暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん 作:幻滅旅団
おかしいんですよ……。緊急事態宣言が解除されたのに、仕事が楽になるどころか忙しくなったんですよ(-_-;)
ゴンの念が復活する前日。
ラミナ達は修行を終えて、東ゴルトーと西ゴルトーの国境近くの街に向かって電車に乗っていた。
ちなみにティルガは尻尾をベルトのように腰に巻き、頭に帽子を被って耳を隠している。
ブラールは足まで隠すマントを羽織って翼を隠していた。
「なんでここに来て電車移動やねん」
「私の能力は設置できる出口に限りがありますから。今回限りしか使わない場所に出口を設置するほど余裕はありません」
「さよで」
ラミナは肩を竦めて、座席にもたれ掛かる。
ティルガとブラールは初めての電車故かずっと窓から景色を眺めていた。
ゴンとキルアは2人でトランプをして遊んでいた。
2人の様子からは、とてもではないがこれから死地に赴くようには見えない。かなりリラックスしているようにシュート達の目には映った。
「本当にゴンを連れて行って大丈夫なのでしょうか? 結局この一か月、ゴンは基礎訓練のみで終わってしまいましたが……」
「だな。修行中もどっか上の空って感じで集中出来てなかったしな」
シュートとナックルはやはり未だにゴンの参戦に関して心配していた。
モラウはその言葉に頷くも、
「奴らはもう立派な虎だ。テメェの尻拭いくらいテメェで出来るさ」
と、力強く言い放ち、そして隣の座席に座っているラミナに顔を向ける。
「だろ?」
「さぁ? ま、そこらへんの覚悟も出来ずに、参加するほど阿呆でもないやろ」
「……ゴンの方はかなり能力にムラがあるように見えるが?」
「ナックルは分かるやろうけど、あいつは本番にならんと持ち前の集中力が発揮されんタイプ。ぶっちゃけ大丈夫かどうかはネフェルピトーの前に出るまで分からん」
「それが分かれば、そのムラも安定した法則と言えるだろ。今のゴンのやる気のなさは『バネ』だと思うね」
「バネ?」
モラウの言葉にナックルは首を傾げる。
「じっくり溜め込んでるってことよ。ほら、普段は全然怒らねぇのに本気で怒ると手が付けられねぇ奴ってのがいるだろ? あれと同じさ。戦いに必要な感情全てを憎っくき相手にぶつける時のためにな」
「だからこそ、ゴンにとって必要なのはその時までに生き残れる力……ということです」
モラウとノヴの言葉にナックルとシュートは分かったような分からないような複雑な表情を浮かべる。
ラミナはそれに呆れた顔を浮かべるも、その時ティルガとブラールがラミナのポケットに目を向ける。
それと同時にラミナの携帯が鳴った。
ラミナは携帯を取り出して着信したメールを確認すると、
「げっ」
と、盛大に頬を引き攣らせた。
その声にティルガ達やモラウ達はもちろん、ゴンとキルアも反応する。
ゴンとキルアは背もたれから顔を覗かして、
「どうしたんだよ? アルケイデスから連絡でもあったのか?」
「あいつは携帯なんざ持っとらんわ。……流星街に蟻が入り込んだそうや」
「マジ!?」
盛大に顔を顰めているラミナの言葉に、キルア達は目を丸くする。
キメラアントによる流星街の侵略は、ラミナはもちろんモラウ達ハンター協会も恐れていた事態であった。
「被害は?」
「そこまではまだ分からん。分かっとるんは流星街に蟻が来たことと……クモに蟻の駆除依頼が来たことだけや」
「クモに……!?」
「師団長がおるんかもしれんな。それやったら手に負えんのは納得出来るわ」
流星街にも念を使える手練れはいるが、やはり引きこもり気質であるためキルアやカルトのように経験不足の者が多い傾向にある。
そして、経験豊富の実力者は大抵流星街を出ているので、今回は運悪く手練れが誰もいなかったのだろう。
そもそも流星街では基本的に自我流で鍛えるのが主流であるため、実力が伸びにくい者が多い。
教え合わない理由は『いずれ殺し合う仲になるかもしれない』からである。
流星街を出る者は、マフィアや闇組織に雇われたり、殺し屋などの犯罪者になる者が大部分を占める。
そのため、いずれ敵対する可能性が非常に高いのだ。
もちろん、手を組めば恐ろしい団結力を発揮するのも特徴なのだが。
「クロロ達が行くってこと?」
「いや、どうやら二手に分かれて仕事しとるみたいやな。クロロはおらんようや。もしかしたら、カルトも呼ばれとるかもな」
「カルトってぇと……確かお前と一緒に動いてたゾルディックのガキだったか?」
「そ。キルアの弟のな」
ゴンやナックル達の視線がキルアへと集中する。
キルアは居心地の悪さに顔を顰める。
「強ぇのか?」
「ゴンよりは強いやろな。けど、モラウらやナックルらよりは経験も無いし、やや格下やな。兵隊長クラスやったら大抵は問題ないやろうけど、ティルガとかヂートゥとかやったら厳しいと思うで」
「ふぅん……」
キルアは改めて聞くカルトの情報に小さく頷く。
その反応にナックルは訝しむ。
「なんだよ? 弟の事、心配じゃねぇのか?」
「ラミナが鍛えたし、親父達が入団するのを許したんだ。カルトだって危険くらいは承知の上さ。それに……俺、あんまりアイツと絡んだ記憶がないんだよね。……多分、兄貴に針を埋め込まれて殺し屋の修行が始まったからだと思うけど……」
キルアは窓の外に目を向けながら淡々と言うが、その内容は明らかに普通ではない。
ゴンやナックル達はその内容に顔を顰めていたが、ラミナはキルアの表情と握り締められた右手から、別のことで葛藤していることを見抜いた。
(カルトに関われんかったことを今更後悔するようなキルアやない。別に会えんわけやないしな。となると……
キルアはもちろん、カルト、イルミ、シルバ、ゼノ、そしてゴトー達執事からも名前すら出ない兄弟。
弟か妹かは知らないが、すでに死んでいるならば話題に出るだろう。
少なくともカルトとイルミならば、絶対に一度くらいは口にする。
だが、誰からも話題の片隅にも出ないし、存在すらも匂わせない。
(つまり……その4番目はゾルディック家において禁忌に等しい存在っちゅうことか)
ラミナは頭の片隅にメモしておくことにした。
街に到着したラミナ達は定食屋に入って食事をとることにした。
各々に料理を頼んで食事を楽しんでいると、定食屋のテレビで東ゴルトーのニュースが流れ始めた。
『ここ最近の東ゴルトーの急激な動きには、一体どのような意図があるのでしょうか? 今日もディーゴ総帥自らがTVでスピーチを行い、10日後に首都で開催される建国記念大会への国民全員参加を強く呼びかけました』
画面には東ゴルトー共和国総帥ディーゴが、国民達に向かって手を振る姿が映し出されていた。
しかし、ラミナ達の目には、ネフェルピトーの念人形がディーゴを操っている姿がはっきりと見えていた。
「隠しもせんな。まぁ、そもそも東ゴルトーのニュースなんざミテネ連邦でしか流れんやろうけど」
「まぁな。それにしても、カイトとは違って結構普通の人間のように動かせるみてぇだな」
「ええ。コルトから聞いた話ではネフェルピトーは治癒、もしくは修理と言える能力も使えるらしい。それとあの操作系能力を組み合わせれば、たとえ死んだ人間でも元通りにして生きているように操れるというわけか……」
「うちらも真っ青な下種さやな」
ラミナは肩を竦めて、ウイスキーを傾ける。
モラウは呆れた表情でラミナを見るが、特にツッコむことはなかった。
そして、顔を鋭くしてゴン達に顔を向ける。
「でだ。あのニュースから分かる様に、やはり連中は全国民の選別をそこで行うつもりだろう」
「念に目覚めた者達をどうするかまではまだはっきりしていないが……99%の国民がその選別で死に至る。その前に絶対に阻止する。リミットは10日間!」
モラウとノヴの言葉に、ゴンやキルアは緊張した顔で頷く。
「そう言えば、爺さん達はどうしてんの?」
「すでに東ゴルトー内に潜伏しているとの連絡はあったが、それ以来音信不通だ」
「アルケイデスもおるはずやから、やられたとかはないやろうな。まぁ、どうせ組み手かなんかで盛り上がっとるだけちゃうか? それはそれでバレそうやけどな」
「だといいが。もし今日中に連絡がなければ、やられたと判断して行動しろとのことだ」
その言葉にキルア達は顔を鋭くして、ラミナは盛大に顔を顰める。
その時、ノヴの胸ポケットから着信音が鳴り響く。
ノヴは携帯を取り出して、内容を確認すると小さく笑う。
「フッ。噂をすれば会長です」
「あのジジイ、地獄耳だ絶対」
「そんな可愛いもんちゃうやろ」
「残念ながら全てお見通しのようですよ」
ノヴは更に笑みを深めながら、携帯をモラウに投げ渡す。
携帯をキャッチして画面を見るモラウ。
ゴンやキルア達も画面を覗き込んで、呆れた表情を浮かべる。
『4手に別れて、護衛軍を王から引き離してくれ。決行は大会前夜0時ジャスト。可愛くない地獄耳のジジイより』
「つくづく恐ろしい爺さんだな……」
「やから可愛くないっちゅうとんねん」
そして、日付けが変わった深夜。
ホテルの中庭に出たゴンは、キルア達に見守られながらその時を迎えた。
ゴンの目の前にトリタテンが出現する。
『名残惜しいが、約束の30日が今過ぎちまった! それじゃあオレ様は消えるとするぜ!』
トリタテンがボン!と音を立てて消える。
ゴンは半信半疑で【纏】を使うと、何の抵抗もなくオーラが噴き出した。
「さぁ、これで元通り念を使えるぜ。試してみろよ」
ナックルの言葉に、ゴンは【練】を使おうとしたその時。
モラウが前に出る。
「ゴン。あいにくだが、俺はまだお前を認めてないぜ。お前の覚悟を見せてもらおうか」
モラウはネクタイを外して、シャツを脱ぎ始める。
「俺を仇だと思って打ってきな。もしも、それが腑抜けた一発なら今すぐ代わりのハンターを呼ぶ」
(それが出来たら苦労しとらんやろうに……。相変わらず演技ヘタクソやな)
ラミナは呆れながら成り行きを見守る。
「ゴン、見せてやれよ。お前の【ジャジャン拳】」
ナックルが背中を押すように声をかけ、ゴンはゆっくりとモラウに向く。
「本気でいいの?」
「ふざけんな! 少しでも手加減したらテメェは不合格だ!」
モラウは怒りに顔を歪めながらシャツを放り投げて言い放つ。
「……分かった」
ゴンは頷いて、モラウに向かって歩き出す。
モラウは息を大きく吸って、全身に力を籠めると同時に【練】を発動しオーラを力強く噴き出す。
逆にゴンは静かに目を瞑り、頭の中でカイトとネフェルピトーのことを思い浮かべる。
そして、最後にあのボロボロになったカイトの姿が頭に過ぎった瞬間。
ゴンの瞳が昏く、深く、冷たく、沈んだ。
その瞬間、相対するモラウの背筋に悪寒が走る。
そして、ゴンの変化にナックル、シュート、ノヴ、ティルガは冷や汗が流れ、ラミナは無表情に見つめ、キルアは悲し気に見つめていた。
ゴンが右拳を構えて、腰を据える。
「最初は……グー!!」
右拳のオーラを集中させるゴン。
以前とは比べ物にならないオーラが集中し、そして圧し潰すような圧を発して、風が吹き荒れる。
想像以上のオーラにモラウは無意識に半歩後退る。
ゴンはそれでもオーラを集中させていく。
そして、溜め込んだ
キルアが静かに歩み寄って、ゴンの肩に手を乗せる。
「ゴン……もう十分だ」
その言葉にゴンはオーラを霧散させて、気持ちを落ち着かせていく。
「だろ? おっさん」
「あ……ああ……」
モラウは全身から冷や汗を流して小さく頷く。
そして、正気に戻ったゴンは慌て出す。
「キ、キルア、サンキュー! ゴメンナサイ、モラウさん!」
ゴンはモラウに向けて両手を合わせる。
「ホントに殺しちゃうとこだった」
「……フッ、フハハ。フハハハハ! 参ったぜ、完敗だ! イカレ具合も言うことなしの一人前だよ!」
モラウは高笑いを上げてゴンを褒め称える。
だが、ラミナは小さくため息を吐くのだった。
(やっぱ碌でもない方に傾きよったな……。まぁ、うちが言うたことやけど……)
それでもやはり後々のゴンには悪影響な気がしてならない。
(いつかは乗り越えなあかんことやけど……今回やない方が良かったんは間違いないわな。こらぁキルアの負担が大きすぎるか?)
ゴンの
実力の問題ではなく精神面、特に人間関係の経験の無さが仇になる気がしてならない。
(とりあえず、期日までは様子見るか)
ラミナがそう考えていると、モラウが話を進め始めていた。
「ここからは別行動だ。これからはそれぞれの方法で任務を全うしよう」
シャツを着ながらモラウはゴンとキルアに顔を向ける。
「ゴンとキルアは、望み通りネフェルピトーを。ナックルとシュートはモントゥトゥユピーって奴を」
「了解」
「俺とノヴはシャウアプフ。そして、ラミナとティルガ、ブラールはアモンガキッドだ」
「やんな」
「分かった」
「……」
「それじゃあ……健闘を祈る!!」
こうして、ラミナ達キメラアント討伐隊は本格的に始動したのだった。
その数日前、ゾルディック家にて。
仕事から帰ってきて休んでいたカルトの携帯に着信が届く。
「ん? ……シャルナークから」
クモの仕事かな?と思いながらメールを開く。
その内容に目を通すと、僅かに目を丸くする。
「ラミナが仕事をしくじった……? 流星街に?」
カルトもラミナがキメラアント討伐のためにNGLに向かったことは、ゼノやマチから聞かされていた。
ゼノからは「今回はラミナでも少々厳しいかもしれんな」と言われていたが、それでもカルトはラミナが失敗するとは思ってもいなかった。
カルトはどうしようかと考える。
「ラミナの後始末か…………いいかも」
手玉にされっぱなしのラミナに1つ貸しが作れるかもしれない。
そう思うとカルトの口に小さく笑みが浮かぶ。
「ラミナが仕留め損ねた相手だし……楽しく遊べそう♪」
正確にはラミナ1人では数が多すぎて仕留められなかっただけなのだが、そこまで情報がないカルトはそれだけキメラアントの実力を高いと推測した。
カルトは足取り軽く自室を後にする。
向かったのはシルバとキキョウがいる部屋だ。
「お父様、お母様」
「カルトか」
「どうしたの? カルトちゃん」
和室で寛いでいた2人は、訪れたカルトを温かく迎える。
「旅団から連絡がきた。流星街にキメラアントって生物が潜り込んだらしくて、その討伐を依頼されたって」
「キメラアント……? ああ、オヤジから聞いたな。キルやラミナが動いてる奴らか」
「その者達が流星街に……。それで? カルトちゃんも行くの?」
「うん。ラミナが仕留め損なった相手を見てみたいし、他の団員の力も見れるかもしれないから」
「なるほどな。分かった。気を付けて行ってこい」
「いってらっしゃい、カルトちゃん」
「うん。行ってきます」
挨拶を済ませて、執事に空港まで送ってもらったカルトは、集合場所の最寄りの空港に向かう飛行船に乗る。
(お母様にラミナ、クモの故郷か……。強い奴いないのかな?)
カルトが会った流星街出身者はほぼ全員実力者ばかり。
それ故かカルトが抱く流星街のイメージは、化け物の巣窟のようなものだった。
それは間違ってもいないが、正確でもない。
流星街に生きる者達は、世界に存在を認められた人間ではないのだから。化け物と呼ばれても相違ない。
数日後、空港に到着したカルトは、ロビーにてタクシーで目的地まで行くか、歩いて行くか迷っていた。
(意地になって執事帰したの、失敗だったかな……)
そう小さな後悔を抱き始めていると、
「カルト」
「え?」
背後から声をかけられて振り向くと、そこにはマチが立っていた。
「マチも来たの?」
「まぁね。ラミナが逃したキメラアントって奴を見てみたいし。あの子の尻拭いをしてやれば、言うこと聞かせられるからね」
「……」
自分と全く同じことを考えていたマチに、カルトは自分の事を差し置いて呆れを浮かべる。
マチは肩を竦めて、
「ま、今回は数の差があったみたいだから、ある程度逃がしてもしょうがなかったってあの子は言うだろうけどね。それでも失敗は失敗。アタシ達に尻拭いさせた貸しは消せないよ。他の連中だって、それ目的だろうからね」
そう言いながらマチは歩き出し、カルトは後に続く。
「他には誰が来るの?」
「シャルにフィンクス、フェイにボノ。で、アタシ達。後は団長といるか、好き勝手に仕事を見つけてるよ。団長はともかく、来なかった奴らはラミナに貸しを作る気はないってことだね。ノブナガは自分で見つけた仕事のせいで来れなかっただけだけど」
「ふぅん……」
「この街でシャルと合流する予定だよ。そこからはシャルが用意した車で行くから」
「分かった」
その後、マチとカルトはシャルナークと合流し、流星街に最寄りの町へと向かう。
クモと蟻の決戦はすぐそこまで迫っていた。
ということで、今回はシズクを待機させて、マチを参加させました。
ザザンの部下の兵隊蟻も全員ではありませんが、少し変える予定です。せっかくですからねw
ということで次回からはマチ達の戦いです!