暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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お待たせしました


#117 ゴウヨクノクモ×タイ×ボウショクノアリ

 流星街より依頼を受けた幻影旅団の面々は、最寄りの町に集結していた。

 

 街頭のテレビではキメラアント達のニュースで持ちきりであり、マチ達はそれを眺めながらシャルナークの到着を待っていた。

 

 集まったのはマチ、カルト、フィンクス、フェイタン、ボノレノフ、そしてシャルナークの6人である。

 

「随分と派手に暴れてやがんな」

 

「だね」

 

 煙草を吹かしたフィンクスの呟きに、フェイタンも頷く。

 そこにシャルナークが合流する。

 

「お待たせ」

 

「よし、行くか」

 

 フィンクスの号令に一行は移動を始める。

 町を出て、蠅やガスが飛び交う荒野を歩いて流星街へと向かう。

 

「キメラアントて言うらしいね、あれ」

 

「聞いたよ。人と交じってああなったんだろ?」

 

「ああ。どうやらラミナが動いてたらしいけど、仕留めきれなかったみたいだな。だろ? マチ」

 

「そうだね。ハンターに頼まれてミテネ連邦の方に向かったはずだよ」

 

「ミテネ連邦なぁ。あそこらへんは訳分かんねぇ国が多いからな」

 

「他の国のこと言えないね」

 

「けど、元は蟻だろ? 巣の周りで女王蟻とウロチョロしてりゃいいのによ」

 

 フィンクスのボヤキに頷いたボノレノフは、マチとシャルナークに顔を向ける。

 

「ラミナから何か聞いてないのか?」

 

「もちろん聞いたよ。どうやら女王蟻が死んだらしい。それで、兵隊蟻達はそれぞれ王になるために巣を飛び出して行ったって話だ」

 

「ん? じゃあラミナは依頼を達成したってこと?」

 

 マチが小首を傾げて訊ね、シャルナークは小さく首を振る。

 

「いや、女王蟻を殺したのはその子供の王だってさ。だから、ラミナの依頼はどっちかっていうと失敗だな。で、ラミナは今、王を仕留める方に集中するんだと」

 

「ちっ……情けねぇ野郎だな」

 

「野郎ちゃうって言うだろうけどね。あはははは!」

 

「それにしても、ミテネ連邦からまたなんで流星街に?」

 

 今度はカルトが質問し、シャルナークは顎に手を当てる。

 

「ん~……そうだなぁ」

 

「たまたま行きついたか、ごみの臭いにでも誘われたか?」

 

「さぁな。ただ偶然ってことはないだろうね。最初に蟻が見つかったNGLも、その近くにある東ゴルトーも、外に情報が出ない国だ。流星街と条件は同じ。……いや、世界に存在を公に認められてない分、まだこっちの方が狙いやすいだろうな」

 

「蟻からすりゃ安心して侵略できるってわけか」

 

「なるほどね。ここならハンター協会も手を出せないし、いくら喰い荒らされようが他の国からすればむしろありがたいってことね」

 

「ああ。だから、ラミナも依頼を引き受けて、団長も許可したんだろうな」

 

結局(けきょく)ワタシ達が尻拭いすることになたけどね」

 

「まぁ、ラミナ1人じゃ流石に千匹近い蟻を仕留めきるのは難しかっただろうな。メールじゃあハンター協会も3人しか派遣しなかったらしいし、女王蟻を守る蟻も念能力を使えて、かなり強かったらしいよ」

 

「「へぇ……」」

 

 フィンクスとフェイタンが、興味を引かれたのか笑みを浮かべる。

 それにシャルナークは苦笑して、マチは呆れる。

 

 カルトもマチの隣で『見てみたいなぁ……』と思っていたが、表情には出さなかった。

 

 その後、2時間ほど歩くと、前方の景色が変わる。

 

 辺り一面ゴミの山。土の地面すらも見えず、敷き詰められたゴミの上をトラックが走り回っている。

 

 その周囲には白い貫頭衣を纏った者達がゴミの山を漁って、使える物を選別している。

 上空にはカラスが飛んでおり、相変わらず蠅も大量に飛び回っている。

 

「お~……結構久しぶりぃ」

 

「変わってねぇなぁ」

 

「ここが……流星街」

 

 カルトはスラムのようなイメージを抱いていたが、想像以上に街として形を成していた。

 ゴミの山から発生するガスのせいか、顔まで覆う服を着ている者がほとんどだが、それ以外はどこにでもありそうな街並みだった。

 

 街に足を踏み入れたところで、マチ達の前に3人の人が現れる。

 ガスマスクを被っているため顔は一切見えないが、今回依頼を出した者達の代表者であり、流星街を運営する『議会』の一員でもある者達だ。

 

 シャルナークが代表して声をかける。

 

「状況は?」

 

「被害者と殉法者合わせて死人は300人を超えとる」

 

「爆弾も全く効かないし、対応に苦慮している」

 

「死者の定義についても、議会の間でも意見が分かれておってな」

 

「あ? どういう意味だ?」

 

「こっちだ」

 

 フィンクスの質問に答えず、男達は案内を続ける。

 それに青筋を額に浮かべるフィンクスだが、シャルナークが抑えて案内を続けさせる。

 

 一行が向かった先は教会だった。

 

 教会の外では冥福を祈る者達が膝をついて頭を下げていた。

 

 教会の中には布を被せられ、手向けの花を乗せられた遺体が大量に並んでいる。

 

 その内の1つに歩み寄って、男の一人が布を外した。

 

 

 現れたのは、異形の死骸だった。

 

 

 それにシャルナーク達も目を丸くする。

 

「つい先日まで普通の人間だった」

 

「……蟻の仕業かぁ」

 

 もはや人の面影は一切ない。

 だが、それでも元は流星街の住人で、今は息をしていない。

 

「それでも死者には違いないだろ? 何が問題なんだ?」

 

「……生きて奴らに加担する者がいる……! 異形の姿になってな」

 

「ほぉ……」

 

「彼らを元に戻す術があるか否か……。現在議会はその点を死の境にする意見が大勢となっている」

 

「……クックックッ」

 

 フィンクスはその言葉に小さく笑う。

 

「報復しようにも、仲間が死んだのか、改造されただけなのかで揉めてるってか」

 

「……馬鹿馬鹿し」

 

 マチは腕を組んで呆れた表情を浮かべる。

 フィンクスも頷いて、

 

「ホント変わらねぇな。ずれたとこで迷走してやがる」

 

 一番重要なのは『流星街の住人が襲われた』という事実のはずなのに。

 加担した者がいようが、死んだ者がいる以上流星街から()()()()のは間違いない。

 

 ならば、どうするかなど……決まっているはずなのだ。

 

 フィンクスは男達に背中を向けて歩き出し、マチ達も後に続く。

 

「俺達は勝手にやるぜ。邪魔する奴は倒すだけだ」

 

 目指すは流星街の外れの城。

 

「安心しな。今日中に退治してやるよ。自称『女王』をな」

 

 

 

 

 そこは本来長老を始め、『議会』に出席できる者達が暮らす城だった。

 

 だが、今は糸で覆われており、まさしく『虫の巣』と化していた。

 

『繰り返す! 服従せよ! 我は女王なり!! 逆らいし者は極刑に処す!! 選ばれし者は楽園への永住を約束しよう!!』

 

 流星街の子供でも騙せないであろう幼稚な言葉が、城から響いてくる。

 

 フィンクス達は城の前までやってきていた。

 

「アホらしい内容だね」

 

「蟻の癖に、蜘蛛の巣ってか」

 

「ワタシ達への挑戦ね。どっちが強いクモか教えてやるね」

 

「じゃあ……正面突破で」

 

「異議な~し」

 

 フィンクスは腕を解しながら、正面入り口へと向かう。

 それにマチ達も続き、城の中へと入る。

 

 城の中も糸で覆われており、誰の姿も見えなかった。

 

「誰もいねぇな。ご自由にお入りくださいってか」

 

「よっぽど返り討ちにする自信があるんだろうな」

 

「それならそれで、向こうから来てくれて楽に終わるね」

 

「だね。……じゃ、アタシはこっち」

 

 マチは通路の1つを指差す。

 それを見たフェイタンは、違う通路へと体を向ける。

 

「ワタシはこちね」

 

「じゃあ、俺は正面突破継続すっか」

 

「……皆バラバラ?」

 

「当然ね。誰が女王を殺るか、競争よ」

 

「お前だって、俺達に見せたくない能力くらいあるだろ? まぁ、ラミナやマチにはバレてるかもしんねぇけど」

 

「最近カルトはずっとゾルディックにいたから、アタシは知らないよ」

 

「くくく! 向かってくる奴は全部始末しろ。もしも女王を倒せたら、お前の言うこと何でも一つ聞いてやるよ。ラミナと一緒にな」

 

「……了解」

 

 カルトは自分の後ろに付いてくるフィンクスやラミナの姿を想像して、笑みがこぼれそうになる。

 

 その様子をシャルナークは笑みを浮かべながら見つめており、

 

(マチが女王を倒したら、これまで以上にラミナと一緒にマチに振り回されるかもしれないことには気付いて無さそうだなぁ)

 

 などと考えていた。

 

 もっとも、フェイタンが勝っても地獄が待っているだろうし、誰が勝つにしろラミナが碌な目に遭わないのは確定事項なのだが。

 

 そして、高確率でラミナはカルトを巻き込むだろうことも想像に難くない。

 

 シャルナークは込み上げる笑いを必死に抑え込んで、合図を出す。

 

「それじゃあ……」

 

 

『スタート!!』

 

 

 同時に玄関ホールからそれぞれの道に飛び込むマチ達。

 

 いよいよクモの爪が、蟻に迫ろうとしていた。

 

 

 

 

 女王の間にて。

 

 元師団長の1人、ザザンは玉座に座って部下の一人にネイルをさせていた。

 

「侵入者はどうなったの? パイク」

 

「はい。今、散りましただ」

 

 ザザンの質問に答えたのは、元兵隊長で蜘蛛型のキメラアントのパイクだ。

 城中に張り巡らされた糸は全てパイクの糸で、その糸に触れた振動を感じ取ることが出来る。

 

「糸から伝わる歩き方からも、今度の連中が只者ではないことが分かりますだ。常時野生に身を置きし者の足運び」

 

「強いの?」

 

「はい」

 

「じゃ、お前も行っておいで」

 

「は……しかし、それでは女王様をお守りする者が……」

 

「ウフフフフ。私は大丈夫。私が心配なら一刻も早く敵を捕獲して戻って来なさいな。頼りにしてるわよ、パイク」

 

 ザザンの言葉にパイクは感動に震える。

 

「お、おお……なんともったいない御言葉……! このパイク、ザザン様に全てを捧げますだぁ!」

 

 高らかに宣言したパイクは全速力で侵入者排除に向かう。

 

「行って参ります!!」

 

 パイクを見送ったザザンは、ネイルが終わったのを確認して悠々と玉座から立ち上がる。

 

「さて、私も……」

 

「御出陣ですね」

 

 控えていた部下が衣服をザザンに差し出す。

 

 その表情は一欠けらもザザンの敗北を想像していない。

 

 ザザンは渡されたスカートを身に纏って、

 

「母最大の不幸は、戦闘の喜びを知らなかったこと」

 

 すでに死んでいるであろう女王蟻を思い浮かべながら、己と比較する。 

 

 ザザンは女王蟻を反面教師としていた。

 

 増兵には産卵ではなく、操作系能力【審美的転生注射(クイーンショット)】を活用して人間を変態させ、従えさせることで成し遂げた。

 敵に引きこもることなく、撃って出ることで己を高めて愉悦を得る。

 

 その結果、今では軍勢を率いる女王となった。

 

 ザザンは己が世界を統べる器であることを疑っていなかった。

 

「さぁ、楽しませて頂戴ね。おバカさん達♪」

 

 ザザンは不敵に笑みを浮かべて、標的目指して歩き出すのだった。

 

 

 

 

 フィンクスは悠々と通路を進んでいる。

 

「けっ……全っ然! 出て来ねぇじゃねぇか。コソコソ隠れやがって……やる気あんのか?」

 

 周囲に隠れているのはザザンで変態させられた元流星街の住人達である。

 

 ザザンやパイクから『手を出すな』と命じられているのだ。

 

 故に相手をするのは、

 

「お! 来た来た」

 

「グェログェログェロ! オデ様に見つかったのが運の尽きグェロ!」

 

 現れたのは身長2mほどのカエルのキメラアント。

 カエル顔にブヨブヨとした太っ腹、両腕の肘から先は熊のような手と爪を持っている。

 

 ベロリと長い舌で口を舐めて、フィンクスを見つめる。

 

 フィンクスは左手を右肩に置いて、首をゴキゴキと鳴らす。

 

「そりゃどうかねぇ? ところで、お前ってどっちなんだ?」

 

「グェロ? どっちぃ?」

 

「元から蟻なのか、ここで蟻になったかってことだよ。身体を造り変えられるんだろ? 自称女王とやらはよ」

 

「グェロロロロ!! 貴様ぁ!! 女王様を侮辱する気グェロ!? この兵隊長、フロガンが許さんグェロォ!!」

 

 フロガンが唾を飛ばしながら捲し立てる。

 

 フィンクスはそれを鼻で笑って、拳を握る。

 

「じゃあ、どうすんだよ? ええ? 化けガエル」

 

「グェロロロロォ!!」

 

 フロガンは深く屈んで、下半身がブヨブヨの腹に沈む。

 直後、砲弾のように猛スピードで飛び出し、フィンクスに突撃する。

 

 フィンクスは横に跳んで躱し、フロガンは柱に頭から激突するが、ブニュリと頭が腹部にめり込む。

 そして、ゴムボールのように跳ね返って、スピードを全く落とさずに再びフィンクスに迫る。

 

 今度は両腕を広げて、爪を伸ばす。

 

 フィンクスは軽くジャンプして頭の上で両手を組み、迫ってくるフロガンに真上から叩きつける。

 

 フロガンは地面に勢いよく叩きつけられるが、フロガンはベタン!と平べったくなったかと思うと、先ほどのように勢いよく跳ね上がる。

 

「おぉ!?」

 

「グェロロロロ! オデ様に打撃は効かんグェロ!」

 

「へぇ……面白れぇ身体してやがんな。殴り潰しがいがあるぜ」

 

 フィンクスは不敵な笑みを浮かべて、ゆっくりと右肩を回し始めた。

 

 

 

 

 マチは駆け足で糸の廊下を進む。

 

「……粘着性はないね。ということは……この糸から相手に振動が伝わってると判断すべきか」

 

 小さく眉間に皺を寄せながらも、速度を落とさず走る。

 

「それにしても、ラミナの奴……。なんでシャル()()()に依頼するかね」

 

 妹に頼られなかったことにボヤくマチ。

 

 別に理不尽な命令をする気もない。ラミナからすれば、普段から十分理不尽なのだが。

 

 その後も悶々としながら走り続けていると、広いホールのような場所に出る。

 

「!!」

 

 その直後、天井からマチに向かって糸が飛んで来た。

 

 マチは軽やかに後ろに跳んで躱す。

 

「糸……ってことは……」

 

「ウホホホホ! 見つけただ、侵入者めぇ!」

 

 マチの前にパイクが笑いながら下り立つ。

 

 パイクの見た目に、マチは顔を顰める。

 

「気持ち悪……」

 

「んなぁ!? いきなり失礼なこと言う女子だがや!」

 

「もう少しまともな顔してたら、まだ我慢したけど……。よりにもよって、あんたみたいな奴とはね。どう見ても雌には見えないし、女王じゃなさそうだね」

 

 マチは不快感を一切隠さずに言い放つ。

 

 それにパイクも顔を顰めて、

 

「さっさと捕まえて、ザザン様に届けるべぇ!」

 

 パイクは尻をマチに向けて、肛門から糸を勢いよく発射する。

 

 マチは横に跳んで躱し、すぐさまパイクに向かって駆け出す。

 

「させねぇべぇ!!」

 

 しかし、パイクも後ろに猛スピードで下がりながら、連続で糸を発射する。

 

「ちっ」

 

 マチは舌打ちして、急転換して糸を躱す。

 

(思ったより身軽だね……。糸も連射できるみたいだし、近づくのはそう簡単にはいかないか)

 

 マチは足を止めることなく、ホールを駆け回る。

 

 パイクもマチを近づけさせないように動き回りながら糸を発射して牽制する。

 

 マチは柱に跳び移り、三角跳びの要領でパイクに迫ろうとするが、パイクも天井に飛び上がって天井の糸に掴まって糸を発射する。

 

 それもマチは前方開脚倒立回転で躱し、その勢いのまま正面の柱に飛び乗り、今度はパイクではなく別の柱に跳ぶ。

 

「逃がさねぇぞぉ!」

 

 パイクは再び糸を撃ち出す。

 

 マチは鋭くパイクを見据えて、反撃のチャンスを窺う。

 

 『蜘蛛の糸』を操るのは、パイクだけではないのだから。

 

 

 

 

 カルトは歩きながら、両手の間に団員を模した紙人形を広げていた。

 

『じゃあ、どうすんだよ? ええ? 化けガエル』

 

『気持ち悪……』

 

『う~ん……』

 

『俺の心には響かない』

 

『笑えない冗談ね』

 

 それぞれの紙人形から声が聞こえてくる。

 

 カルトは解散する直前に、マチ達に紙片を貼り付けていたのだ。

 

(……女王はフェイタンのとこかな。どうやって横取りしようかな……?)

 

 紙人形を仕舞いながら、考えこむカルト。

 

 そこに立ち塞がる影が現れる。

 

「オウオウオウ! なんだいなんだい! 童じゃねぇかよい!」

 

 赤い甲殻を持つ頭にクワガタの鋏を持つキメラアント。

 鋭い爪を生やし、前腕部に棘を大量に生やした虫の両腕に、脇腹からも鎌の腕を生やしている。下半身には袴のようなズボンを身に付けていた。その足も大きく、太く鋭い爪が2本生えている。

 

「あ! だが、侵入者は侵入者だよい! 悪いが童ぁ! 大人しくするんだよい!」

 

「いやだ」

 

「よよい!?」

 

 キメラアントは、歌舞伎口調で大げさに驚く。

 

 カルトはそれを一切合切無視して、歩き出そうとするが、

 

「あ! 行かさねぇ、よよい!」

 

 歌舞伎キメラアントは一足飛びにカルトの真上に移動して、踏み潰すかのように足を伸ばして落下する。

 

 カルトは滑る様に後ろに下がって、足爪を躱す。

 

 ズシン!!と着地し、大きく脚と両腕を広げて歌舞伎ポーズをとるキメラアント。

 

「よよよい!! あっしの名はスタグロウ! ここから先に行きたきゃあ、あっしを倒していくがよよい!!」

 

「……うるさい奴」

 

 カルトは扇子を広げ、苛立ちを瞳に浮かべてスタグロウを睨む。

 

 だが、スタグロウはカルトの扇子を見て、「よよい!?」と驚きの声を上げる。

 

「こ、これは……!? 同好の士であったか童ぁ!」

 

「は?」

 

「粋と雅を愛する者に悪人なし!! なんという悲劇だよい……!?」

 

「……」

 

「あ! しかぁし!! あっしは姫の兵隊だよい! ここは心を鬼にして、戦わせてもらうよよい!!」

 

(……メンドクサイ)

 

 カルトは半目になって、スタグロウを見つめていた。

 

(けど、さっきの動きは油断出来ないかも……。想像以上に速かったし、あの体も硬そうだな……。念も使えるはずだから、【堅】を使われたらボクじゃ破れないかも) 

 

 もちろん、観察は怠らない。

 言動は馬鹿馬鹿しいが、肉体的には一切気が抜ける要素はない。

 

 力が弱いわけはないだろうし、一度捕まればカルトでは逃げられない可能性は高い。

 

(ちょっと時間かかるかも……)

 

 カルトは瞳を暗く、冷たくして殺気を纏い始める。

 

 目の前にあるのは()()()()

 

 人であろうとなかろうと、命があるならば殺すのみ。

 

 特別なことは何もない。

 

 カルトは、ゾルディックなのだから。 

 

 




シャルナークとボノレノフはそのままとさせて頂きました(__)
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