暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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#12 プレート×ノ×ウバイアイ

 イルミとの死闘を乗り切ったラミナは、昼過ぎまでのんびりして行動を再開した。

 まずはクラピカを見つける事から始めなければならず、森を彷徨うしかなかった。

 

「他の奴に狩られてないとええけど……」

 

 1時間ほど歩き回るも誰にも会わない。

 流石に広すぎるかと作戦を練り直そうか悩み始めると、耳に何やら風を切る音が聞こえた。

 ラミナは小さく身構えて、音がする方向に目を向ける。

 飛んで来たのは小さな白くて丸い円盤のようなもので、ラミナはそれがナンバープレートであることを見抜いて、構えを解いてキャッチする。

 

「お~……なんかゲット出来たわ。なんで飛んできてん?」

 

 ラミナは飛んで来た方向を見ながら首を傾げるも、分かるわけもなくナンバープレートに目を向ける。

 書かれていた数字は『197』。

 残念ながら1点だった。

 

「まぁ、クラピカなわけないわな~。っちゅうか、誰のプレートやろな?」

 

 とりあえず、ポケットにしまって再び歩き出す。

 その後数時間、誰にも会うことなく2日目の夜を迎える。

 

 気配を消して、音も出来る限り出さないようにして歩き続ける。

 夜は身を潜めるのが普通ではあるが、だからこそそこが狙い目であると考えて動き回る者は多いだろう。

 むしろ、互いに視界が狭まる夜の方が動きやすいと考えるのがハンターになるべき者の考え方だ。といってもラミナの場合は暗殺者としての考え方だが。

 なので、昼間よりは誰かに会える可能性が高いとは考えているが、やはり島が広くて中々見つからない。

 

(飛んで来たプレートを考えると、5,6人はやられとると考えるべきやろな。そうなると、残りは20人くらいか……)

 

 ラミナが考えながら、のんびりと歩いていると、

 

「しゃあ!」

 

 背後の木の陰から、黒の長髪の男が短剣を構えて飛び出してきた。

 男はラミナの背中に短剣を突き刺した。しかし、ラミナの体は煙のように掻き消える。

 

「なっ!?」

 

「【肢曲】。暗殺者が使う歩法や」

 

「っ!!」

 

 目を見開いた男の背後から声がして、首後ろに手が添えられる。

 一瞬で背後に回られた男は、恐怖で体が硬直する。

 

「さて、どないする? プレート渡すなら見逃したる。まだやるなら覚悟しぃや」

 

「……わ、分かった。渡す……」

 

 男は短剣を捨て、懐からナンバープレートを取り出して持ったまま両手を上げる。

 ラミナはナンバープレートを受け取ると、男の首に手刀を叩き込んで気絶させる。

 書かれていた番号は『89』。

 

「あ。こいつのターゲットがうちかどうか聞くん忘れとった」

 

 倒れている男を見下ろして、思い出したラミナ。

 しかし、すぐに「まぁ、いいか」と考え直して、また移動を始める。

 

 その後も数時間歩き続けるが、誰にも会うことなく朝を迎えた。

 

「何だかんだで2点ゲットやな」

 

 つまり後1点。ターゲットではない者を1人倒せばいい。

 これでクラピカを狙う必要性がなくなってしまった。

 

「けどなぁ……」

 

 ラミナは眉間に皺を寄せて考え込む。

 この試験は6点集めても、期限まで守り続ける必要がある。しかも、まだラミナを狙う受験者もいる。更に89番はともかく、197番は血眼になって探している可能性がある。

 6点確保しても全く心休まらない。

 

「厄介なことやな」

 

 ラミナはため息を吐いて、歩き続けるのであった。

 

 

 

 

 その夕方。

 クラピカはレオリオと共に行動していた。

 

「くそ~、誰にも会わねぇな……」

 

「恐らくはもう半分の者がナンバープレートを集めたか、奪われたのだろう。集めた者は奪われないように隠れ場所を探しているだろうし、奪われた者はおそらく無傷ではあるまい。そうなれば、奪うより先に体力の回復に努めるだろう。生き残って来年の試験を受けるためにな。もしくは、すでに死んでいるかだ」

 

「ヒソカの奴か……」

 

 2人は昨晩ヒソカの襲撃を受けた。

 しかし、2人は1点分のナンバープレートを保持していたので、それを渡す代わりに見逃してもらったのだ。

 その後、ゾワリとする殺気に背中から襲われたので、あの後誰かが犠牲になった可能性は高い。

 

「ヒソカはターゲットを探すなどしないだろう。目についた者3人を狩る方が早いだろうからな。そして、ヒソカに奪われた者達はほぼ確実に死んでいるだろうし、死んでいなくても重傷でまともに動けないと考えるべきだな。そうなるとヒソカからナンバープレートを奪おうとする者など、ほぼいないと考えるべきだ」

 

「ほぼって……誰もいねぇだろ? あんなの」

 

「そうでもない。私が思いつく限りでは2人いる」

 

「2人ぃ?」

 

「1人はラミナだ。彼女はあのキルアの親と殺し合って逃げ延び、更にはヒソカとも戯れで戦えるほどの実力者だ。奪うくらいは出来るだろう」

 

「はぁ!? ラミナの奴、いつヒソカと戦ったんだよ!?」

 

「……(まだ思い出してないのか……)」

 

 湿原での出来事はどうやらレオリオにとっては、取り戻せない記憶になっているようだった。

 クラピカは呆れながら、レオリオの疑問をスルーして話を続ける。

 

「そして2人目は……ゴンだ」

 

「ゴン!? 馬鹿言え! あいつの勘は獣並み……いや、それ以上だぜ!? わざわざヒソカを狙う理由はねぇだろ!!」

 

「ゴンのターゲットがヒソカだったとしたら?」  

 

「っ!!」

 

「私はゴンのターゲットは知らないが……もし、ターゲットがヒソカだったならば、ゴンなら確実に一度は挑戦するだろう。ナンバープレートを奪えばいいだけだからな。ゴンならその方法を考えないとは思えん」

 

 レオリオはその推測を否定できなかった。

 これまでの試験の動きを見ていて、恐らくそうするだろうとレオリオも納得出来てしまっているからだ。

 しかし、これはあくまでヒソカがターゲットだった場合の話である。

 2人は違いますようにと願うしかなかった。その願いはすでに裏切られているが。

 

「問題はヒソカを狙う者がゴンでなかった場合だ」

 

「あ? 何か問題あるのか?」

 

「レオリオ、お前だったらヒソカを狙うか?」

 

「狙うわけねぇだろ!! 他の3人探した方が楽だっ!? そうか。ヒソカを狙う奴がいないってことは……」

 

「そう。他の3人の受験者からナンバープレートを奪うしかない。しかし、そうなるとその3人を狙う受験者もターゲット以外の受験者を狙うはずだ。ヒソカもターゲット関係なく襲っていることを考えると最低でも6人、ターゲットを横取りされた人物が出ることになる」

 

「俺もその内の1人の可能性が高いってわけか……!」

 

 クラピカはレオリオの言葉に頷く。

 25人しかいない中で自分のターゲットは大丈夫と思うのは楽観が過ぎる。

 レオリオのターゲットは未だ名前と見た目だけで、実力は不明なのだ。なので、すでに奪われている可能性は高いと考えるべきだろう。

 ちなみにクラピカのターゲットはトンパで、レオリオを襲っている所に参戦してトンパを撃退して6点を獲得している。

 そのままレオリオと組んで、今はレオリオのサポートをしているところだった。

 

「くっそ~……! だからって俺も今更1点を3人探すなんて厳しいぞ!」

 

「ああ。出来れば次に会う者がプレートを複数所持しており、我々2人で勝てる相手であることを願おう」

 

「ほぉ~、それは怖いこっちゃで」

 

「「!!」」

 

 突如聞こえた声に、クラピカとレオリオは弾かれたように振り向く。

 そこにいたのは、ラミナだった。腕を組んで木にもたれ掛かり、苦笑していた。

 

「今の話の流れやと、うちはお前らと戦わなあかんなぁ」

 

「じょ、冗談よせやい! プロの暗殺者と戦うなんて勘弁だぜ。お前はターゲットでもねぇし!」

 

「ラミナはもう6点集めたのか?」

 

「いや、まだや」

 

「なんだ? お前もターゲットが分かんねぇのか?」

 

「いや? 分かっとるで?」

 

「は? じゃあ、見つからねぇのか?」

 

「今、目の前におるで」

 

「は? 目の前? ってことは……!」

 

「……そうか。私がお前のターゲットか……」

 

「そういうこっちゃ」

 

 ラミナは木から背中をどけて、まっすぐにクラピカを見つめる。

 それだけでクラピカは威圧感を感じ、レオリオも急に空気が締め付けられるような感覚に襲われる。

 

「……マジかよ」

 

「大マジやな。まぁ、これがハンター試験っちゅうことや。それで、どうするんや? 渡してくれるんやったら、なんもせぇへんで」

 

「……」

 

 ラミナはクラピカに右手を差し出して、ナンバープレートを渡すように告げる。

 それにクラピカは鞄を下ろして、背中に仕舞っている木刀を取り出す。

 

「悪いが、渡すわけにはいかない。例え実力差があると分かっていてもな」

 

「っ! ……しょうがねぇな」

 

 レオリオは顔を顰めたまま折り畳みナイフを展開する。

 それを見届けたラミナは、小さくため息を吐く。

 

 そして、一瞬でクラピカの左横に移動し、左手でクラピカの首を掴む。

 

「「!!?」」

 

「動くなや。お前らが動くより先に、首の骨くらい圧し折れるで?」

 

 クラピカとレオリオの体に圧し掛かるような殺気が襲い掛かる。

 2人はピクリとも動けず、冷や汗が流れ出す。

 

「さて、改めて言うで? 大人しく渡して無傷で他の3点を探しに行くか、死ぬ気で抵抗して必死に逃げて試験終了までずっと昼夜問わずうちに狙われ続けるか、無様に死んで人生を終わらすか。好きなん選び」

 

「「……」」

 

「あんまり待ってやらんで? 自分の命くらい即決で決めてもらわんと」

 

「……分かった」

 

「クラピカ……!?」

 

 あっさりと応じたクラピカにレオリオは驚く。

 ラミナは表情を一切変えずに、右手を出す。

 

「ほな、ちょうだい」

 

「……」

 

 クラピカは大人しく懐からプレートを取り出してラミナに渡す。

 受け取って番号を確認したラミナはクラピカから手を放して、距離を取る。

 クラピカとレオリオは強張った表情のまま、ラミナの動向を見つめている。

 

「これでうちは6点。そっちはこれから3点探し直しやな」

 

「……」

 

「っちゅうわけで、コレ、やるわ。もういらんし」

 

 ラミナはポケットから何かを取り出して、クラピカの前に投げる。

 

 それは3()()()()()()()()()()()だった。

 書かれた番号は『198』『89』『362』。

 

 目を向けた2人はそれを見て、目を見開く。

 

「はぁ!? 3点!? じゃあ、クラピカのプレートいらなかったじゃねぇか!!」

 

「いるいる。クラピカやったら、その3枚が無くてもうちをもう狙う気ないやろ?」

 

「……そういうことか」

 

「どういうことだよ……!?」

 

「さっき話しただろう。プレートを集めても、期限までそれを守らなければならない」

 

「それがなんだよ」

 

「プレートを2枚以上持っているということは、それだけ他の者から狙われる危険性は跳ね上がる。何故なら自分のターゲットである可能性があり、または自分のプレートを取り戻せば6点になる可能性があるからだ」

 

「あ!」

 

「そういうこっちゃ。うちからすれば、クラピカのプレートだけになれば気軽やねん」

 

「といっても、こうやって他の手の者に渡れば、その危険性はかなり低くなる。しかし、それは私に限ってのことで、ラミナに関しては奪った者から襲われる可能性は残っている」

 

「1回倒したことのある奴なんぞ怖ないわ。それにそのプレートの半分はハンゾーから貰たもんやし」

 

「はぁ?」

 

 ラミナはいたずらっ子のようにくつくつと笑う。

 

 

 

 ラミナはクラピカ達に会う少し前に、ハンゾーとも出会っていた。

 

「お。ラミナじゃねぇか。もう集まったか?」

 

「いや、後1点分やな。そっちは?」

 

「俺もだぜ。くっそ~、ヘマしちまってよ。ターゲットの1番違い掴んじまってな」

 

「1番違い?」

 

「3人兄弟で参加してる連中だ。その内の1人が俺のターゲットだったんだけどな。あの銀髪坊主も兄弟の1人がターゲットだったみたいで先を取られちまった。しかも、ご丁寧なことに他の兄弟のプレート思いっきりぶん投げやがってよ。ラッキーと思って、取りに行ったら違う方だったんだよ」

 

 ハンゾーは『198』のナンバープレートを取り出して親指で弾く。

 それを見たラミナは、ポケットから『197』のナンバープレートを取り出す。

 ハンゾーはそれに気づかず、遠い目をしてあらぬ方向を見つめて黄昏ていた。

 

「忍とあろうものがとんだ失態を犯しちまったもんだぜ。あぁ、そういやぁお前さんのターゲットは何番なん……だ……?」

 

 ようやく顔を向けたハンゾーの目に『197』という数字が映る。

 ラミナは顔の前にプレートを掲げて、ずっと待っていた。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……なあぁにいぃ~~!!!」

 

「おっそ~……」

 

 しばらくハンゾーは目を見開いたまま固まっており、ラミナはハンゾーのリアクションを待っていた。

 ようやく目の前の事実を理解して、大きく仰け反るかのようにリアクションを取りながら叫ぶ。

 それにラミナは呆れるしかなかったが、ハンゾーは突如見事な土下座を披露した。

 

「頼む!! それと俺が持ってる1点プレートを交換してくれぇ!!」

 

「ええで」

 

「感謝するぜー!!」

 

 速攻で承諾されて、ハンゾーは土下座したテンションのまま礼を言う。

 そして『198』『362』と『197』を交換し、2人は晴れて6点になったのだった。

 

 

 

 と、そんなやり取りがあったことを2人に話したラミナ。

 2人は疲れた表情をして、額に手を当てていた。

 

「じゃあ、なんでクラピカに襲い掛かったんだよ?」

 

「ん? 見っけたから揶揄っただけやで」

 

「おい!」

 

「んなゴチャゴチャ言うなや~。別に点数は変わらへんやろ?」

 

「気分が良くねぇんだよ!」

 

「気分で文句言いよったら、ハンターとしてやって行けへんぞ。クラピカは賞金首ハンター志望なんやろ? しかも相手は旅団や。言っとくけど、さっきの殺気を軽く流せへんかったら瞬殺やぞ? 旅団はキルアの親父さんレベルやろうからな」

 

「それは……」

 

「……」

 

 ラミナが肩を竦めながら言うと、レオリオは口ごもり、クラピカは眉間に皺を寄せる。

 今のクラピカでは念を会得しようとも勝率は0に近い。能力次第ではあるのも事実だが、旅団全員に対応できる能力など限界があるし、制限も多いだろう。

 なので、素の状態でも殺気に耐えて、先ほどの動きくらい見抜いてもらわないと無駄死に等という言葉すら当てはまらない。

 

 ラミナの基礎をとことん鍛えたのは旅団のメンバー達なのだから。

 

「ほな、頑張りや」

 

 背を向けて歩き去るラミナ。

 クラピカとレオリオはその背中を黙って見送ることしか出来なかった。

 

 

 

 ラミナは集合場所近くでのんびりすることにして、ゆっくりと目指す。

 途中で果物やらを手に入れて、木の上に登って太い枝に座って食べて休憩する。

 まだ半分以上期間は残っているが、動き回っても疲れるだけなので、どこかで隠れ場所でも作って寝て過ごすことに決める。

 

「ん?」

 

「あ」

 

 すぐ近くの木にキルアが現れる。

 ラミナは思わず周囲の気配を探り、イルミを探すが特に気配を感じない。

 

「そっちはもう集めたのか?」

 

「おう」

 

「ふぅ~ん。ターゲット、誰だったんだ?」

 

「クラピカや」

 

「はぁ!?」

 

 キルアは目を見開いて驚く。

 

「クラピカから奪ったのか!?」

 

「おう。まぁ、代わりに3点渡してきたんやけどな」

 

「……意味あったのか?」

 

「クラピカの実力見てみたかったでな。」

 

「あいつはムラがあるみたいだぜ? ただ目が赤くなると強くなるみたいだったけどな」

 

「ほぉ、そうなんか」

 

 ならばもう少し追い込めばよかったかとラミナが考えていると、キルアがすぐ隣の枝に座る。

 

「なぁ、ゴンの奴見てない?」

 

「ゴンは会うてないなぁ。あいつのターゲットが誰か知っとるんか?」

 

「ヒソカ」

 

「……マジで?」

 

「マジマジ」

 

 今度はラミナが目を見開いて絶句する。

 まさかここでゴンとヒソカが絡むとは思わなかった。

 

「う~ん……。ヒソカの奴、ゴンを気に入っとるみたいやったから、殺しはせんやろうけど……」

 

「あいつからプレート奪うとか逆に難しいよな」

 

「やなぁ。ただ……ゴンやからなぁ」

 

「そうなんだよな~」

 

 純粋無垢な野生児。

 なのに、時たまとてつもない発想と能力を発揮するので、何をしでかすか分からない。だから、ヒソカのナンバープレートを奪える可能性がある。

 ラミナやキルアは暗殺者としての思考が染みついているので、最悪を想定してしまい、リスキーな行動は中々取れない。

 だから、ゴンが取る選択が時々予想を超えることがあるのだ。

 

「キルアはこの試験うかったら、どうするんや?」

 

「ぜ~んぜん決まってない。別に何か欲しいものがあるわけでもないし」

 

「まぁ、すぐに何かせなあかんわけやないしな。ゴンとしばらく遊んでもええんちゃうか?」

 

「そうだな~。家に帰る気はないし、他にやりたいこと思いつかないしな~」

 

 ずっと暗殺者として育てられたので、それ以外の生き方が想像出来ないキルアだった。

 

「ラミナは? 暗殺業に戻るのか?」

 

「そやな。元々この試験かて知り合いからの命令で受けただけやし」

 

「よく飽きないよな」

 

「仕事やからな。それに好きな時にしとるだけやし」

 

「いいな~。俺なんて親父や兄貴に言われた奴を殺すことばっかりだったからさぁ。全然楽しくねぇの」

 

「あ~、それはなぁ……」

 

 生まれてからずっと束縛されてきていれば、嫌にもなるだろう。

 暗殺が日常になり過ぎており、機械のように命令された事をこなしているばかりだったからこその反抗期のようだ。

 それにあのイルミのひん曲がった期待を押し付けられたら、嫌にもなるだろう。頭に針を仕込まれて、恐怖を刷り込まれているのだから普通なら逃げ出したくなるに決まっている。

 やはり、キルアはイルミよりもシルバやゼノに思考が似ているようだとラミナは感じた。

 

「探偵とか向いとるんちゃうか?」

 

「探偵かぁ……」

 

「それに幅広く活動しとれば色々したいこと見つかるんちゃうか?」

 

「だといいけどねっ!」

 

 キルアは答えながら枝から飛び降りる。

 

「じゃ、そろそろ行くわ」

 

「おう。気ぃ付けや」

 

「大丈夫に決まってんだろ。じゃ、最終日でな」

 

 手を振りながら去っていくキルアを見送ったラミナは、改めてキルアはイルミが望むような暗殺者には向いていないと思うのであった。

 

「雰囲気的にはマチ姉に似とるかもしれんなぁ。絶対お互いに認めんやろうけど」

 

 猫のように睨み合うマチとキルアを思い浮かべて苦笑する。

 その後、ラミナも移動を始め、集合場所近くの巨木の上に登って、期限まで寝て過ごすことにする。

 

 そして、その後は何事もなく、終了時間を迎えるのだった。

 

 


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