暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん 作:幻滅旅団
ラミナ達が突入する30秒前。
宮殿正門において【円】での警戒を続けていたネフェルピトーは、
特に何かが見えたわけでもない。
【円】は王の命令で2階より上には展開していないこともあって、何も感知出来ない。
故に見える夜空は、いつも通り代わり映えの無い、なんてこと無いただの夜空のはず。
しかし、ネフェルピトーは野生の本能とも言える直感で、迫りくる脅威を予感した。
ネフェルピトーは正門から飛び上がって、繭の樹を足場にして宮殿の上まで跳び上がった。
着地した時にはすでに敵の接近は確信へと変わっていた。
着地と同時にネフェルピトーは【円】を解除して、膨大なオーラを空へと向ける。
その異変に、宮殿にいた全ての護衛軍と師団長が気付いた。
外にいたシャウアプフとアモンガキッドは、ネフェルピトーのオーラが昇った空へと意識を向け、アモンガキッドは宮殿外に設置していた【
その直後、ほぼ3体同時にその存在を視界に捉えた。
雲を突き破って降りてきた、光り輝く龍を。
(((龍!!)))
ネフェルピトーは面白そうになったと笑みを浮かべ、アモンガキッドは内心『遂に来た』と思い、シャウアプフはまさかの存在にただただ驚愕した。
だがしかし、すぐに3体の意識はその光龍の背中に移る。
そこにいたのは、2人の老人と1人の少年。
ハンター協会会長、アイザック・ネテロ。
ゾルディック家先代当主、ゼノ・ゾルディック。
最悪最強の暗殺者、【アルケイデス】。
見た目は取るに足らない老人と子供。
なのに、3体は『絶対に目を離してはならない』と確信していた。否、させられていた。
光龍がネフェルピトーの【円】に触れた瞬間、ネフェルピトーとゼノは互いの力量を察知して、互いに好戦的な笑みを浮かべる。
それと同時に【円】を解いたネフェルピトーは、完全な臨戦態勢へと移行した。
アモンガキッドもネフェルピトーに続こうとしたが、これまでの敵の動きから違和感を見逃さなかった。
(……ミナっちがいない? あんな3人が来て?)
この好機を己が好敵手が無視するはずがない。
なのに、少なくとも空には見当たらない。
ということは。
(ピトっちの【円】を掻い潜って突入することで、おいちゃん達の意識を上に向けて……! 別働隊を他の場所から突入させるため!!)
「ちぃ!!」
アモンガキッドは空に向けていた一つ目念獣の群れを地上に戻して、ラミナ達の姿を探そうとした。
しかしその直後、
光龍はその身を崩して分裂し、無数の光る槍となって宮殿全体に降り注いだ。
それを視認した瞬間、それぞれの行動は速かった。
「王ぉーーーーー!!!」
シャウアプフは鱗粉散布を中断し、ただただ王の元へと飛び向かう。
たとえそれで王から断罪されようとも、シャウアプフにとって王の無事は最優先事項なのだ。
「やって、くれるねぇ……!!」
アモンガキッドは自分の念獣では容易く貫かれると即座に理解して解除し、オーラを回収する。
そして、シャウアプフ同様玉座の間へと向かおうとしたが、
「っ!? これ、は……! ちぃ!!」
しかし、ある予測に舌打ちして方向を変え、全力で駆け出す。
ネフェルピトーは【円】を解除したことで分裂した小龍の群れに隠れたネテロ達を見失ってしまった。
だが、王に迫った危機にネフェルピトーの感覚は極限まで研ぎ澄まされ、直感的にネテロを見つけて全力で跳び上がった。
1秒と掛からずにネテロに接近したネフェルピトーは本能のままに戦闘用の能力を発動する。
(【
能力が完全に発動するまで0.1秒を切るはずなのに、ネフェルピトーは確かにその声が聞こえた。
「ほっほ。受け攻めいくつか予想しとったが……」
ネテロの口がグニャリと歪な三日月に歪む。
「そりゃ悪手だろ。蟻んコ」
スラリとネテロの両腕が動き、胸の前で合掌する。
ネフェルピトーの眼には、以前のラミナと同じ様にとてもゆっくりと動いていたように見えていた。
しかし、自分の背後に現れるはずの能力の姿が未だに具現化を終えていないという事実に、今の会話も今の動きも全て0.05秒を楽に切る時間の中で起こったことだと理解させられた。
それだけでも衝撃的だというのに、ネフェルピトーの眼に映るネテロはまだ動いていた。
合掌したネテロは左腕が下ろされ、すぐに軽く突き出される。
直後ネテロの左下から謎の衝撃波が放たれ、ネフェルピトーは為す術なく吹き飛ばされた。
攻撃の正体はもちろん【百式観音】だ。
【隠】で姿を消し、掌底による衝撃波を叩き込んだのだ。
ネフェルピトーは落下方向からの突然の攻撃に理解が追い付かず、あっという間に宮殿の敷地の外へ飛ばされた。
(このままじゃ相当遠くまで吹き飛ばされる……!)
その時、ネフェルピトーの真下をシャウアプフが通り過ぎた。
「プフ!!」
ネフェルピトーは呼び止めようとしたが、シャウアプフには届かなかった。
(王のことで頭が一杯か……!?)
更にアモンガキッドの【地母神の邪眼】の姿も見えない。つまり、アモンガキッドにも自身の状態は見えていないとネフェルピトーは理解した。
「【玩具修理者】!!」
ネフェルピトーは治療用の能力を発動する。
【玩具修理者】はネフェルピトーの尻尾と繋がっており、発現させた場所から20m以上離れられないという制約がある。
それを利用してネフェルピトーは尻尾が伸び切る前に、尻尾の根元を両手で掴む。
尻尾が千切れそうになるのを耐え、止まったのを確認して即座に能力を解除して落下を始める。
高さ約100m、宮殿まで約500m。
空中移動の術を持たないネフェルピトーは地面に落下するまで待つしかなく、その時間があまりにももどかしかった。
(早く! もっと早く!)
しかし、その願いは叶わず。
無慈悲にも、小龍の雨―【
【龍星群】が墜落する約1秒前。
ラミナ達は中央階段傍から宮殿へと潜入した。
ラミナはモントゥトゥユピーに目もくれずに【円】を発動して、周囲を探る。
そして、この突入の数秒で事態が大きく変わっていることを理解させられた。
(空から何か来る!?)
「天井!!」
ラミナは反射的にそう告げ、そのまま全速力でアモンガキッドと思われる気配の元へと走る。
すでにモントゥトゥユピーがそこにいることを知っていたゴン達は、ラミナの言葉を頭に残しながらも目の前の怪物に意識を向ける。
モントゥトゥユピーも一瞬突然現れた侵入者達に虚を突かれたが、すぐに思考を止めた。
すぐに意識を目の前の人間達に集中させ、身体を戦闘形態に変化させる。
モントゥトゥユピーは魔獣との混成体である。
人語を理解する知能は女王と魔獣によるものに過ぎない。故に、モントゥトゥユピーの思考回路は本来の兵隊蟻に非常に近かった。
―我が役目は王の盾。
―この身を以って、王を護るのみ。
―故に、敵は殺す。
今のモントゥトゥユピーの思考はそれだけで埋め尽くされる。
鋭い爪を持つ6本の腕を生やしたモントゥトゥユピーは、凶暴性しかない好戦的な笑みを浮かべる。
そして、最も近くにいたシュートに視線を向ける。
ロックオンされたことを肌で感じ取ったシュートは足を止めて、睨み合う。
足を止めた理由は、これ以上進めばモントゥトゥユピーの間合いに入ると本能的に感じたのと、あの6本腕が振るわれると恐らく最短距離で近づいているであろうナックルとメレオロンに直撃する可能性があったからだ。
シュートは出来る限り、中央階段の真ん中に陣取る。
そして、3つの手と鳥籠を動かそうとした、その時。
上から僅かに音がした。
その瞬間、全員の脳裏にラミナの言葉が蘇る。
全員が天井に意識を向けた直後、大量の光り輝く槍が天井を突き破って中央階段に降り注いだ。
(これは……爺ちゃんの【龍星群】!?)
まさかの祖父の攻撃にキルアは一瞬驚きに動きを止め、モラウやシュート達もまさかの事態に意識を回避に切り替えざるを得なかった。
しかし、そんな中で2人、足を止めなかった者がいた。
1人はもちろんラミナだ。
【円】で【龍星群】の動きを感知していたので、目を向けることなく軌道を読んで駆け続けていた。
そしてもう1人は、ゴンだった。
だが、ゴンは何故か一直線にモントゥトゥユピー目指して走っていた。
(なに!?)
(お前の相手はユピーじゃねぇ――いや、違う!!)
キルアは驚きながらもゴンの行動の意味に気づき、モラウ達も遅れて理解して駆け出した。
(あの野郎……! この状況で、何て早く! なんてところに気付きやがるんだ!!)
それはナックルとメレオロンのことだ。
以前ラミナが懸念した通り、この【龍星群】はナックルとメレオロンにも襲い掛かっている。
もしメレオロンが息を吐く間もなく即死していたら?
【神の不在証明】と【神の共犯者】は解除されるのか。
その答えは当然ながらメレオロンさえも知らない。知りようがない。
血が流れれば分かるかもしれないが、血が2人の身体に触れたままであれば見えないかもしれない。
もし2人が姿が見えないまま死んでいたならば、誰かがモントゥトゥユピーと戦わなければならない。
その事実をゴンはあの一瞬で、本能的に理解していたのだ。
怯むことなくモントゥトゥユピーへと駆け迫るゴンの後ろ姿、そしてその後を追うキルアに、シュートはこれまでで一番の衝撃を受けていた。
それは本来ならシュートの役目だ。
これまで誰よりも未熟と言われていた少年達が、誰よりも先に最も危険な役目に突っ込んでいく。
モラウは衝撃を受けたシュートの顔を見て、『自分を責めるな』『精神を持ち直せ』と声をかけたかった。
今までのシュートであれば、確実に心が折れていた。
だが、今のシュートの心にはモラウの予想とは全く異なる感情が渦巻いていた。
(ゴンン!!)
感動である。
危険や好機、争いから全力で逃げ続け、安全な檻の中で引き籠っていた弱い己に、彼らは本当の意味での強さを教えてくれたのだと。
(ずっと弱い自分がイヤだった。何度も直そうとしたが、それすらも恐くて直せなかった。仲間や師の言葉も、強い者の理屈と本当には聞いていなかった。ラミナの言葉は不思議と師よりも胸に響いたが、あまりにも強過ぎて、俺には太陽のように眩し過ぎて、月のように冷た過ぎて、刃のように鋭過ぎた……)
強い者は最初から強いのだ。
どこかでずっとそう思っていた。
それほどにシュートがこれまで出会ってきた強者は、そんな性格や実力の持ち主ばかりだった。
だが、ゴンは違う。
心は強いとは思っていたが、それは無知故だと思っていた。そして、実力は誰よりも下だった。
逆立ちしてもナックルやシュートに勝てる実力ではなかったはずなのに。
キルアも出会った時からすでに強かったが、まだまだ不安定さが目立っていた。
ようやく強さを手に入れたばかりのような、雛を卒業したばかりの未熟さがあった。
しかし今目の前を走っている2人は、もう別人だった。
僅か数カ月でこんなにも変わった。強くなった。
だからこそ、シュートはようやく理解し、受け入れることが出来た。
(弱くとも変われる! 弱くとも強くなれる!!)
当たり前のことではあるが、現実で強くなったと実感することは意外と難しい。
特に精神面の強さはその基準は己の中にしかなく、それを認めるのも己しかいないのだ。
まさしくシュートは、ゴンとキルアによって自分の心を囲っていた鳥籠が壊れたのを自覚した。
(俺の恩人よ!! 生きて言わせてくれ!! ありがとうと!!)
シュートの顔から怯えが消えたことをモラウはしっかりと読み取り、口を吊り上げる。
その時だった。
「!?」
モントゥトゥユピーの左脇腹が不自然に凹み……1mほどだが横に飛んだ。
それが意味することは、ただ1つ。
(((((ナックル達は、生きてる!!)))))
全員が笑みを浮かべて、思考を再び切り替える。
突如正体不明の攻撃をされたモントゥトゥユピーは、連続での異常事態に流石にすぐに冷静には戻れなかった。
(なんだぁ!? 何をされた!? どいつに攻撃された!? 影も見えなかったぞ? 飛び道具!? 死角からか!?)
周囲には未だに降り注ぐ光の槍雨。
しかし、それは真下に落ちるだけで軌道を変えるような素振りは見せていない。何より今の衝撃は間違いなく打撃だった。
一番可能性があるとすれば、目の前にいるひ弱そうな片腕の男の周囲に浮いている謎の手。
だが、不可解なのは衝撃は感じたもののダメージは一切ないことだ。
いくらモントゥトゥユピーが強靭な身体の持ち主とは言え、何のダメージも感じないのはあり得ない。
蚊に刺された程度に感じはしても、
しかし、特に異変は何も起こらない。
正確には異変は起きているが、モントゥトゥユピーには
(なら今は……!)
戦闘に支障がないのであれば、モントゥトゥユピーがすべきことは変わらない。
しかし、これ以上敵の好きにさせる気もない。
故にモントゥトゥユピーは顔を変化させて目玉を増やすことにした。
完全なる怪物となったモントゥトゥユピーに、討伐隊で怯む者はいなかった。
見た目の変化に対しては。
しかし、別の理由で慄く者がいた。
姿を隠したナックルである。
モントゥトゥユピーを殴り飛ばし、【天上不知唯我独損】を発動させたナックルの目にはポットクリンが確認出来ていた。
だが問題はそこではない。
モントゥトゥユピーのオーラを視たナックルは、
(マジかよ……!? オーラの……底が見えねぇ!!!)
数千もの戦闘経験から培った相手のオーラの数値化が、モントゥトゥユピーには通じなかったのだ。
全く底が見えない。
海の底を覗き込んでいるかのような感覚に襲われていた。
(師匠やラミナの5倍!? 10倍!? いや、それ以上……!? 冗談じゃねぇ……! 本当にトぶまで10分以上は……!!)
ラミナの推定通りのオーラ量に、ナックルは覚悟はしていたが、やはりその衝撃は大きかった。
その時、宮殿全体を、討伐隊の全身を、ネフェルピトーの禍々しいオーラが撫で包んだ。
『!?!?』
覚悟を決めていたゴンやモラウ達も流石に一瞬本能的に身体が強張ることは抑え切れなかった。
いや、むしろ一瞬で済んだことを称賛すべきである。
しかし、その一瞬がモントゥトゥユピーにとっては十分すぎる時間だった。
その
それを目にした瞬間、全員が即座に回避行動に移り、巨腕が中央階段に叩きつけられて爆発したかのように砕け散った。
ここまでで、突入から3.28秒が経過した。
粉塵が舞い上がる崩れ落ちた大階段。
モントゥトゥユピーは2階に陣取り、玉座の間に続く此処を通ろうとする者を仕留めようと待ち構えていた。
その背中にナックルとメレオロンが姿を隠したまま何とか滑り込んでおり、ゴンとキルアは階段を飛び降りて別ルートからネフェルピトーへと迫ることにしていた。
ティルガは瓦礫の陰に潜んでシュートやモラウの援護にいつでも出られるように機を窺っており、ブラールとイカルゴは【龍星群】をやり過ごして大階段が崩れた瞬間にパームがいるであろう地下へと向かった。
そして、モントゥトゥユピーの最も近くにいたシュートだが、直撃こそ免れたものの瓦礫が右脚を直撃して軽くない傷を負ってしまった。
歩くどころか立つのもやっとだと理解したシュートは痛みではなく、あまりの不甲斐なさに顔を顰める。
ようやく檻を破ったというのに、また檻の中に引き戻されそうになった、その時。
「シュート!!」
モラウの声が響き渡った。
「後は、任せたぞ!」
師の力強い言葉にシュートは再び心が震える。
自身の状態を理解していての言葉だと、シュートは欠片も疑ってはいなかった。
(まだだ……! 俺はまだ死んでいない……!!)
そう、たかが足1本失っただけ。
元々片腕がないのだ。
ならば、片足が動かなくなった程度で嘆く理由などないではないか。
しかし、どうにかして動かなければ、ただの的でしかなくなってしまう。
そう思ったシュートの視界の端に、己が操る手が入り込んだ。
その時、粉塵が全く晴れないことに違和感を感じ始めていたモントゥトゥユピーの目の前に、突如真っ白な人間達が飛び出してきた。
モラウの【紫煙機兵隊】だ。
「しゃらくせぇ!!」
モントゥトゥユピーは6本の腕を鞭のようにしならせて高速で振り、一瞬で【紫煙機兵隊】の群れを斬り払った。
(煙……!?)
手応えの無さに驚いたモントゥトゥユピーだが、すぐ傍から煙管を振り被るモラウが現れる。
だが、目玉を全方位に出現させていたモントゥトゥユピーはそれを見逃さず、煙管が直撃するであろう場所から新たな腕を生やして、煙管を受け止める。
その衝撃と重さに煙管は本物であると確信したモントゥトゥユピーは、鈎爪状の腕を更に生やしてモラウへと振るうが、これもまた煙だった。
(本物は煙管だけ……!?)
困惑したモントゥトゥユピーの右側から、無手のモラウが全速力で駆け抜ける。
「馬鹿が!! 逃がすかぁ!!」
玉座の間に行かせまいとモントゥトゥユピーはモラウを仕留めようとしたが、
再び左脇腹に衝撃が走った。
ナックルである。
不意の衝撃に一瞬身体のバランスを崩し、意識がモラウから逸れる。
すぐに体勢を立て直して、すぐにモラウを追おうとしたが、すでにモラウの姿は煙の中に消えていた。
「おぉのぉれええええ!!」
怒りに沸騰しかけた、その時。
モントゥトゥユピーの背後で何かが動いたのを増やした眼が捉え、同じ光景をナックルとメレオロン、ティルガも目にした。
それは3つの手の1つに片足で乗り、空を飛ぶシュートだった。
シュートが手の上に乗ったのは無意識、衝動に近かった。
だが、シュートはこれこそが己の、
更にシュートはこれまた無意識に右の長襟を結った髪の根元に結び、右目を覆う。
片腕が無く、片足が使えず、片目を塞ぐ。
どう考えても戦士としてはあり得ない状態だが、シュートは追い込まれているからこそ力が漲ることが嬉しく、楽しくて仕方がなかった。
だからこそ、
鳥籠を壊し、思う存分翼を広げた鳥の速さと啄ばみは、
モントゥトゥユピーの意識を完全に独り占めすることに成功した。
それはコンマ数秒でしかなかったが、コンマ数秒もモントゥトゥユピーから奪ったことは間違いなく、この後の作戦を支えた偉業であった。
だが、高速で飛翔する
その奪ったコンマ数秒を最大限に活かして、高速で飛ぶ手の1つで床を転がる煙管を掴み、それをモラウに届け渡した。
モラウは親指を立てて煙管を受け取り、そのまま玉座の間へと駆けあがる。
すでに煙でシャウアプフがそこにいるのを感じ取っていたからだ。
それを見届けたシュートとナックルはモントゥトゥユピーに意識を戻し、ティルガはシュート達の雄姿に掻き立てられるかのように駆け出し、ブラール達を追いかけるのだった。
一方その頃。
西塔において、異常事態が発生していた。
「……ごめんよ、王様」
「――」
護衛軍の1体アモンガキッドが、腹から血を流すコムギを抱き抱えた王を。
見下ろしていた。
あまり原作と変わり映えはないですが、やはりシュートさんの羽ばたきの完成形は原作通りかなと思いました。
あの手に乗って飛ぶ姿こそ、檻を壊したシュートに相応しいでしょう。