暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん 作:幻滅旅団
フィンクスは迫るフロガンを見つめながら、肩を回す。
「5……6……7……8……」
【廻天】を発動して、右腕に膨大なオーラが集中する。
「グェロ!?」
「くぅたばれやぁ!!」
フィンクスは全力で右ストレートを振り抜き、フロガンの頭に叩き込まれる。
しかし、フロガンはバラバラにならずに後ろに勢いよく吹き飛んでいった。
フィンクスはその手応えに眉間に皺を寄せる。
「あぁ?」
フロガンはスーパーボールのように柱や壁で跳弾して着地する。
流石にノーダメージと言うわけにはいかず、ややふらつきながらフィンクスを睨む。
「グェロロロロ……。驚いたグェロ。人間の癖にぃ……」
「テメェ……何しやがった?」
「グェロロロロ!! オデ様のオーラはオデ様の身体と同じく、あらゆる打撃や衝撃を吸収するグェロォ!」
「ちっ……面倒な奴だぜ」
「グェロロォ!! 死ねぇ!」
フロガンは再び勢いよく飛び出して、フィンクスに襲い掛かる。
フィンクスは苛立ちに歯軋りして、フロガンに裏拳を叩き込む。
「舐めんじゃねぇ!!」
フロガンは直角に軌道を変えるが、また柱にぶつかって跳ね返って部屋中を跳び回る。
そして、再びフィンクスへと襲い掛かり、フィンクスは右脚を振り上げてフロガンを蹴り飛ばす。
だが、フロガンはすぐさま跳ね返りまくって、またフィンクスに攻めかかる。
「グェロロロロ! 効かん効かんグェロォ!! まだまだスピードを上げるグェロよぉ!!」
フロガンの宣言通り、先ほどまでより跳び回る速度が上がる。
フィンクスは紙一重で砲弾のように飛んでくるフロガンを躱していく。
「ちっ……。(完全に膠着状態だな。奴の突撃を止めるのは簡単だが、仕留めるには手間がかかる)」
互いに決定打が欠けている。
フロガンもフィンクスを一撃で仕留める威力はないが、フィンクスの一撃で死ぬことはない。
だが、このままいけば、フィンクスの方がじきに追い込まれる可能性が高い。
(ちっ……俺ぁこういうねちっこい奴を相手にすんのは向いてねぇんだよなぁ。けど、このままじゃ他の連中に女王盗られちまうな)
フィンクスはだんだんと苛立ちが募り始める。
その苛立ちがフィンクスの動きを雑にした。
「隙ありグェロォ!!」
フロガンがフィンクスの背中に猛スピードで突撃した。
「がっ……! くっそがぁ!!」
フィンクスは歯を食いしばって右脚で踏ん張る。
更に腰を捻って左腕を背後に回して、フロガンの服を掴む。
そして、全力で腕を引きながら回転し、右膝蹴りをフロガンの脇腹に叩き込む。
フロガンは再び吹き飛ばされ、壁に叩きつけられるがケロッとした様子で着地する。
「グェロロロ。馬鹿な奴だグェロ。効かないって何度も言ってるグェロ」
フロガンはフィンクスを馬鹿にするが、フィンクスはそれを無視して右肩に手を当てて首をゴキゴキと鳴らす。
「あ~あ。くそったれ。蟻程度に、マジでやることになるたぁなぁ」
「グェロ?」
「ま……時間もねぇし。誰も見てねぇし、別にいいか」
「何を言ってるグェロ?」
「おい、カエルアリ。一発だ。次の一発で、終わらせてやるよ」
フィンクスは不敵に笑って、宣言する。
それにフロガンは一瞬ポカンとするが、すぐに大笑いを上げる。
「グェロロロロロ!! やっぱり馬鹿だグェロ! オデ様にお前の攻撃は効かないグェロよ! お前は何も出来ずにオデ様に殺されるんだグェロォ!!」
フロガンは全力で踏み込んで、勢いよく飛び出す。そして、スピードを上げるためにフィンクスの周囲を跳ね回る。
フィンクスはそれを無視して、腕を回し始める。腕を回すごとにオーラが増大していく。
「……10っと。これくらいでいいか……。そんじゃあ……やるかぁ!!」
フィンクスは腕を回すのをやめると、なんとその場で勢いよく回り出す。
「グェロロロ!! なんだぁ、それは! それでオデ様を殺せると思ってるなら、片腹痛いグェロ!!」
フロガンはフィンクスの動きに大笑いしながら、最後に着地した柱を踏み砕いてフィンクスに突撃する。
「おぉわぁりぃだぁグェロォ!!」
フィンクスは回転しながらも迫ってくるフロガンの気配を完璧に捉えていた。
「そりゃあ、お前だあ!!」
そして、フィンクスは回転をやめ、フロガンに向かって大きく足を踏み出して腕を振り被る。
その拳に纏っていた膨大なオーラは、
回転してドリルのように尖っていた。
「グェロォ!?」
「くぅたばれやぁ!!!」
フィンクスは全力で右腕を振り抜く。
フロガン程度がフィンクスの拳を避けられるわけがなく、フロガンはドリルのようになったオーラにいとも簡単に体が抉られて、肉片もまともに残さず砕け散る。
フィンクスは拳を振り抜いた姿勢で止まり、ゆっくりと姿勢を戻す。
「ちっ……なんだよ。こっちもここまで回らなくても良かったな。どうにも匙加減が分からねぇ能力になっちまったぜ」
【廻天】と合わせて発動する能力。
【
腕ではなく身体を回せば回すほど、【廻天】で増大させたオーラに回転を加える能力。
身体を回さなければならないという大きな隙を作ること、増大したオーラが強力なほど身体を回す回数が増えるという制約がある。
「ラミナと戦った捩魔とかいう奴の能力を真似してみたはいいけどよ……。切り札にするにゃ、ちぃと使い辛過ぎるかもな」
フィンクスは小さく舌打ちするが、気を取り直して通路の先へと目を向ける。
「さて……どっちに行くか……」
視界に映るは二本の通路。
「右か……左か……」
フィンクスは顔を顰めて、懐からコインを取り出す。
「コインで決めるか」
そして、フィンクスはコインを弾き、向かったのは右側の通路。
すると、前方で巨大な衝撃が発生し、壁が吹き飛んだ。
「ヒュウ♪ お~お~。派手にやってんなぁ」
フィンクスは口笛を吹いて、衝撃の元へと歩く。
大きなクレーターが出現しており、その中心には身体に包帯を巻き直しているボノレノフの姿があった。
フィンクスはクレーター縁で足を止め、ボノレノフはフィンクスに顔を上げる。
「他の奴らは?」
「さぁな。まだ楽しんでんじゃねぇの? それにしても派手にやりやがったな」
「逃げ足だけは速くてな。踏み潰すのに力を入れ過ぎたかもな」
「ま、いいんじゃねぇの? それにしてもラミナの奴、数が多かったくらいでこの程度の連中を逃がしやがって……」
フィンクスはクレーター縁に屈んでボヤく。
それにボノレノフはフィンクスの相手は楽しめる相手じゃなかったようだと推測する。
そこに近づいてくる気配を察知して、顔を向ける。
現れたのはシャルナーク。
「よぉ、シャルって、あん? どうした?」
シャルナークの動きがどこかぎこちないことを見抜いたフィンクスとボノレノフ。
それに服や体のところどころに傷が出来ていた。
「手間取ったのか?」
「俺と同じ操作系能力者でさ。最初に相手をしたのは操られている蟻だったから、俺の能力が効かなかったんだよね。それでちょっとだけ手間取った」
シャルナークは肩を竦めながら答える。
「へぇ、じゃあ奥の手でも使ったのか?」
「さぁ? ただ、女王と遊ぶのは無理っぽい」
「よっしゃ! これで競争相手が一人減ったな! じゃあ、さっさと女王の顔でも拝みに行くか」
「だな」
「ったく……酷いなぁ」
シャルナークは小さくため息を吐くも、すぐに笑みを浮かべてフィンクス達と共に先へと進むのだった。
その頃、マチは相も変わらずパイクの放つ粘着糸を躱し続けていた。
しかし、徐々にパイクの糸が張り巡らされていき、逃げ場が無くなっていくのであった。
「なはははは! いつまで逃げ続けるだがや、オナゴ! どんどん逃げ場がなくなってくだぞ!」
「ふん」
マチはパイクの挑発を無視して、動き続ける。
パイクがまた糸を発射したその時、
マチが猛スピードで糸を躱しながら、パイクへと殴りかかる。
「なぁ!? っとぉ!」
パイクはすぐ近くの糸を掴んで身体を引き、マチの拳を躱す。
ターザンのように糸から糸に跳び移って、マチから距離を取る。
「ちっ……」
(ホントにすばっしこいオナゴだや……。けんど近づかなければ、そこまで怖くねぇべ)
パイクはマチの動きを推測しながら、作戦を考える。
(どんどん糸を張っていけば、好き勝手に動けなくなるはずだべ。なら、足を止めた時が勝負だべ! あの技は尻の穴にかなり負担がかかるだが……)
「まだまだ行くべぇ!!」
パイクは再び糸を発射する。
マチは糸を躱して、また駆け回る。
(糸に制限はないか。面倒だね……。そろそろいいか……)
マチは足を止めて、パイクを正面から見据える。
パイクはそれを逃げ場が無くなったからだと思い、上機嫌になって笑い出す。
「なははははは! 遂に諦めただか!? じゃあ、こっちもそろそろ本気で行くべぇ!!」
叫びながら、パイクは大きく跳び上がる。
そして尻をマチに向けると、肛門が二回引き攣る。
直後、網目状になった糸がマチを覆うように発射された。
「これで終わりだべえええ!! 【
「終わり? 誰が?」
マチは一切驚くことなく、右手を握り締めて勢いよく引く。
すると、パイクが発射した網目状の糸が途中で何かに遮られたように止まり、周囲の粘着糸が不自然に曲がる。
「なぁ!?」
「甘いよ」
続いて左手を引く。
再び周囲の粘着糸が曲がり、パイクは何かに縛られたように動けなくなる。
「な、なんだべ!? どういうことだか!?」
「糸を使うのがアンタだけだなんて誰か言ったのかい?」
「い、糸ぉ……?」
戸惑うパイクの目に突如細く輝く糸が現れ、それが自分の身体を縛り、【愛の放射線】を受け止めていた。
「こ、これは……オーラの糸、だべか……?」
「クモの糸は引っ付くだけじゃないんだよ」
動き回っていたマチは柱に針を刺して、念糸を垂らしていたのだ。
マチはオーラの糸を回収しながら、更に両腕を全力で引く。
マチの念糸で引っ張られていたパイクの粘着糸が引き切られ、パイクを締め付ける念糸の力が更に強くなる。
「ぐぐぐ……! け、けど……これじゃオラは殺せねぇだぁ……!」
だが、パイクもキメラアント。見た目より頑丈なのだった。
マチの念糸が強力であったとしても、パイクの身体を締め千切るほどではなかった。
「だろうね」
マチは突如パイクを縛っていた念糸を消す。
そして、勢いよく走り出し、先ほどまで以上の速さでパイクに詰め寄る。
パイクは慌てて糸を発射しようとするが、その前にマチの右ストレートがパイクの尻部に叩き込まれる。
「おぎょほぉ!?!?」
パイクは変な悲鳴を上げて、後ろに吹き飛ぶ。
しかし、マチが左腕を引くと、パイクが突如脚を引かれたように空中で停止する。
「こ、今度はなんだべ!?」
パイクが目を向けると、鋭い爪が生えている右脚に念糸が巻き付けられていた。
「捕まえた」
マチは両手で念糸を掴んで、勢いよくパイクを振り回し始める。
「ぬぅああああああああ!?」
パイクは悲鳴を上げるもあまりの力に抵抗出来なかった。
マチはパイクを柱に叩きつけて砕きながら、まだ残っている粘着糸を振り払っていく。
(な、なんて力だべぇ!? う、動けねぇだぁ!? け、けど……これでも糸は使えるだぞ!!)
パイクは肛門に力を入れて、再び【愛の放射線】を放とうとする。
しかし、放った瞬間、糸がバラバラに引き裂かれてしまった。
「んなあぁぶげぇ!?」
パイクは目を丸くして驚きの声を上げるが、そこでマチが手を離して壁に叩きつけられる。
「まだ気付いてなかったの? アンタの肛門はアタシの念糸を縫い付けてある」
先ほどパイクの尻を殴りつけた時、左手で【念糸縫合】を発動して肛門に網目状に糸を張っていたのだ。
「な、な、な……!」
「気を付けな。糸を引き千切ろうとすれば、周囲の肉も千切れるよ」
「な、なんてことするだや、おめぇ!!」
「これでアンタはもう糸を出せない。そろそろ終わらせるよ」
冷たく言い放ったマチは、再びパイクに一瞬で詰め寄る。
パイクが掴みかかろうとするが、マチは素早くしゃがんでパイクの足を蹴り抜いて足払いを繰り出した。
「ぬあぁ!?」
パイクは無様に転び、マチは素早く立ち上がってパイクの尻部を全力で蹴り抜く。
吹き飛んだパイクの腹部は潰れて、肛門から勢いよく血が噴き出す。
「ぬぎゃああああ!? オラの、オラの腹がああああ!?」
パイクは悲鳴を上げて、地面で倒れて悶える。
マチはその様子を冷たく見つめながら、ゆっくりと歩み寄っていく。
「なんだ……随分と
つまらなそうに呟いて、パイクの傍まで近づくと、
「ふがああああ!!」
パイクが勢いよく起き上がって、マチに掴みかかる。
マチは一番近いパイクの腕2本を素早く掴んで、また勢いよく振り回す。
そして、近くの柱にぶん投げて、すぐさまパイクへと跳び迫る。
念糸を繋げた針を四本投げて、一番上の両腕の付け根、三番目の両腕の付け根に針を突き刺す。
両手に念糸を二本ずつ持ち、更にスピードを上げてパイクの上に移動する。
勢いよく回転して、パイクの身体を縛っていく。
最後にパイクを踏みつけながら地面に押し付ける。
「ぐぇ!?」
「これでもう動けない」
「こんのぉ、舐めるでねぇぞ!! オラが本気を出せばこの程度ぉ!! ふんぬおおおおおお!!」
パイクは身体に力を入れて、念糸を振り解こうとするがビクともしなかった。
「残念だったね。アタシの糸はこの距離なら一番強度が高い。更にはアタシが握ってる以上、緩むこともない」
マチはまたパイクを振り回しながら勢いよく駆け出して、壁に叩きつけてめり込ませる。
「ごぁ……!!」
「ったく……ラミナもやっぱりまだまだだね。こんな連中に手間取るなんて」
マチは呆れを隠さずに言う。
パイクは痛みに耐えながらも、マチを睨みつける。
「こ、この……オナゴの癖に……」
「たかが虫に言われる筋合いはないね。その女の力に勝てない癖に」
マチは幻影旅団では戦闘要員ではない。
暗殺・撹乱要員として動くことが多い。
だが、忘れてはいけないことがある。
幻影旅団は最凶最悪の犯罪集団。
そこに所属する者は誰であっても常人ではない。
そして、マチは設立メンバーであり、
マチの念糸は
マチの念糸がどれだけ強靭であろうと、縛り続けるには
幻影旅団・団員『No.3』マチ・コマチネ。
現団員腕相撲ランキング
そう。マチは……ラミナより力が上なのである。
「じゃあね。虫けら」
マチは拳を握り締めて、パイクの顔面に右ストレートを叩き込む。
パイクの顔面に拳がめり込み、パイクの顔が陥没する。
そこにマチは左ストレートを叩き込んだかと思うと、
ドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
マチは両腕が霞む速度で、パイクの顔面にラッシュを叩き込んだ。
もちろん、パイクが耐えられるわけがなく、数発で顔面は潰れたがマチはそれでも殴り続けた。
ただの八つ当たりである。
そして、満足したところで殴るのを止める。
「ふぅ……
マチは頭どころか上半身の半分が潰れたパイクの死体を見下ろして、手に付いた血を払って言う。
「恨むなら蜘蛛に生まれ変わった自分を恨むんだね。アタシは『アラクネクイーン』。蜘蛛のバケモノの女王らしいからさ。他の蜘蛛に負けるわけにはいかないんだよ」
マチはそう言って、先を目指して歩き出す。
「女王は盗られてるかもね……。ま、あの子にはまだ貸しがあるから、アタシが先約だけど」
マチはラミナに何をさせてやろうかと想像しながら、口を吊り上げるのだった。
現・幻影旅団腕相撲ランキング~!
1位:フィンクス
2位:フランクリン
3位:フェイタン
4位:マチ
5位:ラミナ
6位:クロロ
7位:ボノレノフ
8位:ノブナガ
9位:シャルナーク
10位:パクノダ
11位:シズク
12位:カルト
13位:コルトピ
姉妹の力関係は、純粋な力関係の上下でもあるのですw
【念糸縫合】の速さを考えても、マチって接近戦はかなり得意だと思うのですよ。