何もかもダイスの女神に任せたらとんでもない主人公ができた 作:塩谷あれる
とか言ってますが、今回そこそこ難産でした。
(しかし…やっちったなぁ…)
彼専用のヒーローコスチュームを纏いながら、蓮田は髪の無い頭をカリカリとかいた。彼の悩みの種は、言うまでも無くそのコスチュームである。
(材質とか強度とか…それ以外にもある程度頼んどきゃ良かった…)
彼が纏っているコスチュームは、彼の愛用(?)する黄色いフードのような物と同カラー、つまり黄色いぼろ布のようなローブ、ただそれだけだった。強いて言うなら、裾や袖に暗紫で幾何学的というか、ファンタジー世界の魔方陣のような模様が編み込まれてはいるが、それを差し引いても酷い。しかもそれが似合ってしまっているのが辛かった。
(俺は物語かなんかに出てくる悪い魔術師さんかってーの…あー畜生、デザインはお任せ、とかするんじゃなかった)
「おぉ蓮田…って、お前その格好…!」
「言うな、わかってるから」
「お、おう…」
「なんかファンタジー物に出てくる魔術師みてぇ」
「うっせぇ言うなっての…言っとくが俺のセンスじゃねぇからな?」
切島や上鳴が声をかけてくるが、反応はやはり微妙な物だった。仮面も相まってやはりヒーローのようには見えないようだ。
「良いじゃないか皆、カッコイイぜ!!」
そんな蓮田の憂鬱を他所に、オールマイトは二十一人の生徒を見渡して(緑谷に視線を移した途端に吹き出したが)そう言った。
「さァ、訓練の内容を説明するよ!本来ならここは市街地演習、早い話が屋外訓練のためのエリアなんだが、今回は更にその二歩先に踏み込む!つまり、屋内での対人訓練さ!」
屋内での対人戦闘、詳しく言えば、ヒーローチームとヴィランチームに分かれ、それぞれ2対2で戦うという物だった。ヒーローチームの勝利条件はヴィランチーム二名の拘束またはヴィランチームが隠し持つ核(勿論ハリボテ)の奪取。ヴィランチームの勝利条件は逆にヒーローチーム二名の拘束または制限時間の間、核を守ること。何ともアメリカンな背景設定だった。因みに今回、と言うより今年度は特例によって1チームだけ3人となることになった。
「コンビ及び対戦相手の選出方法は…クジだ!」
「適当なのですか!?」
意外にもフラットな選び方に思わず飯田がツッコミを入れるが、そこに緑谷が補足を加える。蓮田のペアは、と言うと…
「お、よろしくね。蓮田」
「耳郎か、よろしくな」
朝のイヤホンジャック少女、耳郎だった。
(当たりたくないのは相性的にBチームか三人チームのCチーム、あとは、まぁ
他のチームも決まっていくのを見て、ある程度の分析を行う蓮田だったが、耳郎との相性なども考慮に入れるべき今、自分だけの相性のみで考えるのはよくない、と考え直して思考をリセットする。その間に第1試合の組み合わせが決定していたらしい。
(A…ってことは緑谷か…爆豪とはあからさまに確執ある感じだったし…あー、こりゃ泥沼確定ですわ…)
心の中で緑谷に念仏を唱えるのと同時に、自分が当たらなくて良かった、と安堵する蓮田。蓮田も蓮田で、一方的に爆豪から強い敵意を向けられているため、対処は楽だとしても面倒なことになりそうなのが目に見えていたからだ。
「それでは始めるぞ!ヴィランチームは先に入ってセッティングを!」
音すらもねじ伏せるような一撃、そんな表現が似合いそうなほどに強力な爆撃の影響は、地下のモニタールームにまで届いていた。瓦礫と化したビルの外壁が落ちる音と、僅かな揺れを感じて、蓮田は改めて当たらなくて良かった、と安堵の溜息を吐く。
(ビルの外壁を吹っ飛ばす一撃…俺自身の身は守れても耳郎を守れるかって言ったら、まぁ無理だったな、こりゃ…範囲も威力も桁違いだ)
自分の身を守るだけなら、“皮膚鉱化”で体をダイヤにでも包めば良い。だが耳郎を守る、となればそれは難しいだろう。風を使った防御壁でも張れれば良いが、それも今一強度には欠ける。
(しかもあの格闘センス、体の使い方…まともにやり合ったら多分ヤバかったな)
「才能マンって奴か…やだやだ」
「だろうな…んで、それを自覚してるからこそのあの言動な訳だ」
上鳴のそんな言葉に、呆れたように蓮田は返す。その間にも、モニターの中では、爆豪が緑谷に対して一方的とも言える攻撃を続ける。
「リンチだよコレ!テープ巻きつければ捕らえたことになるのに!」
「ヒーローの所業に非ず…」
爆豪の行動に一同は騒然とする。一方的なまま続くかと思われた戦いは、二人の言い合いによって終わる。そしてその直後────
「まぁつっても…今戦のベストは飯田少年だけどな!!!」
「なな!!?」
二度の破壊音に包まれて、戦闘訓練の初戦は終わった。その後の反省会でオールマイトがしたのは、名指しされた本人も驚く飯田のベストプレー発言。その理由は簡潔に言えば、“他三名のヒーローらしからぬ行動”が原因だった。説明を丸々八百万に奪われ悔しがっているオールマイトを尻目に、蓮田は
(何かの確執があんのは目に見えてはいたが…いやしかし、あそこまで酷いもんとはな…爆豪の奴、親の仇みたいな勢いで殴りに行ってたし…まぁ、無理に詮索すんのも良くないか)
と、そんなことを考えていた。
「ま、まぁ!気を取り直して次の組み合わせに行こう!次のチームは…」
オールマイトがくじ引きの箱に手を入れる。取り出したのは…
「ヒーローチームはG!ヴィランチームはCだ!」
やはりと言うべきか、蓮田のチームのボールだった。
(おいおいおい、もう俺かよ…もうちょっと他の試合見てからにしたかったんだけど…しかも相手三人だし)
相手は峰田、上鳴、八百万の三人チーム。数の不利をどう解消するかが決め手となる。蓮田はそのことを理解し、いつも通り面倒そうに目を薄めたが…
(ま、あんな激戦の後なんだ、格好つかねぇのは良くねぇやな)
すぐに思考を改めて、耳郎と共に地上へと出て行った。
蓮田の唐突な爆豪アゲはあくまで技術面のみで勝負した場合であり、あろうことかこの邪神STRやDEXを始めとする基礎ステータスはまるで度外視してます。神話生物のステータスでやり合ったら流石の『才能マン』も…ほら、ね?
加えて別に蓮田は爆豪よりも技術面で劣ってるわけじゃないです。詳しくは次回辺り。