暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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今回、【ロストマン】以上に、見た目クロスオーバーキャラがいます(__)

オリジナルキメラアントの参考に色々と探していたら、もう『これしかなくね?』ってキャラクターを見つけてしまったので(__)


#101 ヨユウ×ハ×モテナイ

 ラミナは再びNGLにやってきていた。

 

 念空間でネテロ、ノヴ、モラウと円座を組んで経過を聞いていた。

 

「あれから儂らで2隊ほど潰したんじゃが、どうやら籠城の備えを始めておるようじゃの。先日よりも多くの部隊が出立して、かなりの集落が襲われた」

 

「しかも俺の煙を目にした瞬間、即時撤退。外から仲間を助ける気配もねぇ。探ろうとする様子はあるが、かなりの距離を取ってやがる」

 

「モラウの煙はあの護衛軍から逃げる時に、一度囲まれたら逃げられんことがバレてしもうたからな。んで、連中の動きはうちの復帰と増援が来るんを見越して、か」

 

「恐らくな」

 

「うちが姿を見せれば牽制になるか?」

 

「多少の効果はあるとは思うが……。増援を確認せぬ限り、人間を襲うペースを下げる可能性は低いじゃろうの」

 

「やんな……。けど、増援は来んのやろ?」

 

「……まぁ、弟子達を除けば、あと半月は来ぬじゃろうな」

 

「はぁ……。あ~……またそっちとうちで二手に分かれて、隊を1日約2,3隊潰したとして……」

 

「確認された隊の数が全てだと仮定すれば、隊を潰し切るまでおよそ8~10日、と言ったところでしょう。護衛軍を除いた巣の防衛戦力が常にいることも想定すれば、10~12日……。その間に調達するであろう人体の数から考えれば、籠城すれば1~2週間ほどで補給が必要になるかと」

 

 ノヴの予測に、ラミナとモラウは盛大に顔を顰める。

 

「今のペースで行きゃあナックル達の決着予定日直前で籠城に入るか……」

 

「まぁ、増援が来るんやったらええ時間稼ぎにもなるわな。その間に王が産まれる可能性もあるけどな。それに、護衛軍相手にナックル達が役に立つんかも怪しいところやな」

 

「確かにあいつの甘っちょろいところは最大の不安要素だが、ナックルの能力はかなり有効だと思うがな」

 

「あいつの能力って結構時間かかるんやろ? 相手を【絶】にするまで」

 

「まぁな。相手のオーラ総量で時間は変わる」

 

「……あいつらのオーラが尽きるまで耐えられるんかぁ? 別に時間が来るまでは能力もオーラも使えるんやろ? しかも、あの手の能力って術者もそれなりに制限あるやろうし」

 

「ああ、ナックルから離れ過ぎるとカウントが止まっちまう。だが、オーラを消費させれば、それだけタイムリミットも早まりはするぜ」

 

「……あいつらと下手したら数十分戦い続けるとか、うちはもう勘弁やぞ……」

 

 ラミナは全力で顔を顰める。

 護衛軍1匹に総出でかかるならばまだいいが、そんな上手い事行くわけないので間違いなくナックルを守る役は1,2人だろう。

 

 数分程度ならばラミナでも余裕を持って対応できるが、十分以上となれば間違いなく命がけだ。

 ナックルを守りながら、護衛軍と戦えなど苦行に過ぎる。

 

 そこでラミナは【シーフ】達の事を思い出して、ネテロに顔を向ける。

 

「あぁ、そうや。もしもの後詰にうちの知り合い呼んだからな」

 

「ほぉ……」

 

「言っとくが、あくまで保険やからな? キメラアントがNGLから逃げ出した場合の戦力やから、ここには呼べんぞ。一応うちの金から報酬出すつもりやからな。それに流石にここに呼ぶには向こうのメリットが少ないと思うわ」

 

「ふむ……確かにの」

 

「ちなみに、誰を呼んだんだ? 団員か?」

 

「んなわけあるかい。賞金首仲間や。盗賊【シーフ】に殺し屋【チャリオット】。この2人やな」

 

 ラミナが告げた名前にモラウとノヴは驚きを露にする。

 

 モラウ達も【シーフ】達の事は知っていたからだ。

 

「【シーフ】って、アイツか? 怪盗アルセフだろ? 盗み成功率100%っていう」

 

 アルセフは【シーフ】の本名である。

 

「それに【チャリオット】……。何十人もの賞金首ハンターを返り討ちにしている正体不明の殺し屋ですか……」

 

「そ。【チャリオット】やったら師団長程度問題なく殺せるやろうし、【シーフ】の足と情報収集能力で取り逃がす隙も少なくできるでな」

 

「信用出来んのか?」

 

「【チャリオット】は途中で依頼を投げ出したり、裏切ることはまずない。それが売りの殺し屋やし。【シーフ】はキメラアントの情報や師団長当たりの死体1つでもやれば、満足するやろ。最悪、旅団が売ろうとしとるお宝でもやるわ。それに何度も言うたけど、あくまで保険や。もし女王を殺せたとしても、師団長達が逃げ出せばそこそこ被害が出るやろ。下手なハンターが来るくらいやったら、こっちの方が速いし確実やでな。それくらいはええやろ?」

 

「うむ」

 

 ネテロは顎髭を撫でながら頷いた。

 

 それにラミナも頷き返して、立ち上がる。

 

「ほな、仕事始めるわ」

 

 そう言って、再びラミナ達は削りを始めるのだった。

 

 

 

 ラミナはネテロ達と別れて、森の中を高速で移動する。

 

 10分ほど走って崖の上に登ると、遠くに飛んでいるキメラアント達の姿を捉えた。

 ラミナはその隊を標的に定めて、再び森に飛び込んで駆け出す。

 

 ファルクスとレイピアを具現化して走り続け、気配を捉えた瞬間一気にスピードを上げる。

 

 向こうもラミナの存在に気づいたようで、慌ただしく動き始めていた。

 

 ラミナは【円】を全力で広げて、ファルクスを3回高速で振って【狂い咲く紅薔薇】を発動した。

 それで20近い気配が消えるが、それでもまだ動いてる気配を多数感じ取っていたラミナは、【円】を緩めずに一番近い気配の元へと向かう。

 

 最初に見つけたのは上半身と下半身で分断され、右腕も斬り落とされているキメラアント。

 頭部が無事だったためか、それでも動こうと藻掻いており、【啄木鳥の啄ばみ】で額に穴を空けて始末した。

 

 次に見つけたのは、首だけになったカエル顔のキメラアント。

 首だけになっても、舌を伸ばして移動しようとしていた。

 

(やっぱ【狂い咲く紅薔薇】は動きを止める以上の効果はあんま望めんか……)

 

 殺せても戦闘兵の中でも下級レベルのようだと推測し、小さくため息を吐くラミナ。

 カエルキメラアントの頭を踏みつぶして殺し、他の体がバラバラになってその場で藻掻いているキメラアント達を殺して回る。

 

 ファルクスを消して、ブロードソードを具現化する。

 その直後から戦闘兵と思われるキメラアント達が続々と押しかけてきた。

 

 ラミナは【一瞬の鎌鼬】と【啄木鳥の啄ばみ】で次々と瞬殺していく。

 

(ふむ……逃げる様子はない? ……いや)

 

 ラミナは離れていく複数の気配を察知した。

 戦闘兵達は足止めのために捨て駒にされたのだ。

 

 ラミナは舌打ちし、戦闘兵を無視して逃げ出した気配に向かって全力で駆け出す。

 

 ブロードソードを消して、今度はスローイングナイフを具現化する。

 数分もせずにキメラアント達の後ろ姿を視界に捉えたラミナは、目を限界まで見開いて障害物がない弾道を見極めて、全力でスローイングナイフを投擲した。

 

 スローイングナイフはスナイパーライフルの弾丸のように高速で飛び、キメラアント達の間を縫う様に飛び抜けていく。

 

「はっ! 外しやがった!!」

 

「馬鹿が!!」

 

パチン!!

 

 嘲笑したキメラアント達の耳に、小さな音が聞こえた。

 

 その直後、目の前を飛んでいたスローイングナイフが消え、後ろにいたはずのラミナが目の前に現れた。

 

『!!?』

 

「舐めんなや、虫けら共」

 

 ラミナは【一瞬の鎌鼬】で間近にいたトカゲ顔のキメラアント、犬顔のキメラアント、イノシシ顔のキメラアントの顔が真ん中で上下に斬り分かれる。

 

 残ったのは3匹。

 

 キャップを被ったイタチ顔で、鋭い爪を持つヒップホッパー風の服装をしたキメラアント。

 

 獏の頭部を持ち、スーツを着た細身の身体をしたキメラアント。

 

 そして、蠅の頭に4本の腕を持つキメラアント。

 

 3匹が顔を強張らせて、ラミナから跳び下がる。

 

「こ、こいつ……!? 一体何しやがったんだYo……!?」

 

「い、今のが念能力……?」

 

「じゃあ……いきなり他の奴がバラバラになったのはなんだよ……!?」

 

(……フラコック達の方がまだマシやったな)

 

 すでに戦意喪失しているように見えるキメラアント達に、ラミナは呆れた表情を浮かべる。

 

「ど、どうするのですか? ウィゼリス」

 

「軍団長に戦うなって命令されてんだろ?」

 

 獏顔キメラアントと蠅顔キメラアントが、イタチ顔キメラアントのウィゼリスに顔を向ける。

 ウィゼリスは一瞬顔を顰めるが、ラッパー風に両手を突き出して、

 

「逃げきれねぇならファイトしかねぇYo!! ヂートゥ達にも連絡したからYo! あいつらならすぐに来てくれるZe!」

 

(やっぱ護衛軍に従っとる感じか。けど、縛り切れてもないみたいやな。力で無理矢理っちゅうことか……)

 

 アモンガキッドの実力を考えれば、師団長でも束になったところで勝てはしないだろう。

 しかも、あの念獣を考えれば、監視されているように感じても仕方がない。

 

 ラミナはそう考えながら、身構えて睨んできた獏顔キメラアントに一瞬で詰め寄る。

 

「なっ――!?」

 

 ブロードソードを振り上げて、目を見開いた獏顔キメラアントの鳩尾から頭頂まで両断する。

 

 そして、そのブロードソードを蠅顔キメラアントに投げて、胸の中心に突き刺さる。

 

「がふっ!? ふん! この程度で俺が――!」

 

 腕の一本で胸に刺さった剣を掴んで引き抜こうとしながら、ラミナに視線を戻すと、

 

 靴底が視界を埋め尽くした。

 

「なっ!? ぶばっ!?」

 

 顔を仰け反らした瞬間に胸に刺さったブロードソードを消し、バルディッシュを具現化して勢いよく振り下ろし、頭から股下まで両断する。

 

「ケッ――」

 

 素っ頓狂な声を出して死んだ蠅顔キメラアントを無視して、ラミナはバルディッシュを消してウィゼリスに飛び迫る。

 

 爪を研ぎらせた右貫手を鋭く突き出して、ウィゼリスの顔を狙う。

 

 しかし、ウィゼリスは大きく体を仰け反らしてラミナの貫手を躱し、右足を振り上げて反撃してきた。

 

「舐めんなYo!!」

 

 ラミナは左手で蹴りを受け止めて、引き千切ろうと手に力を籠めた瞬間、ウィゼリスは体を全力で捻って左膝蹴りを繰り出してきた。

 それをラミナは右手を素早く戻して受け止めた。

 

 同時に両腕を全力で広げながら引き、ウィゼリスの左脚を根元から、右脚は膝下から引き千切った。

 そして、【打蠍】で右脚を振り上げる。

 

「ギィアアアアアビャ――!?」

 

 悲鳴を上げたウィゼリスの顎にラミナの足が鋭く、そして重く突き刺さり、ウィゼリスの顔を吹き飛ばす。

 

 頭を失った胴体がドシャリと地面に落ち、ラミナが距離を取って息を整えたその時、

 

 突然、真横から猛スピードで迫る拳を視界の端に捉えた。

 

「!!」

 

 ラミナは目を見開きながら全力で顔を仰け反らせる。

 鼻先を何かが掠り、猛スピードで何かが通り過ぎていった。

 

 ラミナは体を起こす勢いを利用しながら、後ろに跳び下がる。

 

「おわっ。今の躱すとかマジでやるじゃん!」

 

 ヂートゥは完璧と思った奇襲を躱されて、素直に驚いていた。

 対して、ラミナはチーターの姿を持つヂートゥを見て、眉間に皺を寄せる。

 

(チーターと混ざった蟻……! 今の速さはマズイ……!)

 

 今のはヂートゥの拳の軌道が甘かったから躱せたに過ぎない。

 入り組んだ森であの速さならば、もっとスピードが上がる可能性があり、そうなれば流石にラミナでも追い切れない。

 

 感じる気配の強さから師団長クラスと判断したラミナ。

 

「……護衛軍からうちの相手をせずに逃げろ言われとるんちゃうか?」

 

「ん~……まぁ、そうなんだけどさ。正直、いい加減飽き飽きしてんだよね! あんた1人みたいだし、ここで倒せば怒られないっしょ」

 

「ふぅん……。けど、その1人にお前の足元に転がっとるお仲間はやられたんやけどな」

 

「ウィゼリスだろ? こいつって師団長でも平凡以下だったし。まぁ、負けても大して驚かないね」

 

「……じゃあ、お前は師団長でどのへ――」

 

 ラミナは尋ねようとした時、背中に寒気が走って反射的に横に跳んだ。

 

 ラミナがいた場所を白い風が通り過ぎて、ヂートゥの真横で止まる。

 

「あら……避けられてしまいましたわ」

 

「あははは! 俺の攻撃も躱したんだから、俺より遅いお前じゃ、しょうがないね!」

 

 現れたのは全身白い雌型のキメラアント。

 女性の顔に、地面スレスレまで伸びた真っ白のストレートヘア。そして、細い胴体と四肢を持つも、艶美さと優雅さを醸し出している。

 体つきは虫に近く、額からは長い触覚が生えていた。

 

「それにしても、ヂートゥ様。師団長お1人で飛び出すのは勘弁してくださいまし」

 

「固いこと言うなよ、コローチェ」

 

「いいえ、言わせて頂きますわ。ヂートゥ様に好き勝手動かれると……わたくし達の獲物が減ってしまいますもの。ねぇ、ホイッパー」

 

 コローチェは優雅な仕草で髪を払いながら、ヂートゥに文句を言いながら別の名前を告げる。

 

 ラミナも背後から迫る風切り音に気づいており、また横に跳ぶ。

 

 直後、真上から勢いよく何かが、ラミナがいた場所に墜落してきた。

 現れたのはバッタの顔をした筋肉質の体をし、腰にベルトを思わせる装飾を身に付けたキメラアント。

 

 ホイッパーはゆっくりと立ち上がって、ビシィ!と親指を立てて己の顔を差す。

 

「俺!!」

 

 そして、両腕と脚を広げて、再度ポーズを決めた。

 

「降臨!!」

 

「……」

 

 いつかの特戦隊のノリを思い出して、顔を顰めるラミナ。

 

「蟻共にはヒーローもんでも流行っとるんか……?」

 

「さぁ? 俺はコイツしか知らないけど?」

 

「この隊にはホイッパーだけですわね」

 

「……まぁ、ええわ。んで、他にもまだ来るんか?」

 

「俺は知らないなぁ。どうなってんの?」

 

 ヂートゥは頭の後ろで手を組んで、コローチェに顔を向ける。

 

 コローチェは腕を組んで、

 

「わたくし達の隊は、すでに撤退命令を出していますわ。わたくしとホイッパーはお目付け役で来ましたが」

 

「他の連中は足が遅ぇからな! ヂートゥに追いつけねぇ連中が来たところで邪魔なだけだぜ」

 

 その言葉にラミナは小さくため息を吐いて、腰に手を当てる。

 

「つまり……うちはお前ら程度でええと馬鹿にされとるわけやな?」

 

「あははは! まさか! 逆だよ逆! お前みたいに強そうな奴、他の奴に横取りされたくないだけさ!」

 

 ヂートゥは楽しそうに笑って言う。

 その言葉に嘘はなく、本当にヂートゥはただ楽しみを邪魔されたくないだけ。他の者では死ぬだけだと思っているのもあるが。

 

 しかしラミナにとって、それこそが馬鹿にされている証だった。

 

 もちろん、それはラミナが他の者にもやっていることではあるが。

 

「護衛軍よりもザコのすばしっこいだけの虫けらが、調子に乗んなや」

 

 ラミナはブロードソードとフランベルジュを具現化して、ヂートゥを睨みつける。

 

 それにヂートゥもニヤリと嗤い、構える。

 

「へぇ……言ってくれるじゃん」

 

 コローチェとホイッパーも構えて、飛び出そうと身を低くする。

 

 直後、4つの影が同時に飛び出す。

 

 【一瞬の鎌鼬】を発動して、高速の斬撃の嵐を繰り出す。

 コローチェとホイッパーは直前で後ろに跳び下がり、ヂートゥはラミナが誇る最速の斬撃を紙一重で躱して、鋭い拳をラミナの顔を狙って放つ。

 

 ラミナも顔を傾けて紙一重、頬を掠めながら拳を躱す。

 フランベルジュを振り上げるが、ヂートゥは僅かにラミナの腕が動いた瞬間に距離を取る。

 

(……速さはうちが完全に下か……。動体視力も速さに準じとるから、よほどの奇襲やないと触るんも厳しい。ただ、まだ見切れる速さでもある。躱すんはそこまで問題ない……)

 

 ラミナは武器を消して、手刀を構える。

 

「あれ? もう諦めちゃった?」

 

「アホ言え。下手に武器に頼るより、こっちの方がお前らを捕らえるんに適しとると思ただけや」

 

「ふぅん……ま、無駄だと思うけど、ねッ!!」

 

 ヂートゥが再び猛スピードでラミナに飛び掛かって、また殴りかかる。

 

 ラミナはヂートゥの右拳の構えを見て、拳の軌道を予測して左手を首元まで上げる。

 それにヂートゥは左拳を鋭く振り上げる。

 

 だが、それもラミナは読んでおり、右手を左拳の軌道を防ぐように動かす。

 

 ヂートゥは両拳を素早く引いて、ラッシュを繰り出す。

 ラミナは目を限界まで見開いて拳の軌道を見極め、【堅】を強めて防御力を高める。

 

 数発ほど拳を浴びるラミナ。

 

 だが、ラミナはそれを耐えながら【蛇活】で腕を不規則に動かして、ヂートゥの両腕を掴んだ。

 

「!!」

 

「捕らえた」

 

 ヂートゥは目を丸くして、ラミナはニィと口を吊り上げる。

 

 しかし、そこに背後からコローチェが高速で迫り、しなやかな脚で鞭のような蹴りを放ってきた。

 

「忘れて頂いては困りますわ」

 

「俺もなぁ!!」

 

 ホイッパーもラミナの真横から高速の飛び蹴りを繰り出す。

 

「ちぃ!」

 

 ラミナは舌打ちして両手を放し、両腕を交えてホイッパーの飛び蹴りをガードして吹き飛ばされる。

 

 地面を滑りながら体勢を立て直し、再びヂートゥ達と向かい合う。

 

(師団長は速いがヒットアンドアウェイを意識しとるせいか、拳は軽い。兵隊長はあいつより遅いけど、攻撃に力が乗っとるな。けど、師団長の攻撃は全部無視できるほど軽いわけでもないし、兵隊長達もあいつより遅いっちゅうだけで、楽に躱せるほど遅いわけでもない)

 

 両腕に感じた衝撃に、小さく眉間に皺を寄せる。

 

(実戦経験がないから、攻撃も連携も素直。やからこそ、()()躱せるし、防げる。オーラの動きも未熟で【練】も【流】も使う感じもない。護衛軍の下におりながら、念の鍛錬や能力の開発をしとる気配がない……)

 

「へぇ~、今のはちょっと驚いたぜ。言うだけはあるね」

 

「ヂートゥ様、もう少し警戒してくださいまし。あの女は軍団長と戦って生き延びた者かもしれないのですから」

 

 ヂートゥはどこか嬉しそうにステップを踏みながら言い、コローチェは呆れを浮かべながら注意を促す。

 

 『かもしれない』。

 その言い方に、ラミナは引っ掛かりを感じた。

 

「あん? 自分ら、護衛軍にうちらと戦うなとか言われとるのに、うちらと戦った話聞いとらんの?」

 

「俺はね。真面目なコルトやペギーは聞いてるかもしんないけど。いくら警戒したって、結局殺せばいいんだから聞いたって変わらないっしょ」

 

「ふぅん……」

 

「それにさぁ、警戒したところで結局俺達が女王様の餌を調達しに出ないといけないんだからさ」

 

「念の修行とか、護衛軍から教えてもらえへんの?」

 

「ぜ~んぜん。今はあんた達が仕掛けてきたから女王様を守るのに集中してるし、元々護衛軍って俺達のこと興味ないだろうからさ」

 

(……こいつ、ベラベラしゃべるなぁ……)

 

 ラミナは内心呆れるが、元々キメラアントは体制こそ軍のようになっているが、細かく規律があるわけでもなく、それを理解して入団したわけでもない。

 そのため、個々の忠誠心にムラがあり、規律への考え方にも差がある。

 『王を産む女王蟻のために働く』というのは、あくまで『キメラアントの本能』でしかなく、兵隊蟻全員が『順守するべき絶対の理想』でも何でもないのだ。

 

 言うなれば、『学校に通う子供』なのだ。

 

 真面目な子供もいれば、反抗的だったり、怠惰な子供もいる。

 しかし、反抗的な子供も追い出されるのも面倒だから、大人が決めた学校のルールに()()()()従っている。

 

 その程度の雰囲気を感じさせるのだ。

 

 キメラアントの場合、『退学』が『死刑』に等しいので渋々従っているのだろう。

 

 そうラミナは推測した。

 

(統率力が低いんは間違いなく隙になる。けど、女王を殺すだけではやっぱ解決にはならん、か。しかも、護衛軍は師団長に興味がないっちゅうんも……厄介な状況かもしれんな)

 

 師団長すら捨て駒であることを隠さない。

 つまり、今ネテロ達が行っている作戦は、護衛軍にとってはあまり効果がない可能性が高い。

 

(いや……餌の調達は師団長達が率いる隊でないとあかんとも言うとった。やから、補給を断つ作戦は有効ではある。ただ、今のペースでは微妙……王が産まれるまでなら耐えきれると考えとるっちゅうことか……)

 

 ラミナが次の質問をしようとした時、ヂートゥが再び猛スピードで殴りかかってきた。

 

 ラミナは後ろに下がりながらガードするが、左右からコローチェとホイッパーが蹴りを繰り出す。

 ジャンプして蹴りを躱し、ホイッパーの脚を踏み台にして更にジャンプして距離を取る。

 

 しかし、跳び上がったラミナの背後に、巨大な影が出現する。

 

「!?」

 

「カブシッ!!」

 

 ラミナはギリギリで振り返って【凝】でオーラを集中した両腕を交えるように顔前に上げる。直後とてつもない衝撃が襲い掛かり、空中だったために堪えられずに勢いよく真下に叩き落される。

 

 すぐさまラミナは四肢にオーラを集中させて、四つん這いで地面に勢いよく着地する。

 

 そこにコローチェが詰め寄って来ており、右脚を振り上げてラミナの左脇腹に蹴りを叩き込む。

 ラミナは直前に右に跳んでダメージを減らしたが、勢いよく横に吹き飛ばされる。

 

「ぐっ……!」

 

 バルディッシュを具現化して地面に突き刺し、一瞬ブレーキをかける。

 

 すぐさまバルディッシュを消して体勢を立て直し、背後に迫っていた木の幹に着地する。

 

 それと同時に殺気を感じたので幹を蹴って離れる。

 

 直後、ラミナが着地した木が半ほどで真っ二つに斬られる。

 

「ハッサミ!!」

 

 そこにいたのは、蟷螂の頭部に上半身と両腕が蟹のような赤い甲羅に覆われ、両手が巨大な鋏になっているキメラアントだった。

 

 そして、もう1匹は蜘蛛のような四足の下半身に、筋肉で膨れ上がった上半身と腕、そして蚊を思わせる尖った口を持つキメラアント。

 

「新手か……」

 

「カマッスに、クラッティじゃねぇか」

 

「カブシ! ビトルファン隊長、援軍!!」

 

「ゲゲッ! ビトルファンに援軍に行けって言われてよぉ。来てやったぜぇ」

 

 カマッスはボディビルダーのようにサイドチェストを決めて単語を叫び、クラッティが鋏を開閉しながら卑屈に笑い通訳する。

 

 ヂートゥは頭の後ろで手を組んで、

 

「あいつが部下を助けに出すなんて珍し――ん?」

 

 しかし、途中で言うのを止めて、あらぬ方向を見る。

 

 それにラミナは訝しむが、ヂートゥはそれまでと違って唐突に顔を顰める。

 

「ちぇっ……これからが面白くなるってのに……」

 

「ビトルファン様ですの?」

 

「いぃや、コルト。軍団長様が俺に帰って来いってさ」

 

「あら……」

 

「流石に軍団長の命令を無視出来ないか。仕方ないね」

 

 ヂートゥは肩を竦めて、ラミナに顔を向ける。

 

「俺が殺せなくて残念だけど。もし生きてたら、また遊ぼうぜ!」

 

「あ?」

 

「じゃ~あねぇ~!」

 

 ヂートゥは軽く手を振って、猛スピードで駆け出していった。

 

「ホイッパー、どうしますの?」

 

「俺はこいつを倒すに決まってんだろ!」

 

「そうですか。わたくしはヂートゥ様と戻りますわ。他の兵隊長ではヂートゥ様の脚について行けませんもの」

 

「好きにしな」

 

「では」

 

 コローチェは一瞬ラミナを見てから、ヂートゥ同様猛スピードで駆け出していった。

 

 あっという間にラミナの感知範囲から気配が消えたヂートゥとコローチェに顔を顰める。

 

(……念話かなんかが出来るんか……? けど、念能力は鍛えとらんはず……)

 

「なぁ……お前らって念話みたいなん出来るん?」

 

「あぁ? 念話? 出来たらなんだってんだよ」

 

 ホイッパーが訝しむも、どうでも良さそうに答える。

 

 それにラミナは小さく舌打ちする。

 今の言い方だとテレパシー能力は念能力ではなくて、キメラアントが生来持つ能力であると推測できる。

 

(いや……念話能力があるから、蟻は階級に従った軍事行動がとれるんか。本来こいつらは話せる種族やないんやし)

 

 ただでさえ人間よりも身体能力が優れているのに、他にも人間よりも優れた伝達手段を持っているなど面倒にも程がある。

 

 もちろん、これまで戦った感じではテレパシーできる距離にも限界はあるのだろう。

 だが空を飛べ、高速で移動するキメラアント達からすれば、それは大した問題ではない。

 

(念話を使われたら護衛軍達数匹誘き出す囮になっても、ほとんど意味はない!! 稼げて十数秒……! 護衛軍全員を女王から引き離さんと作戦成功率は2割もない……!!)

 

 ラミナが歯軋りすると、

 

「そろそろ戦いを再開しようぜぇ!!」

 

 ホイッパーが勢いよく飛び出して、飛び蹴りを繰り出す。

 

「カブシ!」

 

「ハッサミィ!」

 

 同時にカマッスとクラッティも駆け出す。

 

 ラミナも一度推察を中止して、ブロードソードとフランベルジュを具現化する。

 

「オラァ!」

 

 ホイッパーの高速の飛び蹴りを躱してブロードソードを振ろうとしたが、カマッスがすでに右腕を振り被って目の前まで迫って来ていた。

 

「!! (こいつも速っ……!? 四本脚やからか!!)」

 

 蜘蛛の足のように高速で動く四本脚が、速さとバランスを両立させていたのだ。

 

 殴る直前、カマッスの右腕の筋肉が膨れ上がり、剛腕が振るわれた。

 

 ラミナは防ぐ気にもならず、全力で後ろに跳ぶ。

 

 カマッスの拳はパイルバンカーのように地面に突き刺さって、周囲1mほどが吹き飛んだ。

 

「素でこの威力か……!? ホンマ、どいつもこいつもウボォーかっちゅうねんッッ!!」

 

 ボヤきながら、背後に向けて【一瞬の鎌鼬】で斬りかかる。

 

ガキィン!!

 

 しかし、ラミナの斬撃はクラッティの胸を覆う甲羅に阻まれてしまった。

 

「!?」

 

「ゲゲッ! 効かなッサミ!」

 

 目を丸くするラミナに、クラッティは両腕の鋏を開いてラミナに腕を伸ばす。

 

「チョッキンナァ!!」

 

 ラミナの左上腕と胴体を狙い、挟み斬った瞬間を想像して凶悪な笑みが浮かぶクラッティ。

 

 その直後、クラッティの両腕が、肘から斬り飛ばされた。

 

「ゲ? ……っ!?!? ゲギャアアア!?」

 

 クラッティは一瞬唖然として、斬り飛ばされた腕が自分のものだと理解した瞬間に悲鳴を上げる。

 

「うちに斬り合い挑むなんざ十年早いわ、虫けら」

 

 クラッティの背後に一瞬で回り込んで、冷え切った瞳を向け、冷え切った声で言い放つ。

 

 言い終わると同時にクラッティの頭部が細かく斬り裂かれた。

 

「テメェ!!」

 

「カブッシ!!」

 

 そこにホイッパーとカマッスが攻めかかってきたが、ラミナはクラッティの死体を盾にする。

 

 流石の硬度を誇る甲羅で2匹の攻撃でも数秒耐え、クラッティの身体が砕ける前にラミナは十分な距離を取ることが出来た。

 

 ラミナは両手の武器を消して、突如2匹に背を向けて全力で駆け出す。

 

「逃がすかよぉ!!」

 

「カブシ!」

 

 2匹はすぐさま追いかけるが、その時にはすでにラミナの姿は見えなくなっていた。

 

「ちぃ……! おい、カマッス!」

 

「カブシ?」

 

「お前は帰れ! お前まで死んじまったら、俺がビトルファンに殺されちまう! ヂートゥはもう巣に帰ってるし、援軍の意味もねぇだろ」

 

「カブ……カブシ!!」

 

 カマッスは頷いて、ビシィ!とダブルバイセップスを見せて、猛スピードで走り出す。

 

 カマッスを見送ったホイッパーは、ラミナを探そうと勢いよくジャンプした瞬間、

 

 

 全身が何かに縛られたように動かなくなり、空中で停止した。

 

 

 ホイッパーは突然の事に驚いて、全力で体に力を入れるが引き千切れる気配はなかった。

 

「な、なんだぁ!?」

 

「やっぱり【円】や【凝】も出来ないんだね」

 

「っ!?」 

 

 すぐ近くの木陰からラミナが姿を見せる。

 

「結局、混ざった生き物の生態に頼り切ってるってわけね。ま、所詮は虫だし、当然か」

 

「ゴ、ゴチャゴチャうるせぇな!! テメェ!! 何しやがった!?」

 

「まだ見えてないの?」

 

 その言葉の直後、ホイッパーの身体に巻きつく細い輝く糸が見えるようになった。

 

 念糸は周囲の樹々に巻きついていた。

 ラミナは【朧霞】で姿を隠し、ホイッパー達の死角で解除して、鈎爪を具現化して【親愛なる姉様との絆】で念糸をホイッパーの身体に巻きつけていたのだ。

 

「な、なんだよコレ……!?」

 

「何って念能力だよ。コレ、護衛軍の1人に見せてるんだけど? ホントにアンタ達って、護衛軍に駒としか見られてないんだね」

 

「っ……! チ、チクショォ……! 人間のく――!」

 

 ホイッパーが悪態をつこうとしたら首に鈍い痛みを感じ、次の瞬間には目の前に冷たく鋭いラミナの顔があった。

 

「!?」

 

「アタシはアンタ達の何十倍もの人間を殺してる。アンタ達程度に、見下される覚えはないよ」

 

 ラミナの冷え切った視線に、ホイッパーは体を動かそうとしたが、首から下の感覚がない事に戸惑う。

 

「これ?」

 

 ラミナはホイッパーの顔を動かすと、ホイッパーの視界に頭がない自分の身体が映る。

 

 ラミナは念糸を足場にして、ホイッパーの頭を一瞬で引き千切ったのだ。

 

「……!!」

 

 ようやく現実を理解したホイッパーはもはや絶句するしかなかった。

 

「だから言っただろ? 虫けらが調子に乗るなってさ」

 

 徐々に頭を掴むラミナの手の圧が強くなっていく。

 

「念話出来るなら、仲間に伝えときな。巣から出てくるなら、死ぬ覚悟してから出てきなってね」

 

 そう言って、頭を握り潰す。

 

 能力を解除して地面に着地したラミナは、数分その場で敵が来ないか待つ。

 

 しかし、1匹も【円】にもラミナの感覚にも引っかかることはなかった。

 

「ちっ……さっきの筋肉蟻くらいは来ると思たんやけどな。護衛軍から命令の念話が来たんか……? うちらから逃げろっちゅう命令は無視する癖に、新しく出た命令は従う……。はぁ~……こら、吉報やけど凶報でもあるな」

 

 ラミナはため息を吐いて、新たな獲物を探して移動を始める。

 

(互いに余裕はない、か……。今のうちに出来ることは、戦力削減と餌の調達を邪魔すること。少しでも籠城できる期間を短くするくらいやな……)

 

 兵隊蟻達でも連携や相性が嵌まれば、ラミナでも油断できないことも理解した。

 念能力を完全に会得する前に、出来るだけ数を減らさなければならない。

 

 そのためには、また巣を刺激する必要があるかもしれない。

 

 護衛軍との再戦も考慮に入れて、体力とオーラの消耗を最低限にしながら迅速に敵を減らす。

 

 余裕は一切持てない。

 

 しかし、それこそが暗殺者の戦い方でもある。

 

 ラミナは今は余計なことを考えず、ただ獲物を殺すことに集中するのだった。

 

 




ホイッパーは『仮面ライダー』がモデルですね。性格は【仮面ライダー電王のモモタロス】です。

そして、見た目まんまクロスオーバーキャラは、
コローチェ:【ポケモンSM】の『フェローチェ』
カマッス:【ポケモンSM】の『マッシブーン』
クラッティ:【ポケモン】の『ハッサム』

もうフェローチェとマッシブーンを見つけた時の衝撃と言ったらw。

改めて見たら、ポケモンってキメラアントの宝庫ですねw
まぁ、流石にこれ以上出すつもりはありません。満足しましたので(__)
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