暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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行ける時に!
ちなみに私はGWは無いので、連休中の投稿は多分無理ですゴメンなさい。


#149 ゲンカイ×ト×ジャクテン

 中庭から離れて、宮殿内に戻ったキルアとメレオロン。

 

「……よし。今なら大丈夫だ」

 

「……ぷはぁー!」

 

 メレオロンが能力を解除して、息を大きく吸って吐き呼吸を整える。

 

 キルアは視線を素早く動かす。

 

「ちっ! どこもボロボロで電源がどこにあるか分かんねぇ……」

 

 充電したかったが瓦礫で通路が埋まっていたり、隠れていたりで電気が通っている電源が見つけられなかった。

 キルアとメレオロンは周囲を警戒しながら電源を探すことにした。

 

 メレオロンは時折窓や壁に空いた穴から外を覗き込んでいたが、

 

「っ!! キルア! 旦那の煙が解けた!」

 

「!!」

 

 キルアは素早くメレオロンの傍に移動して、壁の陰に潜んで外を覗き込む。

 メレオロンもキルアの背後に隠れて、キルアの上から外を覗く。

 

 【監獄ロック】が解除されており、空に跳び上がったと思ったシャウアプフが花火のように弾け、一瞬で体を鱗粉に変えた。

 

「なっ……!?」

 

「自爆……!? いや、あの微妙に輝いてるのは……粒子? 身体を粒子に変える能力? んなのアリかよ……!?」

 

 キルアは流石の視力と観察眼で、シャウアプフの状態を見逃さなかった。

 

(あれで【監獄ロック】から抜け出そうとしたことに気付いて、モラウは能力を解くしかなかったってことか? くそっ! 催眠能力を持つプフがこのタイミングで解き放たれたのは最悪だ!)

 

 キルア達でさえ、戦況の把握が厳しい状態だ。

 ここで誰かが操られた可能性が浮上すれば、連絡を取り合うのも、合流するのも慎重にならざるを得ない。

 

(しかも、体を粒子に変えるとか冗談じゃねぇぞ……! 粒子を焼き飛ばせば本体もダメージを負うのか、それとも回復が出来るのか、そもそもダメージを負うのかも分からない。流石に無敵ってことはないだろうけど、倒すのに相当手間がかかる可能性がある!)

 

 すると、モラウが【紫煙機兵隊】を発動して、小さくなったシャウアプフの群れを攻撃するが、見た感じ効果はあまりなさそうだった。

 シャウアプフの群れは空へと飛び上がっていき、モラウはすぐさま煙兵と共に中央塔から飛び降りた。

 着地して駆け出したかと思うと、背中にシャウアプフが出現してモラウの煙管を奪って、宮殿の外へと猛スピードで飛び去って行った。

 

「まずいぞ……! 旦那の煙管が!?」

 

「あれじゃあ、もう能力を解けないし、解いたら丸腰だ……! くそっ! 【神速】が使えれば追いかけられるのに……!」

 

 どうにかモラウを援護する術がないかを考えるが、更に状況は悪化する。

 クレーターからビトルファンが殴り飛ばされ、モントゥトゥユピーが飛び出してきた。そして、モラウの存在に気付いた。

 

 それだけでも最悪に近いというのに、そこに何故かナックルまでも現れた。

 

「ナックル!? 馬鹿野郎! なんで戻って……!」

 

「それに……なんか怒ってる?」

 

 ナックルの様子に訝しんでいると、モラウが煙兵の姿をナックルに変化させて、モントゥトゥユピーを取り囲むように移動させる。

 本物のナックルもその中に紛れ込み、キルア達も本物がどれか分からなくなった。

 

「流石旦那だ……! あれならユピーの隙を突けるかもしれない!」

 

「でも、あれじゃあモラウの兵隊も減る。全滅する前にユピーを仕留めないと終わりだ……!」

 

「じゃ、じゃあどうする……!? 俺らも加勢に……!」

 

「ダメだ。下手に飛び込めば、モラウの負担を増やすだけだ。ユピーの狙いを狭めるわけにはいかない」

 

 もしキルアが参戦したら、モラウはキルアの偽物も作るだろう。

 しかし、それは同時にナックルの偽物の数が減るという事。モントゥトゥユピーからすれば、別にナックルとキルアを同時に殲滅する必要はないので、どちらか一方にのみ専念されればあっという間に数を減らされてしまう。

 

 しかも、キルアは現在充電切れ。

 電撃を放てない状態では、囮以上の役目を果たせない。ならば、ナックルの偽物だけにして、少しでも破産するチャンスを増やすべきだとキルアは判断した。

 

 その時、視界の端に動く存在を捉えた。

 

「っ!! メレオロン! 隠れろ!」

 

「!!」

 

 メレオロンは反射的に大きく空気を吸って、【神の共犯者】を発動して揃って存在を消した。

 

 その数秒後、2人の目の前を虫サイズのシャウアプフが大量に通り過ぎた。

 

「!?!?」

 

「プフの分身だ。宮殿中に散らして状況を把握しようとしてるんだ。これで王がいないことがプフにもバレる」

 

 キルアは目を鋭くしながらシャウアプフの分身達を観察する。

 

「……ちっ。やっぱ見分けるのは不可能か。まぁ、本体は俺達の攻撃が届かない場所にいるんだろうけど」

 

 キルアは庭園に視線を向ける。

 モントゥトゥユピーが最初のように両腕を6本に増やし、鞭のように鋭く動かしてどんどんナックルの分身を切り裂いていく。

 

「……モラウの人形は大体70体くらい。今のペースだと1分もせずに全滅だな……」

 

 それでも攻撃を止めないという事は、何かしらの作戦があると言うことだとキルアは考え、急いで救援に向かう必要はなさそうだと判断する。

 

 すると、シャウアプフの分身達が急に身を翻して、一斉に外へと飛び出していった。

 

「行ったな」

 

「ふはー」

 

 メレオロンが能力を解除して息を整える。

 

「一斉に戻ったって事は、奴の分身は宮殿全体に飛ばせる程の数を出せるってことか……」

 

「じゃあ、もう奴は王がいないことを知ったってことか?」

 

「ああ。だから次は他の護衛軍のところ……恐らくピトーのところに行くはずだ。王の居場所を教えてもらえそうな状況なのはピトーだけだろうからな」

 

「じゃあ、ゴンが……!」

 

「ああ。俺は充電をある程度したらゴンのところに戻る。お前はナックル達のところに行ってくれ」

 

「……いいんだな?」

 

「問題ねーよ。プフを止められない以上、ユピーだけでも抑え込まないとな」

 

「……分かった。……気を付けろよ」

 

「そっちもな」

 

 メレオロンは様々な感情や疑問が喉まで出かかったが、キルアのどこか覚悟を固めたような表情を見て、それらを呑み込んだ。

 メレオロンはただただ無言で親指を立て、キルアも手を上げるだけで応え、それぞれに動き出したのだった。

 

 

 その直後、庭園で爆発が起こった。

 

 

 

 

 

 モラウは頭を庇いながら地面に伏せていた。

 

 そのすぐ後ろでは新たなクレーターが出現しており、もうもうと爆煙が立ち上がっていた。

 

(何とか全部狩られる前に爆発させられたが……まだ破産まではしてねぇか……。もう同じ手は通じねぇだろうが……奴をここに留めておかなきゃならねぇ。……だが、今ので84体いた【紫煙機兵隊】も40体まで減らされた)

 

 本物のナックルを隠すためにモントゥトゥユピーの近くに配置していたため、爆発に巻き込まれて多くの煙兵が消えてしまった。

 それによりオーラも吹き飛ばされて回収出来なかったため、モラウはただただオーラを消費し、死を目前としたプレッシャーに心身ともに消耗していた。

 

(ナックルは今ので頭が冷えたはず……ブチ切れてた理由は知らねぇが、これで無茶はしねぇだろう。問題は……俺がもう【紫煙機兵隊】を遠隔操作するほどの力がほとんど残ってねぇってことだ)

 

 モラウはそれでも時間を稼ぐために、煙兵の数体を自身の姿に変える。

 

(プフを追いかける力は残ってない以上、俺はもうリタイアしたも同然……。ここで死んでも作戦に影響は出ねぇ。……なら、なけなしの力で奴だけでも食い止める!)

 

 すでに自身の限界を悟ったモラウ。

 

 それに対して、モントゥトゥユピーは遂に目的を達成した。

 

(……掴んだ!! 爆発を操作する、あの感覚だ!!)

 

 怒りによるオーラの爆発。

 

 その手綱を遂にモントゥトゥユピーは掴み取った。

 

(もう一回……もう一回やれば、完全に自分のものに出来る!!)

 

「オ゛オオオオッ!! 一度ならず二度までも俺をコケにしたあのクズ!! ゴミィ!! クサレカスがぁ!!」

 

 もう一度爆発を引き起こそうと、わざと怒りを溜めるためにナックルを思い浮かべる。

 

 

ぬぅあがああああああ!!

 

  

 モントゥトゥユピーは怒りに吼えると、全身にビキビキ!と血管のような筋が浮かび上がり、直後身体が変化を始める。

 

 後頭部が伸びて兜のように硬質化し、左腕は肩が膨れ上がって老人のような顔の瘤に、手先は銃身のような形になる。更に右手は刃のように鋭く変化し、トドメには下半身が馬のように四本脚となった。

 

(怒りを左肩に溜めろ!! そして、俺の頭は冷静に!)

 

 変化を終えたモントゥトゥユピーから湧き上がる、不気味という表現すら生温いほどの悍ましいオーラ。

 

 それを目にしたモラウは冷や汗が噴き出し、更に身体に圧迫感を感じるのだった。

 

(底をつくどころか、更に力を増した……!? いや、今感じた力はさっきの爆発か……!? あれを完全にコントロールしたのか……)

 

 

「くはっ……ひゃははははは!! ぶっ壊死て殺る夜!!!」

 

 

 モントゥトゥユピーは湧き上がる力に大嗤いを上げながら、クレーター内にいるモラウの偽物目掛けて勢いよく突撃して、ほぼ一瞬で胴体を切り裂いた。

 

(速い……! いや、だが待て……! あの爆発の力を利用したところで、そもそもその力も奴のオーラ。つまり、奴はオーラを今まで以上に消耗しているってことか……! なら、まだ勝ちの目は残ってる! なら、やることは変わらねぇ!!)

 

 モラウは身体に活を入れて、【紫煙機兵隊】の操作に集中するのだった。

 

 

 

 一方その頃、ティルガとビトルファンは最初に飛び出した宮殿裏手側で死闘を始めていた。

 

「ヴォバアアアア!!」

 

 巨大な拳をハンマーのように振り下ろして、ティルガを叩き潰そうとする。

 それを身を低くした姿勢で駆け続けていたティルガは余裕で躱し、素早く身を翻してビトルファンの後ろ腰に右鉤爪をすれ違いざまに叩き込む。

 

 しかし、やはり掠り傷すら付かず、怯む様子もなくビトルファンは左手を後ろに振る。

 ティルガは全力で後ろに跳んで、左手を躱す。

 

(威力は今まで以上に油断ならぬが、巨大になったせいで動きは愚鈍になった。まぁ、気を抜くことは全く出来ぬがな)

 

 今もビトルファンはどんどん硬くなり、攻撃の威力が上がっている。

 もはや掠るどころか、紙一重で躱しても風圧で潰されかねない。

 

(先程の衝撃……またユピーか? プフも解き放たれた今、ビトルファンに時間をかけるわけにもいかぬが……やはり我では決定打がない)

 

 そう考えている合間もビトルファンが両腕を振り回しながらティルガに攻めかかるも、ティルガはビトルファンから一定の距離を保つように動き続けながら顔を顰める。

 

(このまま硬度が上がり続ければ、逆に我の爪が耐えられぬやもしれぬ。その意味でもあまり時間をかけられんな)

 

 その時、

 

 

バギリ゛!! 

 

 

 ビトルファンの右前腕部に、小さな亀裂が入った。

 

「!!」

 

 ティルガはそれを見逃さずに、僅かに目を丸くする。

 

(割れた……?! 一体何が……)

 

 何もしていないし、攻撃もしていないのに突然独りでに割れた。

 

 ティルガは原因を考えたが、すぐにその答えに辿り着いた。

 

(限界を超えたのか!! 奴の身体はこれ以上強化に耐えられなくなったのだな!!)

 

 ビトルファンは、モントゥトゥユピーのように自在に肉体を変化させる身体をしていない。

 そして、モントゥトゥユピーのように膨大なオーラを持っていたわけでもない。

 

 能力によって無理矢理肉体とオーラを強化していたに過ぎない。

 

 特に増幅されたオーラは、ビトルファンが本来十数年と修行や戦いを経た上で手にしたもので、言わば後払いで商品を受け取っていたにすぎない。

 普通であれば、その代償は簡単に支払えるものではないが、ビトルファンは『理性を失うこと』『ダメージを負う必要がある』『肉体を少しずつ変化させる』など代償を少しずつ支払っていたので、すぐに限界を迎えることはなかった。

 

 しかし、先程遂に利用限度を超えてしまったのだ。

 

 後はまさしく破産するのみである。

 

 その隙を見逃すティルガではなく、全力で地面を蹴ってビトルファンへと詰め寄った。

 

「オオオオオ!!」

 

「ブッヴァアアア!!」

 

 ビトルファンは自身の腕に亀裂が入ったことなど気付いた様子もなく、ティルガに向かって左ストレートを放った。

 

 ティルガは直前で急ブレーキをかけて後ろに跳び、ビトルファンの拳が地面に突き刺さり、地面を砕く。

 その直後にティルガはビトルファンの左腕に全力で跳びかかり、

 

「オオオオオオオ!!!」

 

 ビトルファンの左前腕に連続で攻撃を叩き込んだ。

 

「ヴァオオオ!!」

 

 ビトルファンはそのままティルガを払い除けようと左腕を振り上げるが、ティルガは横に全力で跳んで躱し、地面を一度転がって素早く立ち上がって距離を取る。

 

 ビトルファンの左腕を注視したティルガ。

 しかし、残念ながら左前腕部にダメージは入っていなかった。

 

 

 だが、

 

 

バギバギ!!

 

 

 と、次は左肩と右太腿の甲殻にヒビが入った。

 

(我の攻撃ではなく、膨れ上がることで割れるのか……! つまり、脆くなったわけではない! だが、全身にヒビが入れば流石に脆くなるだろう!! 光明は見えた!!)

 

 まだパワーが弱ったわけではないので、一撃でも攻撃を受ければ終わりではあるが、それでもこの戦いの終わりが見えた事はティルガに力を与えた。

 

「お前の限界が先か! 我の限界が先か! 勝負だ!! ビトルファン!!」

 

「ブヴァオオオオオオン!!」

 

 2人の決着は、すぐそこまで迫っていた。

 

 

 

 

 王宮より離れた空。

 

 雲よりも高い場所に、龍を思わせる胴体の長い生物が飛んでいた。

 

 その背中には、2つの人影があった。

 

 シルバとゼノだ。

 

 シルバはただ仕事を終えたゼノを迎えに来ただけである。

 

 それでも王宮方向より時折届く爆音や強大な気配を感じながら、シルバ達は東ゴルトーのはずれを飛んでいた。

 もちろん、キルアがいることも何だかんだで待機する理由になっている。

 

「やれやれ……随分と派手にやっとるの」

 

「……それなりの手練れが残っていたようだな」

 

「まぁ、話に聞いた護衛軍とやらじゃろうて。王の傍にいた2匹もかなりの実力を持っておったしの。面白そうな奴らじゃったわい。ありゃあキルもラミナも苦労するじゃろうなぁ」

 

 くっくっくっ!と他人事のように笑うゼノに、シルバは腕を組んでやや呆れた視線を向ける。

 

「……それにしても、蟻が人を食べただけでそこまでの力を得るとはな」

 

「そうじゃの。そもそも女王が異質じゃったようじゃからな」

 

「ラミナでも厳しそうなのか?」

 

「ふむ……何とも言えんのぅ。あのガキ爺が言うところの()()がどうなるかと言ったところじゃろうな」

 

「弱点? ラミナのか?」

 

「まぁ、あくまでアルケイデスの話じゃがな」

 

 しかし、シルバからすればラミナに弱点と呼べるほどの弱点は思い浮かばなかった。

 

 眉を顰めるシルバを見て、ゼノはまたくつくつと笑う。

 

「あそこに行く前にの、アルケイデスと少し話してな」

 

 

 

 

 

『本当に儂は王とネテロを分断するだけで良いのか? ラミナでも手こずりそうな相手が他にも数匹おると聞いたが?』

 

『お前が気にしとるのは、その婚約者でもある孫のほうであろうが。まぁ、ラミナは問題なかろうて。奴がしっかりと本気でやれば1匹くらいは殺せるだろうよ。もっとも……あ奴の悪癖と言うか、弱点が露呈せなんだらの話じゃがの』

 

『……弱点?』

 

『まぁ、弱点と呼べるかは微妙じゃがな。暗殺者からすれば仕方がない部分もあるのでな」

 

『ふむ?』

 

『お前も分かっておるから正直に言うが、あの娘の能力は見事に尽きる。あれだけ使い勝手の良い万能型の能力など滅多に見ぬ。……じゃがなぁ、あの娘の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『ふむ……そうは思えなかったがのぅ……』

 

『では、訊くがなゼノ坊。お前、把握しておる範囲でも、あ奴の能力の使い方……()()()()()()と思ったことはないと言う気か?』

 

『……まぁ、のぅ。じゃがそれがあ奴の弱点とでも言う気か? 暗殺者からすれば、派手に能力を使うのも変な話であろう』

 

『じゃから、悪癖とも呼べると言うたじゃろう』

 

『悪癖のぅ……』

 

『お前が前に愚痴った孫と同じようなもんじゃい』

 

『ふむ?』

 

『確かに暗殺者、そして熟練の念能力者からすれば、相手の実力や能力を推し量りながら戦い、出来る限り力を隠し、温存し、ここぞと言う時に力を解き放つのがセオリーではある。暗殺者は殺して終わりではないからの。その場から離れる力も残しておかねばならぬ。じゃが、相手の力量が互角以上であれば、推し量る前にこちらの全力で圧し潰す事もまた出来ねばならん。しかし、ラミナはどうにも推し量ろうとする慎重さが前に出てくる。奥の手が奥の手なので仕方がないかもしれぬが、じゃからと言って()()()()()()()()()()()()()()

 

『じゃが、それでこれまで生き残っておるでのぅ』

 

『確かにの……。しかし、それ故に無用な傷や消耗を負う事も多いのもまた事実じゃて。状況、相手に応じて両方を使い分けることが出来ねば、あ奴は壁を越えきれまいよ』

 

『やれやれ……妙にラミナに入れ込んどるのぅ』

 

『お前とてそうじゃろうが。あ奴のあの才能と能力は中々に諦めきれぬよ。()()()()()()()()()()()()を見ると、引っ張り上げたくなるもんじゃ』

 

『……ふん』

 

『此度の決戦で、その殻を破れればええんじゃがなぁ』

 

『……もし、その殻を破ったら、ラミナはどう変わる?』

 

 

『決まっておろう』

 

 

 

 

 

 

 

 

――たかが蟻など、軽く捻り潰せるじゃろうて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザシュッ!!

 

 

「ぐっ……!!」

 

 蛇は右脇腹から血を噴き出し、後ろに跳び下がる。

 

「……やれやれ……ここに来て……まだ()()()()()()?」

 

 蛇の視界に映るのは――

 

 

 

 十数本もの刀剣が地面に突き刺さっており、

 

 

 その中心で紅髪を靡かせる、女暗殺者の姿だった。

 

 

 

「あ~……もう、ええわ」

 

 

 女暗殺者は割れたサングラスを投げ捨て、頬に流れる血を袖で拭う。

 

 

「やったろうやないか。見せたるわ、蛇」

 

 

 そう言って、すぐ傍に突き刺さっていた武器を掴む。

 

 

「全力全開や」

 

 

 




決戦編は場面の選びどころが本当に難しい(ーー;)

色々と悩みましたが……やはりラミナとキッドの戦いに戻り、決着を迎えた上で、王とお爺ちゃんズの頂点決戦に行こうと思います

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