暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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祝・本編100話!

こんな拙作を応援してくださって本当にありがとうございます(__)


#100 オノオノ×ニ×チカラヲ

 アモンガキッドと戦った翌日。

 

 ラミナはノヴの能力で、ロカリオ共和国の【クウェン市】のホテルに移動していた。

 

 そして、手当を終えたラミナは、

 

ガッガッガッ!!

ズルルルルルゥ!!

ガジュブチチィ!!

ガチャガチャ!!

ゴッ! ゴッ! ゴッ!

 

 タンクトップ短パン姿でホテルの部屋にて、物凄い勢いで大量の料理を掻き込んでいた。

 ルームサービスで運ばれてきた料理はあっという間に消えていき、テーブルどころか、床にすらも大小様々な皿が物凄い勢いで重ねられていく。

 

 ノヴから『対応を頼む』と頼まれてしまったスタッフ達は、顔を引きつかせながらバケツリレーの如く料理の乗った皿と空になった皿を際限なく運び込んで、運び出していく。

 

 すでにホテルの厨房はラミナに出すための調理で手一杯となっており、他の客はホテル内での食事が不可能になってしまっていた。

 本来ならそんなことは断るホテル側だが、ハンター協会会長の伝手ということと代金は言い値払い一括で払うと言われているため、頷いてしまったのが運の尽きだった。

 

 何が恐ろしいかというと、すでに楽に40人前は食べているのに腹が膨れる様子が一切ないということだ。

 ほとんど噛まずに、流し込んでいるに等しいというのに。

 

 バラエティ番組でやっている大食い早食い選手権でも余裕で優勝できると、スタッフ達は考えて現実逃避をしていた。

 

ガシャン!!

 

「プハーー!」

 

 空になった丼と箸を乱暴に置いて、ラミナは大きく息を吐く。

 

 それにスタッフ達がホッと一息つき、厨房にもう調理はいいと連絡する。

 

 体力と傷の回復のためと、そしてまたNGLに行けばまともに飯など食べてる場合ではなくなるのでその食い溜め。

 

 十分な栄養摂取を終えたラミナは布で汚れた口元拭って、立ち上がって身体を伸ばす。

 

 その間に、また注文されてはたまらないスタッフ達が物凄い速さで皿を回収して部屋を後にした。

 その様子を気に留めることもなく、ラミナは体の調子を確認していた。

 

(……明日にはほぼ完治やな。体はこれでええやろうけど……)

 

 問題は護衛軍をどう倒すかだ。

 

(【天を衝く一角獣】を防ぐのに軍団長2匹、うちを追撃するんに1匹。けど、【円】が消えたのは1分足らずやったらしいから……。つまり、【円】を使うとるんはあの猫みたいな奴で、念獣が蛇蟻っちゅうことか。あの一瞬でも、女王から離れたんやから、もう1匹は軍団長がおると考えるべきやな)

 

 最低3匹いる軍団長。

 

 それで打ち止めなのか、まだいるのか。

 これだけで大きく討伐の成功率が変わる。

 

(ぶっちゃけ……女王だけ殺せても、あの軍団長をほったらかしに出来んやろうなぁ。ジンの話では、確か女王が死んだら兵隊蟻も生殖能力を持つらしいし)

 

 つまり、下手したら軍団長3匹がバラバラに世界に散る可能性がある。

 今の女王蟻よりよっぽど厄介な巣が最低3つ出来る可能性があるとなると、世界は間違いなく大混乱だ。

 

 しかも、ここからならヨルビアン大陸に最も被害が出る。

 

 そうなれば間違いなく流星街やラミナの隠れ家も巻き込まれるだろう。

 

「はぁ……結局尻拭いでクロロやマチ姉達に動かされそうやな。ハンター協会も変なこと言うて来そうやし」

 

 流石にここまで関わって、王が産まれてキメラアント達が散り散りになったからといって『依頼失敗で終了。さいなら』と言える心情にはならない。

 それが理想なのはわかっているが、それでもし流星街にキメラアントが現れれば、ラミナの責任にされかねない。

 

 ハンター証を持っている以上、ハンター協会は『ラミナはハンターとして行動した』と判断して難癖をつけてくる可能性もある。

 ネテロが庇おうとしても、今の状況を考えれば失敗したことを責められて発言力は地に落ちるだろう。

 

 もちろんハンター協会にも責任はあるが、どう考えても国の上層部などはネテロ達実行部隊に全ての責任を押し付けることを後押しするに違いない。

 なので、結局ラミナが面倒事に巻き込まれるのは間違いない。

 

 それが幻影旅団の仕事に影響が出れば、その尻拭いもラミナがしなければならない。

 ラミナも自分の責任もあると分かっているので、尻拭いに動くだろう。

 

 結局失敗した場合、ラミナが地獄を見るのはもう決定事項なのだ。

 

 ここで女王と軍団長を殺さない限り、ラミナに平穏はない。

 

 怖い姉に首に念糸を巻かれて、犬のように働かされるに決まっている。

 

「はぁ……」

 

 ラミナはため息を吐いて、服を着替える。

 ノヴは明日の朝に迎えに来る予定なので、それまでは自由行動となった。

 

(キルア達は隣のドーリ市か……。大真面目にやっとれば、そろそろ決着つくと思うんやけど。キルアは悪癖さえクリア出来とったら、ナックルはともかくシュート辺りには勝てると思うけど、ゴンは厳しいやろうなぁ。順当で行けばナックルとキルア。ただ、キルアがゴンを置いて行く気はないやろうから、結局ナックルとシュートがNGLに来るか? まぁ、その前にナックルがゴン達のことを気に入ったら、話は別やけど)

 

 ナックルがいつ全力で戦うかが大きな分かれ目だろうとラミナは考える。

 

 ナックルの能力【天上不知唯我独損】は、時間切れになると相手を一か月間【絶】状態にする能力だった。

 

 ラミナと戦った時より実力は上がっていると推測すると、ゴンはほぼ確実に勝てない。

 キルアは【発】次第だが、五分五分と言ったところだろう。

 

 では、ゴンとシュートの組み合わせはどうかと言うと、やはりゴンが厳しいだろう。

 確かにゴンの成長率と潜在能力は凄まじい。だが、それでもシュートの経験と実力に勝るほどではない。

 

 ナックルよりはいい勝負をするだろうが、倒す前にシュートの能力で決着がつくだろう。

 

 つまりゴンがNGLに来る可能性は、奇跡と呼べるほどの確率しかない。

 

(まぁ、ゴンがジンの弟子のことを話したら、ナックルは絆される可能性はあるやろうけど)

 

 その場合、期限ギリギリまでゴンとの組み手に付き合う可能性はある。

 というか、ほぼ確実にそうなってるはずだ。

 

 カイトの事を話す必要もなく、ナックルならばゴンのひた向きさに絆される。そして、キルアはそれに合わせるはず。

 ならば、ゴン達は期限ギリギリまで決着がつかないと考えるべきだ。

 

「まぁ……はよ来られても殺す殺さんで面倒な問答になるやろうからな。それならそれでええか」

 

 それに実力的に軍団長の相手はさせられない。

 死なれたらジンやゾルディック家一同にまた面倒なことを言われそうで、ラミナも集中できない気がするので来てほしくないのが本音である。

 

 ラミナは街に出て、散歩がてら武器屋を回る。

 手持ちではアモンガキッドのピット器官に対応できる能力を持つ武器がないからだ。

 

 唯一可能性があるのが【天を衝く一角獣】だ。

 しかし、一度見せてしまった武器が通じる程甘くはないだろう。

 

 なので、新しい能力を付与できる武器が見つけたいと思っていた。

 

 街の路地裏にある武器屋に足を進める。

 最初の店に入って、品を見渡すが特にオーラを纏う武器はなかった。

 

 次の店に向かい、薄暗い店の中に入る。

 

「ん?」

 

 すると、壁に建て掛けられている偃月刀が目に入る。

 

 偃月刀は間違いなくオーラを纏っていた。

 オーラの量を確認して、十分能力が付与できると確信したので、偃月刀を買う。

 

 他の店も全部回り、いくつかオーラ持ちの武器を購入する。

 一度ホテルに戻って、早速【刃で溢れる宝物庫】に武器を納めて能力を付与していく。

 

 その後はまたホテルを出て、食事に向かう。

 そこでも大食いを発揮して店員と周囲を驚かせるが、ラミナは気にすることなく満足するまで腹を満たす。

 

 再びホテルに戻って、休む準備をしながら携帯でメールを打つ。

 

「……ま、一応保険は用意しておくべきか。アルケイデスは携帯持っとらんから、うちじゃ連絡しようがないし……」

 

 メールを送り終え、寝る準備をしていると電話が鳴った。

 

「誰や?」

 

『ふはははは! 久しぶりではないか! 〝刃花(じんか)の紅玉〟【セクメト】よ!」

 

 電話に出た直後、高笑いと独特な呼称で呼ぶ声が響く。

 ラミナは呆れながら、

 

「ええ加減その厨二臭い呼び名やめろや、【シーフ】」

 

『そちらこそいい加減に憶え給え! 私は〝不止(ふし)の暗艦〟【アーク】だとな!!」

 

「盗賊兼運び屋のお前にそんな大層な名前つけるかい」

 

『相変わらず辛辣だな! それにしても随分と噂になっているぞ? 〝両儀の蜘蛛〟の一足となって大暴れしているとな!』

 

「まぁな。んで、電話してきたんはさっきのメールのことやんな?」

 

『そうだ! 時期も不明、場所もバルサ諸島近辺と非常に曖昧だったのでな!』

 

「今、厄介事に巻き込まれとってな。もしかしたら、お前の移動能力が必要になるかもしれんと思っとるんよ」

 

『……ふむ。それはアレか? ハンター協会会長……〝修羅の謫仙(たくせん)〟【バアル】がNGLにいることと関係しているのか?』

 

「やから、分かりにくいっちゅうねん。まぁ、それやねんけど(相変わらず情報収集能力とかは凄いのに、絡み辛いやっちゃな)」

 

 油断出来ないほどに能力が高いのに、厨二病チックな呼称や口調が妙に調子を狂わせるのだ。

 

『つまり、〝修羅の謫仙〟や其方が殺し損ねる何かがいると? 【裏のNGL】の王〝餓虎の影主(えいしゅ)〟と連絡が取れなくなったことと関係があるのかね?』

 

「あるある。そいつら壊滅したで。下手したらNGLそのものが壊滅するかもしれへん」

 

『……〝万慾の坩堝〟サザンピースで見つかった異常な大きさの昆虫と思われる足と関係あるのかね?』

 

「ホンマに流石やな。大当たり。人間サイズのキメラアントや。それがNGLで暴れとる。人間を喰うてな」

 

『……なるほどな。いいだろう。一月ほど近辺で警戒しておこうではないか』

 

「助かるわ。んで、今【チャリオット】にも連絡しとるんよ」

 

『ほう! 〝金剛傀儡〟【ゴーレム】か! いいだろう! 彼の者と協力すればよいのだな!』

 

「向こうがオッケー出せばな」

 

『私からも連絡してやろう! 報酬は如何程だ!?』

 

「相手次第やな。まぁ、とりあえず参加だけで3億。その後に殺した相手で増額でどうや?」

 

『いいだろう! では、縁があればそちらで会おう! ふはははは!』

 

 高笑いして通話が切れる。

 

 それにラミナが小さくため息を吐いて、

 

「あいつの情報収集能力は怖いところがあるでなぁ。あんまり関わると、うちの隠れ家もバレそうなんやけど……。背に腹は代えられんからなぁ」

 

 基本単独で活動している盗賊兼運び屋だけあって、情報収集能力と移動能力が非常に高いのが【シーフ】の売りである。

 

 しかし、それ故に下手に仕事を依頼すると見せたくない腹の中までいつの間にか見られるので、非常に扱い辛い存在でもある。

 依頼が終わったら、その情報を元に逆に盗みに入られることもあるので、要注意人物なのだ。

 

 今回は拠点などは一切関係ないので、探られて困る腹はないから問題ないが。

 

「まぁ、これでもしNGLから逃げ出した奴が出たら、すぐに追えるようになるやろ」

 

 ラミナは自分が出来る備えをして、戦力を集めるのであった。

 

 

 

 ドーリ市。

 

 今夜もゴンとナックルは勝負を始めていた。

 

 しかしラミナの読み通り、ゴンは積極的にナックルへと攻めかかるが、簡単にあしらわれていた。

 

 ゴンがナックルに殴りかかるが、ナックルは軽やかに躱してゴンの横に回り込んで殴り返す。

 

「オラァ!!」

 

「ぐぅっ!」

 

 ゴンは真横に吹き飛んで、地面を滑りながら体勢を立て直す。

 

 ナックルは追撃せずに肩を回しながら歩み寄っていく。

 

「相変わらず軽ぃなオイ!」

 

「くっ……! (一撃一撃が本当に重い……!)」

 

「あの女はオメェに戦い方までは教えなかったようだなぁコラ。オメェは俺より小せぇし、体重も軽い!! 確かに人間の急所は上半身に集まってるが、そこを狙ってくると分かってりゃあ、カウンターでオメェは攻撃に耐え切れずに簡単に吹き飛んで、ダメージを受け流すことも出来ねぇ!!」

 

 ビシィ!!とゴンを指差しながら指摘するナックル。

 

 その指摘に、ゴンとキルアは天空闘技場でヒソカ戦の後にラミナに叱られたことを思い出した。

 

(うっ……。そういえば……飛び跳ねすぎッて言われてたっけ)

 

(あぁ……ヒソカの時にスゲェ項垂れてたっけ。やべ……俺もすっかり忘れてた)

 

 天空闘技場でのヒソカ戦以降、実はゴンが本格的な戦闘をしたのはゲンスルー戦だけだったりする。

 

 その時はビスケもキルアも、ゴンの戦いは見ていないため、その弱点に気づかなかった。

 さらに付け加えれば、ビスケもキルアもゴンと身長も体重も変わらないため、2人との組み手では身長差と体重差の弊害が出なかったのだ。

 

 ゴンはゲンスルーとの戦いでも、序盤は何度も吹き飛ばされたことを思い出した。

 

「オメェの【堅】はスゲェ。それは疑う気もねぇし、素直に尊敬する。身体能力も、思い切りの良さもな。だが、オメェの身体は年相応!! 今のオメェはそのオーラ量と強化系の特性、そして天性の直感で俺の攻撃を耐えられているだけにすぎねぇ!!」

 

「ぐっ……!」

 

「そこから更に強くなるために必須なのは『経験』! 確かに死線も何度か乗り越えてんだろうが、それでも念での戦いはまだまだ足りてねぇのが丸わかりだコラァ!!」

 

「……そんなのは分かってる」

 

 ゴンは再び構えて、まっすぐにナックルを見据える。

 

「だから、今戦ってるんだ!!」

 

 そう叫んで、ナックルへと駆け出す。

 

 ナックルはそれに不敵な笑みを浮かべて迎え撃つ。

 

 ゴンが殴りかかるが、ナックルは半身になって躱しながらアッパー気味に拳を繰り出して、ゴンの腹部に叩き込む。

 ゴンは両脚で踏ん張って滑り下がり、すぐに飛び出そうとしたが、ナックルの前蹴りが飛んできて両腕を交えて防ぐも、また後ろに滑る。

 

 その時、ナックルの姿が消える。

 

 ゴンは背後かと目を後ろに向けようとしたが、

 

「こっちだボケェ!!」

 

 左から声と同時に拳が飛んできて、ゴンの左脇腹に突き刺さる。

 

「がはっ……!?」

 

「ゴン!!」

 

「ぐぅ……!!」

 

 数回地面を転がったゴンは跳び起きて、右手で左脇腹を押さえて軽く咳き込む。

 

 ナックルは腕を組んで仁王立ちをして、余裕綽々で待ち構える姿勢を見せる。

 

「言っとくが、あの女は本気の俺より少し速ぇし拳も重ぇぞコラ。それにあの女の攻撃は武器が主体だ。生身で防ぐことなんざ、まず不可能。今のオメェじゃ10秒も保たねぇ」

 

(なんだかんだで、ラミナを褒めるんだな。まぁ、俺達の師匠だからってのもあるんだろうけど。実力は認めてるって言ってたし)

 

 キルアは僅かに呆れながらも、ナックルの言葉は自分にも当てはまることには気づいていた。

 

 確かに今のゴンはどんどん成長しているが、それはあくまで『ナックルに対して』の成長だ。

 もちろん、この成長は他の相手にも通用するものに昇華するだろうが、ラミナのように具現化した武器を使ったり、ゴレイヌやレイザーのように念獣を使う相手に対する戦闘経験はゼロだ。

 

(キメラアントはまだそんな能力を使う奴は少ないだろうけど……。元々の能力が全体的に高いから油断は出来ない。カイトを襲ったアイツが師団長かそれより上かどうかも分からない。確かに攻撃を受けた時点で、致命傷になりかねない……)

 

 そう考えていると、

 

「最初はグー……!」

 

 ゴンが腰を据えて拳を構える。

 しかし、ナックルが一瞬で距離を詰めて、ゴンの顎を蹴り上げて発動を防ぐ。

 

「――!!」

 

 ゴンは声も出せずに仰向けに倒れる。

 

「……ここまでだな」

 

 ナックルはそう言って、キルアに顔を向ける。

 

「オメェはどうすんだ? コラ。ずぅっとゴンばっかじゃねぇか」

 

「……言っただろ? 割符は2枚いるし、真っ向勝負で勝ちたいんだってさ。あんたがゴンの相手をするなら、俺の相手はシュートってことだよ。……ずっとこっちを探ってるだけで出てこないけどさ」

 

 キルアは公園奥の森に目を向ける。

 ナックルも顔を向けて、そこにシュートが潜んでいることに気づいた。

 

「ちっ! あいつはビビりでな。行けるって確信が持てねぇと動けねぇんだよ。情けねぇ!」

 

「……じゃあ、伝えといてよ。明日にでも一度戦おうってさ。別に本番でもいいけど」

 

「……」

 

「あ、でも1つ言っとくぜ」

 

「あ?」

 

「もし俺が勝っても、ゴンがNGLに行けないなら俺も行かない」

 

「あぁん!? 馬鹿にしてんのかコラァ!!」

 

「馬鹿にしてるつもりなんてないよ。俺はNGLに行くなら、ゴンと一緒だって決めてるだけさ」

 

 キルアは覚悟を決めた瞳で、ナックルを見据える。

 それにナックルは只ならぬ覚悟を感じて、それ以上言葉を紡げなかった。

 

 キルアはカイトを置いて逃げた負い目がある。

 その負い目を前向きにしてくれたのが、他ならぬゴンだ。

 

 だから、カイトを助けに行くならば、絶対にゴンが隣にいるべきだと思っているのだ。

 

(それに……もしゴンが行けなかった時、今度は俺が元気づけてやりたい)

 

 キルアだけNGLに行っても、絶対にゴンのことが気になって集中出来ない。

 それこそ邪魔になると考えてもいる。

 

「だから、期限ギリギリまで戦わなくてもいいよ。ゴンはその間に経験を積めるし。俺は最悪ビスケにでも頼むから」

 

 キルアは体力切れで起き上がれないゴンに肩を貸して、起き上がらせる。

 

「いつ、決着をつけるかはそっちが決めてくれていいよ。俺達はいつでも本気で戦えるようにしてるからさ」

 

 そう言って、公園を去っていくキルアとゴン。

 

 その背中を見送ったナックルは、舌打ちしてポケットに両手を突っ込む。

 そこにシュートが顔を出す。

 

「……どうするんだ?」

 

「あ?」

 

「お前が本気を出すということは、ゴンは高確率で念が使えなくなる。そうなれば、キルアは無条件で俺に割符を渡してくる。流石にそれはモラウさんも認めてくれないだろう」

 

「だろうな」

 

「だが俺とキルアが先に戦って、もしキルアが勝った場合、それでもゴンが負ければキルアは俺に割符を渡すだろう」

 

「わぁってるっつってんだろぉコラァ!! だったら、テメェが勝てばいいだけの話だろうがボケェ!!」

 

「もちろん、そのつもりで戦うさ。だから聞いてるんだ。いつにするんだと。期限に合わせて、ギリギリで本番にするのか。明日決着をつけて、その内容次第で……全員でNGLに行けるようにネテロ会長達に頼むか、だ」

 

「……それは……」

 

「ああ。それは高確率で呆れられて、全員行けない可能性もある。それに、その案をあの2人が受け入れるかどうかも分からない」

 

「……」

 

「……会長が俺達にこの試練を課したのは、『あの2人を蹴落としてでも来る覚悟が出来るかどうか』を見極めるためだ。お前は相手に感情移入しすぎて、俺は危険や好機に尻込みしてしまう。今回はそれでは足手まといになってしまう可能性が高い奴らと戦うんだ」

 

「だから、わぁってる!!」

 

「だが、お前は今ゴンを倒すことに気後れしているだろう。ゴンがNGLに行く理由を聞いて」

 

「っ!!」

 

 シュートの言う通り、ナックルはゴン達と会った日に()()あって共に食事をとって話をする機会があった。

 

 そこでナックルが今回の戦いに志願した理由も話し、ゴン達が志願した理由も聞いた。

 

 だから、ナックルはゴン達の修行に付き合っている。

 そして、その意志の強さからゴン達も連れて行くべきだと思ってしまっている。

   

 しかし、それでは条件達成にはならない。

 

 ネテロやモラウを納得させる材料が示せないのだ。

 モラウはともかく、ネテロは認めないだろう。それでは今ここで戦わせてる意味がないのだから。

 

 故に『全員で行く』という結果はありえない。

 

「……やるなら対等だオラ」

 

 だからナックルが一番納得出来る方法は、ただ1つ。

 

「決着は期限最終日! この期限内で成長しきったゴンと決着をつける!」

 

 モラウには呆れられるだろうが、やはり自分の道は変えられない。

 

 それでも、仲間を助けたいと言うゴンを倒す、という覚悟は決めた。

 

 これだけでも、ナックルは十分すぎるほどに甘さを捨てたつもりでいた。

 

 もし、ここにラミナがいたら、モラウ以上に呆れていただろうが。

 

 

 ということで、ラミナの予測通り、ゴン達は期限ギリギリまで戦うことに決めたのだった。

 

 

 




【シーフ】の声は福山潤さんですw

ゴン達とナックル達の勝負は、結果はともかく大きな流れは変えないことにしました。

理由は本編に書いている通りで、それぞれに納得出来る形がそうなった感じです。
特にゴンとナックルの気持ちが、ですね。
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