は信じていたんだろう。沙綾はそんなことしないって。
曲「これで一件落着かな?」
沙綾「そうだね。曲もごめんね...私が言うのもあれだけど生きててよかった...」
曲「終わったことは水に流す!いつまでも気にすんな!」
沙綾「うん!ありがとうまが...」バタン
曲「え?さーや?」
明らかに緊張が解けて気を失った倒れ方じゃないぞ。
曲「さーや?おい、さーや!」
呼び掛けても反応をしない。呼吸はしているけど顔色が良くない!
曲「さーや!しっかりしろ!」
声でポピパの4人も異常事態に気づく。
香澄「さーや、大丈夫!?」
りみ「沙綾ちゃんしっかりして!」
有咲「沙綾!返事をしろ!」
たえ「さーや!」
しかし反応をする気配がない。
曲「まずいな......早く救急車を!」
最近の文字数から見て今回は少なめでしたね。申し訳ないです。
さて2章も終わりいよいよ最終章です。3章は2章よりも短い予定にするつもりです。何とか完走しそう笑
それでは次回もお楽しみ