暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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明けましておめでとうございます!
今年も拙作共々よろしくお願い致します!

一気に寒くなり、コロナが未だに猛威を振るってありますね(-_-;)

体調にはくれぐれもお気を付けください。


#139 トツニュウ×マデ×ビョウヨミ

 宮殿ではいよいよ『選別』が迫ってきたことで護衛軍一同に気合が入り、物々しい雰囲気になっていた。

 

 その雰囲気のせいか、宮殿にいる師団長以下のキメラアント達も嫌でも緊張を強いられていた。

 

 ウェルフィンとブロヴーダは部屋でのんびりする気にもなれず、宮殿内を歩いていると、

 

「ブロウ! ウェルフィン!!」

 

 声をかけられて振り返ると、そこには上機嫌なヂートゥがいた。

 

「ヂートゥじゃないか。まだいたのか?」

 

「一体何してたんだ?」

 

「いや~新能力修得に手間取ってさ。でも、とうとうマスターしたぜ!」

 

 モラウに敗れて数日。

 その間ずっとヂートゥは新たな能力修得に時間を費やしていたのだ。

  

「名付けて【紋露戦苦(モンローウォーク)】!!」

 

「ふーん」

 

「リアクション薄っ!? ちょっと聞いてくれよ、凄いんだって! これでハギャの奴の助っ人に戻れるし、あのグラサンにリベンジ出来るぜ!」

 

「ハギャってお前、知らねぇのか?」

 

「何が?」

 

「アイツはお前が宮殿に戻った後にやられちまったよ。モルモもやられたし、バジリャンは逃げ出したぜ」

 

「はぁ!? マジで!?」

 

 ヂートゥは目を丸くする。

 1つのことに集中すると周りが見えなくなる性格が幸いしたのか、それとも災いしたのか、ヂートゥはこれまでレオルの事を全く知らなかったのだ。

 もっとも、護衛軍達がわざわざヂートゥに伝える理由も必要性もないのだから知らされなくて当然ではあるのだが。

 

「それに『選別』の準備も大詰めに入ったから、今ペイジンに行くのは無理だと思うぜ」

 

「だな。下手に抜け出そうとすれば、護衛軍に殺されちまうぞ」

 

「マジでぇ……ちぇっ、つまんねぇの」

 

 ヂートゥは頭の後ろで両手を組んでそっぽを向く。

 

「そういえば、ビトルファンは?」

 

「少し前に会ったけど。なんでも護衛軍の命令で、襲撃者に備えて準備するように言われたらしいぜ。しばらく会えねぇってさ」

 

「なんで?」

 

「そこまでは答えてくれなかったよ。ただ、『巻き込んでも恨むなよ』だとよ」

 

「……へぇ~」 

 

 ヂートゥの間に、ウェルフィンとブロヴーダは行く気だなと直感した。

 

「ビトルファンってどこにいんの?」

 

「俺は知らねぇな」

 

「俺も」

 

「はぁ? なんだよ~……」

 

 ヂートゥは2人の答えにガクリと肩を落とす。

 

 その後、ヂートゥは宮殿内を駆け回って他の兵隊蟻達に訊き回るも、誰1人としてビトルファンの居所を知らないのだった。

 

 

 

 そのビトルファンはというと。

 

「ふー……! ふー……! ふー……!」

 

 とある一室で荒く息を吐いていた。

 

 ビトルファンの周囲にはドラム缶や木箱の残骸が足の踏み場もなくなるほど散らばっていた。

 部屋の隅にはまだまだ山のように積まれており、その陰には雑務兵が隠れていた。

 

 そして、時々積まれた木箱を持ち上げて、ビトルファンに向けてぶん投げる。

 

「おお!!」

 

 ビトルファンは裏拳を振り上げて一撃で木箱を砕く。

 

「オオオオォォォ……!」 

 

 息を吐きながら腕を下ろすビトルファン。

 

 普段の陽気な雰囲気は一切感じさせず、まるで今にも檻が開くのを待つ獣が如き凶暴性を秘めていた。

 

 

 

 その様子をアモンガキッドは一つ目念獣を通して観察していた。

 

「うんうん、いい感じだねぇ。やっぱり彼は()()()()正解だった」

 

 シャウアプフ達は、ビトルファンを繭で包んで能力を開発させる際、ビトルファンの()()()()()()()()()

 

 記憶を書き換えたわけでもなく、性格を変えたわけでもない。

 

 ただ、護衛軍が望んだ能力を創るように意識誘導しただけだ。シャウアプフの鱗粉とネフェルピトーの【玩具修理者】による誘導が『だけ』と言えるかは定かではないが。

 それでも今改造中の『実験兵1号』に比べれば可愛いものだろうと、アモンガキッドは思っていた。

 

「それにしても……王様も随分と荒れてきたねぇ」

 

 つい先ほどの事だ。

 王が護衛で傍に控えていたモントゥトゥユピーを殴り飛ばして追い出し、更にはネフェルピトーの【円】も煩わしいと宣った。

  

 しかし、ネフェルピトーも【円】を消すわけにはいかない。

 そこでアモンガキッドが助け舟を出した。

 

「おいちゃんの念獣を【隠】で姿を隠して、離れた場所に控えさせるのはどうですかねぇ? それならピトっちは【円】で1階と外を張ってもらえば、瞬間移動でもしない限り、警戒網を潜り抜けることはほぼ不可能でしょう。他に可能性があるエレベーターもおいちゃんの念獣がすでに見張ってますしねぇ。まぁ、残念ながら完全にフリーにすることは難しいので、王様にはこれで我慢してもらうことになりますが……」

 

「……それでよい。しかし、絶対にその念獣を余の前に見せるでないぞ!」

 

「御意に」

 

「それと2階以上には誰も近づけるな!! 余が呼ぶまで、貴様らであろうともだ!! 侵入すれば狼藉とみなす!!」

 

 その後、一度シャウアプフ達も呼んで正門に集合し、王の意向を共有する。

 話し合いの結果、ネフェルピトーは正門で引き続き警戒し、モントゥトゥユピーは中央階段で待機。シャウアプフは鱗粉散布の継続で、アモンガキッドは一応宮殿裏側に待機して、念獣を筆頭に王の護衛と警邏に専念することになった。

 

 ということで、現在アモンガキッドは宮殿裏で口だけ念獣に胡坐を組んで座りながら、あちこち覗き見していた。

 

「まぁ、この『選別』もプフっちとピトっちが主体で決めたことだしねぇ。残念ながら王様からすれば退屈というか、いまいちノリきれないのかな? それとも……あのお嬢ちゃんかねぇ」

 

 王は生まれて半年も経っていない。

 人間の遺伝子は混ざっていても、人間そのものと混ざったわけではないので、護衛軍以下の兵隊蟻のように人間の記憶を引き継いでいない。

 なので、王の精神面において情緒などが知識や思考とアンバランスとなるのは当然のことではあった。

 

「さてさて……明日は色んな意味で修羅場になりそうだねぇ。平和に終わりたいのに、残念だなぁ……」

 

 アモンガキッドはそう呟きながらも、心の中ではラミナが来るのを心待ちにしていたのだった。

 

 

 

 

 

 作戦開始10分前。

 

 ラミナ達は一度【4次元マンション】を出て、中央階段横に設置された出口に繋がる部屋に飛び込んだ。

 

「決行1分前にコールするから出口に集まってくれ。それまでは各々一番良い方法で待機だ」

 

 モラウの言葉に、ラミナ達はそれぞれに動く。

 

 ナックルは入念なストレッチを始め、メレオロンとシュートはその近くに座る。

 ゴン、キルア、イカルゴの3人はジュースと菓子を広げてくつろぎ、モラウは煙管でゴルフのスイングを始めてリラックスを始める。

 

 そして、ラミナ、ティルガ、ブラールは出口近くの壁にもたれるように並んで座り、目を瞑る。

 ティルガは純粋に身体を休め、ブラールは部屋に入る前に飛ばした二羽の梟の操作を行い、ラミナはその視界を共有していた。

 

 高速で飛翔し、宮殿横側から接近する梟達。

 すでに姿は透明にしており、出来る限り静かに宮殿敷地内へと潜入する。

 

 そこにノヴが飛び降りてきた。

 

「護衛軍が少し動いた。正門の上に集まって、少し話した後すぐに解散した。ピトーはそのまま正門に、プフは鱗粉の散布に戻り、ユピーはまた宮殿内に戻り、キッドはピトーの反対側に移動して念獣に座って警戒しているようだ」

 

「ふむ……特別な何かが起きたわけではないって感じか……」

 

「ああ、簡単な打ち合わせって感じだ。また動きがあれば伝えに来る」

 

「頼む」

 

 ノヴはすぐさまマスターキーを使い出口を出て行く。

 

 それに飲み物を飲んでいたキルアはペットボトルを置く。

 

「これで『護衛軍が宮殿にいない』ってパターンはほぼ無くなったな」

 

「まぁ、王と護衛軍は100%近くに居るよ」

 

 まだ断言しないキルアにイカルゴは呆れた顔を浮かべながら言い、ゴンもイカルゴに内心同意だった。

 

「それ言い過ぎ! 実際キッドの奴はNGLとペイジンの2回、女王や王の傍を離れてる。もっと他の場合に気持ちを備えておかねぇとハプニングの時に身体動かねぇぞ」

 

「だからって、いくら何でも『選別』の直前に離れるわけねぇって!」

 

「だーかーらー! そう思っててもいいから違う場合も頭に入れとけって!」

 

「具体的にどんな場合だよ!?」

 

「ラミナが前に話してただろ!? 例の第三者の存在! それに集結中の国民の中で騒動が起こったり、師団長やビゼフが下手こいて護衛軍がそれに対応に動く場合だってあるし! それに……クモとか俺達が知らない誰かが宮殿を襲撃するかもしれない」

 

 キルアはジト目をラミナに向ける。

 それにイカルゴやゴン、モラウ達も視線をラミナに集中させる。

 

 ラミナはそれに目を閉じたまま口を開く。

 

「それならそれで護衛軍の動きを読みやすなるから大した問題やない」

 

「いや、スッゲェ問題だよ」

 

「それよりも問題は今の護衛軍の位置や。現状誰一人玉座の間におらん。アモンガキッドとモントゥトゥユピー、ネフェルピトーは数秒もあれば飛び込めるやろうけど、それでも爺共の突入法次第では下手したら先に爺連中と護衛軍がぶつかるで」

 

「……確かに今、王の傍にいるのはユピーだけってことになるな……。まぁ、それで十分っちゃあ十分なのかもしんねぇが……」

 

「キッドはブラールのように念獣で宮殿中を監視しているだろうしな……」

 

 ナックルとシュートの言葉にキルア達も腕を組んで顔を顰める。

 

「宮殿から一番離れてるプフが厄介だな。催眠作用のある鱗粉を宮殿の外から使われると太刀打ち出来ない」

 

「ボス、どうします?」

 

「今更下手に作戦を変えねぇ方がいい。奴はどうにかして俺が封じ込めてやるさ」

 

 モラウは不敵に笑い、自信たっぷりに宣言する。

 

 それにナックル達も笑みを浮かべて頷き返す。

 

「……ティルガ、ブラール、お前らは最初にモラウの援護に動け。プフの封じ込めに成功次第、師団長の捜索に向かいや」

 

「承知した」

 

「……」

 

「助かる。さて、他に想定外があるとすれば……女だな」

 

 モラウがサングラスを直して告げた言葉に、ゴン達がキョトンとした。

 

「王の目的の1つが繁殖なんだろ? ずっと宮殿内でボードゲームをしてるわけでもなし。他にやるとするなら子作り! これに決まりだ」

 

「……なるほど」

 

「確かにそれなら王が護衛軍を遠ざける可能性もあるにはあるっすね。もしかしたら、ビゼフが調達した女の何人かは王のため――」

 

 ゴン、ティルガを除く全員の脳裏にある可能性が過ぎった。

 

(((((パームが……王と……!?))))) 

 

 まさかの可能性に全員が一度即座に否定したが、しかし悲しいかなこれまでの王達の行動を鑑みると、パームが王と子作りしている可能性がやはり浮上する。

 何故ならパームは念能力者だからだ。

 

 王の繁殖方法ははっきりとしていないが、一般人の女よりも念を使える女の方が強い次世代を出産する可能性は高い。

 

 現状、モラウ達が把握している限り、この国で念能力が使える女性はラミナ、パーム、ティルガ、ブラールのみ。

 

 そして、今宮殿にいるのはパームだけ。

 

 パームと未だに連絡が一切取れないことがその想像を強めるのがまた厄介だった。

 

「……け、計画に変更はない……!! 仮に……パームがどんな状況であってもだ……!」

 

 やや動揺しながらのモラウの言葉に、ゴンだけは大真面目な顔で頷いた。

 それにキルアは『ぜってぇ分かってねぇな』と確信を持ち、ナックルとシュートはここで想像出来て正直ホッとしていた。

 

 しかし、そこにラミナが新たに爆弾を投げる。

 

 

「もしパームやら他の女が王のガキを孕んどった場合、どうするんや?」

 

 

 危険を承知で保護するのか。

 

 王以上の怪物が生まれる可能性を考慮して()()()()殺すか。

 

 口にしなかった言葉を、これまたゴン以外が正確に読み取った。

 

「……基本は、保護だ。……だが、もし発見時、すでに生まれそうなら……」

 

 モラウは明確に言葉にしなかった。

 しかし、これには流石のゴンもニュアンスから続くであろう言葉を理解して目を剥いた。

 

「そんなの――!!」

 

「ゴン!!!」

 

 立ち上がって叫ぼうとしたゴンをキルアが制止する。

 

「でも……!!」

 

「確かに理想は保護だけど、それでまた女王か王が生まれたら同じことの繰り返しだ。それだけは絶対阻止しないといけないのは……わかるよな?」

 

「……それは……」

 

「すでに数万人もの犠牲者が出てる。もし、保護して逃げられでもしたら……またどこかでNGLやここと同じことが起こるかもしれない。……パームがそれを許すと思うか?」

 

「……」

 

 諭すようなキルアの言葉に、ゴンは両手を握り締めて俯く。

 ナックルやシュート、イカルゴ達は心配そうな視線を向けるが、

 

「まぁ、まだ受胎しとる母体がおるかどうかも分からんでな。ただ……覚悟はしとけっちゅう話や」

 

「……うん」

 

(まぁ正直、うちとしてはパームは改造兵士にされとる可能性が高いと思うけどな)

 

 流石にラミナもそこまでは言わなかった。

 

「とりあえず、ゴン。パームのことはパーム自身、そしてイカルゴに任せて、どんな場面でもお前は標的に集中しろよ!!」 

 

「……うん」

 

 ゴンは自信なさげに頷く。

 もちろん、キルア達はそれを信じることはない。 

 

 その時、共有していた梟の視界にあるモノが映った。

 

「宮殿内が見えたで。……モントゥトゥユピーは中央階段に座り込んどる。王は玉座の間で苛立たしそうに玉座に座っとるな」

 

「中央階段にか……。厄介なことになったな……」

 

「つまり、玉座の間に行くには……」

 

「ユピーをどうにかしなければならない、というわけか……」 

 

「はっ! 逆に好都合だぜ。どこに居ようと足止めすんのが俺達の任務。ユピーをそこに食い止めりゃあ、ユピーは王の下に行けねぇ!」

 

 バシン!とナックルが拳を掌に打ち付けて気合を入れながら言い、それにシュートとメレオロンも力強く頷く。

 

「それと……西側の塔に、人間の女、少女が1人。パームやない」

 

「少女……ビゼフが調達した女じゃないな。……前にお前達が話してた連れ去られたプロ棋士か?」

 

「やろうな。女の前に盤がある。……東塔は空。ブラール、一羽はそのまま宮殿を探らせて、もう一羽はモントゥトゥユピーと中央階段周囲を監視せぇ。他の兵隊蟻が来るかもしれんでな」

 

「……」

 

「モラウ」

 

「分かってる。突入と同時に煙でユピーの視界を塞ぐ」

 

 ブラールは頷き、モラウもラミナに言われるまでもなく自分がやるべきことを理解していた。

 メレオロンは何度も大きく深呼吸を繰り返し、少しでも長く息を止められるように準備を始め、シュートも目を閉じて静かに深呼吸して精神を集中させる。

 

 しかし、ラミナは少女―コムギの様子を見て違和感を感じていた。

 

(……扉の方に何度も意識を向けとるのに、怯えとる様には見えんかった。むしろ……まるで誰かを待ち望んどる様な……?)

 

 今にも扉が開くのを今か今かと待っている。

 

 まるで親が帰ってくるのを待つ子供のように。

 

 まるで――恋人が現れるのを扉の前で待つ乙女のように。

 

 その様子が、少女はラミナが恐れていた存在であるという確信を強くした。

 

(強者でもなく、蟻でもない。ただの弱者。それを王達が、娯楽とは言え庇護しとる事実。それは……王の弱点でもあり、逆鱗にもなる。作戦を狂わせる最大懸念要因……!)

 

 厄介なのは王を縛る人質にすることが出来たとしても、護衛軍にとっては人質成り得ない可能性があることだ。

 王を縛りうる存在諸共殺しに来る可能性は高い。

 

 王を守るためならば、たとえ王に殺されることになっても手を出す忠義を持つのが護衛軍。

 

(王が連れ出されるまで下手に手を出さぬが吉、か……。やけど、最悪の最悪は……覚悟しとくべきやな)

 

 ラミナは目を開けて立ち上がる。

 

 それと同時にモラウが宣言した。

 

「時間だ」

 

 突入1分前。

 

 それに他の者達も立ち上がり、出口の前へと向かう。

 

 ラミナはサングラスを取り出して掛ける。

 

 そして、一度だけ小さく深呼吸する。

 

 

 ただそれだけのこと。

 

 

 なのに、その一呼吸でラミナが纏う空気がガラリと変わった。

 

 

 それを感じ取れない者が、ここにいるはずはなかった。

 

(っ! なんだ……? 気配が鋭く、冷たくなったのと同時に……血の臭いが、濃くなったような……)

 

 ティルガはラミナの変化に戸惑う。

 

「言うとくで。こっから先、うちは暗殺者として動く」

 

 ラミナはサングラスの位置を整えながら、冷たく言い放つ。

 

 

「人道なんざ知らん。大義なんざ知らん。うちの仕事は世界やこの国を救うことやない。殺すことやでな」

 

 

 まさしく鋭い刃を思わせるオーラと気配を纏うラミナに、全員が今目の前にいるのは正真正銘『暗殺者』としてのラミナであると理解した。

 

「王を殺す。護衛軍を殺す。キメラアントを殺す。やから、うちは保護なんざせん。邪魔もんは全員殺す。それ以外の事はする気ないで」

 

 ラミナの宣言にモラウ、ナックル、シュート、キルアの4人は言外に『パームが母体にされていても保護せず殺す』と言っていることを理解した。

 それは恐らく例の少女に対しても同様だろうことは想像に難くなかった。

 

 何度も言うが、ラミナは暗殺者としてNGLに来て、依頼者はネテロではなくジン。

 

 あくまで『ネテロ達討伐隊の協力者』だ。

 

 そして依頼は『人を害するキメラアントの討伐』。

 

 これまでは依頼達成のためにモラウ達と行動を共にするのが最も効率が良いと判断していたから、協力してきたに過ぎない。

 つまり、ここまで来た以上、ラミナにはもうモラウ達の都合を考慮する必要性がないのだ。

 

 故にここからのラミナの仕事は宣言通り『殺す』こと。

 

 暗殺するのであれば、後顧の憂いを最大限断つのが習性。なので、母体がいれば母子共に殺すのは()()の結論となる。

 

 ナックルはそれに言い返そうとしたが。

 

「分かった」

 

 モラウが先に頷いた。

 

「っ!? ボス!!」

 

「文句があるなら、お前がさっさとユピーを倒して全員保護しろ。それならラミナも文句は言わねぇよ。だよな?」

 

「まぁな」

 

「こっからは誰もが現場判断、自己責任だ。そして、俺は現場で下した判断に文句を言うつもりはねぇ! 作戦に支障がなければ、だがな。保護することも、殺すことも、俺は咎めない。ただし! テメェのケツは、テメェで拭けよ!!」

 

 モラウの言葉にナックルは更に気合を入れる。

 

「突入20秒前、並んでくれ」 

 

 

 突入隊一番手:ナックル、メレオロン、シュート。

 

 相対するは『猛将』モントゥトゥユピー。

 

 

 二番手:ゴン、キルア。

 

 標的は『人形兵師』ネフェルピトー。

 

 

 三番手:ラミナ。

 

 暗殺対象は『智謀毒蛇』アモンガキッド。

 

 

 四番手:モラウ。

 

 捕獲対象は『妄忠参謀』シャウアプフ。

 

 

 五番手:ティルガ、ブラール、イカルゴ。

 

 パーム救出、師団長撃破、戦地偵察などの遊撃援護。

 

 

「さぁ腹くくれよ、お前ら!!」 

 

 ナックルはメレオロンを背負い、シュートは3つの手と鳥籠を浮かべる。

 

 ラミナはソードブレイカーとブロードソードを具現化し、ブラールも具現化出来る最大数の梟を周囲に具現化させる。

 

「突入10秒前! 9、8――」

 

 カウントを始めたモラウに全員が腰を僅かに屈める。

  

 それと同時にゴンの瞳が深く、暗く、冷たく、静かに沈んでいくことにキルアは気づき、ゴンの変化を後ろのラミナも気配で感じ取っていた。

 

 だが、それを指摘することはなかった。

 

 キルアはもう時間がないから。

 

 ラミナはある意味現状では理想的な心情変化だと判断したからだ。

 

 ここからは殺す覚悟がいるのだから。

 

 

 そして……遂に――

 

 

「GO!!!!!」

 

 

 作戦が始まり、全員が死地へと続く門へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 そのラミナ達が作戦を開始したのとほぼ同時刻。

 

 

 東ゴルトー共和国最東端の海辺に。

 

 

 一隻の小型船が接岸した。

 

 

 




さぁ、いよいよです。

……この決戦。一体何話になるのだろうか(-_-;)
私も想像できない……。
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