暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん   作:幻滅旅団

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ありがとうございます!!

これからも頑張ります!!


#18 トウギジョウ×ト×ネン

 ラミナ達3人は飛行船に乗って、天空闘技場を目指していた。

 キルアとゴンは飛行船代で財布がほぼすっからかんになるらしい。

 

「まぁ、すぐに数万くらい稼げるから問題ねぇよ」

 

「そうなの?」

 

「ああ」

 

「お、見えてきたで」

 

 目の前に高くそびえ立つタワーが現れる。

 天空闘技場だ。

 

「うわぁ……!」

 

「あのタワー全てが戦いのためのモンや。降りたら早速登録やで」

 

「分かった!」

 

 その時、ラミナの携帯が鳴る。

 ラミナは携帯を取り出して画面を見ると、『メール受信』と表示がされていた。送り主はヒソカだった。

 ラミナは訝しみながらメールを開く。そこに書かれていた内容を見て、顔を顰める。

 そして、ゴンに目を向ける。

 

「? どうしたの?」

 

「……ヒソカからや」

 

「「!!」」

 

「『200階で待ってる』やと。どうやら飛行船のチケット調べられたみたいやな。それに多分、イルミからうちがキルアの面倒見ることになったん聞いたんやろ」

 

「200階……」

 

「つまり、念を覚えてから来いっちゅうことやな」

 

(これでゴンの目的はさっさと終わりそうやな。ヨークシンに来てもヒソカを探し回ることはなくなりそうやな)

 

 ラミナはある意味ヒソカの登場に助かったことになる。

 その横でゴンは右手を握り締めて気合を入れる。

 

「まぁ、とりあえずさっさと登録しよか。勝ち上がって、念も覚えて、戦い方も鍛える。やることはたんまりあるで」

 

「うん!」

 

「おう」

 

 ゴンは楽し気に、キルアは不敵に笑って頷く。

 

 飛行船を降りたゴン達は天空闘技場に登録する者達の列に並ぶ。

 

「すごい行列だね。これ全部挑戦者なの?」

 

「ここはハンター試験と違って小難しい条件は一切ないからな。ただ相手をブッ倒せばいい」

 

 列はあっという間に進み、3人は登録窓口に辿り着く。

 用紙に記入して登録を済ませる。

 

「ラミナもやるの?」

 

「のんびり待つんも面倒やからな」

 

「キルア様は2054番、ゴン様は2055番、ラミナ様は2056番となります。1階では番号でお呼びしますので、お聞き逃しのないように。それでは中へどうぞ」

 

 3人は中へと足を踏み入れる。

 

 

ワアアアアア!!

 

 

 中は熱気で溢れており、16個の小さいリングでは挑戦者達が戦いを繰り広げていた。

 

「凄い活気だね。うぅ~……緊張してきた~」

 

「そう言えばゴン。お前、試しの門クリアしたんだろ?」

 

「え? うん」

 

「だったらさ、思いっきり押せ。それだけでいい」

 

「え? ホントに?」

 

 キルアの言葉にゴンは懐疑的だった。

 そこまで力が上がったようには思えなかったからだ。

 しかし、キルアは問題ないと親指を立てて笑みを浮かべる。

 

『1973番、2055番の方。Eのリングへどうぞ』

 

『1992番、2056番の方。Kのリングへどうぞ』

 

「お。うちもか」

 

「頑張ろ!」

 

「まぁ、余裕だろ」

 

 ラミナとゴンはリングへと向かう。

 女と子供の登場に、周囲は小馬鹿にするように笑う。

 

「おい、見ろよ。ガキだぜ?」

 

「こっちは女だ」

 

「おいおい! おまえらぁ! 怪我する前に帰んな!」

 

 野次が飛んでくるが、もちろん2人は気にもしない。

 

 ラミナの相手は金髪モヒカンでガタイの良い男。

 審判が近づいてくる。

 

「ここでは挑戦者のレベルを判断します。3分以内に自らの力を発揮してください。それでは、始め!!」

 

「ひゃっはー!! 怪我してもしらねぇぞ、女ぁ!!」

 

 モヒカン男が飛び掛かろうとした瞬間。

 

「ぶぅえ!?」

 

 モヒカン男が突如真上に飛ぶ。審判や野次を飛ばしていた連中は目を見開いて固まる。

 モヒカン男はそのままアーチを描いて、観客席の最上段に墜落する。

 

 リングにはつまらなげに顔の前に右拳を掲げているラミナがいた。

 

「弱っ。振り抜いとったら殺しとったな」

 

 ラミナは呆れながら呟く。

 

ドオオォン!!

 

 そこに音が響き、目を向けるとゴンが右腕を突き出して立っており、その先には巨漢の男が場外の壁に突っ込んで倒れていた。

 

「な!? なんだ、あのガキと女!?」

 

「どっちもすげぇパワーだぞ!」

 

 ラミナとゴンの力に周囲がざわつく。

 審判がラミナに近づく。

 

「2056番、君は50階へ行ってください」

 

「おおきに」

 

 ラミナはチケットを受け取り、観客席に戻る。

 ゴンも戻ってきて、キルアが入れ替わる様にリングへと向かう。

 

「50階だって」

 

「初めて挑戦した時は最大で50階までやねん」

 

「そうなんだ」

 

「キルアは2回目やから、もっと上に行くんやろうけど……」

 

 その時、リングで再びどよめきが走る。

 

「おいおい、他にもまだ化け物みたいなガキ共がいるぞ!」

 

 ラミナが目を向けると、注目されていたのはキルアと道着を着た坊主頭の少年。

 坊主頭の少年は「押忍!」と挨拶をして、リングを去る。

 ラミナはその少年が【纏】を纏っていることに気が付く。

 

(あんなガキが?)

 

 【纏】はともかく、歩き方を見る限りでは実力的にはゴンとキルアが圧倒的に上だ。そして【纏】にまだまだ未熟さが見えることから念を会得したのは最近であるとも見抜いた。

 ということは、あの少年には念を指導する存在が近くにいるはずである。

 

(どっかの古流武術か?)

 

 ラミナは推察を続けるが、キルアが戻ってきたので思考を中断する。

 

「お疲れ、キルア! 何階?」

 

「おう。俺も50階からにしてもらった。金稼ぎたいしな」

 

「ほな、さっさと行こか」

 

 ラミナ達はさっさと移動して、エレベーターに乗り込む。

 そこには坊主頭の少年も乗っていた。

 

 50階に到着したラミナ達はエレベーターを降りると、少年が声を掛けてきた。

 

「押忍! 自分、ズシと言います! 御三方は?」

 

「俺、キルア」

 

「俺はゴン」

 

「ラミナや」

 

「さっきの試合、拝見しました。いやー、すごいっすね」

 

「何言ってんだよ。お前だって一気にこの階まできたんだろ?」

 

「いや、自分なんかまだまだっす。ところで皆さんの流派は何すか? 自分は心源流拳法っす!!」

 

 ズシはビシっとポーズをしながら流派を名乗る。

 しかし、ラミナ達は顔を見合わせて、

 

「別に……ないよな?」

 

「うん」

 

「ええ!? 誰の指導もなくあの強さなんすか……。ちょっぴり自分ショックっす」

 

「別に流派がないだけで、教わったりはしとるわ」

 

「あ……なるほどっす」

 

 ラミナが呆れながらツッコむ。それにズシも納得して、軽く頭を下げる。

 どうやら少し思い込みが激しいタイプのようだ。

 そこに拍手の音が聞こえてきた。

 

「ズシ! よくやった」

 

「師範代」

 

 眼鏡をかけて寝ぐせ全開の優男がズシに近づく。

 ラミナはこの男がズシに念を教えているのだと理解する。

 

(そこそこのやり手やな)

 

「師範代、またシャツが」

 

「あ。ゴメンゴメン」

 

 男は慌ててはみ出していたシャツの裾をズボンの中に戻す。

 そして、ラミナ達に顔を向ける。

 

「そちらは?」

 

「ゴンさんにキルアさん、それにラミナさんす」

 

「初めまして、ウイングです」

 

「「押忍!」」

 

 ゴンとキルアもズシの真似をして挨拶をする。

 ラミナはその様子を呆れながら見ていたが、ウイングから視線を感じて顔を向ける。

 

「なんや?」

 

「いえ……。まさかズシ以外の子供が来ているとは思わなくて。それに付き添いがあなたのような女性なのも少し驚きまして……」

 

「誤魔化し下手やな。うちの【纏】を見て、実力測ろうとしとったんやろ?」

 

「……流石ですね」

 

「やっぱあんたがズシの念の師匠か。まぁ、ここなら体術も念の修行にももってこいやしな」

 

 念というキーワードにゴンとキルアは目を見開いて、ズシに目を向ける。

 ズシは戸惑ったような表情を浮かべて、ウイングを見る。

 ウイングも僅かに困ったような表情を浮かべる。

 

「その通りです。君達も?」

 

「そんなところやな。小遣い稼ぎもあるけど、この後からこいつらに念を教えるつもりや」

 

「なるほど……」

 

 ウイングは顎に手を当てて考え込む。

 

「とりあえず、先にファイトマネーもろてきてええか? もしかしたら、もう1試合あるかもしれんし」

 

「……そうですね。分かりました。ズシ、くれぐれも自分と相手、相互の体を気遣う様に」

 

「押忍!」

 

 そう言って、ラミナ達はとりあえず受付に行き、ファイトマネーを受け取る。 

 ファイトマネーは152ジェニー。缶ジュース1本分。

 ラミナ達は自販機でジュースを買って、控室に向かう。

 

「なぁ、ズシ。お前も念を使えるのか?」

 

「はい。師範代に教わってるっす」

 

「ふ~ん」

 

 キルアはズシを見て、首を傾げる。正直そこまで強さを感じないからだ。

 

「ズシはまだ習い始めたところなんやろ。それにキルア達に敵意を持ってへんから、威圧感も感じひんだけや」

 

「そうっす。……まだ【練】の修行で止まってるっす」

 

「レンって何?」

 

「念の四大行の1つっす」

 

「あ~、ちょい待ち。まだそこまで話してへんねん」

 

「なるほど。失礼しましたっす」

 

「キルア、ゴン。ちゃんと教えたるから、まずは宿代稼ぎや」

 

「分かった」

 

「ま、焦ったってしゃあねぇか」

 

「そういうことや」

 

 控室に入ると、再び挑戦者達がざわつく。

 女と子供の挑戦者はそれだけ珍しいのだ。

 

「ここからは10階ずつ上がっていくんだ。けど、負けたら10階下がって、ファイトマネーもない。まぁ、この階程度の相手なら楽勝だよ。気楽にいこうぜ!」

 

「……キルアさん、声デカいっす……」

 

 ズシがキルアのボリュームとその内容に冷や汗を流す。明らかに周囲の者達が殺気立ち、キルアを睨んでいる。しかし、キルア達3人は全く眼中になく談笑している。

 

 そこに、

 

『ボコサ様、ラミナ様。58階A闘技場までお越しください』

 

「お。うちか」

 

「頑張ってね」

 

「まぁ、余裕だろ」

 

「ご武運をっす!」

 

「おう」

 

 ラミナは手をヒラヒラと振って、控室を出る。

 そして、エレベーターで58階まで上がり、闘技場に足を進める。

 

 中は観客の熱気で溢れていた。

 10階からは観客が観戦することが出来、更に公式に賭けが行われている。

 

『さぁさぁさぁさぁ!! おん待たせしましたー!! 次はなんと華麗な挑戦者のお出ましだー!』

 

 ラミナがリングに上がり、その向かいには禿げ頭のボクサースタイルの男、ボコサが立っていた。

 

『しかーし!! 見た目に惑わされてはいけません! 彼女は1階で凄い戦いをして、一気にこの50階クラスへやってきた強者です! それでは2人の戦いをVTRでご覧いただきましょう!』

 

 会場の巨大スクリーンにラミナの1階での戦いが流される。

 

『ラミナ選手はまさに瞬殺!! アッパー1発で相手を観客席にまで吹き飛ばしました!!』 

 

『対するボコサ選手は堅実ながらも全戦全勝でここまで勝ち上がってきた実力者! 鋭いジャブとストレートでKO勝ちでここまで来ています!』

 

 紹介されたボコサは、ラミナを威嚇するようにシャドーを見せる。

 それに対してラミナは左手をポケットに入れて、大きくあくびをする。

 

「な……舐めやがって!!」

 

『さぁ、皆さま! ギャンブルスイッチ~、オン!!』

 

 司会者が賭けの投票を促すと、観客達は一斉にボタンを押す。

 その集計結果は、ボコサが1.375倍。ラミナが2.110倍だった。

 

『投票の結果では倍率はボコサ選手が優勢! やはり女性ということで侮られたのか!?』

 

(ええから早よせぃ)

 

 いい加減めんどくさくなってきたラミナだった。

 

『それでは、3分3ラウンド、ポイント&KO制……始め!!』

 

「しぃ!! ぶごふぅ!?」

 

 開始と同時にボコサが一気に詰め寄り、右ストレートをラミナに叩き込もうとした。

 しかし、ラミナがそれよりも早くボコサの顎に右アッパーを突き刺して、1階同様ボコサを殴り飛ばして観客席に叩き込んだ。

 

「ク、クリティカルヒットォ! アーンド、ダウン!! ポイント、ラミナ!! 3-0!」

 

『な、なんとーー!? 再びアッパーで観客席に叩き込んだー!! 3ポイント先取ー!! ってか、生きてる?』

 

 ボコサは観客席の真ん中に落ちて、観客数人を下敷きにして白目を剥いてピクピクと震えながら気絶していた。

 

「ボコサ選手戦闘不能! ラミナ選手のKO勝ち!!」

 

『1発KO勝ちぃー!!』

 

 ラミナは喜ぶどころか、あくびをしながらリングを去る。

 その様子に観客達は今のでも全く本気ではなかったことに驚くことしか出来なかった。

 

 

 

 60階に上がったラミナはエレベーター近くで待つ。

 5分もせず、ゴンもやって来た。

 

「お疲れさん。キルアは?」

 

「お疲れ。俺より先に呼ばれたんだけど、相手がズシなんだ」

 

「……ズシか……」

 

 ラミナは眉間に皺を寄せる。

 

「ズシは念が使えるんだよね? キルア、大丈夫かな?」

 

「まだ【練】の修行中って言うとったから、大丈夫やとは思うが……」

 

 【纏】だけならば、キルアに勝てる可能性は低い。【纏】は体の頑丈さを上げるだけで攻撃力はそこまで上がらない。

 問題は【練】を使った場合だ。

 まだ修行中ということなので、ズシがコントロールをミスったら大怪我を負う可能性がある。

 

 出来ればズシとはもう少し後で戦わせたかった。

 200階で戦っている者達は【発】を修得している者達のはずなので、その前に念初心者のズシと戦わせて、念能力者との戦いの感覚を掴ませたかった。

 巡り合わせの悪さにラミナは顔を顰める。

 

 ラミナとゴンは先にファイトマネーを受け取ることにした。

 それから10分ほどすると、キルアがエレベーターから現れる。

 思い詰めたような顔をしており、ゴンとラミナはキルアに歩み寄る。

 

「キルア! ちょっと時間かかったね」

 

「……ああ。ちょっとてこずっちまった」

 

「強かったの?」

 

「いや、全然。素質はあるよ。でも、パンチものろかったし、隙だらけだった。なのに、倒せなかった」

 

 キルアはラミナに顔を向ける。

 

「それも念って奴か?」

 

「そうやな。念は打たれ強くもなるで。まぁ、人によって差は大きいけどな」

 

「それに構えが変わった途端、凄く嫌な感じがした。ズシの師匠が大声で止めたけどな」

 

(ふむ。やっぱり【練】のコントロールが不十分っちゅうことか)

 

 ラミナは納得するように頷く。

 

「ほな、ファイトマネー受け取って、ホテル取って、早速始めよか」

 

「「押忍!」」

 

「やめい」

 

 ズシのノリを真似するゴン達にツッコんで、ラミナ達はホテルを探しに行くことにする。

 すると、1階に下りたところにウイングが立っていた。

 

「お疲れ様です。少しいいかな?」

 

「……ゴン、キルア。先にホテル探してくれるか? 少し広めの部屋を1つ頼むわ」

 

「分かった」

 

 ラミナはゴンとキルアを先に送り出し、ウイングと向かい合う。

 

「それで?」

 

「……彼らの念を教えることについてです」

 

「……あんた、プロハンターか。つまり裏試験っちゅう奴やな?」

 

 ラミナはネテロ達の話を思い出す。

 新人ハンターに念を教えるのはプロハンターの役目。それを裏ハンター試験と呼ぶ。

 

「ここに来たんは偶然か?」

 

「ええ。私は協会から君達がここに向かっていると連絡を受けただけです」

 

「……ハッカーハンターか」

 

 ラミナは舌打ちする。

 それにウイングが申し訳なさそうに苦笑する。しかし、すぐに顔を引き締める。

 

「単刀直入に言います。彼らに念を教えるなら、私も関わらせてほしいのです」

 

「……どこまでや?」

 

「出来れば最初から最後まで」

 

「アホ言え。そんな面倒ゴメンや。口出しばっかされたらたまらん」

 

「……では、彼らの精孔をどのように開くつもりですか?」

 

「んなもんこじ開けるに決まっとる」

 

「それが外法だと分かって言っているのですか?」

 

 ウイングの纏う気配が険しくなる。

 しかし、ラミナは涼しい顔で受け流す。

 

「悪いけど時間ないねん。大事なんは開いた後。開き方なんざ問題ちゃう。それにあいつらはすでに【練】の気配を感じ取れるでな。【纏】をさっさと覚えさせる方がええ。ズシみたいに他に念を使える奴が200階より下におるかもしれんしな」

 

「それは……」

 

「あいつらはストレートで200階まで行く。外法やないと間に合わん」

 

 ウイングはラミナの言葉に顔を顰める。

 ラミナは歩き出して、ウイングの横を通り過ぎる。

 

「あくまで教えるペースはうちが決める。それでも見たいんやったら、ズシと一緒にやらせる形やな。比較対象が欲しかったでな。それでもええんなら、また声かけてや」

 

「……」

 

 ウイングは険しい顔のまま、ラミナの背中を見送ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 キルアからメールでホテルの場所を聞いたラミナは、ホテルに到着する。

 受付で手続きをしていたゴン達に合流し、キルアとゴンが広めのツインルームに泊まり、ラミナは普通のシングルの部屋を取る。

 流石に3日ほど泊まるとなると、ゴンとキルアだけでは金が足らないので、修行をするためということでラミナもお金を出す。

 

 すぐさま部屋に入った3人は早速念の修行を始めることにした。

 3人は床に円座になって座る。

 

「さて、まずは念を目覚めさせた後、最初に覚えて行く技を教えるで」

 

「レンとかテンって奴?」

 

「そやな」

 

 ラミナは部屋に備え付けられているメモ用紙に文字を書いて、4枚のメモをゴン達の前に置く。

 【纏】【絶】【練】【発】とそれぞれ書かれていた。

 

「この4つのことを四大行っちゅうねん。念の全てはこの4つから始まり、この4つを極めれば必然的に念の全ての能力が上がる。要は基礎やな」

 

「四大行……」

 

「まずは【纏】。これはオーラを体に留める技で、体を頑丈にして若さを保つことが出来るんや」

 

「若さも……?」

 

「オーラは生命エネルギーっちゅうたやろ? お前らは普段それを少しずつ垂れ流しとるんや。それを漏れんようにしたら、体にエネルギーが充満するイメージは出来るか?」

 

「なるほど……」

 

「次に【絶】。これはオーラを体の内に引っ込める技や。生命エネルギーを一切無駄にせんことで疲労回復を速めたり、気配をほぼ完全に消すことが出来る。ただし……」

 

「念の攻撃を受ければ、即死ぬ……」

 

「その通りや。つまり【絶】は隠密や潜伏、逃走に使う。戦闘中に使うことはまずない」

 

 ラミナの説明を真剣に聞くゴンとキルア。

 2人は下手に聞き漏らせば命に関わることを理解していた。イルミの念の悍ましさを体が覚えているからだ。

 

「そして【練】。オーラを通常以上に放出する。そこに感情が乗ることで圧迫感を感じさせることが出来るし、【纏】よりも攻防力は上がる。ただし、生命エネルギーであるオーラを通常より放出するんやから、長く続ければ当然疲労するんは早くなる」

 

「つまり短期決戦ってこと?」

 

「いや。【練】と【纏】は毎日繰り返すことで熟練度は上がるし、扱える量も増える。言うたやろ? 死ぬまで鍛え続けるってな。それに【練】と【纏】が強なれば、自分より未熟な敵の攻撃はほぼ通じんし、防御は貫ける。念能力者の戦いでは、この2つを疎かにしとったモンから死ぬ」

 

 ゴンとキルアはゴクリと唾をのむ。

 

「最後に【発】。これは自分のオーラを操り、自分独自の能力を作り上げることや。これに関しては【練】が出来んと話にならんし、イメージが重要やから今は後回しや。で、今一番の問題は、どうやって念を呼び起こすかや」

 

「どうやって?」

 

「やり方があるんじゃないの?」

 

「あるで。主に2つ」

 

 ラミナは新しいメモ用紙に『精孔』と書く。

 

「念は全身の精孔を開くことで目覚める。その方法はゆっくりと自分1人で開くか……。他人の手で無理矢理開かされるか」

 

「無理矢理?」

 

「出来んの? そんなこと」

 

「自分のオーラを相手に叩き込むんや」

 

「「!!」」

 

 ゴンとキルアはすぐさま言われた意味を理解した。

 

「もちろん、うちがやる場合は害意をオーラに乗せんから体が壊れる可能性は低い。けど、もしお前らがこのまま200階に行っとったら……」

 

「200階にいるのは念能力者。そいつらと試合をすれば……」

 

「目覚める可能性はあるが、体に何かしらの障害が残るか、最悪死ぬやろな。これを200階では『洗礼』と呼ばれとる」

 

「洗礼……」

 

「でや、ゆっくり起こす場合、目覚めるのはそれなりに時間がかかる。お前らでも1週間以上は確実やと思っとる。そこらへんの人間やったら数か月レベルやな」

 

「ラミナはどれくらいで目覚めたんだ?」

 

「うちは無理矢理開いた。もちろん仲がええ奴に手伝ってもろてな。これは早くて今晩。遅くても明日には念は目覚めるで」

 

「「じゃあ、無理矢理起こす」」

 

「そう言うと思たわ」

 

 即決の2人にラミナは苦笑するしかなかった。

 

「だって、時間がもったいないもん。それにラミナだったら、俺達の体壊さないだろうし」

 

「だな。むしろ、ここで逃したらそれこそ洗礼の仲間入りだ。だったら、お前にやってもらった方がいい」

 

「オッケー。ほんなら今から目覚めさせるで」

 

 ラミナが立ち上がって、ゴンとキルアも立ち上がる。

 2人に上着を脱ぐように伝えて、2人はシャツ一枚になる。

 

「先に言うとこか。【纏】は最初は目を閉じて、自然体で行う方がええ。オーラが流れるイメージは血液。全身を巡らせるイメージや。そして、最後は全身が湯船の中に浮かんどるような穏やかに体を包むイメージにしていくんや」

 

「オーラって見えるの?」

 

「目にも精孔はあるでな。見えるようになるで。ほな、背中を向けろや」

 

 ゴンとキルアはラミナに背中を向ける。

 ラミナは【纏】を大きくして、2人の体を包む。

 2人は見えない粘膜に全身を包まれていき、背中を直接押されているような圧を感じた。しかし、全く嫌な感じはしない。

 

「……行くで」

 

 ラミナがそう言った直後、ゴンとキルアは全身に衝撃が走る。

 すると、体から白い煙のようなものが噴き出していくのが見えるようになった。

 

「おお!?」

 

「こ、これは!?」

 

「湯気だ! ヤカンから噴き出す蒸気みたいだ!」

 

「それがオーラや。ほれ、ボケっとすんなや!! そのままやとオーラ出し尽くして倒れるで!!」

 

「「っ!!」」

 

 ゴンとキルアはすぐさま目を閉じて、自然体になる。

 ラミナは2人の正面に回り、様子を見守る。

 すると、2人の勢いよく噴き出していたオーラがピタリと止まり、体の周りに留まる。

 

(……1回くらいぶっ倒れると思てたけど一発かい……)

 

 ちなみにラミナは1度オーラが尽きて気絶した。

 マチに呆れられたが、ウボォーが「マチだって2回くらい気絶してたじゃねぇか」と笑いながら暴露して、マチに追いかけ回されるなどと色々あったが。

 それをアドバイスしたとは言え、2人があっさりと【纏】を成功させたことにラミナは嫉妬を通り越して呆れるしかなかった。

 

「……どうや? 感じは」

 

「……なんか……温い粘液の中にいるみたい」

 

「うん……重さのない服を着てるみたいだ」

 

「それが【纏】や。それを無意識でも出来るようになるんが目標やな」

 

 ゴンとキルアがラミナに目を向ける。オーラが見えるようになった2人の目には、自分達より遥かに穏やかで小さく、それでいて力強いラミナのオーラが映る。

 それだけでラミナとの差を実感できたゴンとキルアだった。

 

「これでお前らも今日から念能力者や。けど、過信はすんなや。お前らの【纏】なんざ、ホンマに服一枚分くらいの防御力しかないで」

 

「……うん、分かる。今のラミナの【纏】でも防げる気がしない」

 

「まずは1週間、【纏】の修行に費やすで。これは瞑想や禅が一番や。さっきの自然体のように【纏】のイメージをひたすら続ける。200階まで行ったら【練】の修行も始める」

 

「【絶】は?」

 

「キルアはもう出来る。尾行するときの気配を消す感覚や。ゴンもハンター試験でヒソカを追いかけ回した時に使えとったと考えとる。実際、今やってみ?」

 

 キルアとゴンは言われた通り、尾行するつもりで神経を集中する。

 ラミナの目には2人から完全にオーラが消えたのを確認した。ゴンとキルアも互いのオーラが全く見えなくなり、気配も希薄になったのを感じて驚く。

 

「やっぱ出来たな。それが【絶】や。今日はそのまま休みぃ。明日には疲れも吹き飛んどるやろ。まずは100階までさっさと行くで。で、個室をゲットしたら、そこからは1日1試合ペースで念の修行の方を重きに置く。それでも2週間後には200階に行けるやろ。言うとくけど、それでも早すぎるペースや。まだ念能力者と戦うのは無謀っちゅう言葉すら生温いで。ええな?」

 

 ゴンとキルアは頷く。

 

「言うとくが、ヒソカもイルミもうちと同等以上の念能力者や。念を使う以上、ヒソカ達やってハンター試験みたいに易しくはないで。さらに難易度は上がったと思えや」

 

 ゴンは冷や汗を浮かばせながらも、楽しそうに笑みを浮かべる。

 それを見たラミナは「逆効果やったか……」と呆れ、キルアも苦笑する。

 

 こうしてゴンとキルアの念修行が始まったのであった。 

 

 

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