暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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すいません。
キルアとラミナの本格的なコンビネーションは次回のお楽しみです(__)


#124 オイツメタ?×マタハ×オイツメラレタ?

 8日目。夜明け。

 

 ラミナとキルアは何個目かの街に襲撃を仕掛ける。

 

「そろそろ姿を消さないのか?」

 

「人形相手に姿を消してもな。それに護衛軍のアモンガキッドには、うちが透明になれることバレとるし」

 

 ラミナは肩を竦めて、軽く右腕を回す。

 少し離れた場所ではティルガとブラールが潜んでいた。

 

「住民は無視せぇよ。どうせあの放送でうちらの扇動なんぞ聞かんやろうからな」

 

「操られてる兵士達だけを無力化すればいいんだな?」

 

「そやな。戦車もあるから気ぃ付けや」

 

「分かってるさ」

 

「ほな、行くで」

 

「ああ」

 

 キルアとラミナは同時に森から飛び出して、猛スピードで街へと突入する。

  

 街中には兵士の姿しか見当たらず、一般人の姿は一切ない。

 開けた道路や広場には戦車も見え、全方位からの襲撃に備えていた。

 

 故にラミナとキルアの姿もすぐに発見されてしまう。

 

 兵士達は一切声を上げることもなく、されど統制の取れた動きでサブマシンガンを構えて銃口を2人に向ける。

 

 ラミナは両手にブロードソードを具現化する。

 

「後ろにおれ」

 

「ああ」

 

 キルアがラミナの背後に下がる。

 

 直後、炸裂弾が如く発砲音が響き渡り、2人に銃弾の雨が襲い掛かる。

 

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!

 

ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ!!!!!

 

 

 それをラミナは【一瞬の鎌鼬】を発動して、直撃する可能性が高い銃弾全てを切り、弾き落としながら進む。

 

「ちっ……うざったいわ」

 

「まだいけるか?」

 

「誰に言っとんねん」

 

 舌打ちしたラミナに、キルアは少し呆れながらも声をかける。

 ラミナはそれに軽口で返し、一部が弾切れになって弾丸の雨が僅かに緩んだ瞬間、一気にスピードを上げて最も近い兵士へと迫る。

 

 左手のブロードソードを消して、ソードブレイカーを具現化し、すれ違いざまに念人形を斬り捨てる。

 

「銃、逸らすで」

 

「ああ」

 

 ラミナは右手のソードブレイカーを消して、柳葉飛刀を4本具現化する。

 そして、素早く腕を振って近くにいる4人の兵士の銃に当てたり、肩に突き刺して銃口を逸らした。

 

 その隙にキルアも全速力で懐に飛び込んで、右拳を鳩尾に叩き込んで動きを止め、更に背後に回り込んで手刀を首に叩き込んで行動不能にする。

 

 ラミナも兵士に詰め寄って、ソードブレイカーで念人形を除念していく。

 

 次々と兵士達を無力化していっていると、

 

 

ギュラギュラギュラギュラギュラギュラ!!

 

 

 1台の戦車が近寄ってきていた。

 

 ラミナは戸惑うことなく戦車へと駆け出す。

 キルアもその後ろに続き、戦車へと駆け寄っていく。

 

 砲台が2人に向くが、砲弾が発射される前にラミナは戦車へと辿り着き、

 

「おお!!」

 

 砲身をアッパー気味にぶん殴ってひしゃげさせた。

 

 キルアは右手の爪を伸ばして、キャタピラを斬り落とす。

 

 その後も2人は的確に、最小限の労力で兵士や戦車を無力化していき、30分後には全ての戦力を沈黙させた。

 

「あ~……メンドくさいわぁ。どうせもう反逆者やし、堂々と殺してもええか。どうせ能力解除されたら死ぬんやし」

 

「まぁ……俺はそれでもいいと思うけどさ」

 

「ここは効率よく行こか。次の街向かうで」

 

「ああ……」

 

 キルアは呆れながらも、ラミナと共に駆け出して次の街へと向かう。

 

 その後、軍隊を次々と無効化していく2人。

 

 だが、未だにキメラアントの姿は1匹も見つけられなかった。

 

「ちっ……随分とのんびりしよってからに」

 

「どうする? もう西側の街や集落はほとんど回っちまったぜ?」

 

「続けるしかないやろ。どっちしろ軍隊を潰さんと選別は止められんしな」

 

「だな……」

 

 ラミナは空を見上げる。

 

 上空には特に怪しい影は見当たらなかった。

 続けて【円】を発動するも、少なくとも100m以内には怪しい動きをする存在も感じ取れなかった。

 

(……まぁ、100mは逆に狭すぎるか……)

 

 ラミナはビルの屋上に目を向ける。

 

 そこにはブラールの念獣の梟がいた。  

 

 ブラールが敵を見つければ、頭上を旋回する手はずになっていたが、どうやらブラールの方でも敵の姿は発見できていないようだった。

 

「潜んどる様子もなし、か」

 

「奴らの移動手段が徒歩だったら、まだ着かねぇんじゃねぇの? 斥候役じゃ俺らに勝てないのは予想してるだろうし」

 

「やなぁ……。もう少し中央寄りの街で待ち構えとると考えとくべきか」

 

 ラミナは腕を組んでため息を吐く。

 

(ここで二手に分かれるんは悪手……。けど、このまま手当たり次第動き続けても体力を消耗するだけ。流石に動き方考えんとあかんか……)

 

「今後はデカい街だけ狙おか。移動距離も伸びるし、敵の数は変わらず多いやろうけど、集落におる軍隊程度なら放置しても選別作業は大きく遅れるはずや」

 

「……しょうがない、か」

 

 今は前哨戦でもないレベルの駆け引きだ。

 ここで無駄に体力を消費すると、キメラアントとの戦いに支障が出る可能性は高い。

 

 特にキルアの能力は時間制限付きで、身体への負担も大きい。

 オーラや電力の先に体力が尽きたら意味が無いし、能力を隠して戦い続けてもオーラが先に尽きたら最悪だ。

 

 今後の作戦はキルアを囮とする。

 

 故にラミナはキルアの消耗を常に考慮を入れて動かねばならない。

 

(……もう少ししたら、街から街へ移動する時間、街に留まる時間を伸ばしてみるか。それで護衛軍にうちらが消耗して動きが鈍ったと思わせ、うちらを殺しに来る師団長の部隊を誘き出すことが出来るかどうか、やな)

 

 モラウ達が動き出すのは明日の正午。

 

 それまでに師団長達とぶつかっておきたい。

 

 だが、不安要素は他にもある。

 

 元師団長のヂートゥだ。 

 

 昨晩、モラウからの連絡の中にヂートゥが猛スピードでこっちに移動しており、早ければ今日の昼頃にでも東ゴルトーに入るらしい。

 ルート次第ではラミナ達と遭遇する可能性が高い。

 

 そうなれば挟み撃ちされる形となってしまう。

 

 ヂートゥの速度はラミナですら対応が困難だ。それこそ、キルアが一番勝てる可能性がある。

 つまり、現状キルアが一番のジョーカーとなっているのだ。

 

 キルアの能力の使いどころを誤れば、一気に追い込まれてしまうだろうとラミナは考えていた。

 もちろん、その対応策も考えてはいるが、それではラミナも大きく消耗してしまうので避けれるのならば、全力で避けたい。

 

(ナックル達が動くとは言うとったけど、下手すればナックル達がうちらを狙う師団長と鉢合う可能性もある) 

 

 やはり全ての作戦が綱渡り状態であるという事実に、ラミナは小さく舌打ちする。

 

 一歩でも踏み外すとその後全てに影響が出かねない。

 

 ナックルとシュートとて、ヂートゥと戦って、そのまま戦線離脱する可能性もある。

 そうなれば、作戦当日はラミナ、キルア、ゴン、ティルガ、ブラールの5人しか動けない可能性すらある。

 

(ハンター協会の援軍は期待できんし、うちもここに呼べる知り合いは賞金首連中ばっか……。まぁ、モラウにノヴまでリタイヤするんやったら、もうハンター協会が何と言おうが知ったこっちゃないんやけど……)

 

 だが、どっちにしろ信頼できるかどうかが問題になる。

 ハンター協会から派遣されたプロハンターであっても、ティルガ達仲間となったキメラアントを受け入れられるかどうか分からない。

 

 少数精鋭で動く以上、それぞれの活躍に信頼を持たないと動くに動けない。

 それで作戦失敗となれば目も当てられない。

 

(理想はヂートゥとナックル達が遭遇するのと同時に、こっちも師団長と遭遇すること。ナックル達と連絡を密にするしかないか……)

 

 ラミナは携帯を取り出して、地図を確認する。

 

「……次は南東に向かうか」

 

「ああ」

 

 ラミナとキルアは次の目的地に向けて駆け出した。

 

 

 

 その頃、レオルは部下を引き連れて、人気のない森の中を移動していた。

 

 傍にはヒナが歩いており、上空にはフラッタが飛んでいた。

 

「獲物が集まった?」

 

『そ。襲撃場所が一か所ずつになった。多分、戒厳令を出して堂々と軍隊を動かせるようになったからだろうけど』

 

 レオルは携帯でネフェルピトーと話していた。

 

『敵は国の西側で動いてる。そのまま行けば中央部でぶつかると思うから、そのまま殺っちゃってくれる? 預けた部下はそのまま連れてっていいから』

 

「了解しました。必ず敵を仕留めてみせます」

 

『頼んだよ』 

 

「はっ」

 

 通話を終えたレオルは携帯を仕舞って、笑みを浮かべる。 

 

「チャンスだな。さっさと仕事を終わらせて、護衛軍に恩を売って俺の評価を上げてやる」

 

「あははは! レオル様、悪い顔してる~」

 

「イケてるだろ?」

 

 レオルはニヒルな笑みを浮かべて、移動を再開しようとする。

 

 そこに1つの影が歩み寄ってきた。

 

「レオル様」

 

 現れたのはコローチェだった。

 

「なんだ? コローチェ」

 

「ネフェルピトー様との連絡が終わったようですので。この後の方針を訊きに参りましたわ」

 

 コローチェは現在ビトルファンの部下として、王のために働いていた。

 ビトルファンと同じく、NGLを出てそのまま王の元に馳せ参じた一番最初の兵隊蟻である。

 

「大体は聞こえてたんだろ? 当初の予定と変わらず、このまま進んで獲物を仕留めるだけだ」

 

「そうですか。承知しましたわ。では、わたくしの隊は引き続き後方から付いて行かせてもらいますわ」

 

「おいおい……指揮官を先頭に進ませるのかよ。俺は師団長だぜ?」

 

「それは女王の元にいた頃の階級に過ぎません。わたくしはもちろん、あなた方もその縛りが嫌だったから巣を飛び出したのでは?」

 

「……ま、確かにそうだがよ……」

 

「今のわたくしが仕える御方は王様ですの。わたくしはあくまであなた方の援軍でしかありませんわ。もちろん、王様の計画を妨害する輩は確実に殺しますが」

 

「けっ……」

 

「言っておきますが――」

 

 コローチェが一瞬でレオルの前に移動して、右脚を振り上げてレオルの鼻先で寸止めする。

 

「っ!?」

 

「あなたも、例外ではありませんわよ? 王様の害となるのであれば……殺しますわ」

 

「……」

 

 コローチェは脚を下ろして、レオルに背を向ける。

 

「今はネフェルピトー様があなたを認めているから何もしないだけですわ。ですが、あなたが寝首を掻くつもりであることもまた、知っておりますの。元師団長であっても、あなたではわたくしの速さは捉えられませんわよ? 精々、わたくしに寝首を掻かれないようにしてくださいまし」

 

 脅しを残して、コローチェはレオルの前から去る。

 

 レオルはコローチェがいなくなったのを見届けると、苛立ちを露にして舌打ちする。

 

「ちっ! 王に尻尾を振った雌犬がほざきやがって……! いいぜぇ。見てろよぉ……! 完璧に仕事をこなして、お前より成り上がってやる!」

 

 レオルは獰猛な笑みを浮かべて、力強く一歩を踏み出した。

 

 まだ見ぬラミナ達の首を思い浮かべながら。

 

 

 

 

 昼前。

 

 ラミナとキルアは結局休むことなく、動き続けていた。

 

「まだ行けるか?」

 

「ああ。問題ねぇよ」

 

 キルアはラミナの問いかけに軽快そうに答えるも、額に汗が浮かんでいた。

 

(まぁ、丸1日動き回っとったらしゃあないか)

 

 ラミナはまだ汗1つ掻いてはいないが、それでも本調子とは言えないほどには疲労を感じていた。

 

 今、ラミナ達がいるのは【ルォントン市】だ。

 

 ちょうど今、駐在していた大隊を無力化したところだった。

 

「次はどっちに行く?」

 

「そうやなぁ……」

 

 ラミナは携帯を取り出して、マップを表示する。

 

(……うちらのペースは明らかに落ちとる。まぁ、落としとるんやけどな。そこはキルアも気づいとるはず。問題はそろそろ敵さんと遭遇したいところなんやけど……)

 

 ナックルからのメールではすでにヂートゥは東ゴルトーに入国したとのこと。

 そろそろ遭遇している頃だろうとラミナは推測する。

 

 ブラールは未だに敵の姿を見つけれてはいない。

 

「うちはここからは姿を隠すでな」

 

「ああ」

 

「……次は北。北東沿いの国道横の森を進むで。お前のスピードで構わん」

 

「分かった」

 

 キルアは頷くと同時に駆け出し、ラミナはハラディを具現化して【朧霞】で姿を消して後に続く。

 

 30分ほど移動していると、

 

「っ! やっと来よったか……」

 

「!」

 

 すぐ後ろから聞こえるラミナの声に、キルアは上を見上げる。

 

 空に小さい影が見えた。

 

 豆粒にも等しい大きさだが、キルアはそこから視線を確かに感じ取った。

 

「あれがフラッタって奴?」

 

「やろな。とりあえず、このまま真っすぐ進むで」

 

「ああ」

 

(……あの距離……。ティルガ達も見つかったかもしれへんな)

 

 想像以上に離れている敵の姿にラミナは内心舌打ちする。

 今のタイミングでまだティルガとブラールのことをバレるわけにはいかない。

 

(まぁ、奴らに関してはティルガ達の方がよぉ知っとるか)

 

 傍を飛んでいるはずの梟に変化はない。

 ブラールには戦闘になった場合、こちらの梟の透明化を解除して構わないと伝えてある。

 

(ティルガにも、うちらが戦闘を始めるまでは空の監視者には手は出すなて言うとる。やから、見つからないように移動しとると信じるしかないか)

 

 その時、猛スピードで迫ってくる気配をラミナは感じ取った。

 

「!!」

 

 ラミナはキルアの後ろ襟を掴んで、足を止める。

 

「うお!?」

 

 キルアは驚愕の声を上げながらも、すぐに体勢を整えて着地する。

 

 直後、2人の目の前を白き鎌鼬が通り過ぎた。

 

 鎌鼬が通り過ぎた場所は茂みや樹々が斬り飛ばされた。

 

「「!!」」

 

「……あら。また避けられてしまいましたわね」

 

 現れたのはコローチェだった。

 

「……こいつ、兵隊長や。かなり足が速い。素のうちらじゃまず振り切れん(それに……今の斬撃は……)」

 

 小声でキルアに情報を伝えるラミナ。

 それにキルアは眉を顰める。

 

「それにしても、1人だけとは……。後もう1人いると聞いていたのですが……。全く……また獲物探しをしなければならないようですわね」

 

 コローチェは右手で髪をいじりながら溜め息を吐く。

 

 ラミナは素早くコローチェの背後に回り込んで、首を狙ってハラディの刃を突き刺そうとする。

 

 しかし、コローチェはそれに気づいていたかのように高速でその場から飛び出した。

 

「なっ……!?」

 

 ハラディを振ったことで姿が見えてしまったラミナは驚き、それを見ていたキルアも驚愕に目を丸くする。

 

「やはり、もうお一方も潜んでいましたか……。ネフェルピトー様とアモンガキッド様の忠告通りでしたわね」

 

(【円】? いや、オーラが広がった様子はなかった……。覗き屋が【凝】を使えるんか? それともまた蛇か蝙蝠の蟻か?)

 

「あら、あなたは……。なるほど。あなたが相手では兵士達では相手にならないのも当然ですわね」

 

 コローチェはラミナを見て、納得の表情を浮かべる。

 

「あなたを殺せば、護衛軍の方々はもちろん、王様からもお褒め頂けるに違いありませんわ。今回は確実に仕留めさせて頂きます!」

 

 オーラを集中させた左脚を上げながら気合に猛るコローチェ。

 

 それにキルアとラミナは同時に北東に向かって駆け出して跳び上がり、枝へと飛び乗ってそのまま枝から枝へと飛び移っていく。

 

「逃がしませんわ!」

 

 コローチェも駆け出し、あっという間にラミナの真下へと移動する。

 

 ラミナは枝の上で【肢曲】を使って、分身を生み出す。

 

「!! その程度で!!」

 

 コローチェは一瞬目を丸くするも、すぐさま高速で樹を駆け上がって一瞬の内にラミナの分身を数体()()()()()。  

 

(また斬られた! 奴の身体に刃はない。間違いなく念による攻撃!)

 

 キルアはコローチェの攻撃手段を見極めようとしていた。

 

(脚が動いたのは視えたから恐らく『蹴り』を主体にした攻撃……! 蹴りによってオーラを刃に変えているのか、蹴りによる風圧を鎌鼬のよう放つのか……。けど、斬られ方は明らかに刃物で斬られたかのような鋭い一本線。恐らくは前者!)

 

 キルアは推測を続けながらも足を止めずに走り続ける。

 

 コローチェはあっという間にラミナの分身を全て消滅させたが、肝心のラミナ本体の姿が見えなかった。

 

「また姿を……! あぐっ!?」

 

 顔を顰めた直後、真横から衝撃が襲い掛かり吹き飛ばされた。

 

 目を向けると、そこには右脚を振り抜いたラミナの姿があった。 

 

「さっきは対応出来たのに、今は反応すら出来てへん……。上の覗き屋ではない、か」

 

 ラミナは訝しみながら地面へと下り、キルアを追いかける。

 

 コローチェもすぐさま体勢を整えて、ラミナへと駆け迫る。

 

 ラミナは再び【肢曲】で分身を生み出しながら、姿を隠す。

 しかし、コローチェは今度は迷うことなく姿が見えないはずのラミナ本体へと迫ってきた。

 

 ラミナは顔を顰めて、また枝の上へと跳び上がる。

 

 すると、

 

「くっ……!」

 

 コローチェは歯軋りをして、周囲へと素早く視線を巡らせた。

 

 それをラミナはもちろん、キルアも見逃さなかった。

 

(奴がうちの居場所が分かるんは()()()()()()だけ!)

 

(地面から足が離れている上では対応出来ない!)

 

((つまり、覗き屋は地面の振動で居場所を把握してい()る!!))

 

 地中に潜んでいるのかは定かではないが、少なからず『視て』いるわけではない。

 面倒なのは変わらないが。

 

(上の監視から逃れるにはどこかに隠れる必要がある。けど……)

 

(地面に下りれば振動で居場所がバレてまう。それに潜もうにも、追跡者の方が足が速い。やれやれ……厄介なこっちゃ)

 

 能力を見られないように戦うには、コローチェの速さは中々に厄介だった。

 

 一度森を抜けた2人は地面に着地して、スピードを上げる。

 

 そのすぐ後ろをコローチェが猛追してくる。

 

「ちっ……! この場所はあかんな」

 

 障害物が無い。

 上から丸見えで、地面から離れる場所もなく、コローチェの足を十全に活かせる。

 

 絶対的に敵に地の利がある。

 

 だが、コローチェは無理に距離を詰めず、ラミナ達を追い立てるように背後を走っていた。

 

「……? 攻めてこない?」

 

「向こうも不意打ちが難しなったでな。スピードで勝るとは言え、2対1は変わらん。油断はせんっちゅうことやろな」

 

「どうする?」

 

「仕留めたい、ところやけど……。他の兵隊蟻共が全然現れへんでな。流石にもう少し引き寄せたいところやな」

 

「じゃ、それまではこのままってわけだな」

 

「せやな。それに暴れるにしても、上の目は遮りたいとこや」

 

 すると目の前に崖が現れ、2人は躊躇なく飛び出す。

 

 崖の下はジャングルになっていた。

 

「あそこやな。さっきまでの森より生い茂っとるから、上からはまず見えんはずや。それで上の動きを見る」

 

「分かった」

 

 一気に崖を駆け下りて、2人はジャングルの中へと駆け込む。

 

 コローチェはそれに不敵な笑みを浮かべる。

 

「ふふっ……追い詰めましたわ」

 

『モルモ。用意は?』 

 

『整ってございますです!』

 

『よろしい。では、レオル様の部隊が動くと同時にお前達も出なさい。ここで仕留めるのです!』

 

『御意ですます!』

 

『フラッタ。そちらの部隊は?』 

 

『問題ない。だが、これ以上勝手な真似は控えろ!』

 

『あら? 獲物を狩るのがネフェルピトー様の命令。何も邪魔はしておりませんわよ? 手柄が欲しいのなら、しっかりと迅速に動きなさいませ』

 

『ちっ! ……まぁいい。ここで確実に仕留めるべきなのは同意見だ』

 

 苛立ちが籠ったフラッタの念話に、コローチェは鼻で笑う。

 

 ラミナとキルアは跳び上がって枝の上に移動する。

 

 上を見上げると、木の葉が頭上を覆い尽くして空を見通せない。

 それは上からも地上は視えないということでもある。

 

 ラミナ達は次の動きに備えようとすると、

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴ!!

 

 

 妙な音と地響きがし始める。

 

「「!?」」 

 

『行け!! レオル陸軍! 見事獲物を捉えてみせろ!!』

 

『お行きなさい! コローチェ近衛隊! 王様への忠義を見せつけるのです!!』

 

 

 敵の本隊が、遂にやってきた。

 

 

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