「「やなかんじー!(にゃー)」」
倒したロケット団が窓から逃げて行った。ここ結構高いのに大丈夫なのかなと心配になったりもする。
「ん? 今、なにかあの二人と一匹の声に混じって、誰かの悲鳴が聞こえんかったかね?」
私がなんとか二人組のロケット団をポケモンバトルで倒すと、フジ老人がそう言った。
「そうですか? あ! おじいさん。むこうにボクの知り合いが戦っているはずなのでここで少し待っててもらえますか? かなりの数のロケット団がいたからもしかしたら苦戦しているかも」
「わかった。ワシはこのカラカラとここで待っているから気にせず行っておいで」
「はい! カラカラ。おじいさんをお願いね」
「きゃう!」
カラカラもバトルで傷ついているのに、それでも私の言葉に力強く頷いてくれた。お別れできたといってもまだおかあさんが亡くなったばかりなのに……強い子だ。私も頑張らなくちゃという気持ちになる。
私はイエロー。前に私が住んでいるトキワの森で出会ったレッドさんというポケモントレーナーに憧れて、十歳の誕生日にトレーナーの資格を取り、マサラタウンのオーキド博士にポケモン図鑑をもらって旅だった新米トレーナー。
パートナーは故郷のトキワの森で出会ったピカチュウ。私はこの子と一緒に憧れのレッドさんが歩んだ旅路を歩んでいる。
故郷から旅に出ていた途中で辿り着いたこのシオンタウンで、私は行方が分からないというフジ老人を探しにポケモンタワーに入った。
フジ老人が見つからないままタワーを登り、後は最上階だけになったので最後の階段に行くとそこにはゆうれいがいた。その正体はロケット団に殺されたと言うガラガラの霊だとわかった。さらにその場にはそのガラガラの子供のカラカラがいた。
突然だけど、私はポケモンの心が人よりもわかる。肉体を失って幽霊になったからなのか、ガラガラの霊の気持ちは特に鮮明に、その哀しみと怒りがわかってしまった。
私はカラカラと一緒になんとかガラガラの霊を鎮めて最上階に着いたのだけど、そこにいたロケット団に囲まれてしまい、追い詰められていたのがさっきまでの出来事。
でもそんな時、故郷のトキワの森の近くにあるトキワシティのフレンドリィショップで店員をしているお兄さんが助けに来てくれた。
あのお兄さんは私みたいにちょっと街から遠く、加えて野生のポケモンが多い不便なところに住んでいる人にもしっかりと商品の配達をしてくれるとても頼りになる人だ。あの人のおかげで私も含めて助かっている人は多い。あとは働く姿が結構かっこいいからと一緒に働きたくてあのショップにアルバイトを申し込む女の人が多いとも聞いた。
連れているポケモンともとっても仲良しで街の人にも慕われている、尊敬できる人だ。だからあそこを任せてしまったけど。
(ポケモンたちもしっかり育ってたけど、相手はあの数だったし……大丈夫かな?)
そんな心配をしていた、しかし私が彼の元に辿り着いた時には既に店員のお兄さんは勝利していた。
「店員さん!」
「おおイエローちゃん。事情はこいつらから聴きだした。あっちにも二人いたらしいけど無事だったか。良かった」
私の方を見て笑顔で話しながらも、その手で倒したロケット団の連中を念入りに縛り上げている。一人だけ何故かやたらとボロボロな人がいるけど。どうしたのだろうと私は気になったけど、今は店員さんだ。
「はい! カラカラが手を貸してくれたのでピカチュウと一緒になんとか。そちらは大丈夫でしたか?」
「ふふ。見ての通りだ。これでもまだまだ鍛えているからな。その辺の輩には負けないさ」
「ほえー」
前に釣り人をやっているおじさんに連れられてフレンドリィショップに行った時、そこにいた店長さんに聞いた話はどうやら本当だったらしい。なんでも彼は昔はジムバッジもいっぱい取った凄腕で、今でもカントー四天王と互角以上に戦える実力者だって話。正直四天王は話を盛り過ぎだと思う。
「さて、みんなダメージはないな? よし。よくやった。じゃあボールに戻ってくれ。ではフジ老人のところに行こうか。ああイエローちゃんの手持ちはダメージを受けてないかい? 治療するよ」
店員さんは自分の手持ちを労った上で私のポケモンも気にして、私のポケモンもしっかりと治してくれた。やっぱりこの人は優しい。もしかしてポケモンに命令してあのロケット団に酷い事をしたんじゃと思ったけれどきっと勘違いだろう。
「お久しぶりですねフジさん」
「ん……ああ君か。懐かしいな。すっかり大人になって。カツラと一緒に君に出会った日から確かもう七年になるのか。君に助けられたのはこれで二度目だ」
「あの時は中々大変でしたね。死ぬかと思いましたよ」
フジ老人と店員さんは顔を合わせただけでお互いに懐かしそうな雰囲気で笑った。
「お二人は知り合いなんですか?」
「まあ昔は俺も旅をしていたからね。シオンにも寄ったよ。この街で会ったわけじゃないんだけど……まあそれはいいかな。フジさん。家の人が心配していましたよ。帰りましょう。俺たちで送りますから」
「そうか……心配をかけてしまったか。いや。だがまだ帰れない。荒れてしまったここを少しでも綺麗にしなければならん。私はそれが終わってから帰る」
フジ老人はそう言ってお墓の手入れを始めてしまった。そして私は気づいてしまった。
「あの……店員さんは先に戻ってお家の方に無事だったって伝えてもらえませんか? ここのお墓を荒らしたのは多分私なのでお手伝いしてから追いかけます……」
床の焼け焦げたような後はきっとでんき技。他にもロケット団のポケモンとの戦いで傷ついたであろう傷がちらほら見えた。
さらに店員さんのポケモンが戦った後と私が戦っていた時、この場所の状況が覚えている限りでほとんど同じだ。あの人は不利な状況でもこの場所を荒らさない様に戦ったのだ。それはどれほどの技量がトレーナーとポケモンにあるかを明確に告げていた。
「私が未熟だったから……こんなボロボロに……」
「……それは否定しない。きっと君がもっと強ければこの場所の被害は少なかっただろう。でも、例え戦い方が拙くても、誰かを救う為に戦ったというのは誇るべきものだ。その行為の価値が損なわれることはない。そう落ち込まないでいいんだ。争い事が苦手なのは知ってる。がんばったね」
「はい……でも……」
私が言葉を続けようとしたら店員さんは私の頭に何かを乗せるように手を置いた。
「あ……麦わら帽子」
それは私の麦わら帽子だった。いつの間にか落としていたらしい。
「そっちに落ちてたぞ。大方どこぞのませたお嬢さんに『女とばれたら舐められる』とか言われて被ってたんだろ? オーキド博士なんかは引っ掛かってたぞ。効果はあるからちゃんと被っておきな」
「いえ。それは私のおじさんから『お前も旅に出るのか! ならこれ持ってけ! なんでも旅する子供に良い帽子を被せて送り出すのが流行ってるらしいからな!』って言われて無理やり」
確かに身を守るために知らない人の前では自分のことを私ではなくてボクと言っているけど、旅で出会った人はみんな良い人なのでこの言いつけを守る必要があるか最近は怪しくなってる。ロケット団は相手が誰だろうと襲ってくるみたいだし。
そういえば帽子と言えばレッドさんも、それと私が一緒にポケモン図鑑を貰った時に一緒だった女の子も帽子を被っていた。よかった。田舎者だけど私は流行に乗れているみたいだ。
「それまだ流行ってたのか……ごほん。とにかくいいかイエローちゃん。建物まるごとぶっ壊したとかならともかく、ちょっと傷つけたくらいなら大丈夫だ。後できっちりと掃除すれば許してもらえる。なにより……ここで眠るポケモンたちだって自分の墓が傷ついてでもフジ老人とカラカラが助かることをきっと望んだだろう。ここでは嫌な感じもしないだろ? フジ老人も俺たちに手伝えと言わなかったのはそれを理解しているからだ」
店員さんは帽子についての話を聞くと苦虫を噛み潰したような顔をしたけど、すぐに真面目な顔で私にそう言った。
確かにここにはガラガラの霊と向かい合っていたような嫌な空気はない。とても安らかな空気に包まれている気がした。それはここで眠る彼らに許されているように感じた。
店員さんは私の背中を押しながら言った。
「さあ! 弱いのが嫌なら俺が面倒見てやろう! 荒らしたのを気にするなら一緒に謝るし、掃除もしてやる! だから……また誰かが困っていたら力になってあげなさい」
「……はい!」
私たちはフジ老人を手伝うために彼のところへと駆け寄った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「エイジュさんのお母さんが作ってくれたご飯美味しかったです! ごちそう様です!」
「まあありがとう! エイジュちゃん! イエローちゃんいい子ねー! ずっとウチにいてもいいのよー!」
エイジュさんのお母さんはとっても優しい人でした。私にもよくしてくれます。
「ずっとはないけどひと月くらいはいるかも。父さんもいいよね?」
「…………(こくり)」
「ありがとうございます! お世話になります!」
お父さんは身体が大きくてあんまり喋らない……というよりこちらの言葉を喋れない人らしいですけど、優しそうに笑う人でやっぱりいい人そうです。髪の色や体格は親子だからかエイジュさんに似ていました。
「嬉しいわー。今度一緒にお買いものとか行きましょうね! ああ! やっぱり女の子も欲しかった。ねえパパ?」
「…………」
お二人はお母さんはカントーの人でお父さんがイッシュ地方の人みたいだけどそんなことは関係なしにとっても仲良しでした。それとお父さんの方は昔どこかで軍人さんだったらしいです。今でもカントーにいる昔の仲間と仲良しだと教えてもらいました。
「俺らはあっちでポケモンといるから。お好きにどうぞ。行こうかイエローちゃん」
「あっはい」
「さて、どうやって鍛えようか?」
「なにか考えがあったんじゃないんですかエイジュさん?」
私たちはあれからロケット団を街の人に任せてからシオンタウンを出て、店員さん改めエイジュさんのお家のあるというタマムシシティへと来ていた。実は今まで名前を知らなかったというのはなんとかバレなかったみたい。よかった。流石に失礼だもんね。もう何年もショップにはお世話になってるのに名前を知らないなんて。
エイジュさんの実家にお邪魔させてもらった私とポケモンたちは余っていたお部屋に泊まらせてもらい、今はそこで今後の話をしていた。
「そりゃあいくつもあるが、実は今は――」
エイジュさんは私にポケモンのけづくろいのやり方を教える手を止めて、私に話してくれた。
彼は今現在、私の故郷でもあり彼の職場であるトキワから離れて、このタマムシでシルフカンパニーの一員としてロケット団と戦っていることを。
「そうだったんですか……それなら私も!」
力になりたい。そう思った。
「助けてあげろと言ったし、その気持ちも嬉しいが今の君では戦力として頼りない。概算で戦力比がかなりあちらに傾いているからね。せめてあの場のロケット団くらいは一人で制圧できないと戦いに連れてはいけない」
「そう……ですよね。すいません」
私はそもそもバトルが好きじゃない。あくまで私の旅の目的は憧れの人の足跡を追いながら、オーキド博士に貰ったポケモン図鑑のデータを集め、のんびりと自分の住むカントーを見て回り、見聞を深めること。レッドさんたちのようにバッジを集めたり、その先のポケモンリーグを目指してたりもしていない。バトルを目的としていないのだ。
それでもポケモンを悪用している悪い人を許せない気持ちがある。その為なら戦うことだって辞さない気持ちだ。
そんな逸る私の心を見透かしたのか、エイジュさんは私を諭した。
「俺も社長に言われたことだが……この戦いは当然だが自分よりもポケモンが傷つく可能性の方が高い。イエローちゃんもその気持ちは大事なものだけど、戦った時に自分のポケモンたちがどうなるか、そういうことをよく考えるんだ」
私は大事なことを忘れていた。戦うのを決めるのはトレーナーである私でも、実際に戦って傷つくのはポケモンたちだ。
「! そうですね。大事なことを忘れていました。ごめんなさい……どうしようか、みんな」
私は自分のポケモンの入っているモンスターボールに触れた。みんなの気持ちが伝わってきた。
トキワの森で出会ったピカチュウとコラッタはずっと一緒にいたからか私と同じ気持ちだ。そしてポケモンタワーからついてきたカラカラは母親がロケット団に殺されたから誰よりも戦いたがっているのが伝わってきた。
私とみんなの気持ちは一緒だった。それは嬉しい。でもさっき言われた言葉が胸に残っている。みんなには傷ついてほしくはない。すぐに治療してもらえたけど、きっとポケモンタワーでのバトルだってみんなは痛かったはずなんだ。
そう思うと私はどうすればいいのかわからなくなった。
それを察してくれたのかエイジュさんは私にアドバイスをくれた。
「それならやはり強くなろう。実際にその時に間に合うかは別として、こんな状況を知っているのに何もしないよりはきっといいはずだ。旅の助けにもなるだろう」
「私にバトルを教えてくれるんですか!?」
エイジュさんのバトルの腕は直接見たことはないけれど、相当なものだと思う。そんな人に教えてもらえるなら私たちはきっと強くなれる。エイジュさんのようにできるだけ多くが傷つかないような、そんな戦いもできるようになるかもしれない。
しかし私の思いに反して、彼の答えはノーだった。
「いや、さっきも言ったけど俺は仕事があるからそんなには付き合えない。休みも増えたけどそれでもやっぱりいない方が多いからね」
「じゃ、じゃあどうやって強くなればいいんですか?」
せめて少しでも強くなりたい。
「大丈夫。俺以外の強いトレーナーに教えを乞うという方法はある。例えばピカチュウ好きなタフガイとか知ってるし。だけどイエローちゃん。君は戦闘の基礎そのものが出来ていないと俺は考えている。だから君が行くべき場所はここだ」
「ここは……?」
指し示したもの。それは……
主人公エイジュくんのグレンへの移動方法模索エピソードを早めるかについて(3~5はネタ選択肢ですが結果は考慮します)
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1 本来の想定の時期で!
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2 いいよ早くこいよ!
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3 そんなことよりヒロインだ!
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4 そんなことよりポケモンだ!
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5 そんなことより労働だ!