暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん 作:幻滅旅団
カイトと再会した翌日。
ゴンとキルアは早速ラミナの元を訪れていた。
そこにはティルガやブラールはもちろん、ナックルとシュートもいた。
ゴンはティルガ達とは初対面で、キルアもブラールとは初めて会うためお互いに自己紹介をする。もちろん、ブラールの自己紹介はティルガがするのだが。
だが、そこでゴンとキルアにとって衝撃的な事実が叩きつけられる。
「え!? キメラアントって人間の時の記憶があるの!?」
「それって全員?」
「いや、個人個人差がある。コルトはほとんど覚えていなかったから話題に出なかっただろう? 混ざった動物の記憶を持つ者もいる。だから必ずしも人間の記憶があるからと言って、我らのように人間の味方になるとは限らん。だから、敵対したら遠慮なく殺してくれ」
「……」
袂を別ったとはいえ元は仲間だった兵隊蟻を殺して構わないと言い放つティルガに、ゴンとナックルはやはり受け入れられないのか眉間に皺が寄る。
それにラミナはため息を吐き、キルアは両方の気持ちが分かるので何も言わず、シュートも黙っていた。
そして、ティルガも心の中で、
(やはりラミナを選んで正解だったようだな。別にこの者達が苦手と言うわけではない。むしろ好ましく思う。だが、今回に限って言えば、やはり隙にしかならんだろうな)
そう考えていた。
「よっしゃ。ティルガとブラールはまずはいつものメニューをこなしぃ。ゴン達は終わるまでは好きに特訓しとき」
「分かった」
「……」
ティルガとブラールは頷いて、念の修行から始める。
ゴンとキルアは顔を見合わせて、ゴンがラミナに声をかける。
「ねぇ、ラミナ。俺、今は念能力使えないんだけど、何すればいいかな?」
その言葉にラミナは小さくため息を吐く。
それにナックルも助け舟を出す。
「お前の能力ならトリタテンを解除出来るんじゃねぇのか?」
「え!? ホント!?」
ゴンは目を輝かせるが、ラミナは顔を顰める。
「ゴンが念を使えんのは真剣勝負の結果ちゃうんか? 状況が状況とはいえ、なんでただのゴンの未熟さの結果をうちが尻拭いせなあかんねん」
「それは……」
「それにお前の弱さは念を使えるようになったら解決するんか? そこをもう一遍考えてみぃ。なんでナックルに手も足も出んかったんかをな」
ラミナはそう言って、ティルガ達に目を向ける。
ゴンは顔を顰めて腕を組んで考えだし、ナックル達も眉間に皺を寄せる。
「じゃあ、ゴン。俺も念の修行すっからな。ちゃんと考えろよ」
「え? う、うん」
キルアは少し突き放すように言い放って、ゴンから離れて【練】を始める。
ナックルとシュートはキルアの言動に顔を見合わせて、ゴンの邪魔をしないようにキルアの近くに移動する。
「おい、キルア。いいのかよ?」
「ああ。ラミナの指摘は間違いなく正しいよ。確かにゴンの念を元に戻すことに越したことはないけど、それじゃあゴンは結局念の修行に集中しちゃうだろうからな」
「お前はラミナが言いたいことを理解しているのか?」
「結構分かりやすかったと思うぜ?」
「どこがだよ? ゴンにとって重要なのは【ジャジャン拳】の強化だろ」
ナックルとの決闘で露出した【ジャジャン拳】の弱点。
『溜めが長いこと』と『【硬】発動のため、リスクが大きいこと』の2つ。
これは決闘中に【ジャジャン拳】をフェイントに使うという解決策を編み出したが、それでも上記の2つが消えたわけではない。あくまで相手に手を出し辛くしただけに過ぎないため、根本的な解決にはなっていない。
本能的に動くキメラアントや、少しでも格上相手との戦いになればすぐに対応されてしまうレベルの小細工である。
なので、解決するにはオーラの移動と集中をスムーズにすることが最も有効なのだが、それにはトリタテンを解除しなければならない。
しかし、ナックルでもトリタテンになってしまえば解除出来ず、除念能力に頼るしかない。
故にラミナの【脆く儚い夢物語】の事を話したのだ。
だが、ラミナとキルアはそう考えてはいなかった。
「確かにそれも重要だけど、それだけじゃダメなんだ」
「じゃあ何がいるんだよ?」
「……今は言わない。言えばゴンに言いそうだし」
「ぐっ……!」
「これも修行ってことだろ? ゴンは頭を使うのが得意じゃない。少しでも考える癖をつけさせないと、直感や閃きばっかに頼ることになるからな」
そう言ってキルアは修行に集中する。
それにナックルとシュートも顔を見合わせて、納得は出来ないがキルアが納得しているならばと自分に言い聞かせて、自分達も修行を始めるのだった。
ラミナはそんなキルア達の様子を横目で観察していた。
「……いいのか?」
「ん?」
「あのゴンという子供。確かにどこか末恐ろしいものを感じるが、其方やキルアよりは未熟さ……というよりはムラが目立つ。生き残らせたいならば、しっかりと手解きすべきだと思うが……」
「それは否定せんけど、今のゴンはそれ以前の問題っちゅうことや」
「というと?」
「確かにゴンは才能あるで? ちゃんと鍛えとるし、実力もある。ただし、
ゴンは確かに才能豊かで、実力はある。
だが、ラミナが言う様に、それは同年代の子供と比べれば、という言葉が付く。
もちろん、そこらへんのハンターよりは確実に強いが、ベテランや実力者の域には達していない。
キルアは今回のことでゾルディックの血と技を受け入れたため、心身共に完全に実力者側に入ったと言える。
だが、ゴンはどちらもそこまで達していないというのがラミナの見立てである。
正直なところ、これまでのゴンはキルアがいたからこそ戦い抜けてきたとすらラミナは思っている。
それも立派な実力とも言えるが、やはり一人前と呼ぶならば一人で戦い抜けるだけの実力がいる。それは戦闘力だけではなく、思考力や推察力も求められるのは当然のことだ。
「今回うちらが戦う相手は全員が格上。助け合いも大事やけど、他人に気を取られとったら一瞬で死ぬ可能性もある戦いや。やから、お前らには必要な能力だけを鍛えるように、しかも無茶なレベルでやらせとる。1人でも生き延びられるようにな。けど、今のゴンには全てが足りんと言っても過言やない。現状、ホンマにただの足手纏いや」
故に自分で生き残る力を身に着けてもらわなければならない。
だからこそ、自分で考えて気づける思考を身に付けてもらう必要があるのだ。
キルアが言った様に、ラミナはすでに十分すぎるほどゴンにヒントを出しているのだから。
最低限自力でそこに気づいてもらわないと、トリタテンを除念する意味がない。
「……難しいものだな」
「私怨が絡んどるんや。単純なわけないねん。ほれ、お前らかてゴンと大して差はないで。しっかり集中しぃ」
「ああ」
ティルガは頷いて、修行に意識を戻す。
ラミナも頭の片隅にゴンのことを置いておきながら、ティルガとブラール、そしてキルアの様子を観察するのだった。
そして、あっという間に夕暮れ。
ティルガ達の修行も一通り終え、組み手を始めようとしていた。
だが、ゴンは未だに答えを見つけられなかった。
「う~ん……う~ん……う~~ん……」
耳からブスブスと煙を立てながら、唸っているゴン。
流石にラミナとキルアもこれ以上は無駄だろうと判断した。
「はぁ……ゴン」
「う~ん……ん? え、なに?」
「時間切れや。一回組み手したる」
「ホント!?」
ゴンは笑みを浮かべて、立ち上がる。
それにナックルとシュートは訝しむようにラミナを見るが、ラミナはそれを無視して顔を鋭くしてゴンを見据える。
「組み手言うとるけど、手加減はせぇへんで。実戦と思て動けや。もちろん、うちも念は使わん」
正確には
ゴンも顔を引き締めて頷き、身体を解し始める。
ラミナも軽く準備運動をして、キルア達は少し離れたところに移動する。
「準備ええか?」
「うん!!」
「ほな、始めるで」
「うん!!」
ゴンが腰を屈めて構えた瞬間、
ラミナが右フックを繰り出しながら目の前にいた。
「っ――!?」
ゴンが目を見開いた時には、すでにラミナの拳は左頬に叩き込まれていた。
顔が跳ね上がるゴン。
後ろに身体が仰け反った時、ラミナは左拳をゴンの胸に叩き込んで吹き飛ばした。
「がっ――!?」
ゴンは地面をバウンドしながら転がり、手足で地面を引っ掻きながらなんとか体勢を立て直して顔を上げる。
目に映ったのは、すでに拳を構えているラミナの姿だった。
「遅いわ阿呆」
冷たく言い放つラミナ。
そして、左フックをゴンの顔を目掛けて繰り出す。
ゴンはなんとか腕を顔まで上げるが、ラミナの拳が直前で止まり、右拳がゴンの左脇腹に振り抜かれる。
それも左肘と左膝で防ごうとしたゴンだが、その拳も直前で止まり、直後右脇腹にとてつもない衝撃が走った。
「がふっ!!」
横に吹き飛んで、また地面を転がるゴン。
ラミナは振り抜いた左脚をゆっくりと下ろしながら、ゴンを見据えていた。
しかし、直後姿が霞み、ナックル達が気づいた時には猛スピードでゴンへと駆け迫っていた。
そして、まだ起き上がれてもいないゴンを蹴り上げて身体を浮かし、猛烈なラッシュを繰り出す。
ゴンはなんとか両腕を上げて顔を庇うも、全身を襲うあまりの衝撃に一瞬意識が遠のく。
だが、ラミナは一切手を緩めず、ガードが緩んだゴンの鳩尾に右足を突き刺す。
ゴンは呼吸すらも止まり、勢いよくくの字に吹き飛んで、背後の木の幹に背中から叩きつけられ、その衝撃で意識が戻る。
地面に崩れ落ちたゴンは腹を押さえて咳き込む。
「ぐっ! ゲホッ! エホッ!」
「……少しは理解したか? ゴン。それがお前の念を戻す必要がない理由や」
ラミナはゆっくりと歩み寄りながら告げる。
ゴンは痛みに吐き気、めまいなどに襲われながらも、必死にラミナの言葉に耳を傾ける。
「お前の能力については簡単に聞いた。ナックルとの戦いについてもな。【ジャジャン拳】、やったか? お前の能力の弱点はナックルの指摘通りや。けど、お前の一番の問題は念云々かんぬん以前にある」
「……」
「お前の一番の弱点は体術。お前は確かに強い。12歳のガキにしては、やけどな。それだけや。うちらからすれば、それだけしか感想が出ぇへん」
「たい……じゅつ……」
「まぁ、あくまで殺し合いに身を置く人間からすれば、や。実力者と呼ばれる域におるモンからすれば、お前は
ラミナは腕を組んで、ゴンを見下ろす。
「お前の【硬】は確かに無視できるモンやない。そこは素直に認めたる。けど、それだけや。他は何にも怖ない」
速さはある。だが、ラミナ達ほどではない。
力もある。だが、これもラミナ達ほどではない。
才能もある。だが、それを活かせるだけの経験が圧倒的に足りない。
そして、技術がない。だが、ラミナ達はその技術こそが強さの根幹にある。
時折見せる意外性もその時は無視できないが、それは初見だからこそ。
何度か戦えば、ある程度備えることは出来る。
それがゴンの弱点。
【ジャジャン拳】以前の問題なのだ。
「どんだけ【硬】や能力を鍛えようが、遅いんやったら躱せるし、元々の力が下やったらこっちも【凝】や【硬】で防げばええだけ。事実、お前はうちに手も足も出ぇへん。念が使えた所で、お前に能力を使わせる暇なんざ与えんように出来る。そうなればお前はもうただ一方的にやられるだけや」
「っ……!」
「それがナックルに負けた一番の要因で、蟻達との戦いでは一番重要となる要素。そんで、強化系であるお前にとっては、能力よりも鍛えなあかんかった部分」
と言っても、それは今回の任務に参加しなければ無理に指摘する必要がなかったことでもある。
歳やこれまでの生活を考えると、今でも十分すぎるほど強い。
だが、今回の任務はそれでは足らない。未熟に過ぎるのだ。
だからネテロはナックル達と戦わせた。
「お前が戦いたい相手は、うちですら分が悪いかもしれん。良くて五分。うちの方が強いとは自惚れても言えん。そんな相手に、全てが負けとるお前が勝てるとでも思とるんか?」
「……そんなことは、分かってる。だから、死ぬ気で修行して強くなるんだ……!」
ゴンはふらつきながらも立ち上がって力強く言う。
そんなゴンの姿にナックルやシュートは心の中で応援するも、ラミナは鼻で笑う。
「はっ! アホか。死ぬ気で頑張るくらい、おっぱい飲んどるガキでも出来るで。その程度で強ぉなれるんやったら、誰も苦労せんわ」
「だったら……!」
「殺す気で来いや」
ズゥとラミナから圧し潰すかのような殺気が噴き出す。
ゴンは一瞬足が下がりそうになるも、全力で堪える。
「お前は相手には全力で来いとか言う癖に、自分は殺す気で戦わんよな。憶えとけや、ゴン。それは本来格上が格下にする行為なんやぞ? 殺せるだけの力があるから、殺さんように相手を倒せるんや。けどな、今のお前は念を取り戻したとしても、殺す力すら足りん」
ゴンが確実に殺せるのは兵隊長クラスまで。
師団長クラスになるとティルガでも一歩届かず、護衛軍は言わずもがな。
自分を殺す力を持たない相手を、護衛軍が真面目に相手などするわけがない。
「死ぬ気で足らんなら、殺す気も持たなあかんやろうが」
「っ……!」
「お前の【ジャジャン拳】はシンプル故にどんな奴が相手でも勝てるだけのポテンシャルはある。けどな、シンプルかつ制約が少ないが故に、いきなりパワーアップ出来る能力でもないねん。地道に修行を積み重ねて真価を発揮できるようになるモンや」
故に、絶対にゴンはこの戦いにおいては足手纏いのまま参加するしかない。
ゴンが殺す気で相手に挑もうが、ゴンが強くなったわけではないのだから。ただ、今まで無意識にブレーキをかけていた力を出せるようになっただけに過ぎないのだ。
「お前の【ジャジャン拳】程度の威力やったら、うちでも出せる。能力を組み合わせれば、お前の倍以上の威力も出せるわ」
グーは【敬愛する兄の剛腕】で、パーは【敬愛する兄の咆哮】で、チョキは言わずもがな。
ラミナは制限があるとはいえ、ゴンの能力を完璧に上回ることが出来る。
グーに関しては、能力を使わずともラミナの【硬】の方が上だ。
オーラ量も、オーラの扱いも、ラミナの方がまだまだ圧倒的に上なのだから。
どうやってもゴンは『油断できない子供』レベルから抜け出せない。
「殺す気に関してはナックルやシュートもまぁ、課題やけどな。それでもあの2人はお前より実力も経験も上やし、その課題を横に置けるだけの代わりが効かん能力を持っとる。ティルガとブラールも未熟ではあるけど、蟻の能力と情報は捨てがたいし、覚悟もある。キルアも殺す覚悟が出来て、ゾルディックの暗殺術はナックルやシュートの課題を考えれば得難い戦力になった。けど、お前には何一つとして、お前でないとあかんと思わせるだけのモンがない。今、お前がここにおれる理由は『カイトのことで同情しとるから』。ただそれだけや。やったら、お前がこれからの戦いに参加してもええとうちらに思わせるんは、気概しかないやろが」
ラミナの言葉にゴンは歯を食いしばるしか出来なかった。
(まぁ、それでも全然足りんやろうけどな)
ラミナは悔しがっているゴンを見ながら、内心ため息を吐く。
死ぬ気と殺す気を持つだけで強くなれるなら苦労しない。
あくまで『実力者』と呼ばれる域に足を踏み入れるための壁を乗り越えるきっかけの一つでしかない。
(けどなぁ、ゴンを短期間で今以上に強くするんやったら、新たに制約を組み入れるか、他の何を犠牲にしてもネフェルピトーを殺すっちゅう覚悟を持たせるしかないんよなぁ……)
だが、流石にそこまでゴンを追い込む必要性も義理も無い。
故に『殺す気で来い』としか言えないのだ。
「ほれ、早よ来いや。もう動けるくらいには回復しとるやろ」
「っ……!! おお!!」
ゴンは一瞬歯を食いしばるも、すぐさま叫びながら駆け出す。
拳を構えて殴りかかるも、やはりその拳には殺気がほとんど乗っていなかった。
ラミナは無表情でそれを見つめ、
「阿呆が」
そう聞こえた直後、ゴンは顔に強烈な衝撃を感じて、意識が闇に落ちる。
横から見ていたキルア達は、ラミナに思いっきり顔を殴られて吹き飛び、受け身も取れずに地面を転がったゴンにすぐさま駆け寄る。
ゴンは気絶しており、左頬がすでに大きく腫れ上がっていた。
「っ……! ラミナ……テメェ!!」
「やめろ、ナックル」
ナックルが怒りに顔を染めて、ラミナに詰め寄ろうとしたが、キルアが鋭く呼びかけて制止する。
その鋭い声に、ナックルは一瞬気圧されて無意識に足を止めてしまった。
「キルア……。けどよ!!」
「言ったろ? ラミナは間違ってない。今回の戦いがゴンにとって荷が重いのは分かってたことだ」
「っ……! お前まで……そんなこと言うのかよ……!」
「だからって勘違いすんなよ? 俺はゴンに手を引けなんて言う気はないさ。ゴンの足らない部分を俺が支えてやればいいだけって話だ。ゴンが殺せないなら、俺が殺して道を作る。ゴンが1人でやるって言うなら、俺は邪魔が入らないようにしてやる」
ゴンを背負いながら力強く宣言するキルアに、ナックルやシュートはもう何も言えなかった。
ラミナを除いて。
「それでもゴンやと一撃も入れることなく死ぬで。その覚悟も出来とんやろな?」
「……ああ。けど、させない」
キルアはラミナにまっすぐ目を合わせる。
「こいつは殺させないし、死なせない。絶対に」
「……なら、ええけどな」
ラミナはそれ以上追及することはしなかった。
「ゴンが起きたら言うとけや。本気で勝つつもりやったら、基礎訓練と組み手からやり直せってな。修行の監督はキルア、お前がやりぃ。相談くらいは乗ったるでな」
「ああ。……サンキュ」
「ふん。ゴンを寝かしてきたら、次はお前と組み手したる。準備しときや」
「分かった」
キルアはゴンをコルトがいる屋敷へと運ぶ。
ラミナはそれを見送って、先にティルガと組み手を始めることにした。
だがその前に、ティルガはゴンを見つめながら、思ったことを素直に口にする。
「……本当にあの子供を連れて行って大丈夫なのか? 我が言えることではないが、其方の言う通りあの子供ではネフェルピトーには到底及ばぬぞ。キルアが付いているとしても」
「やろな。まぁ、自分の意志でプロハンターとして参加する以上、うちらがどう言おうが、結局手も足も出ずに死のうが、それはあいつらの責任っちゅうだけのことや」
ラミナは肩を竦め、ティルガもそれ以上何も言わずに頷いて、組み手を始めるのだった。
数時間後。
ゴンが意識を取り戻した時はすでに夜だった。
ゴンは布団の上で横たわったまま、顔や体に走る痛みで顔を顰める。
だが、それ以上にゴンに襲い掛かっているのはラミナに叩きつけられた現実だった。
何もかもが足らないという事実。
数日前に自分が弱い事を悔やみ、反省したばかりだというのに。
それでもまだ足りなかった。
「殺す気……か」
自分の命を懸けてもまだ届かない。
NGLでも何体かのキメラアントを殺したが、それは『やむを得ない』という意識が強かった。
だが、これから挑む戦いはそれではいけないのだ。
「……カイトを助けるためなら……迷ってる場合じゃない、よね……」
覚悟を固めるように呟いたゴンは、すぐにでも修行を始めたかったが、少しでも体調を万全に知るために今は休むことにしたのだった。
お待たせしました。
次回はいよいよチャリオット達の戦いです!